辻発彦 クロマティの緩慢な送球を見切った日本シリーズ好走塁を振り返る

辻発彦 クロマティの緩慢な送球を見切った日本シリーズ好走塁を振り返る 石橋貴明のGATE7

辻発彦さんが2024年6月16日放送のTBSラジオ『石橋貴明のGATE7』の中で常勝時代の西武ライオンズの厳しさについてトーク。常日頃から全く手を抜かないプレーを続けることで生まれた日本シリーズでのクロマティの緩慢な送球を見切って一塁からホームまで走りきった伝説の好走塁を振り返っていました。

(辻発彦)でも、そういう厳しさもまた、西武にはあったんですよね、全体にね。だから、逆にそれも当時としてはありなのかなっていう……まあ、殴るのはダメよ。殴るのはダメでも、やっぱり一生懸命にやってないっていうことに関しては厳しくされるのは当然だと思っていたし。そのくらい、やっぱりピシッと西武は厳しかったですよ。そういうことに関しては。カーン!って打って一塁までテレテレッて走っていたら、黙ってピッと引かれるんすかね。罰金が。黙って。

(石橋貴明)ああ、罰金制があったんですか?

(辻発彦)当時はあった。だからもう、清原なんか終わったら何百万って払わなきゃいけない。「はい、10万。20万……」って。本当に(笑)。

(石橋貴明)それは誰が査定してるんですか?

(辻発彦)それはちゃんとすコーチが査定するわけですよ。「全力疾走を怠る」とか。

(石橋貴明)ああ、だから、クロマティがテレテレやっていると「よし、一塁から行くぞ!」って?

常に自分の全力で走ることが求められる

(辻発彦)いや、だからできることを当たり前にやればいいわけですよ。自分の脚力に応じて、全力で走ればいいし。それをやっぱり、見るからにがっかりして歩いてるようじゃ、ダメじゃない? だからカーン!って打ってピッチャーゴロでも、人間だからガクッてなるじゃない? でも「いかん、いかん!」って思って走っていくわけですよ(笑)。

(石橋貴明)「罰金が取られちゃう!」って(笑)。

(辻発彦)まあ、でもそういう時代でしたよ。

(石橋貴明)でも同然のように、たとえばなかなかみんなにわからないかもしれないけど。ここで進塁打を打ったとか、自己犠牲的なそういう打席も評価されるんですか?

(辻発彦)もちろん、もちろん。だから本当にそういうのも全部……進塁打も、もちろんそうだし。1打席、アウトになっても10球以上投げさせたらそれも、もちろん賞金があるし。プラスになってくるし。

(石橋貴明)だから、ちょっとしたバックアップを怠ったりだとか、そういうことには厳しく……だから1球1球、完全にゲームに入ってないと無理ですよね。

(辻発彦)うん、そうだね。

(石橋貴明)やっぱり強いチームって、ちょっと前のソフトバンクなんかもそうでしたけども。もう、ここぞという時に1点、もぎ取るっていう時の走塁も含め、流れをこっち側に持ち込むためにどういう風に野球をやるか?っていう。「厳しいな。これじゃ、無理だわ」っていうぐらい、全力疾走だの、バックアップだのって、やってますもんね。

(辻発彦)そこで相手にミスが生まれるんだよね。

(石橋貴明)ですよね。だから、常に次の塁を狙ってるから相手は早く取って投げなきゃいけないっていう。それが暴投になったりとか。

(辻発彦)そういうところで勝手にミスをしてくれるんですよね。

(石橋貴明)相手が転んでくれちゃうっていう。そこですよね。

(辻発彦)強いところは隙がないのよね。

(石橋貴明)だって西武が強い時に、俺は忘れもしない。巨人戦で上田っていう慶応出身のやつをセカンドでパーン!ってアウトにしてて。「うわうわうわ、この状況でこの牽制アウトはダメでしょう?」って俺、思っていて。それを、誰だったかな? キヨさんだったかが新聞でコメントしていて。「これが巨人のドライチか」って書いてあって。「うわっ!」って思って。

(辻発彦)あれ、日本シリーズだよね。

(石橋貴明)日本シリーズですよね。

(辻発彦)東京ドームで。

(石橋貴明)あれ、打ってツーベースでしたかね。

(辻発彦)セカンドに来て。それで、みんながマウンドに集まって。それが、なんかピンチだから集まった感じじゃなくて。ピッチャーが鹿取さんで。

(石橋貴明)ああ、鹿取さんだったんだ。

(辻発彦)「ちょっとこのパターンで牽制しようよ」って。そしたら、ものの見事に決まったんですよね。もうそれでジャイアンツがクチャッとなっちゃって。

(石橋貴明)心が折れちゃって。

巨人の心が折れた上田の牽制死

(辻発彦)そこでもう、その試合はダメだよね。「さあ、行こう!」っていう時にコツッてやられて。あの牽制一発だったですからね。

(石橋貴明)また鹿取さんだからね。元巨人ですからね。巨人から西武に行ってるわけですからね。ああ、鹿取さんかー。あれはすごい覚えているんだよな。「うわっ、これは……」っていう。4勝0敗でスウィープした時もそうでしたよね。ジャイアンツの岡崎が「野球観が変わっちゃった」って言って。「おいおい……敗者といえどもそれを言っちゃダメだろう?」っていう。「野球観が変わってしまった。巨人と西武では質が違う」っていう。それと、さっきも辻さんが言っていた、クロマティがチョボチョボやっていて。セカンドだかショートだかにペーッとボールを返したところでブワーッて井原さんが手を回してドーン!ってホームまで行って。「おいおい。ワンヒットで一塁ランナーがホームまで!?」っていう。あれはもう、ずっと狙っていたんですか?

(辻発彦)いや、ホームまでは狙わないですよ。

(石橋貴明)でもミーティングでは「絶対に返球が甘いぞ」っていうのは?

クロマティの守備が緩慢なのはわかっていた

(辻発彦)もちろん、セカンドだったら間違いなく入ってくれるけど。一塁ランナーでも、クロマティのところに行ったら要するに、動きが緩慢だからサードまで行ける。「とにかく狙う気で行け」っていうことですよ。だからあの時はもうスチール……秋山の長打期待だから走るなって、ストップをかけられていて。それでセンター前、左中間寄りにヒットが出て。それでセカンドベースを回りました。

その時にもう、井原さんを見ていたら「ああ、これはホームに行くんだな」っていう風に感じて。それでもう、1ミリのスピードも緩めることなく。そこからもう、ホームを狙っていたから、行けたと思うんですよ。普通であれば「ああ、サードまで行けたな」っていう風に走塁でちょっとでも緩めば、そこまでは行けないだろうけど。もうセカンドを回ったところで「ああ、ホームへ行くんだ」っていうのを感じたっていうところですよ。

(石橋貴明)いやいやいや……。

<書き起こしおわり>

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