宇多丸『第12回 国連UNHCR難民映画祭2017』を語る

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宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で北野武監督に『第12回 国連UNHCR難民映画祭2017』についてトーク。『アレッポ 最後の男たち』『神は眠るが、我は歌う』『シリアに生まれて』などについて話していました。


(宇多丸)ちょっと映画絡みの話題で毛色を変えてというか。前からちょっとお話をしたかったんだけど、ここのところRHYMESTERのニューアルバムが出たりとか、自分のところの告知が多くて後回しになっちゃっていて。若干、「お前、言うの遅えわ!」っていうタイミングになっちゃっているんですけど、実は今日から。これから東京・札幌・名古屋といろんなところを回っていくみたいなんですけど。ご存知の方、いらっしゃいますかね? 国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)というところが主催している映画祭で、ずばり『難民映画祭』というのがあるんですよ。『難民映画祭2017』というね。で、実は僕、「この映画祭の応援コメントを書いてください」って言われて。で、不勉強ながら僕、この映画祭のことを全然わかっていなくて。で、人がちょっとでも興味を持ってくれるなら……という意味で、そういう役目ならいくらでもやりますということで。いろんな作品をやるんですけど、3つほど先に見させてもらったりなんかして。

で、これが3つともめちゃめちゃ面白くて。これはぜひみなさんにおすすめをいまからでもしたいなと思って、おすすめさせてください。今年でもう12年目になる映画祭です。今年は東京、札幌、名古屋、大阪、福岡、広島。6つのエリアで開催。東京は今日から始まっているという。難民をテーマにした世界の映画が一同に介する。「難民をテーマにした世界の映画」というと、なんかテーマとして非常に立派というか、堅苦しい感じというか。「ちょっとそういう難しいのは、改まったのはな……」って構えちゃうかもしれませんけども。応援コメントでも私、書いていますけども、構える必要、ないです。

っていうのは、まあ難民。もしくは難民が生まれるような状況っていうこのいまの世界のある意味……僕はこれからわざと、ちょっと軽薄な言葉遣いをしますけども。まあ、ハードコアな現実っていうのを捉えた作品群が、刺激的でないわけがないんですよね。はっきり言って。もう見ればどれもガツンと来るし。これ、カッコ付きで聞いてくださいね。広義の意味で(興味深いという意味で)「面白い」わけです。絶対にこれ、普通のそのへんのどっかで見たような感じを繰り返し見るよりはずっと面白かったりするわけなんで、ぜひぜひおすすめしたい。僕はまだ3本しか見ていなくて。『アレッポ 最後の男たち』。

『アレッポ 最後の男たち』

シリアの街アレッポは今日もまた昼夜を問わず爆撃が続く。そこには人々が逃げ惑う中、誰よりも早く瓦礫の中から生存者を救うため、爆撃地に向かう男たち「ホワイト・ヘルメット」の姿が。戦闘機が再び攻撃を仕掛けて来るかもしれない中、人々の命を救おうとする男たち。だが彼らにも守るべき家族がいる。自らの命を懸け、家族を危険にさらしてま...

これはNHK BSのドキュメンタリーでちょっとだけ、5月かなんかに1回放映かなんかをしたみたいですけども。サンダンス映画祭ワールド・シネマ ドキュメンタリー・コンペティション部門審査員大賞グランプリ。『ホワイト・ヘルメット』という作品、これは町山智浩さんがどこかでお話されていましたよね。アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞をとった『ホワイト・ヘルメット』。

町山智浩と藤谷文子『ホワイト・ヘルメット』とシリア難民問題を語る
町山智浩さんと藤谷文子さんがBS朝日『町山智浩のアメリカの”いま”を知るTV』の中で、アカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞した『ホワイト・ヘルメット』についてトーク。シリア難民問...

まあ、要するにシリアで空爆されているアレッポという街があって。いわゆる反体制派の拠点だった。もうアサド政権側に取られてしまったみたいですけども。まあ、ガンガン、めちゃめちゃ空爆されまくっていた街ですね。アレッポ。そこで瓦礫の中から生存者を救うため、ドカーン!ってなるたびに、そこから逃げるんじゃなくて、ドカーン!ってなったところに駆けつけて、生存者を救っているという人たちのドキュメンタリーで。これはやっぱり「空爆」って言うけど……ニュースとかで「シリアが空爆されて……」っていうような無味乾燥な言葉で、我々は普通、その向こう側にいる生身の人間のこととかをとは言え、本当に想像して痛みを感じるとか、なかなかできないじゃないですか。

