町山智浩 アメリカのお笑い芸人が政治的なネタを扱う理由を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカのお笑い芸人・コメディアンたちが積極的に政治的なネタを扱う理由について話していました。

(町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。うちの近所のバークレーで今週末の27日に右翼大集会が行われる予定なんですよ。

(山里亮太)ほう!

(町山智浩)で、今年のはじめの方、春にあったのでは、すごい人たちが来て。バークレーはもともと大学生たちの街なんで、そういった反トランプの人たちが多いんですけども。その人たちを右翼の人たちがガッと来て、赤いトランプ帽をかぶって。「Make America Great Again」とか「Trump」とか書いてある服を着ている人たちが暴力で蹴散らしたんですよ。

バークレーでの右翼とプロテストの激突


(山里亮太)えっ!

(町山智浩)春の集会では。もう徹底的に。ビデオを見るとわかるんですが、女の人とかを殴り倒したりしてですね。完全にその反トランプ集団を叩き潰したんですが。今週のその27日に……あと6日後なんですが、「もう1回、やるぞ!」と言っているんですね。で、今度はこの間徹底的にやられたから、反トランプの人たちも「今度は絶対に負けないぞ!」っていう感じなんですよ。

(山里亮太)うわっ。じゃあもう、武装をして。

(町山智浩)で、そのトランプ支持者の中にベースド・スティックマンっていうあだ名の人がいまして。その人、スティックマンっていうのは棒を持っているんですよ。いつも。で、棒で反トランプの人をボコボコに叩いている人なんで、右翼の間では彼はヒーローなんですね。


(山里亮太)ヒーロー!?

(町山智浩)で、彼は「今度は警察に捕まるのは覚悟の上だから、もうやってやる!」っていう風にいまネットで言っているんですけど。この間、その前……一昨昨日の土曜日にボストンでやっぱり右翼の集会をやろうとしていたんですね。で、それに対して2万人のボストン市民が彼らよりも大きい人数で。彼らも来ていたんですけど、人数的に勝って。彼ら、一応演説はちょっとしたんですが、声をかき消した形になったんですよ。要するにまあ、そういう差別的なことを言わせないということで。ただ、今回のバークレーのやつは最終決戦になるんじゃないかと。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)と、言われているんですが、警察も市もなんとかそれを中止させようとしているんですよ。だから、どうなるだろう?って思うんですけどね。

(山里亮太)へー! これはまた大きなニュースとして。

(海保知里)また日本にも報道が流れてくると思いますけど。

(町山智浩)まあ、そうなんですけど。僕が思うのは、とにかくこれはまず全体的に問題なのは、やっぱり警察が人数がちっちゃいんですよ。バークレーとかもそうなんですけど。小さい街なんで、人数が多くなくて。これはもう、もっと大きな力で、警察ないしそういう警備の方が防ぐべきなんですよね。(バージニア州)シャーロッツビルの方では死者が出てしまいましたけど。

町山智浩 バージニア州白人至上主義者集会の衝突事件を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカ・バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者の集会とそれに反対するカウンターの人々の衝突事件について話していました。 ...

(山里亮太)はい。

(町山智浩)本当にね、警察が力が小さくでちょっと問題だなと思っているんですけども。

(山里亮太)それは、大きな警察とか軍とかが来ますよっていう話になったりとかはしないんですか?

(町山智浩)一応大動員をかけるんですけど、共和党大会をやった際に僕が行った時は、他の州からも(応援が)来ていて。すごい、アメリカ各州から集まって、絶対に何も起こさない!っていう感じになっていたんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、とにかく僕は警察マニアでもあるんで、アメリカ中の各州のSWAT部隊の服装とか装備が見れたんですごく楽しかったんですけど。

(山里・海保)(笑)

(町山智浩)そのぐらいやってもいいなって思っているんですけどね。何も起こらないんだから、別にそれでいいことですからね。

(山里亮太)そうですね。それで止めることができるなら。だって「最終決戦」って。

(町山智浩)それはそれでいいことなんですけど。まあでもね、問題はそうするとお金(警備費用)がものすごくかかるんですよ。そのお金は誰が出すんだ?ってことになって。実は明日にアリゾナにドナルド・トランプ大統領が支持者の集会に行くんですよね。アリゾナのフェニックスの市は「来ないでくれ」って言っているんですよ。それは政治的な意味じゃなくて、お金がかかるからなんですよ。

