博多大吉さんが2023年12月27日配信のTBSラジオ『大吉ポッドキャスト いったん、ここにいます!』の中でM-1グランプリ2023を振り返り。最終決戦で令和ロマンに入れた理由を話していました。
(博多大吉)ということで、以上でファーストラウンドの採点、こんな感じでした。
(御舩陽平)聞きごたえありましたね。ということで、大吉先生的には真空ジェシカが95点。一番高い点数。その次がさや香で94点。その次が令和ロマンとヤーレンズとなっておりますが。実際、決勝ラウンドに進んだのが令和ロマン、ヤーレンズ、さや香と。まあ、大吉先生的にも得点は高得点をつけていたメンバーが……。
(博多大吉)まあまあ、なったかな? まあ、アベレージなんでね。僕が何点を入れようと結局、本当不思議なもんで。7人がやったら、ちゃんとなるんだろうね。審査って、すごいね。で、毎年恒例なんですけど、決勝だけはもう審査基準をガラッと変えるのよ。
(御舩陽平)ですね。どういう形にしてるんでしたっけ?
(博多大吉)去年同様、M-1のキャッチコピーに準じた審査の方法なので。今年は「爆笑が爆発する」だったからはい。もう爆発させた人たちの勝ち! わかりやすく、もうシンプルにそこを基準にしようと思って。もちろん、時間とかも測っていたし、ある程度のポイントは見たよ。ちゃんと見たけど……もうこのレベルになるとね、そんな間違いを起こらんから。もう見るだけ一緒かなっていうのもあって。
(御舩陽平)ああ、そのレベルなんですね。
(博多大吉)うん。今更ね、「漫才の技術が」とか言うもんでもない。あとは本当に決勝にしか降りてこない笑いの神様がさて、どこに降りるのかな?っていうので。審査基準もちゃんと忘れずに。でも、一番大事なのは俯瞰で見ることかな? 今、審査委員としての基準もそうだし。会場のお客さんもそうだし。テレビの前で手に汗を握っている皆さんがどんな感じで見てるのかな?っていうので。その自分の審査基準と、あとは私がディズニーで学んだ想像力、イマジネーションで。ディズニーでの経験が生きましたね(笑)。で、1組目の令和ロマン。いや、もう、すごかったね?
(御舩陽平)すごったっすね。クッキー工場の(笑)。
(博多大吉)俺、もう本当にびっくりした! ちょっと嫌いになったもん。くるまくん。もう、簡単に使いたくないけども、天才現るやん? 俺、あの工場の作業をやってる時のパントマイムみたいなやつ。うますぎない?
(御舩陽平)それを「単純作業だ」ってやって。
(博多大吉)「こんなこともできるのかい!」って思って。いろんな技術を見せつけられたし。で、ボケの種類もね、いろんなボケなんよ。もう本当に、知的なボケもあり、時事ネタっぽいのもあって。一番ね、誰もがわかるバカみたいなやつもあってっていう、詰め合わせセットになっていて。そら、度肝を抜かれたし。
(御舩陽平)面白かったっすね!
(博多大吉)で、1回目よりもツッコミがちゃんと機能してた気がした。
(御舩陽平)ああ、2本目のネタの方が?
1回目よりもツッコミが機能していた令和ロマン
(博多大吉)どうしてもやっぱりね、ボケがあれだけできる子だと、ツッコミが下手とかじゃなくて、実はやることがあんまりなくて。なかなか大変なところもあるんだろうけども。ツッコミの子もちゃんと、ケムリくんも機能してたような気がする。だから、くるまくんだけのワンマンショーではなかった。うん。すごかったね。
(御舩陽平)ねえ。「2本目に強いネタを残してた」って松本さんが言っちゃってましたけど。あれ、結果、自分たちはどう思ってたんですかね?(笑)。
(博多大吉)そうね。いや、でもうまくよなー。サブスクから入ってくる、ブロッコリーから始まって。まさか最後、吉本の社員まで出てくるとは思わないじゃない? 本当に起伏に富んだ……もちろん、1本目のネタも素晴らしかったけど。本当にこの今の若い漫才師。まあ「若い」っつってもそこまで実は若くないんだよね。令和ロマンって。
(御舩陽平)まあ、でも20代ですよね?
(博多大吉)でも、ギリじゃん? だから、あれやけども。まあ20代と言われてもらっていいのかな? 20代らしい、いい漫才を見たなと思いました。で、がヤーレンズ。ヤーレンズもね、すごく面白くて。
(御舩陽平)ラーメン屋さんのネタでしたね。
(博多大吉)会場も爆発をしていたけども。やっぱり1本目の、僕がすごく好きだった、ちりばめられたセンスのいいボケがちょっと減ってたかな? 2本目はちょっと、出井くんのツッコミがノーマルバージョンというか。1本目にいろいろね、まき散らして、笑わせてもらった分、期待しちゃった。
(御舩陽平)ああ、2本目でもっとすごいのが来てほしいっていう?
