町山智浩 アントン・イェルチンと映画『グリーン・ルーム』を語る

町山智浩 アントン・イェルチンと映画『グリーン・ルーム』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなった俳優のアントン・イェルチンさんを追悼。彼の出演映画『グリーン・ルーム』を紹介していました。

(町山智浩)あ、そうだ。今日紹介する映画は、アメリカではごく低予算映画で。ほとんど自主制作に近いレベルの映画なんですけども。それでも、制作費5億円です。はい。アメリカは、そういうレベルです。はい。で、今日紹介するのは『グリーン・ルーム』っていう映画なんですけども。「グリーン・ルーム」っていうのはライブハウスとかについている、バンドの人たちが入る控室なんですね。で、この映画は主役が昨日……一昨日か。亡くなったアントン・イェルチンくんの作品なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)アントン・イェルチンくんは27才で。この人、『スター・トレック』で航海士のチェコフっていうキャラクターで非常に人気があったかわいい子なんですよ。で、堀北真希ちゃんとも昔、映画に出てるんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)『誰かが私にキスをした』っていう映画で共演してますよ。堀北真希ちゃん、イェルチンくんの死について、なんか追悼するのかなって思いますけどね。

(赤江珠緒)まだまだお若いですもんね。

(町山智浩)そう。まだ若いんですよ。27才で。車にサイドブレーキをかけてなかったんで。ちょっと坂になっていたんで、それが下がってきて、自分の車に潰されちゃったんです。彼ね。怖いですけどね。どうもね、ニュートラルに入っていたらしくて、本当は自分はパーキングにギアを入れていたつもりだったんだけど、ニュートラルに入っていたらしくて。

(赤江珠緒)そうなんだ。

(町山智浩)車のギアのわかりにくさが問題になっていますね。現在ね。で、その『グリーン・ルーム』っていう映画は彼が売れないパンクバンドのベーシストの役なんですけど。あんまり売れなくてお金がなくて。しかも、ガソリン代もないんですよ。バンドを運ぶバンのね。で、どうしようもないんだけど、「あるところにいけば絶対にお金が儲かるよ」って言われて。行ってみたら、そこがいわゆるスキンヘッドとかネオ・ナチとか言われている、白人至上主義者の右翼の集まるところだったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、パンクだから反体制だし、ファシズム大嫌いだから、そういうやつらのところで演奏をしたくないんですけども、お金がないから、やろう!っていうことになるんですね。仕方ないと。で、実はネオ・ナチとかアメリカの右翼はパンクロックが好きなんですよ。オイパンクとか言われているようなものが。で、そこに呼ばれて演奏するんですけども、「やっぱりこいつらのために歌うのは嫌だから、あの歌を歌おう!」ってこの歌をかけるんです。はい。

(町山智浩)はい。これはですね、すごい曲で。アメリカだと放送禁止の歌なんですけど。『Nazi Punks Fuck Off』っていう歌で、デッド・ケネディーズっていううちの近所をベースにしているバンドの歌なんですけど。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)これは、「ネオ・ナチのやつらとかがパンクをやっているのは許せねえ!」っていう歌なんですよ。「ネオ・ナチのやつら、パンク聞くんじゃねえ!」っていう歌なんですけど。それをネオ・ナチのスキンヘッズの前で歌うんですよ。彼らは。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)そう。お金はほしいんだけども、こいつらがムカつくっていうので、それを歌ってどうなったか?っていうと、グリーン・ルームに籠城して。要するに主人公のイェルチンくんたちを皆殺しにしようとするスキンヘッズと殺し合いの展開になります。

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)殺し合いになるんだ。

スキンヘッズと籠城戦

(町山智浩)殺し合いになります。という映画が『グリーン・ルーム』という、怖い怖い映画でしたね。

(赤江珠緒)そうですね!

(町山智浩)これ、すごかったですよ。『要塞警察』という有名な映画があって。警察がギャングに囲まれて籠城戦になるっていう映画があるんですけど。あと、『わらの犬』っていう映画がありまして。田舎に行った大学教授が田舎の怖い人たち、猟銃を持っている人たちに囲まれて籠城戦になるっていう映画があるんですけど。それに似た映画でですね。しかも、このイェルチンくんがのび太くんみたいなヘナチョコなんでね。果たして、彼が生き残れるんだろうか?っていうすごい映画が『グリーン・ルーム』でしたね。

(赤江珠緒)またすごいところで、すごい歌を歌いましたね。

(町山智浩)もう命がけでね、バカなことをしましたけどね。でもまあ、彼はね、本当にもったいないことをしましたね。この映画でも、本当に怖い映画なんですけども、もう非常に素晴らしい演技だったんですけどね。

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)はい。もうすぐ『スター・トレックBeyond』っていう映画が公開されますけども。『スター・トレック』シリーズの。それが、彼の最後の作品になるそうです。で、この『グリーン・ルーム』は今年の終わりか来年の頭に公開が決まっております。はい。

(赤江珠緒)はい。わかりました。

(町山智浩)イェルチンくんはね、こんな本当にかわいい美少年で童貞っぽい感じなんですよ。本当に。名前はヤリチンなんですけど……

(山里亮太)いやいや、違います。イェルチンですよ。

(町山智浩)もったいないことをしました……

(赤江珠緒)ねえ。

(山里亮太)この流れで、なんで下ネタが言えるんだろう?

(赤江珠緒)本当ですよ(笑)。びっくりですよ。

(町山智浩)素晴らしい映画なんで。『グリーン・ルーム』と『スター・トレックBeyond』、みなさんお楽しみにということです。

(赤江珠緒)そうですね。まあでも、もともとパンクやロックって反体制って、そりゃそうですよね。

(町山智浩)いや、でもね、ネオ・ナチパンクっていうのもあるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)彼らとしてみれば、「ムシャクシャするぜ!」っていう気持ちを歌っているんで。反権力のつもりなんですよ。それは。難しい問題ですね。

(赤江珠緒)今日は、一昨日事故で亡くなったアントン・イェルチン主演の映画『グリーン・ルーム』を中心にいろんなお話をいただきました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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