(山里亮太)ああ、なるほど、なるほど。

警備費用問題

(町山智浩)警備にものすごくお金がかかって。それが要するに、トランプ大統領の支持者集会だから、国家の運動ではないわけですよね。国政と関係ない、彼自身の選挙活動なんですよ。それにどうしてアリゾナのフェニックス市がお金を支出しなければならないのか?っていう問題になっているんですよ。

(山里亮太)へー! トランプが来たらいろんな、反トランプも集まるから絶対に警備も、ねえ。

(町山智浩)そう。だから「そういう地方自治体にお金を出させるということをなんとかしろ!」っていうことになっているんですよ。で、もうひとつはドナルド・トランプは自分の家族を政権に巻き込んでいますよね?

(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)そのため、トランプ一家全員をシークレットサービスが警護しなければならない状態なんですよ。それに、やたらとドナルド・トランプさんは自分の持っているフロリダの別荘に行くんですよね。ニュージャージーとかに遊びに。ゴルフに毎週行っていますからね。

(山里亮太)あ、行ってるんですか? 「あんまり休まない」って言っていたのに。

(町山智浩)すごいですよ。この間、17日間休みを取りましたからね。ドナルド・トランプは。北朝鮮がミサイルを持ってアメリカを攻撃するかもしれないっていう時に17日間ゴルフで休みを取りましたけどね。

(山里亮太)でも、昔言っていましたよね? 「オバマは休んだみたいだけど、俺は休まないぞ!」みたいなことを言っていましたけどね。

(町山智浩)その通り! 「オバマ、ゴルフやってるじゃねえか!」って。(トランプは)毎週、ゴルフに行ってますよ。いままでの歴代大統領の中で最もゴルフに行っているのがドナルド・トランプなんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)ただ、ここでいちばん問題なのは、シークレットサービスがそれを全部警備をしなければならないんですよ。

(山里亮太)そうか。「オフだから勝手に」じゃないんですもんね。

(海保知里)それでまたお金がかかっているじゃないですか!

(町山智浩)そうなんです。だからシークレットサービスはもう今年1年分の予算を全部使い果たしちゃったんですよ。

(山里亮太)ええっ!

(町山智浩)これ、税金ですよ。

(海保知里)それはないわ……。

(町山智浩)本当にとんでもない状況になっているんですけど。さすがにね、これはどうしようもないから。ドナルド・トランプさんを支持して投票した人たちも、いくらなんでもこれは後悔しているんじゃないかと。でも、支持率を調べると支持率は全体にものすごく下がっているんですけども。30%台に落ちているんですけども、投票した人たちの多くは「後悔していない」って言っているんですね。で、これに関してABCテレビで夜のニュースが終わった11時半から「レイトショー」っていうトークショーをやっているジミー・キンメルというコメディアンの人がいまして。その人がこの間、こう言ったんですよ。「さすがにこんだけ人に迷惑をかけた上に、公約を全然実行していない大統領だから、投票した人たちも本当はがっかりしているんだろうけど、あれだけ戦って投票した以上、後悔しているとは言えないんですよね?」って言ったんですよ。

(山里亮太)ほうほうほう。

(町山智浩)で、トランプさんもこうなった以上、負けず嫌いだから大統領を辞任するとか、それもできないし。実はすごく上手くいかなくて、公約は全然実行できないだけじゃなくて、政治的に完全に詰まっちゃっていますからね。引っかかっちゃって。なにも新しい法案を通せないような状態ですからね。だから、「本当は困っているんでしょう? これを全て解決する方法があります!」ってそのジミー・キンメルさんが言ったんですよ。

(山里亮太)ほう!

ジミー・キンメルの解決策

(町山智浩)「ドナルド・トランプをアメリカの王様にすればいいんです」と。

(山里亮太)王様!?

(町山智浩)「王様は政治に参加できないようにして、大統領はもっと有能な人にやってもらって。彼のプライドは守って王様にしてもらって。政治からは手を引いてもらおう」って言ってましたね。

A fiery monologue after Trump's Tuesday presser.

