町山智浩 テレビドラマ版『ファーゴ』を語る

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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アメリカで大ヒット中のテレビドラマシリーズ『ファーゴ』を紹介していました。


(山里亮太)これからもね、ぜひ全町山が泣くような作品をたくさん。

(赤江珠緒)はい。お願いしますね。

(町山智浩)はいはい。今回はね、泣くような話じゃないんですけどもね。今回はちょっとテレビの話をしたいんですね。『ファーゴ』っていうテレビドラマについてなんですけども。日本では、スターチャンネルかな?で、放送が始まっているそうですけども。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)ええとね、なぜテレビの話をするか?っていうと、もうはっきり言って、アメリカ、テレビがいちばん面白いんですよ。

(山里亮太)へー!

(赤江珠緒)あ、そうなんですか。映画じゃなくて?

(町山智浩)具体的にはテレビですらなくて、ドラマが面白いんですけども。これは前もお話しましたけど、とにかく中国市場が巨大になってしまったんで。映画に関して。中国向けのSFX超大作以外、ハリウッドは作る気がぜんぜんないんですよ。

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(赤江珠緒)うーん、なるほど。

(山里亮太)お金、出してくれるし。

(町山智浩)そうなんですよ。で、いい映画を作ろうとしたら、じゃあもう自主制作の非常にアート映画とかになるんですね。でも、その中間がいちばん見たいんですよ。

(赤江珠緒)あー。

(町山智浩)要するにすごい超大作じゃなくて、でも、真面目な地味な小品じゃなくて、ちょうど間ぐらいの・・・

(赤江珠緒)その絶妙なさじ加減でね。うん。

(町山智浩)そう。大人の観客は。で、具体的には非常にその、ダークな人間の闇の部分とかを描いたりした、暴力とかセックスとかいろんなお金とか、政治とか。そういったリアルな現実が描かれるものが見たいんですけども。それは中国の人たちは求めていませんから。

(山里亮太)ほう。

(町山智浩)求めていませんからね。それに、アメリカの若者も求めていないものなんですね。だからこれ、テレビ行っちゃうんですよ。

(山里亮太)なるほど。だって、『ブレイキング・バッド』とか、すっごい面白いですもんね。

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(町山智浩)ブレイキング・バッドがそうですね。でも現在、ところがテレビを持っている人がいま、あまりいないんですよ。アメリカ人に。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)テレビ持ってない人、すごく増えてるんですよ。

(山里亮太)えっ?なんでですか?

(町山智浩)いらないから。

(山里亮太)いらない?なにで見るんですか?

(町山智浩)だって、独身の男性とか女性もそうですけど、働いている人。だいたい11時前に家、帰ってこないですよね。夜。

(赤江珠緒)はー。ええ、ええ。

(町山智浩)ねえ。で、なんでテレビを持つ必要があるのか?ってことですよ。

(山里亮太)なるほど。見ないしと。

(赤江珠緒)はー!そこまで来てるんですか?

(町山智浩)ほとんどの番組はアメリカの場合はインターネットで同時配信されてますから。デカいモニターのパソコンが1台あれば、テレビはいらないんですよ。なぜテレビを持つ必要があるのか?まず、持つ必要がないから、持たないんですね。だから、ドラマの方もその人たちを当てにして作るようになってきましたので。っていうのは具体的には、有料配信でほとんどみんな見てるんで。直接お金が取れるんで、スポンサーいらないんです。

(山里亮太)そうか。たしかに僕も登録してるもんな。そういうやつ。

(町山智浩)そうでしょう?だからそっち方面にアメリカはシフトしてるんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)だから、ドラマがどんどん面白くなっていって。映画館ではできないような、さっき言ったようなダークなものとか深いものがどんどん作られている状況です。現在。

