渡辺志保 ケンドリック・ラマーVSドレイクビーフへのカニエ・ウェスト参戦を語る

渡辺志保 ケンドリック・ラマーVSドレイクビーフへのカニエ・ウェスト参戦を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんが2024年4月22日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でメトロ・ブーミン&フューチャーのアルバム『We Don’t Trust You』に収録された『Like That feat. Kendrick Lamar』を発端としたドレイクとのビーフについてトーク。ドレイクがアンサー曲『Push Ups』『Taylor Made Freestyle』を発表&リークしたことや、カニエ・ウェストが『Like That Remix』で参戦してきたことなどについて話していました。

(渡辺志保)という感じで今日は、ちょっとこのオープニングの時間を使ってぜひ皆様とシェアしたい話題があって。なにかっていうと、引き続きフューチャーとメトロ・ブーミンのアルバム『We Don’t Trust You』に収録された『Like That feat. Kendrick Lamar』に端を発っする一連のビーフについてなんですけれども。先週の『INSIDE OUT』でもちょろっとしゃべったし、毎週、なんかしゃべってるような気がするんだが。あともう1個のラジオ、bayfmの『ROOM 101』の方でも結構、時間を割いてビーフについて話したんですが。また新たな動きが起こりに起こるというような感じでしたね。先週の金、土、日ぐらいでまたまた、今日の日本時間の月曜の午前……というか、ついさっきとかも含めてですね、いろんなことがあったわけなんですけど。

まず、ドレイクが正式にディスアンサーソングをリリースした。4月19日に『Push Ups』っていう曲をリリースしたんですね。元々リークされていたものはビートにジュニア・マフィアの『Get Money』が使われてたんですけど。そのサンプルを外してビギー、ザ・ノトーリアス・B.I.G.の『What’s Beef』っていう曲がサンプリングされているようですね。今回の正規リリース版には。で、リリックの内容は概ねリークの内容と同じなんですけれども。ちょいちょい修正されている部分があったり、カットされている部分があるという感じなんですが。ちょっと先週も話したけど、やっぱりその「お前ら、みんなアメリカ以外では無名だからな。俺は日本でも有名だから、東京にいるぜ」みたいなリリックが最初の4、5行目ぐらいに入ってくるんですけど。

やっぱりどうしてもそれが気になってしまって。「なんでこんなに堂々とホラが吹けるんだ?」みたいな。しかも聞く人が聞いたら「いやいや、お前、それ違うやんけ? フューチャーもケンドリックも日本にフェスで呼ばれてますけども。逆に言うとドレイクさんだけ、呼ばれてませんよ?」っていうね。これ、なんで誰も突っ込んでくれなかったんだろう?っていう。逆にそのへんで「日本、バカにされてるな」とか、ちょっと思っちゃったんですけど。そういうリリックで始まるという。で、基本的にはこの『Push Ups』の中ではドレイクがJ・コールのことも、乗っかってきたリック・ロスのことも、あとは『We Still Don’t Trust You』の中でASAP・ロッキーもドレイクディスをかましてるんですけど。そこに入ってるASAP・ロッキーのこともディスってる。当たり前だけどフューチャーのこともディスってる。それでザ・ウィークエンドについてもめちゃめちゃディスってる。もう本当、全方位型という感じでディスり倒しているんですよね。

そんなこんなでドレイクが『Push Ups』をリリースして。その次にですね、ドレイクがこれまたリーク……正規リリースはされていないんだが、『Taylor Made Freestyle』っていう曲をリリースして。それが結構、トンデモな感じになっているんですけれども。どんな曲に仕上がっているかというと、まず最初に2パックみたいな声をしたラッパーがラップして。その次にスヌープ・ドッグみたいな声をしたラッパーがラップして。最後にドレイクがラップしてるんですけども。内容としては「ケンドリックはウエストコーストの救世主なんだから、お前、こんなムーブやめろよ」みたいなことを2パックが諭すような感じの内容になっているんだが。これは、おそらくドレイクが自分でラップして、それをAIの技術を使って、その自分の吹き込んだラップを2パックの声のフィルターをかけるっていうんですかね? 2パックの声のようなラップに作り替えた。そして同じくスヌープ・ドッグの声のように作り変えたっていう、そのAIの技術を駆使したリーク曲になってるんですよね。