(山里亮太)はー! すごいジョークを言いますね。

(町山智浩)そうそう。そういうことをね、いまアメリカのレイトショー、夜のトークショーの人たちはもうずーっと、この事件があってからもそうなんですけども、トランプギャグでものすごい面白いことになっているんですよ。

(山里亮太)言っても大丈夫なんですか? そんな……圧力が来て、「そんなの言っちゃダメだ。そんな放送はさせないぞ」みたいなの、ないんですか? アメリカって。

(町山智浩)あのね、まあスポンサーがついてやっているんですけど、視聴率がどんどん上がっていますから。夜はね、基本的にはお笑い番組になるんですよ。アメリカは、もうほとんど全チャンネルが。ケーブルとかも含めて。で、11時からニュースがありますよね。で、11時半からそのお笑いトークショーになるんですよ。アメリカって。海保さんって何か見てました? アメリカにいる時に。

(海保知里)見てました。ジミー・ファロンとかも見ていましたし、ジミー・キンメルも見ていましたし。そうですね。いろいろみんな、それぞれの良さがあって。「この人は優しすぎるな」とか。「俳優さんと仲がいい人だな」とか。いろいろとタイプがありますよね。うん。

(町山智浩)はいはい。いちばんあの時間が視聴率がいいんですよね。だから会社とか学校から帰ってきてテレビをつける人は11時のニュースを見て、11時半のトークショーを見て寝るみたいな感じなんですけど。海保さん、見てみてあれってわかりやすいと思いません? アメリカのトークショーって。

(海保知里)オチがわかりやすいということですか?

(町山智浩)いや、その日にあったニュースをダイジェストをしてくれるから。

(海保知里)ああーっ! でもあれって収録ですよね? 私、疑問だったんですけど。

(町山智浩)僕、収録に行ったことがあるんですよ。昔、『トゥナイト』っていうショーでジェイ・レノっていう人がやっていた時に収録に行ったんですけど、その時にどうやってこの番組を作っているか?っていう説明を受けたんですよね。それはね、早朝から出勤してお笑いチームでその日の夕方の5時ぐらいに収録する番組のジョークをずっと考えるらしいんですよ。で、その日にあったニュースを全部ジョークにして。で、その日の夕方にお客さんの前で収録して。で、夜11時から放送するっていうシステムなんですよね。

(海保知里)だからタイムリーなネタが多いのね。「いったいいつなんだろう?」って思っていたんですけど、そうなんだ。

(町山智浩)そう。「今日起きた事件なのに、もうネタにしてる!」とか思うんですけど、それはそういうシステムなんですよ。

(海保知里)へー!

その日に起きたことをすぐにお笑いのネタにする

(町山智浩)ただね、収録に行った時に思ったのは、収録にすごく時間をかけるんですけど、ギャグは2倍ぐらい言います。で、ウケなかったやつは切っちゃうんですよ。だからね、結構テンポもよくなっていて上手いんですけど。これ、アメリカのすごいところはとにかくいちばん視聴率を取っていていちばん人気のあるコメディアンは政治ネタをやるっていうことなんですよ。

(海保知里)うーん。日本じゃちょっとね、違うかもしれませんね。それってね。

(町山智浩)そうなんですよ。だから『トゥナイト』とか『レイトショー』でいまいちばん人気がある人はスティーヴン・コルベアっていう人なんですね。で、この人はニューヨークのブロードウェイのところにあるレイトショーの収録場所があるじゃないですか。ご存知ですよね?

(海保知里)はい。私は。知っています。

(町山智浩)『レイトショー』っていう看板が出ていますよね。あそこで月曜日から金曜日までしゃべくりをやっているのがこのスティーヴン・コルベアっていうメガネかけたサラリーマンみたいな人なんですけど。

スティーヴン・コルベア

Did you catch our guy on the #TonyAwards last night?! Bravo, @stephenathome! And congrats to all the talent that graced the stage last night!

Late Show with Stephen Colbertさん(@colbertlateshow)がシェアした投稿 –


(海保知里)かわいいですよね。歌も上手で。

(町山智浩)そうそう。歌が上手いんですよ。この人。で、この人は一見すごく真面目そうなんですけど、とにかくギャグがキツいんですよ。

(山里亮太)キツい?

(町山智浩)すごいキツいんですよ。いまこの人がやっているのは……っていうか、この人は最近司会者になったんですけど、ずっと毎日毎日月~金でやっているのは、その日にドナルド・トランプが言ったことに全部ツッコミを入れるっていうやつなんですよ。

(山里亮太)ほー!