(山里亮太)しかもドラマってものすごい、予算もすごいかけてるんですよね。アメリカのドラマって。

(町山智浩)はい。いまはだからさっきも言いましたけども、SF超大作とすごく地味な自主制作インディペンデント映画の両極に分化しちゃったんですね。映画が。間のちょうど予算的には10億円前後の映画っていうのがほとんど作られなくなってるんです。大人向けの観客の。それが、ドラマの方に流入してってるんで、そういう映画を作りたい監督であるとか俳優も全部そっちに行ってるんですよ。

(山里亮太)あー、有名な監督とかもドラマを撮ってくれるんだ。へー。

(町山智浩)そうなんですよ。だから予算もそっちに行くし、そのキャスト、スタッフ、全員そっちに行ってるから、ものすごいドラマのレベルが向上してるんですね。

(山里亮太)だから面白いんだ。アメリカのドラマ、全部面白いですもん。

(町山智浩)そうなんですよ。で、今回紹介するドラマはですね、ファーゴというドラマなんですけども。これはですね、1996年にアカデミー作品賞候補になって、脚本賞を受賞している同名の映画ファーゴが原作になっています。


(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、これはね、アメリカのその北の方の端っこにある、ノースダコタ州とミネソタ州っていうところが舞台で。ファーゴっていうのもそこに実在する町の名前なんですね。人口10万人ちょっとぐらいの。で、ここはどういうところか?っていうと、とにかくだだっ広くて何にもなくてですね。冬はものすごく雪が降って。空も地面もなにも境がなくなって、ただの真っ白な世界になっちゃうっていうようなところなんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。ええ。

(町山智浩)で、いままで、ほとんどドラマに出てくることはなかったんですね。なにも起らないので。ど田舎で(笑)。犯罪とかそういうのがないのでね。ところが、そのファーゴっていうのは、そこで、ミネソタで生まれたコーエン兄弟っていう監督たちが作ったものなんですけども。その、のんびりした田舎で連続殺人が起こっていくっていう話なんですよ。

(山里亮太)ほう。

(町山智浩)で、具体的にはその、婿入りした気の弱い保険のセールスマンの男がですね、あまりにも奥さんに『あんたはダメだ』って言われて。しかも奥さんのその、お父さんが自分の上司なんですね。からも、『ダメ婿だ、ダメ婿だ』って言われて。でもって、借金も重なってですね、それを返そうとして、ヤクザを雇って、自分の奥さんを誘拐させて、その身代金を奥さんのお父さん、自分の義理の父親から取って、ちょっと借金を返そうとするっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)は、はー。はい。

(町山智浩)気の弱い保険のセールスマンが。ところがそこから、その雇ったチンピラがなんて言うか、思いついたように人を殺しまくる、とんでもない殺人マシーンだったんで、とんでもない事件になっていくっていう話なんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、それをその田舎町の保安官の女性が捜査していくっていうのがファーゴっていう映画だったんですけど。はい。これがその、いちばんアメリカで問題になったのは、作品自体もものすごく面白いんですけど、コメディーとね、すごくダークなバイオレントドラマの綱渡りをしていく話なんですね。これね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)画面で起こることは要するに白い雪の上に血がバンバンバンバン飛び散る、ものすごい連続殺人の話なんですけども、出てくる人がみんな間抜けでですね。みんなドジで。クドカンのドラマに出てくるような人ばっかりなんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)味のあるミスばっかりする。

(町山智浩)だからブシャーッ!って脳みそが飛び散ったりするんですけど、見ている方は思わず笑ってしまうというですね。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)という内容なんですね。ファーゴは。見てもらえばわかるんですけど、かならず爆笑しますから。何箇所も。はい。で、これがまあ、すごくテイストとしてすごかったっていうのと、もうひとつは映画の頭に『これは実話である』って出るんですよ。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(山里亮太)実話なんだ。

(町山智浩)『実際に起こった』って出るんで、みんなびっくりして。『こんな田舎でこんなことが起こったのか!?』ってみんなびっくりしたんですね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、さらにその後、そんなことは起こらなかったってことをニューヨークタイムズっていう新聞が調査して発見してですね。

(赤江珠緒)えっ?実話じゃないの?