AIを使って2パック&スヌープ・ドッグ風のラップをフィーチャー

(渡辺志保)で、特に2パックなんて、すでに亡くなっているわけですし。ちょっとこれ、死者への冒涜では? みたいにもちろん思うんですけれども。私が推測するに、それこそがドレイクの狙いなのかなと思っていて。これ、言うまでもなく2パックもスヌープ・ドッグも西海岸のヒップホップを制するキングなわけですけれども。その人たちの声をわざわざAIを使って模してケンドリックを攻撃することによって、ケンドリックの地元であるウエストコーストのキングたちを冒涜するような形でケンドリックにイラッとさせるっていうことがドレイクの狙いなのかな、とか思ったり。あと、この「AI」っていうのは今回のこの『Like That』から始まった一連のビーフの重要な小道具みたいな感じにもなっているんですけど。最初に『Like That』がリリースされてからしばらくして、AIを使った楽曲でケンドリック・ラマーによるアンサーソングをリリースした子がいるんですよね。

これ、23歳のLAに住んでいるラッパーの男の子なんですけれども。彼が自分のラップを吹き込んで、それをケンドリックの声にAIナイズドした曲を作って。それを「ケンドリック・ラマーのリーク曲だ」って言って、ジョークでネットにポストしたら、それが広まってしまって。それでみんながパニックになるみたいな。でもその後に本人がちゃんと種明かしして。COMPLEXのインタビューとかにも答えているんですけれども。そんなこんなで、結構そのAIとラッパーのビーフってめっちゃ相性が悪い。それと同じぐらい、相性がいいなっていうか。ネタ作りには格好の材料になるっていう。

なので、その「アンサーソングがリリースされた!」ってなって、それに飛びつく前に「いやいや、これはAIなのか? 本人なのか? ちょっと待てよ?」っていう時間を誰もが今、経験している。それが2024年のラッパーのビーフなんだなって思いました。恐ろしいです。はい。

How a 23-Year-Old From LA Fooled the Internet With an AI ...
Sy The Rapper explains why he made the artificial intelli...

(DJ YANATAKE)あと、同じ声真似についてスヌープ本人も「これ、どうやって……今、何が起きているの?」みたいな。気に入らないような顔でコメントしていましたけども。

(渡辺志保)そうそう。でも、それがたぶんドレイクの狙いなのかなっていう。もう西海岸のみんなをイラつかせるみたいなところも狙いなのかなという風に思いました。で、ドレイクのディス曲も非常にダブルミーニングとかを本当にいっぱい散りばめていて面白いんだが。たとえばひとつ、「What’s a prince to a king? He a son」っていうリリックがあって。「キングにとってのプリンスってなんだと思う? プリンスはキングの息子なんだぜ。(だからプリンスの方が身分が下なんだ)」っていうリリックがあるんですけども。これも、そもそもケンドリック・ラマーが『Like That』で自分のことをプリンス、ドレイクのことをマイケル・ジャクソンにたとえて。それでプリンスの方がマイケル・ジャクソンよりも長生きしたっていうところで、結構それも話題になったラインなんですよね。そこを逆手にとって、ドレイクがこういう風に返しているとか。

そんなこんながあってですね、それでなんと4月の21日、昨日ですね、ここに更に乗っかってきた人物がおりまして。それが、カニエ・ウェストさんだったんですね。カニエ・ウェストさんが『Like That』のリミックスっていうのを今度、リリースしまして。それも非常に話題になっています。で、この『Like That』のリミックスは元々の『Like That』のビートを作り変えており、新たにコーラスを吹き込み、カニエさんのフックを吹き込み、かつ、フューチャーファンとしては「マジか!」って思ったんだけどフューチャーの未発表バースをくっつけてきたんですよね。

これは元々の『Like That』に収録されるはずだったフューチャーのバースらしいんですけれども。それをカニエが今回、持ってきて。みんなのことをケチョンケチョンにディスっているっていう内容になっております。さっきですね、カニエ・ウェストさんが『The Download’ Podcast』っていうポッドキャストに出演していらっしゃったんですけれども。種明かしみたいなことをしていて。というのが、フューチャーたちがカニエをスタジオに招待したらしいですね。で、「カニエさん、『Like That』のリミックス、作ってくださいよ」みたいな感じだったんだって。それで、カニエが「みんながドレイクをEliminateすることに対して非常にパワーがみなぎっていた。興奮していた」っていうようなことを話していて。で、その「Eliminate」っていう表現がこれまた、ちょっと今、まさにSNSでバズってちゃってるんですけど。これは「排除する」とか「脱落させる」っていう意味なんですよね。