(海保知里)なんかいいお父さん風なのに、結構言っていることが強いですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。まあ、ニュースのビデオを使ってトランプが言ったことに「それ、おかしいんじゃない?」ってツッコミを入れていくんですね。たとえば、ドナルド・トランプがこの間のシャーロッツビルの事件で「南軍の将軍の銅像を倒すのはおかしい」って言ったんですね。で、「『(将軍は)奴隷制度を守るために戦ったのだから倒した方がいい』と言うけども、それを言うなら(初代大統領の)ジョージ・ワシントンも奴隷を持っていたじゃないか。だからジョージ・ワシントンの銅像も倒すのか?」っていう風に言ったんですよ。それに対してスティーヴン・コルベアは「それ、銅像を立てた意味が違うから」って突っ込んだんですね。

(海保知里)うん。

(町山智浩)「ジョージ・ワシントンはアメリカの建国のためにアメリカ合衆国を守ってイギリスと戦ったけど、南軍の将軍は奴隷制度を守ってアメリカ合衆国と戦ったんだから違いますよ」って言ったんですよ。


(山里亮太)そっか!

(町山智浩)そういうツッコミをどんどん入れていく人なんですよ。たとえば、あとドナルド・トランプは「両方とも悪い」って言ったんですよ。「右翼の人たちも悪いし、それに対してカウンターを当てた人たちも悪いんだ」みたいなことを言ったんですね。「それは違うだろ!」ってスティーヴン・コルベアは突っ込むんですよ。「だってあっちはナチだよ? そしてこっち側はそのナチと戦う人たちだよ? アメリカはナチと戦ったんじゃないの?」って突っ込むんですよ。


(山里亮太)はー、そっか。ツッコミで笑いも来るけど、情報としても考え方、正しいのをくれるわけですね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからね、本当にね、まあ漫才だとボケがトランプでツッコミがスティーヴン・コルベアっていう感じなんですよ。あと、ドナルド・トランプはこう言ったんですよ。「ナチもカウンターも両方ともアメリカの星条旗を愛する国民だ」って言ったんですけど。そしたらスティーヴン・コルベアは「えっ、そうですか? ナチの人たちの掲げている旗を見てみましょう」って見ると、ナチスドイツの旗と南軍旗なんですよ。「星条旗じゃないですね!」って言ったりとか。そういうツッコミを入れていく人なんですよ。

(山里亮太)いいジョークっていうかツッコミの指摘なんだけど。本来、ツッコミって指摘だからね。

(町山智浩)そうそう。だから漫才っていまアメリカってほとんどなくなっちゃったんですけど、もともとあったんですよ。昔は。

(山里亮太)へー、イメージが無い。なんかスタンダップコメディのイメージが。

(町山智浩)そう。スタンダップコメディになっちゃったのは最近で、昔は結構ボケとツッコミのある漫才をやっていたんですけど、それが滅んじゃって。ただ、これは漫才に近いんですよね。スティーヴン・コルベアとトランプのボケ・ツッコミ漫才みたいになっているんですよ。

(山里亮太)デカいボケだからなー。

(町山智浩)で、これがすごいのがこれだけ過激にやっていて、いま視聴者が320万人以上いるんですよ。毎日。

(山里亮太)すごい。

(町山智浩)で、さっき海保さんが言っていた「かわいい人」ってジミー・ファロンでしょう?

(海保知里)いや、でも両方ともかわいいと思いますよ。

(町山智浩)両方ともかわいい。あ、そうか。可愛いですけどね。

(海保知里)私はCBSがそんなに好きじゃなかったっていうのもあるんで。でも、そうですね。うんうん。

(町山智浩)ジミー・ファロンの方がちょっとかわいいネタなんですよね。裏番組で、楽しい感じなんですよ。NBCテレビの方の『トゥナイト』という番組の司会者で、完全に裏なんですけど。裏でやっているジミー・ファロンっていう人がいて、この人はちょっと大人子供っぽい感じであんまり政治的なことを言わない人だったんですよ。で、楽しい、ミュージシャンを呼んで歌をうたったりとかそういうことをやっていたのがジミー・ファロンで。で、この人はドナルド・トランプの選挙最中からドナルド・トランプを批判しなかったんですね。で、他の政治家もほとんど批判しないでいて。で、「なんで批判しないんだ?」っていう風に聞かれて、「誰かを批判したり、誰かを茶化したりしたらその人の支持者を敵に回しちゃうじゃないか。だから誰かに嫌われたりすることはしたくないんだ」っていう風に言っていたんですよ。