(町山智浩)『この映画の「実話である」っていうのは全部嘘っぱちだ』って暴露したんですよ。で、大問題になったりしている映画なんですよ。ファーゴってのは。

(赤江珠緒)(笑)。なんで最初、わざわざ『これは実話である』って入れたんですかね?

(町山智浩)『実話である』っていうと、すげー!って思っちゃうじゃないですか。

(山里亮太)たしかに、たしかに。違うもんな。本当に起きたんだって思うと。

(町山智浩)ねえ。ところが、これを信じて死んだ人まで出たんですよ。

(山里亮太)えっ?どういうことなんですか?

(町山智浩)これ、日本人の女の人がですね、そのファーゴっていう町の周辺で凍死体として発見されるんですね。その後、しばらくして。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、実はこの映画の中でさっき言ったチンピラが奪った身代金が雪の中で行方不明になるんですよ。そのお金を探している内に凍死したらしいっていうことになるんです。その日本人女性が。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)そう。っていうのは、その実話であるっていうのは映画の頭に出てくるんですけども、これが実話でないっていうのはアメリカでしか報道されてないんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)日本ではずーっと実話であるとして宣伝されたままだったんですね。

(赤江珠緒)だって映画の冒頭でそんなの出てきたら、実話かと思いますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからこれ、教訓なんですけど。一回報道されたものっていうのは、後から訂正報道が出ても、訂正報道はほとんど伝わらないっていう。まあ、教訓ですけども。

(赤江珠緒)訂正報道とか、ちっちゃいですからね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、この女性を元にした映画も最近作られて。去年公開されたんですよ。これね、菊地凛子ちゃんが主演ですね。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)『トレジャーハンター・クミコ』っていうタイトルで、ファーゴを実話だと信じてミネソタに入っていった女の子の話を映画にしたものなんですけども。



(赤江珠緒)へー!こっちも映画になっちゃった。

(町山智浩)そう。そっちも映画になったんですよ。そういう、ファーゴっていうのはものすごくいろんなことがある映画なんですね。

(赤江珠緒)うん。それだけ影響力がね、強かった。

(町山智浩)で、それを今度、テレビドラマシリーズにしたっていうんで、そんなものがテレビドラマシリーズになるんだろうか?と思って見てみたら、これが大傑作でですね。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)ええとね、エミー賞っていうテレビに与えられる賞があるんですね。アメリカの。それでまあ、作品賞に輝いて。さらにゴールデングローブ賞っていう外国人批評家たちが選ぶ賞でも、作品賞をとってるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、これがね、同じなんですけど。そのファーゴっていう話と。とにかくその、田舎町があるんですね。ノースダコタ、ミネソタの方に。北の方の。そこでまあ、ショボく暮らしている保険のサラリーマンが主人公です。レスターっていうんですけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、まあこのね、英語が変なんですよ。

(山里亮太)変?

(町山智浩)ミネソタとかノースダコタって言われている地域っていうのは、そこに住んでいる人たちがほとんどですね、スカンジナビア出身者の移民なんですね。スカンジナビアっていうのはスウェーデンとかノルウェーとかデンマークとか、あのへんです。北欧です。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)だから寒いところから来たから、寒いところに引っ越したわけですけども。で、彼らはいまだにそっちの言葉を使ってるんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)だから、『YES』って言う時に、そっちの北欧の言葉の『ヤー』っていう言葉で。