たとえばオーディション番組とかでも1人、脱落者が出ましたみたいな。「◯◯さん、脱落」みたいな時にも「Eliminate」っていう表現を使うんですけれども。「そんな感じでみんながドレイクを引きずり降ろそうと今、躍起になっていて。それが熱かった。というか、面白かった」みたいなことをカニエがばらしていて。それでまた今、ネットがワーッてなっちゃってるところなんですよね。

Kanye West『Like That Remix』

(渡辺志保)で、個人的に面白いなってちょっと思うのが、ドレイクもその『Push Ups』の中でケンドリックに対して「お前の印税の50%はTDEの懐に入るんだぜ。お前のコントラクト(契約書)、見せてみろよ。お前がどんなに稼いでも上に持ってかれちゃうんだぞ?」っていうことをラップしてるんですよね。で、カニエも逆にそのドレイクに対して「いや、お前も一生涯、ユニバーサルミュージックと離れられない契約じゃねえか? お前、奴隷みたいなもんなんだから、せいぜいマスター(原盤権のマスターと奴隷に対するご主人様のマスターのダブルミーニング)に仕えるんだな」みたいなことをラップしていて。実際、ユニバーサルミュージックグループの社長さんの名前とかを出して、ドレイクのことを攻撃している。

なので今のアメリカのヒップホップのラッパー、しかもこういうトップのラッパーたちにとって、その原盤権とか出版権をどれぐらい自分たちで保有するか、所有するかっていうのはやっぱり論争の的になるひとつの大きな要素なのかなっていうところが私は面白いなと思って見ているところです。はい。

(DJ YANATAKE)いや、すごいことになってますよね。本当に。

(渡辺志保)すごいことになっていますよ。あとひとつ、カニエのアンサー的な『Like That』のリミックスのリリックの中で、グリルについて話してるリリックがあるんだけど。それはかつてネリーがポール・ウォールたちと一緒にリリースした『Grillz』っていう曲のリリックをちょっともじった内容になっていて。これはポール・ウォールも嬉しいのかなって思いながら、ポール・ウォールたちに思いをはせましたっていうのと。

(渡辺志保)あと、歌い出しが「Can’t stop, won’t stop I just f*cked your b*tch in the Sean John tank top」っていう、本当にパフ・ダディの決め台詞をそのまま使って。パフ・ダディの本名のショーン・ジョン、ファッションブランドのショーン・ジョンの名前をドロップしたところもカニエらしいなという。なんか、うん。逆張りみたいな感じで。今現在のパフ・ダディの状況を鑑みると……っていう感じなんですけど。そういうラインで始まってるっていう。

(DJ YANATAKE)なるほどね。で、今の志保さんの話も踏まえてなんですけど。今日のその状況を見ると、だからフューチャーとドレイクがコラボアルバムを作っていて、仲が悪くなって。これ、フューチャーが全部、絵を書いたというか、けしかけたみたいなところはありそうな気も。で、ケンドリックはやらされちゃったみたいな感じなのかな? わからんけど。

(渡辺志保)どうなんですかね?

(DJ YANATAKE)なんか志保もずっとさ、「なんでケンドリックはここでいきなりこんなことを言い始めたんだろう?」ってずっと疑問だったわけじゃないですか。

(渡辺志保)そう。疑問なんですよ。

(DJ YANATAKE)で、フューチャーがいかにして……その、さっきのカニエをスタジオに呼んで、カニエがばらした話みたいなのを考えると、フューチャーが絵を書いて、みんなにドレイクを攻撃させたっていうのが何となく、あるのかなとか、勝手に思ったり。それにでも今、全部ドレイクが対抗できている感じがするっていう。その、全方位からの攻撃に。だから、ケンドリックはたぶん自分が思ってるような状況にはなってないんじゃないかな?っていう感じはしますけどね。

