宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』で川崎クラブチッタで行われたライムスターのツアー公開リハーサルの模様を語っていました。
(宇多丸)で、まあ私はそこで、体力の限界まで打ち上げでがんばってはいけない理由がございまして。というのは、その2日後に、火曜日になりますね。火曜日に川崎のクラブチッタというね、ちょっと中規模くらいのライブハウスっていうのがありまして。こちらでライムスターの公開リハーサル、公開ゲネプロというのをこの間。っていうのは私ね、本業のライムスター、ラップグループでございます。なんと、明日から全国ツアーが始まってしまうんですね。明日、Zepp名古屋。名古屋のね、Zeppというのは結構大きい会場ですよ。そこからまあ、ツアーが始まると。
で、いままでだったらそのツアーを普通に始めてるんだけど。今回はですね、その公開リハーサル、公開ゲネプロ。どういうことか?というと、要するに通しリハーサルですね。本番さながらに、まったく同じようにやってみて、問題点みたいなものをあぶりだしていくと。で、結構そのたとえばドームツアーであるとかスタジアム級であるとかだと、かならず通しリハはやりますし。という感じなんだけど、まあ僕ら規模だとやったりやらなかったりなんだけど。いままでのツアーの経験で、やっぱり通しリハはやった方がいいっていうのは言っていて。
公開ゲネプロ
で、まあどうせやるなら、本番さながらにやるわけだから、金取りゃあいいじゃんっていう(笑)。人を集めて金を取ったらいいじゃんっていうことで、ちょっと安めの料金設定で。で、まあ平日のね、割りとライブには来づらい時間なんだけど、そこでよろしければって。で、途中で、公開ゲネですからちょっと失敗したりとか。あと、本番にはない、なんて言うのかな?よくないものみたいなものが残っていたりするけど、それでもよろしければっていうことで。だからかなりディープなファンが。ライムスターのディープなファンが来るような状況でやったわけ。
でも結構、結局埋まりましたよね。川崎ね。相当埋まっていたけど。はい。で、本番さながらにやったわけ。ポイントとしてはですね、MCのポイント。たとえば名古屋だったら『名古屋のみなさん、集まっていただいて・・・』なんてね、まあ話をするわけですけど。今回に関しては公開リハーサルですから。なんかこう、一区切りつくたびに、『ねえ、どう?ここまで』みたいな(笑)。『ここまでの構成、どう思う?』みたいな。で、『イエー!』みたいなのがあったりとか。なんかね、今回だとね、前半はまあ、まず問題ない感じだったんですよね。結構いい感じだったんですけど。
でも、その後あれですよ。ライブ終わった後に、打ち上げがてら、そのスタッフ。スタッフっていうのは音響スタッフ、照明スタッフ、美術スタッフもろもろ全員集まって。お酒飲みながらですけど、ちょっと、1個1個検証しながら反省会みたいなのをして。それでだから、曲の運び的には問題なくても、あそこの照明ダメだよ、みたいな。あそこでああいうことをやると、お客冷めちゃうから・・・みたいな。そういう細かい調整を、1個1個やっていたりする。まあ前半は、曲のセットリストとしてはいい感じだったんだけど。後半ね。ちょっとこれ、よくないなみたいなのがあって。で、客に『ね!これ、よくないね!これね!よくないね!』なんてこう、聞くから。客も『うん、よくない。よくない』みたいに(笑)。なっちゃってるんだけど。
あのー、これまあ実際に明日からツアー始まるわけで。まあ、ブラッシュアップはしました。そのね、来ていただいた方が、俺たちが『ここを直した方がいいな』って言っているところじゃないところを直してると思うんだけど。それはね、そういうことって往々にしてあって。これ、歌詞とかでもなんでもそうです。ある作品を作る過程で、なんかよくないなっていうのがあるとする。で、ここがよくないなって思うポイントがあるとすると、でも本当は、本当によくないのは、その前の何かとか。その後の何か。その後の何かとかを組み替えると、そのダメだと思っていた部分はぜんぜん実は間違ってなくて。必要な部分だったってわかったりとかですね。みたいなこともね、ちょっとね、明日からちょっと。だから両方来られる方ね。東京公演なんかもありますんで。わかるんじゃないかな?とかね。
