星野源『逃げるは恥だが役に立つ』を振り返る

星野源『逃げるは恥だが役に立つ』を振り返る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で最終回を終えたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を振り返り。リスナーからの感想メールを元に、撮影の裏話などをしていました。

(星野源)1週間、いろんなことがありましたがやっぱり今日は『逃げるは恥だが役に立つ』が最終回を迎えましたということで。みんなから感想がたくさん届いてます。それをね、読んでいこうと思います。山口県の16才女性の方。「私の好きな『逃げ恥』のシーンは、みくりさんと平匡さんが2人でバスに乗っていて平匡さんが『プロの独身なんで』と言いながら拳を上げるとみくりさんも同じように拳を上げるシーンです。まだ距離が縮まっていないけど、ところどころ息があっている2人がいい感じだなと思いました」。

そうなんですよね。これ、いいですよね。こんな風に、今日はすいませんが説明しないで行きましょうね。「こういう経緯でこうなりました」っていうのはあんまり説明しないで。みなさん見ているという前提で進めさせていただきます。このシーンは第一話ですね。お父さん、お母さんに挨拶、結婚の報告をしに行くところですが。このシーンは特には台本に書いてなかったんです。拳を上げるところは。これは僕がやっている『ダ・ヴィンチ』の連載でも書きましたが。「プロの独身なんで」って平匡さんが言う時に自分に言い聞かせるように言うだろうなって思って。それで握り拳をリハーサルの時に握っちゃったんですね。

で、ふと横を見たらもうみくりさんが同じように拳を握っていて。「あっ、同じことをしてくれている」と思って。「やります」って言ったわけじゃもちろんなくて。ただやったら、すぐそれに合わせてお芝居を返してくれて。で、「カット!」ってなって監督の金子さんに「いいですね、それ」ってなって、「じゃあ、それをやりましょう」ってなって生まれたシーンでございます。

握り拳の独身のプロ

なので、あのシーンが僕のファーストカットだったんです。『逃げるは恥だが役に立つ』の平匡のいちばん最初のシーンで。なので、「すごくこの後、撮影が楽しくなりそうだな」って。普通はやっぱり何かをやってもすぐ反応してくれる方ってすごく技術がある方だったり、すごく素敵なセンスを持っている方だったりするので。そんなに多いわけじゃないので、すごくこれから楽しくなりそうだなと思った記憶があります。

じゃあ、次です。「私の好きなシーンは四話。残業中の平匡さんが夜、オフィスで1人で『いいな、愛される人は、いいなあ……』と涙声で回想するシーンです。恋愛という特別な幸せを得るよりも傷つかないことを優先してきた平匡さんがふと、孤独に気づくシーン。私も特定の誰かから好かれることよりも、誰からも嫌われないことを優先してきた結果、いま彼氏いない歴イコール年齢ができあがっているんじゃないかと思っている節があって、見ていて共感できて泣けました」。ありがとうございます。そうですか。でもまだ19才じゃん? 大丈夫ですよ。うん。これからです。

これ、僕もすごい好きなシーンで。モノローグでね、平匡の思いが出るところですけども。あそこ、実は撮影の時は顔もしっかり撮っているんです。前からも撮っていて、アップも撮っているんですけども。なんとなく、すっごいなんとなくで特に理由はないんですけども、「顔を映さないでほしいな」ってなんとなく思って。なんか、そういう風にならないかな? と思って。その時は土井監督だったんですけど、土井監督に「あの、顔なんですけど……映さないとかってありますかね?」って言ったら、「ああ、そうそう。そうしようかなって思ったところなんだよね」って言われて。「背中でモノローグが流れているのがいいと思う」っていう。「ああ、そうですよね!」っていう話になったのをすごい覚えています。

愛される人は、いいなあ……

なんかすごくそういう意味でなんていうか……テレビドラマ的ではないというか。ちょっと映画的なシーンだなという感じがします。あんまり説明的でないというか、画面を映さないで、説明の部分がちょっと少ないというか。感情で伝わってくるようなシーンだったので、すごい好きですね。ありがとうございます!

(次のメールを読む)「『逃げ恥』ロスになり、22日から寝込み、実家に帰ったりなんやかんやで今日、お便りしました。ベストムズキュンシーン、1つに絞るならば私は平匡さんとみくりちゃんが2人で食事をするシーンが大好きでした。みくりちゃんの上品できれいに盛り付けられたご飯は参考にもなりますし、それを2人が品よく食べる。お互いを思い、遠慮しながらも言いたいことは言えて、そしてまた考えて答える。なかなか穏やかに話し合えるのは私はできなくて、見習わなければいけないなと思って見ていました」と。ありがとうございます。

本当にほとんどのシーンっていうか、前半は特に夫婦2人のシーンがほとんど食べながらで。机を挟んで面と向かって話すというのがすごく多いので。監督さんが本当に悩んでいましたね。「どうやって撮ったら飽きずに見せられるか?」っていうのをみなさん、ずーっと工夫しながら。カメラのアングルとかスイッチングのタイミングとかも含めて。それぞれ3人の監督のみなさんが本当に知恵を絞ってやっていて。なんか、ただ話すというシーンが僕もすごく好きでしたね。

個人的に好きだったのは公園で瓦そばの話を平匡がするところがあって。両親とちっちゃい時に食べた瓦そばのトラウマの話をですね、自分の話を自分からするところというのがあるんですけど。

公園で瓦そばの話をする平匡とみくり

そこでなにか平匡の心がちょっと解けたというか、みくりさんが信用したというか。元から信用していると思うんですけど、自分の個人的な話をするようになるというシーンが結構好きで。あそこはなんて言えばいいんだろう? なんかセリフを言っているという感覚じゃなくなりました。なんか上手く言えないんですけど。スラスラスラスラッていう風に胃のあたりから言葉が出ている感覚でお芝居ができたという。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/41399

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