宇多丸が語る 秋元康 作詞曲の特徴とおすすめ楽曲

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ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』で作詞家としての秋元康さんの特徴と魅力を紹介。お気に入りの秋元康作詞楽曲などを紹介していました。


(宇多丸)まずは、来週スペシャルウィークのお知らせを先にしておきましょう。6月13日、来週ですね。聴取率調査週間。先週もお知らせしました通り、来週のスペシャルゲスト。スタジオ初登場となる、作詞家としての秋元康さん。お招きする予定でございます。

作詞家としての秋元康

はい。2013年2月に放送した対談、ございます。あ、そう言えば今日ね、AKBも総選挙なんかやってますけども。あの、AKBの峯岸さんがね、丸坊主にした直後かなんかで。世間的に非常に注目が高い時期に、運良くインタビューを受けていただきまして。まあ、割とそのAKBの運営とか、アイドルグループをプロデュースすることみたいな、そういう立場のインタビューだったわけですけども。今回は、秋元さんの本業。秋元さんご自身が肩書として『作詞家』ということをね、打ち出されている。作詞家としてお招きしようじゃないかと。

まあ、そのきっかけは本日ね、ゲストとしても来ていただきますNONA REEVES西寺郷太くんの前回のインタビューを聞いての感想で。『まあ、非常に面白かったんだけども、音楽家の自分としては、あれだけ大量の作品を作っていて、実際に実績もあげている秋元さんにもっと具体的な作詞術みたいなのを聞きたかったまあ、今回はそういうわけにはいかなかったんだろうけど・・・』っていう感想を聞いて、まあたしかにそうだよなと。で、やっぱりその、よく考えるとみなさんも、あまりに多作だし、時期も長きに渡るんで。あんまり秋元さん作って意識してなくても、いいと思った曲、ぜったいにあるわけですよ。それは、誰にでも。1個や2個は、それはさ。

というあたりで、ちゃんと掘り下げてみたらぜったいすごいところはあるはずだと思って。で、その企画を振りつつの、僕なりに、と言ってもあまりに膨大すぎますし。そんなに僕もマニアックに秋元さんの仕事を全部追いかけているわけじゃないですから。まあ、自分の記憶をたどってですね、あの曲はすごい感銘を受けたなみたいなのとかを順繰りに追っていったりしたと。そうすると、やっぱり秋元さんの作詞術というか、作詞の傾向として、あるスタイルというか特徴みたいなのが見えてくるな、みたいな。そのあたりを来週、ご本人にぶつけてみようかと思うんですが。

まあたとえば、いま後ろで流れている渡辺満里奈さん。『マリーナの夏』。



まあ、名曲ですよね。これはだって、どうこう言う以前に素晴らしい曲じゃないですか。たとえばこの曲は、設定がすごい変わってるんですよね。前の年の夏に海辺の海の家ですかね?で、バイトしている兄ちゃんに恋した女の子が1年後に訪ねて行って。『来ちゃいました』みたいな。1年越しの恋なんですよね。で、2番では、その訪ねて行った先でですね、幸福の黄色いハンカチよろしく、実際にその男の子がいました、みたいな。そういう時間経過がその中に、大きな時間経過が描かれていて。この、時間経過を描く曲がすごく秋元さんの曲、多いんですね。

で、もっと言うならば、音楽っていうのは時間芸術じゃないですか。要するに、映画もそうですけどね。時間に沿って・・・さかのぼることはできないんです。ずーっと一定のあれで時間が過ぎていくと。その過ぎていって何かが変わっていくという、音楽という時間芸術としての曲という構造を非常に巧みに利用した。要するに、1番、2番、3番で言っていることが微妙に変化してくというところで何かを醸し出すというテクニックがすごく上手いとかですね。

