ピエール瀧 目標を持つことの弊害を語る

麒麟川島『電気グルーヴのオールナイトニッポン』の衝撃を語る 川島明 そもそもの話

ピエール瀧さんが2023年10月21日放送のTOKYO FM『川島明 そもそもの話』の中で石野卓球さんとの出会いから電気グルーヴの結成までについてトーク。目標を持たず、流れに身を任せて生きてきた瀧さんが目標を持つことの弊害について話していました。

(ピエール瀧)もう卓球くんとつるんで40年ぐらい経つんですけども。そもそもが高校に入って僕、野球部に入るんですけれども。野球部に入った時にいろんな中学からその野球部に入りたいっていうやつらが集まってくるじゃないですか。そこで自己紹介とかしてた時に、「じゃあ音楽、何が好き?」って話になって。僕はその時、YMOとかクラフトワークとか、そういうテクノのアーティストが好きだったんで。「俺、そのへんが好きかな」って言っていたら、「瀧、そういうのが好きなんだ。じゃあ今度、俺の中学の同級生でそういうのにすごい詳しいやつがいるから。そいつの家に遊ぶ行ってみない?」っていうので、連れて行ってもらったのが最初の出会いで。

(川島明)それが石野さんやったと。

(ピエール瀧)石野卓球くんの家に行って。16歳の夏ですけども。卓球くんの家に行ったら、まあね、レコードはいっぱい持ってるし。サブカル系の漫画だったりとか、エロ本とか、いろんなものがたくさんあるし。そこに各学校の、なんですかね? あんまり学校に馴染めない。けど、暴走族にも行かないっていう……。

(川島明)グレるほどの勇気はないけども……。

(ピエール瀧)暴力性のないドロップアウト組が(笑)。

(川島明)まだ何者でもない人たちね。

(ピエール瀧)で、一癖あるような連中が各学校から集まっていたのが卓球くんの家だったんですよね。

(川島明)アジト的な感じで、集まってきて。そこでみんなでテクノとか聞いてるんですか?

(ピエール瀧)卓球くんが当時、持ってたニュー・ウェイヴのレコードを聞いたりとか。それこそサブカル漫画……つげ義春とか、ああいうやつとか。しりあがり寿とかを読んでゲラゲラ笑ったり、みたいなのをやってるうちに……まあ卓球くんは卓球くんで自分で1人で音楽を、なんですかね? ユニットっぽく、ライブを静岡市内でやったりとかしてたんですね。小さい箱で。それを「じゃあ今度、見に行くわ」なんて言って見に行ったりしてるうちに……。

(川島明)ああ、もう高校の段階でライブを?

(ピエール瀧)やっていましたね。卓球くんは。で、ピンポン録音っていうんですけど。ラジカセに最初、リズムマシンの音をRECするじゃないですか。で、そのRECしたやつを流しながら、もうひとつのラジカセで録音しながら、今度はシンセの音を入れていって。そうすると、今度はリズムとシンセの音が入ったテープができるじゃないですか。で、それをまた流しながら歌を入れたりすると多重録音ができるんですよね。その代わり、音質はどんどん悪くなっていくんですけども。

(川島明)どんどん環境音とかが入って。

(ピエール瀧)はい。音は悪くなっていくんですけど。そういうものをやりながら、卓球くんはもう音楽を作っていたんですよね。

(川島明)へー! 結構、今の原点となるようなリズムを。

(ピエール瀧)まあ、そうですね。それでライブをやるっていうから「じゃあ、見に行くよ」っつって。もう高校生のね、16、7ぐらいですから。ライブハウスで大騒ぎとかしてるうちに「客席で大騒ぎするんだったら、ステージの上で大騒ぎした方がいいんじゃねえの?」っていうことになって。それで、ステージに上がるようになるっていう感じですかね。

客席ではなく、ステージ上で大騒ぎする

(川島明)まあ、愉快な仲間たちみたいな感じで、ワーワーいうて。楽器は弾けないけど、楽しいでしょうっていう感じで踊る。瀧さん的には元々、なにかなりたかったものはなかったんですか?

(ピエール瀧)当時は別に……まあ「ご覧の通り」って言ったら変ですけど。楽器も何もできないし。別に歌が特段上手いわけでもないので。まあ、遊びというか。もう本当、暴走族みたいな感じでやってたんだよね(笑)。「ブォンブォンブォンッ!」ってやって農道を走るわけじゃなくて。それだったら、ライブハウスとかで……。

(川島明)騒ごうぜと。

(ピエール瀧)「騒ごうぜ」もあるし、なんか面白かったんですよね。

(川島明)「楽しいことをやりたいな」っていうのは常に、今もあるわけですよね?

(ピエール瀧)っていうのがあったから、それはそんなに……遊び半分と言ったら変ですけど。で、高校を卒業する時に進路を決めなくちゃいけないじゃないですか。

(川島明)そうですね。いよいよ。

(ピエール瀧)なので、臨床検査技師っていう職種があるんですけど。どう説明したらいいですかね? いろいろ、血液検査とか、尿検査とかをやる検査マンなんですよ。ここ最近で言ったらおそらく、コロナの時にPCR検査とか。あれを全部やってたのは臨床検査技師の皆さんで。

(川島明)医師の方に行こうとしてたんですか? 医療というか。

(ピエール瀧)医療系で。割と理系が好きなんですよ。生物とか、化学とかが好きなんで。「じゃあ、そっちかな? でも、医者は無理っしょ?」ってなって。

(川島明)勉強してないし(笑)。

(ピエール瀧)勉強、全然してないですから。3年間、卓球くんの家と野球部しかやってないですから。「ここからは無理っしょ」ってなって。「じゃあ臨床検査技師だったら、専門学校なら入れるかな? でも専門学校に入る勉強をするのも面倒くさいな……」と思って。だけど俺、野球部を3年間、やったじゃないですか。県立高校とはいえ、野球部を3年間、やっていたんで。「これはちょっとアドバンテージになるな」と思って。「先生、すいません。野球部を3年間やったんで、臨床検査技師の学校に推薦っていうのは無理っすかね?」っつったら「おお、じゃあやってあげるよ」ってなって。それで推薦で臨床検査技師の学校に入れて。

(川島明)ああ、行っちゃうんですか?

(ピエール瀧)あと「東京に行きたい」っていうのもあったんですよね。静岡にいてもしょうがないし。そんな野良犬みたいなやつが首輪が外れた状態で東京に行ったところで……って話じゃないですか。

(川島明)ちょっと何か命綱がほしいということで?

(ピエール瀧)それもあるし。なんかね、手に職をつければ、なんとかなるんじゃねえ?っていうことで、臨床検査技師の専門学校に入るんですけど。でもバンド活動と……当時、人生っていうバンドだったんですけど。まあ、そんな19歳の野良犬が東京に出てきたら、学校なんて行くわけもないっていうんで。

(川島明)楽しいことばかりですよ。もう、毎日。

(ピエール瀧)あとゲーム……ファミコンとかもやり倒しちゃってね。

(川島明)一人暮らしですか。

(ピエール瀧)それで、学校も辞めて……っていう感じですかね。

(川島明)まあ、だから流れるように東京に出てきたものの、楽しいことを追求してると、結局卓球さんと一緒にいるということになっちゃったんですね?

(ピエール瀧)まあ、そうですね。あんまり他の選択肢は考えなかったですけどね。

(川島明)とにかくでも、芸人とかそういう道も考えたことはない?

(ピエール瀧)東京に出てきた理由として、人生っていうバンドで出てきたっていうのに近いんですけれども。それが東京に出てきて、3年ぐらいやったのかな? 3年ぐらいして、解散するんですよね。バンドが。で、解散するんで、当時が21歳とかじゃないですか。「これはどうしようか? まあ、実家に帰っても……どうしようかな?」ってなって。それで当時、なりたかったのが映像ディレクターだったんですよね。で、当時は夜中にPVを流す番組が……『ベストヒットUSA』みたいなやつとか、あったりもしたし。ああいう、その音楽と映像っていうものが割と密接になってきた頃で。「こういう音楽物だったりとか、映像を作るディレクターっていいな」ってなって。それになりたくて、人生を解散して、映像ディレクターの道というか。制作会社に何も知らない状態で入って……っていう。

(川島明)ちょっと歩み出すんですね。映像ディレクターの方に。ただもう、1991年に電気グルーヴとしてデビューしてしまうんですけど。

(ピエール瀧)そうですね。だからその制作会社入った頃に、また卓球くんから連絡があって。「瀧、今度電気っていうバンドを始めようと思うから。それ、またやんない?」って言われて。「なんでまた俺を誘うのかな?」とも思ったんですけども。「ああ、じゃあ、やる?」なんて言って。

(川島明)フフフ(笑)。瀧さん、グラグラっすね(笑)。

(ピエール瀧)そうね。あの、常に目標がないのよ(笑)。

(川島明)基本、楽しいことを誘われたら行っちゃうから。

(ピエール瀧)そうそうそうそう。

「常に目標がない」(瀧)

(川島明)だから「子供の頃からディレクターになりたかった!」っていうことでもないし。

(ピエール瀧)そうね。だからなりたかったものって、いまだにないかもしれない(笑)。

(川島明)今、そのまま大きくなられたイメージですもんね? なんか高校生の時の楽しかった瀧さん……まあ、卓球さんもそうなんですけど。そのへんの男子高校生感がやっぱり電気グルーヴの武器ですよ。

(ピエール瀧)なんかさ、目標を作ってさ、邁進するとさ、いや、もちろんそれはエネルギーにはなるよ? ぶれないかもしれないけどさ、なれなかった時のさ、ダメージって半端なくない?(笑)。

(川島明)いや、そこで心折れるんすよ。みんな。それでショックで急にね。

(ピエール瀧)そうでしょう? だって麒麟も「M-1、取るぞ!」みたいなのとか、あったろうけどさ。それを文言にしちゃうとさ、取れなかった時に「取れなかった」っていう事実がバチコーン!って。

(川島明)十字架のように背負わされて。

(ピエール瀧)スティグマのように残るわけじゃないですか。だったら……目標を書かない方がいいんじゃないの?っていう。

(川島明)っていうスタンスで。でもそれ、聞いたんですか? 「なんで卓球くんは僕に声をかけたんだ?」って。

(ピエール瀧)「なんでだろうね?」って言ってました(笑)。

(川島明)これはやっぱりでも、ほんまにその……人生ですよね。まさに。それが、なんとなく電話しちゃったんでしょうね。

(ピエール瀧)そういうことなんですかね?

(川島明)瀧がいた方がおもろいっていうのはあったんでしょうね。

(ピエール瀧)あと、体もデカかったから、用心棒的な感じもあるんじゃないですか?(笑)。

(川島明)フハハハハハハハハッ! そっち? ボディーガード的に?(笑)。

(ピエール瀧)でかいやつを引き連れてれば、絡まれないで済むっていう。

(川島明)それで声をかけられて電気グルーヴとなります。

<書き起こしおわり>

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