で、やっぱりその空爆って言うけど、その向こう側の、要するに爆弾を落とされる側の視点。本当にまさにその視点に立って。しかも、その中でホワイト・ヘルメットとして活動している男たちも、それまでは学生だったり普通の労働者だったりするわけだけど、家族もいて。やっぱり悩んでいるわけですよ。「こんな活動をして家族も危険に晒して。だからそろそろ俺、トルコに逃げようと思うんだよね」とか、そういう話もしていて。なんだけど、「でもな……トルコとかどこかに逃げたとしても俺、やっぱりアレッポから離れては暮らせないよ」とか。これ、わかりますよね。これ、「山手線の外に出たら、暮らせないよ」って俺が言うみたいなことで。やっぱり生まれ育ったところで、ここから離れたくないと。で、妻子の安全だけ確保して自分だけ残って活動しているお父さんがいたりとか。

あと、そのちょっとした合間に、「ちょっと煮詰まっちゃったからな。じゃあ、サッカーしようか?」ってサッカーをして。で、ケンカとかしてたりして(笑)。あと、瓦礫の中で、正視できないような場面もいっぱい出てくるんですよね。瓦礫の中で子供の……それこそ、遺体が出てきたり。で、子供の遺体を前に泣き叫んでいるお父さんとかが当然あったりもするんだけど、そういう状況と同時に、瓦礫で作業をしながらも、「俺、ちょっとこの後、結婚式あるから。途中抜けするわ」「そっか。死ぬ人がいれば、結婚する人もいるって、なかなか皮肉なもんだよな」「本当だよな」みたいな。要は、こういう中にあっても普通の人生のあったかい瞬間とか、豊かな瞬間とかもあるんだなって。当たり前なんだけどね。そういう当たり前のことにやっぱり気づくのって、字面上だとなかなか難しかったりするところで、やっぱり映画ですよね。ユニバーサルツールだなとつくづく思います。

ということで、『アレッポ 最後の男たち』も面白かったし。あと、『神は眠るが、我は歌う』っていう、これはイラン人のミュージシャンの人が死刑宣告をされて。例によって、歌ってる内容で。

『神は眠るが、我は歌う』

その首に多額の懸賞金が掛かるイラン人のミュージシャン、シャヒン・ナジャフィ。ラップやロックにのせて国内の女性に対する弾圧や人権侵害を批判する作品を発表するシャヒン。だがそれによって当局の怒りに触れた彼は死刑宣告を受け、2005年に若き難民としてドイツへと逃れる。日々、暗殺の恐怖と闘いながら音楽活動を続けるシャヒン。やが...

で、国外に逃げていて。でも、活動を続けていて。そういう、殺される恐怖と戦いながらもライブとかをやっているっていうね。これも面白かった。特にラストの瞬間の切れ味。「うわっ! ああっ!」っていうこの切れ味とかもすごかったし。あとは、『シリアに生まれて』っていうこれは本当に報道されているような、ヨーロッパ中を渡ったシリア難民たちの子供たちで。複数の子供たちを追いながら、どういう風になっていくか?っていう。

『シリアに生まれて』

2011年以来、シリア危機によって故郷を後にした数百万人もの人々、その多くは子どもである。ヨーロッパへと向かう長く苛酷な道のりや周辺国の難民キャンプ、あるいはようやくたどり着いた見知らぬ土地で子どもたちは何を想うのか。爆撃により負傷し、家族と生き別れ、子どもとしての時間を奪われ、それでも新たな希望を胸に逞しく生きる7つ...

まあ、この3本だけ見ても相当面白くて。他もいろいろね……この調子で全部見たいっす!って思うぐらいでして、ぜひおすすめです。今日から始まっています。で、しかもね、みなさん、この映画祭は無料です。全回無料です。恐ろしい。入場無料です。ただ、事前申し込みをするシステムで、東京はもう事前申し込みで定員オーバー。で、当日券も先着順なんだけど、ごくわずかということです。私が言うのが遅かったです。すいませんね。ただ、これから地方会場ではまだまだ申し込み可能だったりする。11月12日まで開催されていますんので、難民映画祭公式サイトを見てみてください。こういうの、いかがでしょうか?

国連UNHCR難民映画祭2017。9/30~11/12全国6箇所で開催、入場無料。世界中から集めたドラマやドキュメンタリー映画を通じて、世界で起きている難民の物語をお届けします。

アメコミ映画に飽きたら、こういうのもいいんじゃないでしょうか?

<書き起こしおわり>

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