堀井雄二さんが2023年8月28日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で『ドラゴンクエスト』シリーズのシナリオの作り方について話していました。
（堀井雄二）シナリオも全部、書いているんだっけ？
（橋野桂）シナリオも、一字一句を書いているわけじゃないですけども。プロットまでは作って。ペルソナなので、そうしなきゃみたいな。
（堀井雄二）ペルソナって割と、ずっとそのテーマですか？
（橋野桂）ジュヴナイル……つまり若い人たちがどうやって大人になっていくかのところでやってますね。堀井さんとか、シナリオを作る時ってどこから入るんですか？
（堀井雄二）僕はね、割とイベントから作るの。
（橋野桂）イベントの1シーンですか？
イベントから作る
（堀井雄二）そのいろんな……街に行ったらドラクエっていろんなイベントが起こるじゃないですか。だからそういう……「魔王を倒す」っていうことは決まっているから、そこは大筋でやるけども。その中で、どういうことが起きたら面白いか？っていう。なんだろう？ そのクエストとかイベントから作っていって。そうそう。あとはキャラクターから入ったりとか。キャラクターを立てるために……キャラを立てるイベントはどういうイベントでこのキャラが一番立つか？って。
（橋野桂）じゃあ、大枠のプロットみたいなものを最初に？
（堀井雄二）最初にざっと作って。それで、埋めていって。ドラクエって、だいたい新しい街に着くと問題があって。それを解くと、なにかご褒美で大筋に関係するアイテムを手に入るっていう構成なんで。だからその1個1個がどれだけ面白いイベントであるかとか。それぞれ、ひとつの街の物語があって。キャラがいて。で、やっぱり意表を突くのがいいんで。なんだろう？ 「こうかな？」って思ったところでもう1個、ひとひねりするっていうことも。あとはやっぱりユーザーをどうやって意表を突くか？っていうので、1の時に考えたんだけども。「竜王に会った時になんて言われたら一番びっくりするかな？」っていろいろと考えて出したのがあのセリフなんだよね。「えっ、そんなことを言われる？」みたいなさ。
（橋野桂）そういうどんでん返しを、堀井さんが書き進めながらどこかでなんか、退屈に思ってどんでん返しを入れているのか？ それとも最初のプロットの段階で、どんでん返しっていうチャプターがあるのかとかはちょっとお聞きしたくて。
（堀井雄二）両方あるかもしれないね。
（橋野桂）ああ、最初から入れている時も？
（堀井雄二）最初からっていうのもあるし。書いてるうちに「これじゃつまらないから、もうひとひねりしたい」みたいなのも。
（鳥嶋和彦）だからそれはね、堀井さんのサービス精神であり、長年培ってきた「人を驚かせたい」っていうね。そこだよね。
（堀井雄二）やっている方もその方が楽しいって感じるから。だから『ポートピア連続殺人事件』もだいたいそうだったので。「犯人はあいつ」っていうことだよね。一番意表を突くのを（笑）。
（平信一）すべてのミステリー作家が「犯人を誰にしよう？」っていう時に一瞬、「ヤス」ってよぎりますよね（笑）。
（鳥嶋和彦）まあ、ねえ。そのへんはね、堀井さんらしいよね。
（Naz Chris）ちょっとすごい具体的に、ピンポイントで恐縮なんですけど。ちょっと私がそのドラクエの割と初期の方のシリーズで、すごい意表を突かれたというか、「ここでこれを見せてくるんだ！」と思った1個が、まずドラクエ3でゾーマ城に行った時にオルテガが戦っているじゃないですか。あれを見せられた時の、子供の心境っていう。この「くぅーっ！」っていうのが……でも、助けに入れないんですよ。ただ、やられるところを見るしかないんですよ。
（堀井雄二）しかも主人公をね、気づかないんだよね（笑）。
（Naz Chris）そう！ それはどういうことか？っていうのを……。
（堀井雄二）「伝えてほしい」っていうね。
（Naz Chris）あれは、最初から決めてたんじゃなくて？
書いているうちに思いついたオルテガイベント
（堀井雄二）書いてるうちに思いついて。で、「行く前に何か、あった方がいいな」と思って。ずっとオルテガの後を追っているんで、やっぱりここで登場だなと思って。
（Naz Chris）あれ、助けに入れないのももう全部、想定なんですよね？ 見ているだけしかないっていう。
（堀井雄二）そう。切なさを。
（鳥嶋和彦）ジリジリさせるっていうのも、ひとつのテクニックだからね。
（Naz Chris）あともう1個はやっぱりの2の、サマルトリアの王子が探してるのに……。
（堀井雄二）「探しましたよ」って言われるやつね（笑）。
（Naz Chris）向こうも探しているっていう。で、そこでやっと会えて「よし！」ってなるけど、次のムーンブルクの王女まで、意外に遠いっていう。で、人間の姿もしていなくて。
（堀井雄二）犬になっていてね。
（Naz Chris）1回、絶望に陥るっていう子供の体験。あの感じはどうやって思いついたんだろう？っていう。
（堀井雄二）なんとなく思いついたっていうか、「どうやったら一番楽しいかな？ 面白いかな？」っていうんで。2人目は探したじゃないですか。で、3人目も同じじゃつまらないんで。ちょっと姿を変えられているっていう。
（Naz Chris）だってパーティープレイが初めてドラクエに導入されたのが2で。それがスムーズにいかない感じが意地悪だなってずっと思ってたんですけど。
（堀井雄二）意地悪だと思っていた？（笑）。
（Naz Chris）思ってました（笑）。ちょっとすんなりとはいかないっていうのが、それがいたずら心というのか、なにか……。
（堀井雄二）なんだろうな？ なんとなく、そうやった方が苦労が報われた気がするかなって思って。なかなかやっぱり人を得るには大変な思いをしなきゃ……ってね（笑）。
（Naz Chris）学びですね。
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ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局、
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