(山里亮太)事なかれで。

(町山智浩)そうしたら、視聴率がどんどん下がっていったんですよ。

(山里亮太)面白みがないってなっちゃったんだ。

(町山智浩)そうなんですよ。だからこれが難しいなと思って。で、僕は今回、この話をしようとしたのは、だいぶ前、大昔になりますが、茂木健一郎さんが日本のお笑いに関して「空気を読んでいるお笑いばかりで権力に対して批評の目を向けたお笑いがない」っていうようなツイートかなにかをして。そしたら、炎上しちゃって。爆笑問題の太田くんから「うるせー、バーカ!」って言われてましたよね(笑)。

(山里亮太)そうですね、はい(笑)。

茂木健一郎による日本のお笑い批判

(町山智浩)「あんなもんは簡単なんだよ、政治ネタとかは」って言っていて。あと、そういう人もいっぱいいるという話もしていたんですけども。あと、松本人志さんは「茂木さんは面白くない」っていう、ちょっとこれは違う話で反論をされていたんですけど。ただ、これは茂木さんが言っていたアメリカのお笑いっていうのはいったい何か?っていう説明がほとんどされないまま、話が進行しちゃったんですよ。

(山里亮太)ああ、たしかにそうですね。

(町山智浩)いったいどういうものなのか?っていうことをまず見ていった方がいいのと、あと茂木さんが悪いなと僕も思ったのは、「日本のお笑いはだからダメだ」って言っちゃったから、お笑いを全部敵に回したんですよね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)そうじゃなくて、「なぜこういう政治的なお笑いをやる人がテレビに出ないのかな?」っていう話にすればよかったんですよ。

(山里亮太)ああ、そうですね。そうやって言われたら、たぶん芸人サイドもね、考えることができたと思うんですけど。

(町山智浩)そう。「こういう人がいなきゃマズいんじゃないの?」っていうことで言えばよかったんで。で、実際に太田くんが言ったみたいに政治的なネタをやる人たちもいて。まあ太田くんもやっていますけど。ザ・ニュースペーパーっているんですよね。時事ネタだけをやる人たち。だから、いることはいるんで。ただ、やっぱりね、その時に反論した中で博多大吉さんが反論っていうか、すごく正直に……いちばん正直に言ったんだと思うんですね。博多さんが。

(山里亮太)大吉さんが。はい。

(町山智浩)それは「安倍総理を批判したらリスクが大きい」って言ったんですね。彼は。それがいちばん正直だなと思ったんですけど。だって、そのザ・ニュースペーパーっていうグループは森友事件を茶化すコントをテレビのために収録したら、放送されなかったんですからね。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)だから「リスクが大きい」っていうのはやっぱりかなりストレートなものなのと、あとやっぱりスポンサーとかでコマーシャルに出れなくなっちゃうんですよね。そうするとね。

(山里亮太)まあ、そういうのもあるんでしょうね。

(町山智浩)そう。あとスポンサーが下りたりとかね。そういうリスクがあるんでっていうのは正直なところだと思うんですよ。あとやっぱり、全員が笑っているのに、ある政治的なことを言うと、その政治的なことによって見る人、聞く人が2つに分かれちゃうということを避けたいとか、理由はいろんなことがあると思うんですよ。ただ、アメリカも一時はそうだったんですよ。60年代はそうだったんですよ。60年代のはじめぐらいまで。

(海保知里)そうなんですか。

(町山智浩)そう。っていうのには理由があってですね。もともとアメリカは昔は政治的なネタが結構基本だったんですよ。ただ、チャップリンがやっちゃったんですよ。チャップリンってヒットラーとアメリカがまだ戦っていない頃に『独裁者』っていう映画を作って。「ヒットラーとユダヤ人がそっくりで……」っていうギャグをやっちゃったんですね。自分で。しかもヒットラーの真似で本当にバカな独裁者をやって。で、その頃にまだアメリカにはナチ党がいたぐらいなんですよ。その時代って。だから、すごい勇気のあることをやっちゃったんですよ。で、アメリカはその後にナチと戦ったんですけど、じゃあチャップリンが格が上がったか?っていうとそういうことはなくて。そういうことをやってしまったために、チャップリンは「社会主義者だ。アカだ」って言われるようになったんですよ。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)だからあれだけ偉大な人なのに結局国外に追放されちゃったんですよ。赤狩りの時代に。共産主義者狩りの時代に。そういうことがあったんで、政治からアメリカのコメディーってずっと離れていたんですよ。

