宇多丸 いとうせいこう&RHYMESTERの早稲田大学日本語ラップトーク&ライブを語る

宇多丸 いとうせいこう&RHYMESTERの早稲田大学日本語ラップトーク&ライブを語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2024年6月18日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』で早稲田大学で行われた『ライムス・いとうのスペシャル・セッション「日本語とラップ@早稲田」』の模様を振り返っていました。

(宇多丸)それで、ちょっと疲れがたまって、あんまり調子がよくないなっていう状態のまま臨んでしまったのが、これでございます。『ライムス・いとうのスペシャル・セッション「日本語とラップ@早稲田」』という。

(日比麻音子)大変な大盛況だったみたいで。

(宇多丸)これ、『初夏の文芸フェスティバル』という、早稲田大学の国際文学館。いわゆる村上春樹ライブラリーの主催でやっている文芸フェスティバル。2日間やっていて。昨日もご出演いただいた柴田元幸さんとか、斎藤真理子さんとか、いろいろゆかりのある方も出ていただいて。みたいな流れなんですが、その最終フィナーレという私どもRHYMESTERと、そしてその日本語ラップの草分け。大先輩でもあります。いろんな意味で私の先輩、いとうせいこうさん一緒に日本語ラップの成り立ち、どういう風にやってきたかという試行錯誤の話&ライブがシームレスに移行してくという、ちょっと変わったイベントだったんですけど。

(日比麻音子)わあ、いいなー!

(宇多丸)こちら、大変大変大量の熱いメールをどっさりいただいて。皆さん、あとね、いっぱいの熱量で書いていただいて。本当に嬉しい限りなんですが。

(日比麻音子)本になるくらいの量です。

(宇多丸)ちょっと代表的なところ、ご紹介しましょう。

(日比麻音子)では、私から読ませていただきます。ラジオネーム「ばちょふ」さんからいただきました。「『ライムス・いとうのスペシャル・セッション「日本語とラップ@早稲田」』、幸運なことに参加できました。すごくすごく濃密な時間をありがとうございます」。

(宇多丸)ありがとうございます。抽選の無料イベントだったんでね。

(日比麻音子)「日本語ラップ黎明期には表でリズムを取ると音頭に聞こえてしまうので工夫した話とか、(コール&レスポンスの)『さわげー!』というのはいとうさんが日本語訳したという話が特に興味深かったです」。そうなんですね。「最近、税金の請求額に絶望していたところだったので、『The Choice Is Yours』は特に大声で歌い、かなり気分が晴れました」。

(宇多丸)一番最後の最後にこれを歌いましたけどね。

(日比麻音子)「東京都民としてよりよい未来を選ぶために、投票に行きます」という。

(宇多丸)はい。ありがとうございます。ということで、こんなにいっぱいいただいて。

(日比麻音子)その他にもご紹介しきれないぐらい超長文がたくさん届きました。

「文学とラップ」というテーマでやってほしいとオファー

(宇多丸)ちょっと1個1個、説明していきますけども。この『初夏の文芸フェスティバル』で最後に音楽みたいなのを混ぜるみたいなのは去年とかもやったんだけど。それでちょっと我々に白羽の矢が立って。「RHYMESTER、早稲田の卒業生だし。何か文学とラップみたいなテーマでやってくれませんか?」って。最初は「いやいや、ちょっと俺らなんか、全然文学的じゃないですから……」みたいに言っていたんですけども。「でも、あの人を呼べば文学とか、そういう感じになるかな?」と思って。当然、小説家でもあり、その「ラップと文学」というのを結ぶという意味で。早稲田の出身者でもあって。これはいとうせいこうさんを呼ぶしかないだろうっていうことで。

改めて、言っておきますが皆さん、いとうせいこうさん、今もちろん、いろんな形で活躍されてる人なんで。そのどの部分を取るか? なんだけども。日本語でラップするという試みの最もパイオニアというか、黎明期の……特に、もちろんその前にも「ラップ的歌唱」とか、単発的にラップ的な曲っていうのはあったんだけど。いわゆるヒップホップマナーっていうんすかね? ヒップホップのカルチャーのあり方っていうのをちゃんとわかった上で、それを日本でどうトレースするか?っていうモードでやられた日本語ラップはやっぱりいとうさんがパイオニアなわけです。

で、いとうさんにもお受けいただいて、やったわけですよ。で、このスタイルがなかなか変わっていて。これ、他局ですけどね、TFMが割と協賛で入っているイベントだったんで。スタッフの方もいっぱい入っていただいて。それにプラス、RHYMESTERの精鋭ライブチーム。大道具チームとかも全員、総出でやったんですよ。だからラジオスタジオ風の後ろ、セットというか、書き割りで。

(日比麻音子)ホワイトボードみたいなのがあって。

(宇多丸)でも全体に「ラジオブースですよ」っていう雰囲気のセットがあって。そこでトークをしながら、いろいろトピックに従って……たとえば「日本語でラップをどうやっていくか?」っていうのを改めて皆さんに思い出してもらうというか。若い世代の方は「えっ、そうなの?」ってことなのかもしれないけど。そもそも最初は、うまく日本語ラップをやるだのなんだのの前に「日本語でラップをすることができるのか、できないのか」の勝負だったわけですよね。どうやってやっていいかもわかんないし、それが本当にできるのかもわかんない。

