高橋芳朗 PinkPantheress『Heaven Knows』が現代音楽シーンに与えた影響を語る

高橋芳朗 PinkPantheress『Heaven Knows』が現代音楽シーンに与えた影響を語る アフター6ジャンクション

(高橋芳朗)で、ピンクパンサレスドラムンベースとともにリバイバルさせたもうひとつのY2Kのダンスミュージックが2ステップなんですけど。2ステップも引き続きトレンドのサウンドとして人気を博していますね。

(宇多丸)口で説明するとどんな感じですか?

(高橋芳朗)まあドラムンベースから派生したダンスミュージックなんですけど。ちょっと突っかかるようなですね、イレギュラーなビートが特徴のダンスミュージックで。これから聞いてもらえれば、何となく理解してもらえると思うんですけど。ここからじゃあ、最近の2ステップの主だったところを紹介してきたいと思うんですけど。まずピンクパンサレスの新作から、2ステップの楽曲を聞いてもらいましょうか。ピンクパンサレスで『Mosquito』です。

PinkPantheress『Mosquito』

(高橋芳朗)はい。ピンクパンサレスで『Mosquito』を聞いていただいております。

(宇多丸)聞きながらヨシくんも「やっぱり本家はいい」って。なんか特にこの曲は、たぶん歌のミックスがさ、ちょっとだけドライめにして。より近くに聞こえるっていうか、プライベートなものに聞こえるようになっていて。

(高橋芳朗)それはやっぱりパーソナルなスペースで聞く時に効果を発揮するってことですよね。いいですね。で、ここ最近の2ステップの傾向としてはこの『Mosquito』みたいにちょっとR&Bに寄せたものが多い印象があるかなという感じで。そんな中からですね、去年10月にリリースされたオーストラリアのシンガーソングライターのトロイ・シヴァンの新作『Something to Give Each Other』から『Got Me Started』っていう曲を聞いてもらいたいと思います。彼のアルバムもですね、去年のベストのひとつとして高い評価を獲得した傑作で。今年のグラミー賞でも2部門でノミネートされていたりします。では、聞いてください。トロイ・シヴァン『Got Me Started』です。

Troye Sivan『Got Me Started』

(高橋芳朗)トロイ・シヴァンで『Got Me Started』。

(宇多丸)最高に気持ちいいですね。

(高橋芳朗)夜に聞くと最高ですね。

(宇多丸)さっき、「R&B感」って言っていたけども。やっぱりそのボーカルの処理とかも含めて、ちょっと90年代後半、2000年代頭のジャム&ルイスとか……つまりはジャネット・ジャクソンだけども。っていう感じがしますね。

(高橋芳朗)次の曲はね、まさにそんな感じですね。ジャム&ルイスがモロにあると思います。次はですね、こちらも紅白歌合戦に出場しておりました。というよりかは、今年のコーチェラフェスティバルへの出演が決定しました。K-POPのLE SSERAFIM。

(宇多丸)すごいですね。

(高橋芳朗)すごいよね。彼女たちが去年10月にリリースした最新シングルの『Perfect Night』を聞いてもらいたいと思うんですけど。これ、LE SSERAFIMにとって初めての全編英語詞のシングルなんですよ。

(宇多丸)勝負曲。

(高橋芳朗)だからそういう欧米マーケットを視野に入れた曲で2ステップを導入してきてるあたりに今の気分が汲み取れると思うし。さっき宇多丸さんが指摘したちょっとジャム&ルイスみたいな感じがこの曲から聞き取れると思います。LE SSERAFIMで『Perfect Night』です。

LE SSERAFIMで『Perfect Night』

(高橋芳朗)はい。LE SSERAFIMで『Perfect Night』を聞いていただいております。

(宇多丸)聞きながら宇内さんが言ってた、もうどこの国かって。

(宇内梨沙)「どこの国の曲かわからない」って。

(宇多丸)全体にそうだよね。

(高橋芳朗)ピンクパンサレスもK-POPの影響を受けてますからね。

(宇多丸)ねえ。ピンクパンサレスを最初に聞いた時に「K-POPっぽいね」っていう話をしたぐらいだし。だからもうその影響はもうグルグルと、今のモードをそこで作ってるっていう感じで。いやー、よくできてる!