もちろんその情景描写が非常に具体的で上手い、であるとか。あるいはこれはまあ、作詞家としての秋元さん、みなさんが抱いているいちばんパブリックイメージでしょうけど、たとえばその時代のトレンドであるとか、この人が歌うなら・・・という、要は企画としての曲というかね。企画性を受けての曲みたいな。大きく言って、時間芸術としての曲という特性を活かした作詞術というのが1つ。あと、情景描写の上手さが1つ。もう1個はその企画性というのに的確に応える力。この3つだと思うんですよね。

でもこれ、自分で考えいていって、これ、よく考えたらプロの作詞家としては、ある意味この3つに応えるって普通。オーソドックスな要求だよなとも思って。つまり、このオーソドックスな要求っていうのを、これだけ多作ですからね。良し悪しはあると思いますけども。成功作では非常に高いレベルでクリアしているってことだよなってことを。『マリーナの夏』をとってみてもそうですし。あるいは僕ね、おニャン子でいうと、『じゃあね』がすごい好きなんですね。卒業ソングの『じゃあね』。



『じゃあね』は、みなさん、春。3月に卒業というか別れを歌ってるんだけど。この曲のキモはやっぱりですね、ずっと歌っていて最後に、『4月になれば悲しみはキラキラした思い出』。この2行ですよね。この2行に持っていくためのそれまでの流れなわけですよ。だから、3月の歌なんだけど、『4月になれば・・・』とか。その、4月から過去を振り返っているというか。この1曲の中にものすごくこう、多層な時間感覚みたいなのが織り込まれていて。やっぱこれ、グッと来ちゃいますよね。最後に『4月になれば・・・』って、そこでグーッと来ちゃうわけですよ。みたいなことがですね、あったりとか。

といったあたりで、たとえば『じゃあね』も良かったとか、あと、個人的にはこれだけストレートにロマンチシズムを歌った曲もないだろう?っていう、『愛が生まれた日』とかもすごい好きだったりするんですけど。



えー、私じゃあ、ちょっと個人的にですね、来週秋元さんをお招きする前に、『お前の、宇多丸のベストをちょっと選んでおけ』ってことをね、スタッフから言われて。まあ、いろいろ悩んだ結果、この曲を選ばせていただきました。結構最近の曲がいいなと思って。やっぱり昔のクラシックス。『なんてったってアイドル』だとか言ってもつまらないから。ええとね、近年の秋元さんの作詞の中では、改めて考えてみたらこれ、ぶっちぎりにいいな!っていう曲がございまして。前田敦子さんの『君は僕だ』という曲でございます。

ソロシングルとしては2枚目になるのかな?ちょうどAKBを卒業する直前ぐらいかな?卒業タイミングで出したシングルで『君は僕だ』。で、ですね、この曲、なんだろうな?僕がさっき言った特徴で言うとですね、冒頭のところで情景描写ですよ。『木漏れ日の密度でもうすぐ夏だよって風が教える』。まあ、全体としてそんなに情景描写が多い曲じゃないんだけど、最初にこれぐらいの季節のこれぐらいの空気感ですよと。雨は降ってないよね。これはね。非常に心地いい、それこそいまぐらいの季節かもしれませんね。みたいなのを、まあ伝える。

なおかつ、その前田さんの卒業タイミングとも、企画性にもこれ、応えていると。で、ポイントはですね、この『君は僕だ』。要するに、パッと聞いてまずわかる表層的な部分として、秋元さんによる前田敦子論ですよね。前田敦子さんという人はまあ、一種変わり者的なね、変わった人であるという。そこがまあ、非常に魅力になっているんだけど。その変わっている人なところが魅力だよということを織り込んでいて。卒業タイミングに秋元さんから前田さんへの前田論であり、同時にもうラブレターみたいな、そんな内容になっているなっていうのがとりあえず読み解けるわけですよ。

なおかつですね、僕がやっぱりすごく感心するのは、さっき言った曲の構造の使い方。『君は僕だ』ってこのフレーズは恋愛初期に、その誰かを好きになる時の感情でね。要するに共感できたりとか。『俺たち、合うね』みたいなことって、普通にあるじゃない?それをこの『君は僕だ』っていう。これはすごい作詞家としてちょっと嫉妬するような。あっ、すげー切れ味!みたいな。たしかに『君は僕だ』って感じだよね。で、『君は僕だ』って言った後に、『みんなのように上手く生きられない』。