(博多大吉)そうそう。だから楢原くんの5個のボケで積み上げた笑いを出井くんのツッコミ1個で同じぐらい、笑い取るっていう。わかる? 私の言っているニュアンス。っていう掛け合いが2本目はあんまりなかったから。だから、めちゃめちゃ受けてるんだけど。爆発してんだけど。爆発力で言うと、やっぱり令和ロマンの方が……『太鼓の達人』で言うともうずっとあいつら、赤。で、ヤーレンズは赤の間にちょっとずつ青が入ってる感じ。だからこれはこれでリズムが良くていいんだけど。爆発力で言うと、これは令和ロマンやなってヤーレンズが終わった後に思った。うん。
(御舩陽平)「今のままだと令和ロマンだぞ」と。そして……(笑)。あれ、なんでしたっけ?
(博多大吉)「見せ算」。いやー、面白かったよ。面白かったよ。うん。面白かったけど……そうね。だから本人たちも言ってるけど。あれがやりたくてやったんだから、後悔はしてないんだろうけど。さっき、ネットニュースで見たらあれ、何かの企画でやって受けたんだよね?
(御舩陽平)ああ、見せ算は?
(博多大吉)なんか、合同ライブかなんかで芸人を表すために作ったネタらしいんだよ。なんか、それが書いてあった。だから僕、さや香のネタのあれ、めちゃめちゃ面白いんやけど。やっぱりあれ、単独ライブのネタなんよなー。
(御舩陽平)あんまり、ああいうところでやるネタではない?
(博多大吉)ないし。やっぱり当日のね、今田さんとの食事会でも当然、この話題になってたんやけど。やっぱり僕と今田さんの思いは一緒で。「漫才師たるもの、お客様が見たがってるのを見せるっていうのはもう、最低条件ちゃうか? あのお客さんは見せ算じゃないものを見たかったと思うな」っていう話になって。「今田さん、生意気ですけど僕もそう思います」と。見せ算、めちゃめちゃ面白いんよ。不条理で、シュールで、面白いんやけど。それはファイナルの3個目にやるネタじゃなかったかな? だってもう、漫才じゃないとは言い切らないけれども。僕の中での基準は「コントでやった方がもっと受けるじゃん」はもう、コントなのよ。「漫才だからこれ、面白いんだよね。こんな表現の仕方、漫才でしかできないよね」が僕の中では漫才で。
もっと細かく言うと、うーん。お医者さんのネタをやる時に、白衣を着ちゃうともう、そこから動けなくなるのよね。一度、その設定に入っちゃうと。っていう縛りがコントには発生するの。でも、そうやって縛ったからこそ得られる笑いっていうのが必ずある。それがコントであって。漫才はいちいち白衣なんか着ないから、自由自在に動ける。けど、縛りがない分、あっちこっちに行っちゃうし。お客さんの想像力もどんどん広がっちゃうから。笑いが取れそうで、実は取りづらい。でも、漫才にしか取れない医者のネタがあるっていう。それが漫才の良さであって。そういう風に僕の中では選別分けをしていて。
漫才よりもコントの方がより面白くなるさや香の「見せ算」
(博多大吉)で、さや香のあのネタを見た時に、「これは絶対ビデオの方が面白いじゃん?」と思ったの。講演会会場みたいな設定で、新山くんが出てきて。それで見せ算の説明をしていて。それをお客さんなのか、記者席なのか、観客席で相方の石井くんが見ている。もしくは、そういうハウトゥービデオが送られてきて、再生ボタン押したらあれが出てくる。ちゃんと数式も文字として、情報として出る。それがたぶん、あれの最高形だと思うのよ。あのネタが万人に笑ってもらうためには、それぐらいのものが必要だと僕は……これは古い考えかもしれないけども、思う。
(御舩陽平)たしかに最初、「どういうことだろう?」っていう。その仕組みがわからないといけないっていう方に頭を持ってかれちゃうので。笑う云々じゃなかったんですよね。
(博多大吉)俺もネットニュースで「見せ算」って見て。それで「ああ、『見る』算なんだ」ってわかったけども。最初、聞き取れなかったの。「えっ、何算? しし算? 何算?」って。でもあれは漫才だからそうなったわけで。そういう設定のコントやったら、もう「見せ算」ってバーンって出て。それで「1と1ならこれ」とか「6と9は形が似てるからこれ」とか。もっと笑いが取れると思うんだよね。なので、あのネタがどうこうっていう前に、漫才でやるべき……うーん。言葉、難しいのよね。かっこいいんだけどね。あそこまで行って。最後の最後で自分たちがやりたいことをやるっていうのは、すごくかっこいいんだけど。うーん(笑)。
(御舩陽平)いや、でもかっこよかったっすけどね。たしかに。今まで……去年のM-1を見て、「ああ、さや香ってこういうコンビなんだ」っていうのがわかる。で、今年、1本目で「ああ、やっぱりこういうの、面白いな」ってなって。で、そこを裏切ってきたっていうかっこよさはめちゃくちゃあると思うんですね。
(博多大吉)うん。彼らなりの新しさとか、オリジナリティを出してきたと思うけど。繰り返しになるけども、漫才よりも違う設定の方がたぶん受けるネタやと思うし。何より、やっぱり会場が爆発しないからね。
(御舩陽平)そこですかね。
(博多大吉)で、お客さんって3時間、座ってるじゃない。3時間半とか。で、実はその前の敗者復活のあたりからもう客席にいて。あそこに4時間以上、いるんだよね。
(御舩陽平)結構しんどいですね。
(博多大吉)で、視聴者の方もたぶんずっと見てる方、多いやん? で、最後の最後で言葉だけの数式はさすがにこれ、入ってねえやろうと。ということでまあ、ここはもう、令和ロマンだろうなと思って私は令和ロマンに入れさせてもらいました。
(御舩陽平)はい。最後、ドラマチックでしたね。ヤーレンズ、令和ロマンって(笑)。
(博多大吉)ビビった。マジでビビったー(笑)。
(御舩陽平)あれはどんな気持ちで?