(高橋芳朗)完璧ですよ(笑)。

(宇多丸)このギターも本当に気持ちいいし。このループもね。

(高橋芳朗)あとスカっぽいドラムをカランカランって入れているところのセンスとかもね、イケてますよね。で、最近韓国のインディーシーンでもこういうサウンドを耳にする機会が増えてきていて。

(宇多丸)インディーシーン?

(高橋芳朗)はい。K-POPに対してのインディーシーンですかね。そういう中で最近、注目を集めているのが、元々ガールグループのEVOLの一員としてデビューしたシンガーソングライターのBÉBE YANAという人ですね。彼女が去年11月にリリースした最新シングルを聞いてもらいたいと思うんですけど。今はね、本当にこういう曲がスルスルと世界的にバズったりする可能性が大いになるほどあると思うんですよね。聞いてください。BÉBE YANAで『VROOM VROOM』です。

BÉBE YANA『VROOM VROOM』

(高橋芳朗)はい。BÉBE YANAで『VROOM VROOM』を聞いていただいております。やっぱりメロディーがいいですよね。メロディーがキモという感じがします。

(宇多丸)メロとかコード感とか……特にサビでどんぐらい弾けるかとかで。たぶん形式が固まってる分、ここからたぶん過当競争というか。差が出てくるかもしれませんね。でもその意味でも今日、聞いた一連のは素晴らしかったです。どれも。

(高橋芳朗)もうえりすぐりの選曲でお届けしておりますけどもね。じゃあ、最後にまとめとしてピンクパンサレスの新作からもう1曲、紹介したいんですけど。彼女が引き続き、ドラムンベースとか2ステップを自分のスタイルを軸にしてるのは今日、聞いてもらった曲からもわかると思うんですけど。今回の新作ではこれまでよりも音楽的な幅がぐっと広がった印象があるんですね。そのピンクパンサレスのシンガーソングライターとしての成長を感じさせる曲として『True romance』という曲を聞いてもらいたいと思うんですけど。この曲だとインディーロック、ギターポップとドラムンベースのハイブリッドを作っているんですよね。ちょっと今までと様相が変わってきてるんで。ピンクパンサレスの新機軸として聞いてください。『True romance』です。

PinkPantheress『True romance』

(高橋芳朗)はい。ピンクパンサレスで『True romance』を聞いていただいております。かわいい!

(宇内梨沙)かわいい!

(宇多丸)なんか本当にいろんな要素の集大成だね。もちろんドラムンベース的な展開もあるし。フロウ自体はK-POP的なところも入っているけど、でもおっしゃる通り、イギリスのインディーポップっていう感じもあって。

(高橋芳朗)甘酸っぱさもあって。

(宇多丸)だからなんかすごい、全部が融合した結果、ちょっと新しい次元に行っているっていうか。いいですね。これ、めっちゃいい。2024年の最新ポップミュージックとして素晴らしいと思います。

(高橋芳朗)そうですね。でも本当にね、「今のポップミュージックの気分を知る作品として、アルバムをなんか1枚、おすすめして?」って言われたら、今はもう迷わずピンクパンサレスの新作『Heaven Knows』をおすすめにしたいですね。

(宇多丸)このアルバムを青春のBGMにする皆さんが羨ましいですよ。

(高橋芳朗)幸せですよね。本当にね。だからK-POPを好きな人もそうだし、アイドルポップを始めとするJ-POPリスナーの方にもぜひ、聞いていただきたい。

(宇多丸)たぶんここからまたフィードバックされて、またいい曲がいろんなところから……もちろん日本からもできたりすると思うんで。それも期待しています。

(高橋芳朗)「ピンクパンサレス以降」と言えるような潮流がね、確実にあるので。ぜひチェックしてみてください。

(宇多丸)非常によかったと思います。ピンクパンサレスのアルバム『Heaven Knows』をご紹介いたしました。

<書き起こしおわり>

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