宇多丸 RHYMESTER・SCOOBIE DO 対バンツアーを語る

宇多丸 RHYMESTER・SCOOBIE DO 対バンツアーを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中でRHYMESTERとSCOOBIE DOの対バンツアーについてトーク。RHYMESTER新曲『Back and Force』の話などをしていました。

(宇多丸)ちなみになんか私、話してですね、ちょっと宇多丸の野郎、声がいつもと違うんじゃねえか?って思った方、いると思います。声、実際に枯れてますね。というのも、ちょっと今週私、結構ハードなスケジューリングによる……まあ、ツアーですよね。ギュッと凝縮したツアーでございまして、なにかと言いますと、先週ゲストに来ていただきましたMOBYさん所属するSCOOBIE DOという素晴らしいファンキーなロックンロール・バンドと、私が所属するヒップホップグループ、RHYMESTERとの対バンライブツアー。これを今週、ずっとやって来たんですね。題して『沸騰! KINGとCHAMPな男達』。まあ、我々のサイドの『ベストバウト』という対バンイベントとのダブルネームイベントでやってきた。

1週間で3ステージ

で、1週間なんで3回しかやっていないんですけど、まあギューッと凝縮した3回で。14日(月)は大阪 BIG CAT。15日(火)は名古屋 Club Quattro。そして17日(木)は東京 Club Quattroで開催したと。ちなみに月、火と連続してやって、翌日水曜日の早朝……火曜日の夜にライブが終わって、その後にメシを食って、その後”打ち上げ”と称しまして酒を飲んで。新幹線が朝6時過ぎぐらいだったんだけども、5時半ぐらいまで酒場で飲んでいて。「ヤバい! マズい、マズい!」っつってベロベロのまま東京に帰ってきて、いったん休んでからの夜、MXテレビ(『バラいろダンディ』)あって、AbemaTVの生放送やってからのまた木曜、ライブですから。これですよね。

あの、ベロベロのまま新幹線で東京に帰ってくるのはね、これ、よくないです。やめた。危ない(笑)。記憶がおぼろげなまま名古屋から帰ってくるのは危ない(笑)。ということでね、事故を避ける意味でも、今後は避けたいと思いますが。とにかく、このSCOOBIE DOとRHYMESTER対バンツアーがですね、これこそ自分で言うのもなんですが、まあ最高だったんですよね。本当に最高でございました。ちょっとメールとかもいっぱい来ているみたいなんで、読んでみたいと思いますけどもね。

(メールを読む)「渋谷QuattroでのRHYMESTER VS SCOOBIE DOのベストバウトに行ってまいりました。近年のRHYMESTERは様々なアーティストと肌を合わせて素晴らしい愛の結晶を生み出してきましたが、結局いちばん体が合うのはスクービーじゃね? というのは私を含めた多くのファンが感じていたことだと思います。今回は久々にがっつりこの2組が絡み合うということもあり、見届けに駆けつけましたが、実はスクービーのファンも同じことを感じていたのかもしれません。対バン相手の乗り気ではないファンも、最終的にはモノにしてきたのがRHYMESTERのライブですから。今回のように1曲目の最初の音が鳴った瞬間に会場の全ての客に火がつくというのはいままで見たことがありません」というね。ありがとうございますね。

で、まあいろいろあって。「……アンコールも終わり、客電がついた瞬間、周りから聞こえてきたのは『もう足が痛いよ』『明日、会社に行きたくない』といった悲鳴にも似た泣き言ばかりであり、舞台上で宣言した通りに再びRHYMESTERとSCOOBIE DOのズブズブの関係が復活するならいまでさえ上がりすぎて苦しい『人間交差点』とかでは文字通り息が絶えかねません」。僕、客席に最後のセッションタイムの盛り上がりの時に「文字通り息が絶えかねないところまで盛り上がれ!」みたいなことを言ったんですけどね。「……この2組が同時に舞台に上がる以上、参加しないという選択肢がないだけに、喜びだけではなく先行きに不安を感じてしまいます」というね(笑)。体力的な不安を感じられているというメールもいただきました。ありがとうございます。