後はあの、ゲネプロですからということで。僕ら的には『こりゃあねえな』と思った、そういうふざけ展開っていうんですかね?1回こう、僕がネタでね、こういうことをやったら面白いんじゃないか?って。リハーサルでやってみたら、『これ、たぶん客は怒るな』っていうような(笑)。要は曲をちゃんとやらないっていうギャグなんですけど。やると見せかけてやらない。しかもそれがすごいしつこいっていうので。これは大変評判が悪かったので、川崎で。これはたぶんカットになる。逆に言えば、川崎だけで見れたというね、ものがあったりとかですね。
とにかく、こういうことですよ。私が言いたいのは。だからその、まあライムスターね。細々とですよ、細々とだけど25周年続けられてきてるっていうのはこういう・・・あの、要するに自分たちで『もうこれでいいんだ』っていうところまで持ってきたと思ってからさらにこう、ネジをしめる。たとえばね、ハリウッドの映画とかでも、一旦完成したものを観客にスニークプレビュー。目隠し試写会みたいのをして、なんの作品か知らないで見せて。で、その感想をフィードバック。まあ、このフィードバックさせるのがあんまりよくないみたいなことも言われたりはしますけど。ちゃんと正確にその意見が汲み取れれば、それでブラッシュアップもできるというね。
それこそ今日のね、『エクスペンダブルズ』じゃないけど、スタローンの『ロッキー』とかは最初に試写やって、それの反応でエンディングをいまの形に変えているわけですからね。もっと地味なエンディングだったのを変えているわけですから。はい。みたいなね。だからね、そういうのを経てるんですよというあたりかなー。はい。だから僕はね、やっぱり他の人の作品とか見ると、『あっ、ここはすごくネジしめたんだな』とか。『ここ、ネジゆるんだまま出しちゃっただろ』みたいなのがね。たぶん、より見えていると思うんですよね。
なんで、ムービーウォッチメンとかやってるっていうのはどうですかね(笑)。的なことでございます。はい。ということで、明日からツアー。もしみなさん、全国でね、まだまだ来れるところもあると思いますんで。来ていただけるとうれしいんですが。ちなみにあの、新しい試みみたいなのもいっぱい入ってますし。なんならみなさんが聞いたことない曲も複数やったりしますんでね。そういったあたりも楽しみにしていただきたいと思います。オープニングとかたぶんおしっこチビるほどかっこいいという風に思いますけどね。はい。
で、ですね。川崎で、要はですね、毎会場毎会場、我々の。今回はベスト盤ツアーなんて。昔の曲も多めにやるんですけど。毎会場、違う曲をやろうっていうコーナーがありまして。この番組のリスナーの方だったら絶対に喜んでいただけるコーナーになっているんですが。そこは。会場ごとに変えるため、川崎クラブチッタ、公開ゲネでのみやった曲。これをやりたいと思います。結構ね、僕らは気に入ってるんだけどライブではあんまりやらなくなっちゃった曲みたいなのを中心に選んでるんで。
この曲なんかね、ライブでやるの、ちゃんとやるの10年ぶりでしたっていう曲です。2004年に出た『グレイゾーン』というアルバムに入っている曲で。そん時のツアーでのみ、フルでやっていたという曲で。なので、この2004年当時の我々ライムスター。私、ライムスター宇多丸と、Mummy-Dというね。両方まだ独身で一人暮らしですよ。この時、そしてまだ35だけどね、なんですかね。その・・・僕は普遍的なことだと思うんです。部屋の中でずーっといる男がですよ、『世間よ!いつか見てろよ!』と。この気持ね。普遍的なこう何か、たぎりが歌われているんじゃないでしょうか。お聞きください。ライムスターで『WELCOME2MYROOM』。
(宇多丸)ね。部屋の万年床で寝っ転がっているだけの男がなぜここまで押しが強いのか?っていう。これ、でも私が考える、ものすごくパーソナルな視点。ものすごいミクロな視点がマクロに通じる、もしくは通じさせてやる!というね。これ、やっぱり僕、ヒップホップらしさというか。僕はヒップホップに感じる夢の部分っていうことで。それが最も最小単位まで、俺の万年床というところまで縮めてみたという曲が『WELCOME2MYROOM』という曲でございます。2004年の曲。プロデュースはDJ JIN。ライムスターの曲の中でもかなりアヴァンギャルドな方の曲だとは思うんですが、これをシングルカットするというね、無茶な時代でございました。そりゃあ『グレイゾーン』、売れるわけがない!えー、もしよろしければ、明日の名古屋以降のね、ライムスターのツアー。来ていただければと思う次第でございます。
<書き起こしおわり>