(赤江珠緒)あ、ぜんぜん違うんですね。

(町山智浩)ぜんぜん違うんですよ。発音も『ヤー』って言うんですよ。

(赤江珠緒)方言ですね。

(町山智浩)で、全員がそれでしゃべっている。方言なんですね。日本で言うと、だからなんだろうな?だから、あまちゃんですよね。

(赤江珠緒)あー、うんうん。『じぇじぇ』みたいな。

(町山智浩)みんなが『じぇじぇじぇ』とか言うっていう感じなんですよ。で、見ているとその方言が出るたびに笑うじゃないですか。そういう感じなんです。このファーゴっていうドラマは。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)ただ、あまちゃんみたいになんて言うか、みんなほのぼのしないで、まあ人を殺したりですね、セックスしたりするんですけどね。

(赤江珠緒)そこが大違いなんですけど(笑)。

(町山智浩)そこが大違いなんですけども(笑)。でもこれね、ファーゴっていうのは実在の地名なんでね。地元の人たちは本当、迷惑していると思いますけどね。

(山里亮太)なるほど。殺人事件が起きたっていう。

(町山智浩)そう。とんでもないところだって思われているんだけど、ぜんぜんただの田舎なんですけどね(笑)。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)はい。ただね、ぜんぜんいままで話題になんなかったところだから、まあ、なんでもいいから話題になりゃいいのかって思っているかもしれないですけども。

(山里亮太)たしかに。観光地になりますもんね。十分。

(町山智浩)一応ね。観光地見たいな。でも、行ってみりゃなんもないんですよね。

(山里亮太)うわー、本当になんにもない!と思う。

(町山智浩)あと、だからそう・・・『北の国から』とかのね、世界でもありますけどね。ねえ。悲別で、みたいな。倉本聰みたいな感じでもあるんですけど。まあ、セックスしたり人を殺したりするんですけども。まあ、そういうところなんですね。それでそこでまあ、うだつのあがらない、カミさんにいじめられる男を演じるのが、今回ですね、マーティン・フリーマンっていう俳優なんですよ。

(赤江珠緒)あ、マーティン・フリーマン。

(町山智浩)で、この人、写真を見てもらうとわかるんですけど、本当に情けない顔の人ですね。


(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)そうですねー。できなそうな感じを醸しだして。

(町山智浩)本っ当にダメな感じの人なんです。この人はあの、あれですよ。指輪物語の・・・

(赤江珠緒)そうですよ。ホビット。

(町山智浩)ホビット。そう。ホビットの主人公のビルボを演じてる人ですね。あれもなんか、『困った、困った』って言いながら、弱虫で。でも戦わなきゃならない話でしたけど。あと、この人はテレビシリーズの『シャーロック』でワトソンを演じている人ですね。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)この人、イギリス人なんですよ。それなのに、今回は北欧なまりの独特なミネソタ系の英語をしゃべっているから、やっぱり芝居はすごく上手いんですね。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)で、まあとにかく彼がいじめられていて。自分の弟からも『あんたみたいな兄貴はいないフリしてるんだよ』とか言われたり。奥さんからは『本当にあんたは役立たずで』って言われるだけじゃなくて、道端でですね、高校時代のいじめっ子に会うんですよ。

(赤江珠緒)ふん。

(町山智浩)で、高校時代のいじめっ子が息子を連れているんですけど。その息子連れのいじめっ子に、もう40すぎてるのにボコボコにいじめられるんですよ。

(赤江珠緒)いや、もう・・・辛い。

(町山智浩)もう、ひどいんですよ。しかもそのいじめっ子がまたね、お金持ちの社長の息子でですね。会社を引き継いでてですね。でもって、エロい巨乳の若い奥さんをもらっていたりして、とにかく悔しくてしょうがないんですね。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)要するにジャイアンが峰不二子みたいな奥さんがいるみたいな世界ですけどね。ドラえもんの。