(渡辺志保)いやー、どうなんですかね? でも言うて、たぶんみんながドレイクのことを「あいつ、気に食わねえ」っていう。それがずっと沸々とシーンの中でたぶん、あって。「いや、マジであいつ……:っていうのがメトロとフューチャーが半分、悪ふざけで、なんか最初のをけしかけたりしたのかなとか思ったり、思わなかったりみたいな。

(DJ YANATAKE)まあ結果的に……誰かもなんか、言ってましたけど。結果的にこれが今のヒップホップシーンの売り上げとかを伸ばすことになってるっていうね、皮肉な状況でもあるような。

(渡辺志保)皮肉な状況ですよね。かつ、片やその裏では今、クリス・ブラウンVSクエヴォっていうね、またこれも見たくない、みたいな感じの。

(DJ YANATAKE)それもだし。なんかフィメールラッパー同士の争いがどうの、なんて言ったのが今、全部なんかちょっと消えていっちゃっていて。

(渡辺志保)ですよね。だから前も言ったけど、今ヒップホップが盛り上がりに盛り上がっていて、商業的にも成功していて、みたいな。世界にすごく巨大な影響力を持つジャンルというか、カルチャーになっていて。そのひとつの到達点がこれかって思うと、ちょっと虚しいみたいな気持ちにも……人によると思いますけどね。逆に「うわっ、燃える! 楽しい! やべえ! 熱い!」って思っているヘッズもたくさんいると思うけど。ちょっと、うん。

(DJ YANATAKE)まあね。とにかく今、もうこの話題が独占しすぎてて、すごいですよね。で、これも噂で、全然本当かどうか、わかんないけど。5月にケンドリックのアルバムが出るとか。

(渡辺志保)ああ、どうなんだろうね?

(DJ YANATAKE)でももうケンドリックもアンサーはしてこない気がするけどな。

(渡辺志保)うん。してくるにしても、ちょっとサブリミナルな感じになってくるのかな?って。

(DJ YANATAKE)でもドレイクはこういうで本気を出すと……またこういう姑息なやり口が似合うって言ったら、あれですけど。これ、褒めているんですけども(笑)。

(渡辺志保)まあ、ドレイクは燃えるだろうね。だって『Push Ups』でも「数字的にもチャート的にもマネー的にも俺が一番なんだから」みたいなことを言っていて。

(DJ YANATAKE)なんか『The Source』かなんかのインスタで比べてるやつを見たんですけど。ドレイクとケンドリックとJ・コールの売上。数字だけでいくと、ドレイクが圧勝してるんだよね。

(渡辺志保)ねえ。圧勝してるんですよね。でも、それって最初に『Like That』のバースが出た時からみんな、たぶヘッズたちは言ってるんだけど。そこがそもそも違うんですよね。ドレイクはやっぱり数字に強いし、それだけ売り上げているが、逆にケンドリックとかJ・コールはそこには反映されないリリシズムとか、ラッパーとしての影響力みたいなところで勝っているというのがファンの心理でもありますから。また、その数字が勝ってるとか言われるとイラッとするのかな? みたいな。私はちょっとイラッとしたんですけど。

(DJ YANATAKE)お互いに戦うポイントがね、いろいろあるってことですよね。

(渡辺志保)そうそう。そうですね。そんなこんなでちょっと見守っていきたいなって。私ももちろん、「冷める」とかを言いつつ、半分ぐらいは結構、ちょっと「どうなる、どうなる?」みたいな。「そうそうそう」みたいな感じですので。あとはこのヴァーバルコミュニケーションというか。身体的な攻撃ではなくて、あくまでも曲でやりあうっていう。それがリレー方式でちゃんと、そこに関しては成り立っているわけだから。そこはもちろんね、素晴らしいというか。ヒップホップの面白いところだなという風に思っております。

(DJ YANATAKE)わかりました。ありがとうございます。来週以降、また動きがあれば。

(渡辺志保)はい。レポートします。ということで、お聞きいただきましょう。ドレイクで『Push Ups』。

Drake『Push Ups』

(渡辺志保)はい。お届けしたのはドレイクの話題の新曲『Push Ups』でした。いかがでしたでしょうか? 本当にどうなんでしまうのか、そわそわしながら東京から見守りたいなという風に思います。

<書き起こしおわり>

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