(山里亮太)うんうんうん。

(町山智浩)でも、60年代の終わりからまた復活していったんですよ。で、その時に出てきたのがジョージ・カーリンっていう人で、ベトナム戦争を批判したりした人なんですけどね。あと、リチャード・プライヤーっていう黒人の人で。この人は黒人差別ネタなんですよ。そこからまた、政治とか人種差別とかを話すことがすごく、まあロックンロールみたいな感じで。ロックコンサートを聞くようにお客さんが集まるっていう文化が出て、変わっていったんですけど。いま、どのぐらいすごいレベルになっているか?っていうと、クリス・ロックっていう黒人のコメディアンの人がいるんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)その人、全国ツアーをやるんですよ。ただ、しゃべくりだけで。ステージには何もなくて。ただ、彼がしゃべるだけなんですよ。でも、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンを3日間、完売しちゃうんですよ。


(海保知里)へー!

(町山智浩)マジソン・スクエア・ガーデンって2万人入るんですよ。

(海保知里)あそこ、2万人なんですか。いやー!

(町山智浩)ニューヨークだけで6万人を動員するんですよ。この人、ステージでしゃべるだけで。クリス・ロックって。すごいんですよ。クリス・ロックのネタってすごくて。「『アメリカ万歳! アメリカ人でよかった!』とか言ってるんじゃねえよ! なんにも努力してねえじゃねえか。お前はアメリカ人のオ○○コから出てきただけだ!」って言うんですよ(笑)。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)そういうギャグをやってニューヨークだけで6万人動員なんですよ。

(山里亮太)すごいなー!

(町山智浩)だからビジネスになればみんな日本でも言うようになると思うんですよ。僕。商売になれば、言うでしょう。という感じなんですけど。だからまあ、いろいろと話すことはいっぱいあって。最近はだから、アラブ系の人とかイスラム教の人のコメディアンとかも出てきたりしていて。すごく状況は変わっているんですけどね。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)あと、トランプ自身は昔は茶化されても平気だったんですよ。

(山里亮太)あ、へー。なんかいまね、茶化す人をすごく怒るイメージがありますけど。

(町山智浩)昔、「大統領になりたい」って言っていた2011年にコメディーショーに出て、「トランプのことを何を言ってもいい」っていうコメディーショーに出た時に、コメディアンの1人が「早くトランプさんが大統領になるといいな。暗殺されるのがいまから待ちきれないよ!」って言ったんですよ。それでみんな笑っていたんですけど、トランプはいま、もうコメディアンの前には出なくなっちゃったんですよね。


(山里亮太)たしかに。

(町山智浩)だからそれってね、『リア王』だと思うんですよ。リア王とか昔の王様っていうのはかならず道化師を横において。道化師は王様に対して「おっさん、あのさー」って言いながら批判するっていう……道化師を自分の助言者として連れていたんですよね。それがコメディアンの歴史の始まりなんですよ。

(山里亮太)へー! 王様にいろいろとただすために横でふざけながら突っ込んでくれる人が。

コメディアンの源流は道化師

(町山智浩)そう。突っ込んで。政治にツッコミを入れる。権力者にツッコミを入れるっていうのがコメディアンの始まりだから。だから、そういう仕事がアメリカでもあるんですよ。それは、そういう機能を社会の中で果たしているんですよ。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)っていうことをちょっと説明しないと、茂木さんが言った意味がわからないだろうと思って。誰もそのことを話していないから。

(山里亮太)そうですね。「日本のお笑い芸人がダメだと言われた」っていうので。

(町山智浩)そう。そういうことではないんですよ。そういう機能を日本も昔は持っていて。昔はそういうネタもいっぱいあったんですよ。横山ノックさんとかそれをやっていたんですよね。上岡龍太郎さんは。

(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)でも、それがいまなくなっちゃっているよっていうことなんですよね。はい。

(海保知里)はい。また今日もとても勉強になりました。シャーロッツビルの事件をきっかけにアメリカのお笑いはなぜ政治的なのか? というテーマでお話いただきました。来週の集会、町山さんは行かれるんですか?

(町山智浩)行きますよ!

(海保知里)そうですか。お気をつけて。

(山里亮太)お話を聞かせてください。

(海保知里)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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