(赤江珠緒)はー!たとえですごいわかりやすくなりました。

(山里亮太)すごいな。あの雑貨店に不二子がいるのかな。本当に。

(町山智浩)それでこのマーティン・フリーマンは、レスターっていうのはこれ、のび太ですよ。アメリカののび太ですよ。アメリカの東北地方ののび太っていう、もう何を言ってるのかよくわからないキャラクターですけど。はい。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)で、ボコボコにいじめられて病院に行って、そのケガの治療をしているとですね、そこになんか不思議な男が横に座るんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)紳士なんですけども。まあ、明らかに他所の土地から来た人なんですね。で、『どういうことがあったんだ?』っていきなり聞くんですね。非常にその、知的で静かな口調で。『君、ケガしてるけど一体なにがあったの?』って言うんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)すると、『いや、ちょっとこういうことがあって・・・』みたいな話をすると、『あのね、もし僕なら、そいつを殺してるよ』って言うんですよ。その紳士が。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)で、『なに言ってるんだね?』って言うと、『かわりに殺してあげようか?』って。

(赤江珠緒)誰なの、あなた?(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。誰なんだ、お前は!?っていうね。で、その彼がですね、マルヴォっていう役名なんですけど、これを演じているのがビリー・ボブ・ソーントンっていう俳優さんで。この人はアカデミー賞もとっている名優なんですけども。あの、アンジェリーナ・ジョリーの前の旦那だった人ですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)はい。この人はハリウッド一の巨根と言われてる人ですけども。

(赤江珠緒)いやいや、そんな噂って流れるんですか?

(町山智浩)まあ、それは関係ないですが(笑)。で、『殺してあげるよ』って言ったら本当にそのいじめっ子が殺されちゃうんですよ。で、びっくりして、『あんた、俺がたのんでないのに勝手に殺しちゃって・・・』とかいう話になるんですね。そうすると、こういう感じなんですよ。『君もやればいいのに』って言うんですよ。

(山里亮太)ええっ!?

(赤江珠緒)怖っ!ちょっと怖いですね。

(町山智浩)で、『君、奥さん、嫌いだろ?殺したいだろ?』みたいな話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)『あのね、君はいままでね、世の中にはルールがあるって信じてきたよね?』って言うんですよ。そのマルヴォっていう男が。レスターに。『そんなルールなんてね、本当はね、存在しないんだよ』って。

(山里亮太)悪魔の囁きだ。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)『やりたいことをやればいいんだ』って言うんですよ。これはニーチェですよ。これ。

(赤江珠緒)ニーチェ、そんなこと言ってましたっけ?

(町山智浩)『秩序とか論理とか道徳とか善悪っていうのは、人間が想像したもので。そんなものは存在しない。全ては許されるんだ』ってニーチェは言ったんですけども。それを囁く男なんですよ。マルヴォっていうのは。

(山里亮太)うわー。でも、ほら。のび太くんは・・・

(町山智浩)そこから、そう。だからね、これはなんて言うか、怖いドラえもんですよ。悪のドラえもんなんですよ。悪の哲学を囁くドラえもんですよ。それでのび太は、大変なことになっていくんですよ。その悪の囁きに引きづられていって。自分の心の闇のドアを開けちゃうんですね。

(山里亮太)闇のドア。どこでもドアじゃなくて。

(町山智浩)そう。どこでもドアじゃなくて、地獄の闇のドアを開けちゃうんですよ。で、そこからウワーッ!って悪が飛び出していって。このアメリカの本当の雪に閉ざされた田舎町を血に染めていくっていう話なんですね。ファーゴは。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ブレイキング・バッドは田舎でやってましたけど。ニューメキシコっていう田舎で。ねえ。あれも真面目な科学の先生がどんどんですね、怖いドラッグの帝王になっていく話ですけど。