(メールを読む)「誘った友人は決死の覚悟で仕事を抜けて来たので、(SCOOBIE DOのボーカル)コヤマシュウさんの『平日の客は死ぬ気』という言葉に爆笑でした」。まさに”死ぬ気”で来ているというね。翌日、仕事があるの来ているというのがありますけどもね。あ、あとたわわちゃん、メールいただいております。この番組でもおなじみ、たわわちゃん。いつも丁寧に来てくれるんですよ、たわわちゃん。(メールを読む)「僕も参戦させていただいたのですが、RHYMESTERが1時間。SCOOBIE DOが1時間。2組のセッションが1時間という明らかに時間配分がおかしい最高に贅沢な1時間をすごさせていただきました」。という。

まさに、たわわちゃんがおっしゃる通りですね、RHYMESTER、SCOOBIE DO、それぞれ1時間弱ずつぐらい。そして、それぞれの持ち時間よりも2つのグループのセッションの方が長い。普通ね、こういう対バンイベントって最後にセッションをやるとしても1曲、2曲。それもまあ、大して仲良くないグループもね、どっちかの曲を歌うのか、なんだかんだでお茶を濁すという。まあ、それはそれで盛り上がるんですけども。我々は計9曲、1時間以上ぐらいに渡って延々と続けるというね、こんな感じのライブになりまして。しかももう、これ自分たちで言うのも何ですけども、とにかく最高! さっきから「最高」しか言っていませんけども。

終わった後にコヤマシュウくんと「いやー、よかった。今日、よかった。このツアー、よかった」っつって。で、「評判、どうなのかね?」って言って。まあいつもは評判、気になるんですけど。もう今回はね、逆に気にもならなかった。これでよくないって言われたら、もう俺たちにはどうしようもできない。これ以上いいことはできない!っていうぐらい最高のセッションタイムをお見せすることができたんじゃないかなと思っております。ニコニコ生放送で部分的に放送なんかもされていたので、ご覧になっていただいたみなさん、ありがとうございます。

あと、RHYMESTERのパートではもともと春ぐらいの我々のイベント『人間交差点』の時に初めてやった『STYLE WARS』。まだ配信もなにもされていないのにあちこちでやりすぎて、すでに僕たちの中では勝手にクラシック感ある感が出ている『STYLE WARS』という曲に続いて……要するに、頭のところは新曲攻めだったんですね。『STYLE WARS』でその次、この番組でもどこでもオンエアーもなにもしていない新曲中の新曲。タイトルが『Back and Force』という新曲。こちら、プロデュースはこの番組『タマフル』の一連の2曲にわたるアンセムでおなじみALI-KICKさんプロデュースの曲で『Back and Force』という曲。これを披露してこれがまたね、端的に言うと、受けました。すごく受けましたね。

RHYMESTER新曲『Back and Force』

わかりやすく言えば、すごくオールドスクール的な、要するにいまどきもう、世界中で誰もこんなことをやってねえよっていう2MCによる激しいかけあい。「ナントカ……」「カントカ!」「ナントカ……」「カントカ!」「ナントカ、ナントカ、ナントカ……」「カントカ!」みたいなね。「ナントカ……」「ホニャ!」「ナントカ……」「ホニャ!」「ナントカ……」「ホニャ、ホニャ、ホニャ!」みたいな、そういう。わかりますかね? 「A,B,A,B,AA,BB,B,A,B,A,B,A,B……」みたいな。ものすごく複雑かつスピード感のある2MCのかけあい。

いまのヒップホップ界、もうヒップホップグループ、ラップグループっていうのはほとんど世界的にないですから。それぞれ、ほとんどソロアーティストっていうのが主流ですから、あんまりそういうかけあいの技術みたいなのをやっているグループはほぼほぼいないんですが、その埋もれた技術をいまの、要は『フリースタイルダンジョン』以降のトップオブザヘッドの……あれはもう若者ならではの技術です。我々が絶対に追いつけないその世界、それも素晴らしい。一方で、なんて言うんですかね? ジジイならではの埋もれた技術というののさらに最新型というのを見せてやろうじゃねえかということで作った曲で。スタジオで作っている時はやっぱり我々もね、「大丈夫かな? いまどきこんなの、大丈夫かな?」って。これがでもやっぱりね、自分で言うのもなんですけど、ライブ映えするんですよね。