というのは先ほど「音頭」っていうことが書かれていましたけども。やっぱり日本語が乗った音楽の生理っていうのあって。「ドドンガドン」もそうだし、皆さんご存知の「五七五」もそうだし。とにかく西洋的な、特にブラックミュージック的なその後ノリの、横ノリのグルーヴとはそもそもグルーヴが違う文化圏だし、言語だしっていうんで。それをじゃあ、どういう風に……特にアメリカ的なリップのあのグルーヴ感というのに置き換えることができるのか、できないのか?っていう問いだったわけですよ。

この中でどういう試行錯誤をしていくのか、みたいな話をして。パートごとに、いとうさんの話だったらいとうさんの話で。そこで非常に貴重な音源を流したりして。もう絶対に放送では流せない、発禁になったというとある曲があって。僕は実は放送で1回、昔に聞いたことがあるものなんだけど、そういうのを聞いたりとか。いとうさんの曲を聞いて「これはこういう風に作った」っていう話を聞いたりとか。

あとは僕ら、RHYMESTERはどうしたのか?っていうパートでは、話の流れでそのままラップしたりとか。「1997年にはこういう曲で一旦、日本語とラップ、日本とヒップホップっていう意味で我々、ひとつの回答を出しました」っつって『B‐BOYイズム』をやったりとか。あとは「我々、早稲田で結成したんです。本当に、そこなんです。大隈講堂の前の正門の、その地図の下のところ。そこで出会ったんです」っていう話から、まさに1989年。その情景も歌われた『なめんなよ1989』をそのままやるとか。で、最後にライブゾーンがドーンってあって、何曲かやるみたいな、そういうちょっと変わったイベントだったんです。

(日比麻音子)贅沢ですね!

(宇多丸)で、これって要するに、国際文学館のオファーでRHYMESTERにお声がかかって。で、いとうさんもお招きして、いとうさんのご意見も聞いて。いろんな人の意見があって、それをなんていうか、探り探りみんなで固めていった感じのイベントなのね。で、これね、その声が枯れていることもひとつの言い訳かもしれないけど。別に偉そうに言うわけじゃなくて、この企画の中だと接着剤は僕なんですよ。どう考えても。その中心になって、全ての要素を……ラジオ的しゃべりの要素とか。

(日比麻音子)まさに「ジャンクション」ですね。

企画の接着剤となる宇多丸

(宇多丸)そうそう。いとうさんに客観的な視点から聞いたり。Mummy-Dのテクニックの話を聞くとか。僕が接着剤になるっていう。しかも普通にしゃべって……全部で3時間ぐらい、あったんですけど。これ、しゃべってライブして、またしゃべって……ってやるのって、普段と使う筋肉が違うっていうんですかね? それもあってですね、たぶん私、思った以上に普段よりは……それで元々、喉の調子が良くなかったところで、ちょっとね、やっちゃったんです。

(日比麻音子)いやいや、でもそれだけ、出し切るほどの熱量のイベントだったということですね?

(宇多丸)いやー、私、頑張っちゃったっていうところもあるかもしれないってことですよね。これ、いっぱいメールいただいてます。もちろん全て、ちゃんと私ども目を通しますし。また放課後ポッドキャスト、今週末にやるやつで読めなかったやつを……非常に興味深い視点なんかもいっぱいあったんで。こちらは、すいません。いつも本放送でも紹介しきれなくて申し訳ない。こちらでご紹介します。

(日比麻音子)これ、配信とかはないんですか?

(宇多丸)配信はね、ちょっと音源の権利とかもあるんであれかな? でもね、ちょっと他局ですが、TFMで一部はなんかするとか、しないとか。で、ちなみにこれ、もちろん柴田元幸先生がいろいろやったりしてるって言ってましたけど。村上春樹さんも当然、いらっしゃるわけです。で、楽屋にご挨拶にもいらっしゃって。最初のね、本番前の挨拶ではDJ JINと思いのほか……要するにレコードコレクターとして、ずっとレコードの話で結構、盛り上がってらっしゃいましたし。

(日比麻音子)すごい!

村上春樹とレコードトークで盛り上がるDJ JIN

(宇多丸)で、終わった後にもご挨拶をいただいて。春樹さん曰く、「本当はちょっと途中で退席しようと思っていたんだけど、結局最後まで見てしまいました」っていう。で、メールにもありましたけど。ちゃんと普通にライブになると立ち上がって「ワーッ」とやってくださっていたみたいで。「いい運動になった」とかおっしゃってましたけど。でもその時点で私はもう、声がカスカスで。(カスカスの声で)「どうもありがとうございました」みたいな。というあれで。ちなみにこんな、超過かわいいオリジナルグッズ。トートバッグ。これ、オリジナルデザインで。この日のために作ったオリジナルデザインなんで。

(日比麻音子)へー! なんか、いいなー。

(宇多丸)基本、無料イベントだったんで。もちろん、この建物自体が寄付で成り立ってるってこともあって。私、だからMCで「皆さん、今日これ、ダータなんでね。グッズもありますし、寄付もあるんで。無料で来て、これだけのものを見て、何も落とさずに帰るというのはこれ、泥棒も同然……」って(笑)。

(日比麻音子)アハハハハハハハハッ! 出ました。宇多丸さん流の圧(笑)。

(宇多丸)そんなロジックを使ったりしました。ということで、いらっしゃった皆さん、ありがとうございました。

(日比麻音子)いやー、羨ましい限りです。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました