でか美ちゃんと町山智浩『福田村事件』を語る

町山智浩 映画『福田村事件』を語る こねくと

でか美ちゃんさんと町山智浩さんが2023年9月5日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で『福田村事件』を見た感想を話していました。

(でか美ちゃん)先週、町山さんに紹介していただいた映画『福田村事件』を見てきました。

(町山智浩)いかがでしたか?

(でか美ちゃん)ちょっと、なんか率直な感想を言うと、そりゃそうなんですけど、すごく重たくて。なんか、とても考えるきっかけにもなったし。「『考えるきっかけになったわ』で終わらないようにしよう」という決意が固まりました。個人的には。

(町山智浩)ちょっとね、まあ子供2人とね、赤ちゃんと、それからお腹に赤ちゃんがいるお母さんまで殺してしまうというね。それが殺人犯とか、そういうんじゃなくて、普通の村人なんですよね。

(でか美ちゃん)そうなんですよね。

(町山智浩)そのすごさが……「100年前」って言っても、僕が子供の頃にはだって、言っちゃ悪いですけどその時は「50年前」のことだったんですよ。

(でか美ちゃん)町山さんからしたら「最近起きたこと」っていう感覚ですよね?

(町山智浩)そうなんです。やったことがある人がいっぱい、おじいちゃんとかでいたんですよね。

(でか美ちゃん)そうか。まだ存命の時というか。

「自分が子供の頃は50年前の出来事だった」(町山)

(町山智浩)そうです。関東大震災からわずか50年しか経ってなかったのでね。僕が子供の頃は。だからやっぱりね、僕自身が父親が韓国人なんで、そういう話を聞いた時は本当に恐ろしかったですね。

(でか美ちゃん)なんか森達也監督の描き方がすごい秀逸だなって思ったのが、私は町山さんから紹介された時に「関東大震災とその後に起きてしまう虐殺事件の話だ」っていう風に聞いてたんですけど。関東大震災が起きるまでの、それぞれの人の日常をたっぷり描いてから実際に震災が起きて。そして虐殺に繋がっていくっていう描き方だったんで、なんかより悲しみが深くて。1人1人、生きてるだけなんですよね。加害者も被害者も、一生懸命。

(町山智浩)そうなんですよね。名前も顔もわからない誰かで、その死んだ人の数字だけが語られるんじゃなくて、1人1人の人生がちゃんと描かれていくんでね。もうね、僕はね、あの映画で一番つらかったのはちっちゃい子がね、映画だってことがわかってなくて、ずっとはしゃいでるでしょう?

(でか美ちゃん)そう。はしゃいでます。すごくちっちゃい役者というかね、出演者が。

(町山智浩)2、3歳の子がね、俳優として出ていて。でも、映画だっていうことがわかってないからすごく無邪気にはしゃいでいて。もうあれが見てられなくてね。「この子もどうなるんだろう?」と思うとね、すごくつらかったですけどね。

(でか美ちゃん)ぜひ見ていただきたいし。私が見に行ったのはテアトル新宿だったんですけど。満席でした。

(町山智浩)それはいいことですね。素晴らしいことだなと思いますね。関東大震災のね、100年目に公開されて。で、しかもそれに対して、日本政府の松野内閣官房長官が「関東大震災の時の在日朝鮮人虐殺の記録は政府にない」って……嘘をついたんですね。

(でか美ちゃん)まあ、『福田村事件』に対してはいろんな意見とか、「私とはちょっと違う意見かな」と思う方のいろんなな言葉も見る中で、官房長官という立場の人がそういう反対側の意見の人でも言ってこなかったようなことを言ってしまうっていう。ちょっと、なんかもう怒りを通り越して、正直私はキョトンとしちゃいました。「なにを言っているんだろう?」って思って。

(町山智浩)「なにを言っているんだろう」ってね。だって内閣府が出している書類があるんですよ。内閣官房長官の内閣府がね。中央防災会議というところが出した「災害教訓の継承に関する専門調査会」っていう。これ、2009年にまとめた報告書なんですけど。それの中ではっきりと「朝鮮人に関するデマがあって関東大震災で虐殺された」ということが書いてあって。内閣府の書類があるのに。

報告書(1923 関東大震災第2編) : 防災情報のページ - 内閣府
報告書(1923関東大震災第2編) 教育・啓発歴史災害に関する教訓のページ災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(1923関東大震災第2編) 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成20年3月1923関東大震災【第2編】        ...

(町山智浩)で、あと警視庁とかも『大正大震火災誌』っていう、事件当時に作成したものの中で、全部デマを検証して。実際に朝鮮人の犯罪はほとんどなかった。でも、実際に確認された虐殺数だけでも500人とか、すごい数になっちゃうんですよ。それも全部、確認されているのに「政府に記録はない」って……それは虚偽答弁だと思いましたね。

関東大震災 100年前の災害でも流れた「フェイク画像」と「デマ」 - NHK
【NHK】100年前に多くの犠牲者や被害が出た関東大震災。この大地震の際も「フェイク画像」や「デマ」が。災害のたびに出回る「根拠のないうわさ」はなぜ無くならないのか。「フェイクニュース」も出回る現代に通じる教訓・人間心理は何か。当時の検証を...

(でか美ちゃん)私もいろんなことを思いましたけども。いろんな方に見てほしいけど、その本当に見てほしい人のところにまで届くといいなとも思いましたしね。

(町山智浩)そう思いますね。

(でか美ちゃん)あと町山さんもおっしゃってましたけど。水道橋博士のお芝居がめっちゃよくて! グッと来ました。役どころはあれでしたが。

(町山智浩)あの上がっている感じがちょうどいいんですよね。「上がってます」っていう感じがね。

(でか美ちゃん)よかったです。なんか日本人、韓国人、朝鮮人とかの、どっちが悪だとかじゃなくて、誰しも加害の種がある。自分の中にも、でか美の中にもあるっていうことにすごい向き合いましたね。

(町山智浩)そうですね。あの中で、また虐殺のリーダーシップを取っちゃう水道橋博士。彼は別に悪い人でも何でもないんですよね。

(でか美ちゃん)そうですね。ちょっと今日は感想を多めにということで話してきましたが。町山さん、森達也監督にインタビューもされたんですよね?

森達也監督へのインタビュー

(町山智浩)はい。インタビューしたんですよ。そしたら、やっぱりあまりにもヘビーだったんで。もうこういう路線はちょっと一旦、休みたいということで。森達也さん。それで「じゃあ、次は何を撮りたいんですか?」って聞いたら、「イ・チャンドン監督の『オアシス』みたいなラブストーリーを撮りたい」って言ったんですよ。

(でか美ちゃん)ああ、次はラブストーリーなんですね。

(町山智浩)そしたら、ちょうどその『オアシス』っていう映画が、これは2002年の映画で。約20年前の映画なんですけれども。8月25日から、そのイ・チャンドン監督の懐古上映としてですね、4Kリマスターしたんで。今、ちょうど東京で上映してるんですよ。『オアシス』が。

(でか美ちゃん)本当だ。ヒューマントラストシネマ有楽町で東京は上映してまして。全国で順次っていうことみたいですね。

町山智浩 イ・チャンドン『オアシス』を語る
でか美ちゃんさんと町山智浩さんが2023年9月5日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で現在、『イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K』で公開中の作品『オアシス』について話していました。

<書き起こしおわり>

町山智浩 映画『福田村事件』を語る
町山智浩さんが2023年8月29日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『福田村事件』について話していました。
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