要するに、いろんな孤独をみんなそれぞれ背負っていたりするのを、君と一緒にいると解消できるんだみたいな。ああ、こういうのって、たしかに恋愛初期とか、普遍的な感じをちょっとナルシシズム込みな感じとかも含めて、ああ、上手いな、これ!みたいに思うんだけど。それが、曲がどんどん進むにしたがって、『君は君だ 好きなように生きろ』っていうのが出てきたり。で、ずーっと来て、これやっぱりね、秋元さんは歌詞の最後の部分のオチのつけが上手い。

最後に『僕は僕だ 勝手にさせてくれ』っていうね。『強がりのすぐそばに いつだって君がいる 気が合うなんて奇跡に近い2人さ』っていうこう、オチになっていく。この1番、2番、3番の構造の活かし方がね、音楽なんだから普通っちゃあ普通なんだけど。やっぱり上手いなって思いますよね。はい。さっき言った3つの要件を非常に高いレベルで。あ、なおかつですね、これね、『君は僕だ』っていう曲はBUBKAの連載でも書きましたけど、Aメロの部分が6小節展開なの。

普通、音楽っていうのは偶数で展開していくわけですよね。まあ、4小節展開だったりするのが普通なんですけど。6小節で展開する。しかもその6小節が割と区切りなく、くっついて。要するにすごくつんのめった。普通だったら、あと1小節、もう1回来そうな感じがするところに次の6小節の展開がまたすぐに来て。すごくつんのめるような、変わった、イレギュラーなビート感、グルーヴ感になっていてですね。これがやっぱり前田さんの変わり者感みたいなのとも合っていたりなんかするわけで。このトラックをね、選んでからおそらく歌詞も乗っけているんだろうけど。こういうチョイスのあたりにね、どういう意図がはたらいているのか?とか、いったあたりまでね、来週聞ければいいですけどね。はい。

といったあたりで、前田敦子さんの曲ですけど。秋元さんの作詞、ここのところぶっちぎりで好きな曲でございます。お聞きください。前田敦子で『君は僕だ』。



さっきね、『恋愛初期の感じっていうのを普遍的に捉えて「君は僕だ」。上手い!』って言ったけど。まあ、はっきり言って、大人がこう恋愛していくと、やっぱりさ、どんなに好きな相手でも、君は僕じゃないことがわかるっていうところに苦さがあったりするわけじゃない。で、やっぱりこの2番、3番の『君は君だ』とか、最後の『僕は僕だ』っていうのは、そういう俺みたいなうるさ型のね。『でも恋愛って「君は僕だ」じゃないよね』みたいなところに対する防衛線にもなっていると思うんですよ。

俺、自分で歌詞書く時に、やっぱり、『あ、ここはこういう、うるせーやつがこういうことを突っ込んでくるぞ!なので、ここで歌詞でこういうことも言ってるもんね。このバランスで言ってるもんね!』みたいな。俺はやるんで(笑)。まあ、本当にそういうことを考えて書いているか、わかりませんけど。ご本人が来るんでね。そういうことも聞けると思います。

あとはあの、さっき言った秋元さんのパブリックイメージにより近い、その時のトレンドを読み込んでいく。言っちゃえば、まあ軽薄な歌詞ですよ。軽薄きわまりない歌詞のですね、あたりとか。なんでそんな軽薄なことを書くんですか?みたいなのとかも聞けるでしょうし。あとはやっぱりね、この分量をどうやってこなしているの?と。本当にあなたは1人ですか?とかね(笑)。まあ、そういったあたり。みなさんの気になるあたりも直接ぶつけてみたいと思いますので。来週、秋元さんとガチに作詞について話をしたいと思います。

<書き起こしおわり>
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