でも、これにはやっぱり理屈があって。ちょっとヒップホップの話になってしまいますけども。要は、いま流行りのヒップホップっていうのはもうビートなんかも明確じゃなかったりとかね。わかりやすい一拍四拍のバスドラなんか入っていないですよ。そういうのは入っていない。全然もう、フワーンとしたビートにドドドッ、ドッ、ドッ……みたいなね。で、つぶやくようにちょっとレイドバックした、それもすごく間があいたラップが乗るみたいな。そういうのがいまの主流なわけですけども。それはそれでもちろんかっこいいんですが、いわゆるオールドスクール。特にパイオニア中のパイオニアですね。最初にヒップホップを始めた人たちのかけあいであるとか、ターンテーブルを2台使ってっていう。ああいうのは要は、レコードとしてレコーディングを前提としていない芸なわけですよ。

要するに、目の前の客を差し当たって盛り上げるためにマイクとターンテーブルを使って最大限できることは何か?っていうのを追求した結果の芸なわけで。対面式の場面では猛烈に強いっていうのはこれ、当たり前っていうことなんですよね。そこだけに特化した技だから。なので、後にそういうオールドスクールの、そういう風に育まれた楽曲をいわゆるレコードの楽曲化するとその時のエナジーが失われがちみたいな。そういうオールドスクール初期には問題があったわけですが。で、その荒々しさ、最初のライブの勢いみたいなものをもう1回、ルネッサンス的に。もう1回、盛り上げようじゃないかっていうのがRUN-D.M.C.であったりとかDef Jamとかの80年代半ばの動きであるという。

それにならいまして、我々もやっぱリその、常に新しいことをやるっていうのはルネッサンスなわけですから。基本でもう1回、あれはなにをやっていたのかね?っていうことを考えると、また新しいことができたりするということで。いったんもう、基本中の基本中の基本の最新技術版というのをやってみた。これがALI-KICKプロデュースの『Back and Force』。いつリリースされるのか? それは、神のみぞ知る。我々も知らないというね。ただまあ、おかげさまでこのライブの評判もいいですから、制作もちょっとは加速するんじゃないですかね? 最近、ちょっとようやく前に進みはじめてきたんでね。楽しみにしていただきたいあたりだと思います。あと、先ほどのSCOOBIE DOとのセッション、ライブの途中にMOBY氏とね、クイズタイムですね。先週のクイズ特集が本当に面白かったですから。その場で決めてクイズを出すというね。

「テレッ!」っていうね。僕らが友人同士の結婚式の時にクイズコーナーみたいなのをやっていて。それ用にとっておいた音源がたまたまDJ JINがその時にライブ用に備えていた機材に入っており、いつでもクイズができる状態だったという。我々もね。で、私がMCで「MOBYさんはクイズが大好きで、昔は本当にクイズ作家もやっていて……」なんてことを言ったらですね、SCOOBIE DOファンはご存知なかったのか「へー」という戸惑いの声が上がっていたという。こんな証言もありました。ということで、ちょっとSCOOBIE DOとの対バンを終えた記念ということで、1曲ちょっと曲をかけたい。SCOOBIE DOとRHYMESTERのコラボ曲もいいんですけど、改めて本当にSCOOBIE DO、かっこいいな! いいグループだな! そしてやっぱり、どっかしらジャンルとか立ち位置とか全然違うのに、やっぱり本当にものを言わずとも考えているところが近いというか、RHYMESTERと似たところがあるグループだなという風に改めて思ったライブなわけですけども。

なわけでですね、この曲を聞いた時に「ああ、そうか。そうだよな。これなんか、俺らがやっててもおかしくないテーマだし……」みたいなことを改めて思った曲をお聞きください。SCOOBIE DOが今年の1月にリリースしたアルバム『アウェイ(AWAY)』よりアルバムタイトル曲をお聞きください。『アウェイ(AWAY)』。

SCOOBIE DO『アウェイ(AWAY)』

はい。SCOOBIE DOの『アウェイ(AWAY)』という曲をお聞きいただいております。セッションタイムの中では、SCOOBIE DOのバージョンによるRHYMESTERの曲のSCOOBIE DOバージョンということで『Kids In The Park』であるとか、『グラキャビ』なんて曲をやって。それぞれコヤマシュウくんが新たにラップを付け加えて書いてきてくれたりとか。そういうスペシャルバージョン感もあって。そのどっちも素晴らしかったんですけども。だからまあ、たとえばまた今度はSCOOBIE DOの曲のRHYMESTERバージョンみたいなのもやりたいなと。その時は、たとえばこの曲なんかもいいかな、なんてことを考えたりもしています。『アウェイ(AWAY)』、お聞きいただいております。

<書き起こしおわり>

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