(博多大吉)うーん。毎回、あれなんやけど。俺の中では、令和ロマン一択やったんよ。で、左だけ見えるのよ。何番を押したのか。だから富澤くんだけ見えるのよ。去年でいうと、塙くんだけ見えていて。で、富澤くんのが目に入っちゃったんだよ。で、2番。ヤーレンズを押していたのね。で、「ああ、ヤーレンズなんだ。全部、令和ロマンにはならないんだな」って思ったの。もう本当、天狗やろう?(笑)。本当、天狗審査員よ。で、いよいよ発表ってなって、最初にヤーレンズって来たから「おおっ、ここも?」ってなって。
(御舩陽平)2票、あることがわかって(笑)。
(博多大吉)だから「えっ、俺、今年もやらかしてる? また私だけのパターンかな?」って思ったら、本夫に順番通り。交互に来たから。いやー、しびれ上がった! で、後から聞いたけど、初めてなんやって。最後の最後でわかったのって。今までは最後の審査員席、上沼さんとか、松本さんに行くまでにもう決まっていたんだって。初めて。
(御舩陽平)松本さんも「俺で決まるの?」っていう感じですもんね。
(博多大吉)だからもうあの時の会場の爆発力たるや……はるちゃん、おった? スタジオにはいなかったよね? 楽屋もすごかった?(笑)。ああ、あれはすごかった! だから去年、今年。その前の2回。いろんな漫才師さんを見て、いろんな会場の爆発を見てきたけど。体感してきたけど。あれ以上はもうないかもっていうぐらい、礼二くんからの松本さん令和ロマンは、すごかった! マジで帽子かぶってたら、投げてた(笑)。マジでやっていた。本当、叫びそうになったよ。「うわーっ!」って。自分が優勝したわけでもないのに(笑)。ただね、これめちゃくちゃドラマチックな話があって。ヤーレンズと令和ロマンで4:3になったじゃない? もし1人でも、さや香に入れてたら3:3で並ぶじゃん? 並んだ場合はファーストラウンドの点数上位が優勝やから、ヤーレンズやったんよ。
(御舩陽平)おおおーっ!
優勝に指がかかっていたヤーレンズ
(博多大吉)本当にヤーレンズって、本当にもう優勝に指がかかってたのよ。だからこれも運命という言葉で片付けると、あれやけど。だから、たらればなんていうのは申し上げないけども。で、俺は最後、松本さんだけはさや香って入れるのかな?って、実は思ってたの。
(御舩陽平)あの新しいことにチャレンジしたところで。
(博多大吉)そこを評価されるんじゃないかな?っていうのは実は思ってたな。だから、まあそれで令和ロマンを押されてたけども。だから本当にいろんなドラマが……結果的には4:3:0になったけど。いろんなドラマが今年もあったね。
(御舩陽平)そういうことなんですね。
(博多大吉)でも本当、みんなに体感してほしかった。あの爆発。本当、ようできてるわ。M-1グランプリ。「爆笑が爆発する」とはようつけたね。今年も。
(御舩陽平)まさにそんな感じの大会になりましたね。
(博多大吉)そういう場に呼んでもらえたのもね、すごく光栄なことだと思うしね。
松ちゃんはもちろんだけど、礼二と塙と大吉先生が入れてるのが熱いね pic.twitter.com/0pL8jOZgi6
— ボイ (@daliVanp) December 24, 2023
<書き起こしおわり>