丸屋九兵衛さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。アメリカで大ヒット中の映画『クレイジー・リッチ!』について宇多丸さんと話していました。
(宇多丸)で、余談というか今日の特集とはちょっと違うんですけど。アジア人のアメリカ・エンターテイメント界における進出という意味ではちょっとエポックメイキングな出来事が最近、もうひとつありましたね。アメリカでいま公開中の『クレイジー・リッチ!』。原題が……。
(丸屋九兵衛)『Crazy Rich Asians』!
(宇多丸)これがなんと、メインキャストが全部アジア系という、この映画。コメディーですけども。これが2週連続で興行収入ランキング第一位という。予想を大幅に裏切る大ヒットということですよね。しかも2週目もあんまり興行収入は……。
(丸屋九兵衛)全然、ほぼ落ちていないです。
(宇多丸)ねえ。で、大方の事前の興行予想というか、そういうものを大幅に裏切ってということですね。
(丸屋九兵衛)ワシら、ナメたらアカンねんな……。
(宇垣美里)フフフ(笑)。謎の関西弁。
(丸屋九兵衛)アメリカ、いろんな民族の方がいますけど、すごく大まかな分け方をするとアフリカ系とかアジア系とかあるじゃないですか。そういった民族の中でもっとも映画に金を使うのは誰か? アジア系なんですよ。
(宇多丸)ああーっ! まあ当然、アメリカの中での人種分布も変わってきたっていうのもあって。昔は映画をいちばん見るのは黒人だから、黒人に向けて……みたいなのもありましたけど。
(丸屋九兵衛)ありましたけど、いまはアジア系なんです。そして、平均年収がいちばん高いのは誰か? これもアジア系なんですよ。
(宇多丸)ああ、お金を使える。だから、人としても多くて、お金も使うという。
(丸屋九兵衛)そう。で、昔は人口の1%ぐらいしかいませんでしたけど、いまは6.8%いますから。だからさっさとね、我々を主役にした映画をガンガン作っていれば、もっと当たっていたのに……っていう。『ゴースト・イン・ザ・シェル』も!
(宇多丸)ああ、なるほどね。草薙素子をスカーレット・ヨハンソンに置き換えたりしないで。で、その「置き換え」っていうのはハリウッドは常にホワイトウォッシュ的なことをやってきましたけど。
(丸屋九兵衛)まあ『ゴースト・イン・ザ・シェル』はちゃんとストーリーで辻褄を合わせていたけども。
(宇多丸)もちろん、わかります。だけど、なんていうのかな? アジア人のエンターテイメントの中における位置って、やっぱりたとえばアフリカンのみなさんがすごく戦ってきて見方をどんどん変えてきたというその戦いの歴史からするとだいぶ遅れて。
(丸屋九兵衛)そう。いまがんばっているところなんですよ。
(宇多丸)いまだに、やっぱりあるじゃないですか。「あっ!」っていう描き方は。
(丸屋九兵衛)まだまだありますよね。基本はまだ、それですよね。
(宇多丸)で、そういうところに対して、でもたとえばこの前の『オーシャンズ8』のオークワフィナとかが出てきて。今回の『クレイジー・リッチ!』にも出ているじゃないですか。だからすごい、動きが急速に変わってきている感じはありますよね。
(丸屋九兵衛)ありますよね。で、あと『クレイジー・リッチ!』で素晴らしいのは……。
(宇多丸)あ、もうご覧になったんですね?
(丸屋九兵衛)見ました。ジミー・O・ヤンね。という、ドラマ『シリコンバレー』にも出ている彼なんですけど。あの映画だと主人公のニック・ヤングの昔の同級生の役なんですけども。クレイジーなパーティー野郎なんですよ。
彼、もともと漫談をやっていて。スタンダップコメディをやっていて。彼の『Fuck The Police』漫談っていうのが素晴らしいんですよ。
(宇多丸)ほうほう。へー!
(丸屋九兵衛)それはYouTubeですぐに出てきますから。
(宇多丸)なるほど。
(丸屋九兵衛)私としても一時期、シンガポールの団地に住み込みをしていたという歴史もあるので。
(宇多丸)じゃあ、シンガポールのことはよくご存知? 映画の舞台はシンガポールなんですよね。
(丸屋九兵衛)だけどあんなリッチな世界はもちろんのこと、見ておりませんが。団地に住み込みをしていて。団地で「The Dirty One」と言われていたので。髪の毛の長い男はいないんですよ。シンガポールには。
(宇多丸)へー! そうなんだ。
(丸屋九兵衛)それこそ「The Dirty One」とか、ひどいのは「Untidy One」って言っていたんですよ。「不潔な」っていう。ひどいよね、それ。「Dirty」はかっこいいけどさ。
(宇垣美里)ひどい(笑)。
(宇多丸)本当に不潔だったんじゃないですか?
(丸屋九兵衛)違うよ!(笑)。
(宇多丸)イメージ。でも、そんぐらいシンガポール、きれいなところだからっていうことですかね。でもこれ、人種構成がアジア人が多くなったからとはいえ、それだけじゃあ説明できない興行収入じゃない? だから、他の別にそういうところまで?
(丸屋九兵衛)だからそれは、まず主役のコンスタンス・ウーという女優が主演しているドラマ『Fresh Off the Boat』がかなり人気を得ていたっていうことなんですよ。
(宇多丸)『Fresh Off the Boat』?
(丸屋九兵衛)「ボートから降りたばかり」っていう。難民じゃないんですけど。台湾系アメリカ人で、レストランをやるんだけどなかなか上手くいかない。そこの息子が10歳くらいのアジア系の子供なんだけど……ヒップホップが大好きっていう。
(宇多丸)なるほど。『Fresh Off the Boat』。
ドラマ『Fresh Off the Boat』
(丸屋九兵衛)で、同級生の女の子が縦笛で『Nothin’ But a G Thang』を吹いちゃったりするっていう。
(宇多丸)ああ、なるほど。「ピロロロリロー♪」って。たしかに吹けるね!
Hip hop piccolo for the win! #FreshOffTheBoathttps://t.co/rIQ67csZaR
— Fresh off the Boat (@FreshOffABC) 2015年10月1日
(宇垣美里)アハハハハハッ!
(宇多丸)っていうかGファンクはだいぶ再現できるね(笑)。『Fresh Off the Boat』については改めて特集でもどうだ? みたいな話も出ているぐらいなんで。よろしくお願いします。
<書き起こしおわり>
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