(山里亮太)回を重ねるごとに、どんどん、どこまで悪く人って堕ちていくんだろう?ってところまで堕ちていきますもんね。

(町山智浩)堕ちていくっていうか、悪の帝王になっていきますからね。あっちはね。

(山里亮太)最後、えらいことに・・・麻薬王みたいに(笑)。

(町山智浩)えらいことになりますから。こっちは、もっと情けない、のび太ですよ。主人公は。

(山里亮太)で、悪のドラえもんが(笑)。

(町山智浩)悪のドラえもん。この悪のドラえもんはね、片っ端から変なことをしてくんですよ。モーテルに泊まっていると、モーテルで働いている従業員がオーナーに怒鳴られているのを見て、その従業員が1人になったところを見て、『君、あのオーナー嫌いだろ?あのオーナーの車のガソリンのタンクにおしっこを入れておくといいよ。エンジンが壊れて』っていう風に囁くんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)で、その従業員がムカつくからって、そのオーナーの自動車にいたずらしてると、オーナーに電話して。『いま、あなたの自動車にいたずらしているやつがいるよ』って教えるんですよ。そのマルヴォは。

(山里亮太)タチ悪いなー!

(町山智浩)だから人々を憎ませて、互いに殺しあわせるのが趣味の男なんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)しかも彼は、本職は殺し屋で。たった1人でもって、ギャングのアジトに殴りこみをかけて全員皆殺しにするぐらいの、ものすごい戦闘能力を持っている男なんですよ。

(赤江珠緒)うわー!そんな身の上の。

(町山智浩)これはね、ファーゴを作ったコーエン兄弟監督がですね、作った別の映画で、『ノーカントリー』っていう映画があるんですね。それはテキサスを舞台にしてるんですけど、やっぱりテキサスの田舎でものすごいことが起こる話なんですが。それに出てくるシガーっていうですね、全く正体がわからない殺し屋がいるんですよ。


(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)このノーカントリーっていうのはアカデミー賞をとったし、このシガーを演じたハビエル・バルデムはアカデミー賞をとりましたんで、ぜひご覧になるといいんですが。このシガーっていうのは、完全無敵のですね、全く理由のない殺人マシーンなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それが、このファーゴの中に取り入れられてるんですよ。そのキャラクターが。それが、このマルヴォくんなんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)で、そこにちょっとドラえもんみたいなのが入ってる・・・入ってねーな(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)たぶん入っているのはメフィストフェレスっていう悪魔なんですね。あの、ハムレットに出てくるんですけども。人々を誘惑する悪魔。普通の人たちの心の欲望を開いてしまう悪魔なんですよ。

(山里亮太)笑ゥせぇるすまんみたいなもんかな?藤子不二雄の。

(町山智浩)そうそうそう!笑ゥせぇるすまん見たいな。ドーン!ですね。笑ゥせぇるすまんですね。だから、ちょっとそれ、不二雄Aですけどね。そっちがね。AとFが微妙に合体してますね。

(赤江珠緒)全部藤子ワールドに収めようとしなくていいんですけどね(笑)。

(町山智浩)全部藤子ワールドにしようとしてますけど(笑)。いいのかな、それ?って。まあ、そうだな。喪黒ミーツのび太みたいな話なんで。それがね、このファーゴなんで。いま放送始まってますし、もうすぐね、DVDでたぶんまとめて出ると思いますんで。これはぜひ、ご覧になっていただきたい。

(赤江珠緒)へー、そうですかー。

(町山智浩)もう夢の藤子不二雄の合作ですよ!って、いままで藤子不二雄は合作じゃなかったのかよ!?と思いますけど。

(赤江珠緒)(笑)。まさかの。

(町山智浩)AとFですよ!『A&F』って言うと、なんの略か?っていろいろ考えるとヤバい!って問題もありますけど。

(山里亮太)いや、それはもう町山さんだけですよ。そう思ってるのは!(笑)。

(町山智浩)ああ、そうですか。AFとかね、言いますけどね。

(山里亮太)ちょっと!町山さん!ねえ。安孫子さんと藤本さんですからね。

(町山智浩)もう、なんのことかよくわかりませんが。はい(笑)。

(赤江珠緒)いや、でもね、お客さんでやっぱり変わってくるんですね。その作品っていうのがね。映画じゃなくて、ドラマに来てるという。

(山里亮太)楽しみだわ、これ。

(町山智浩)そうですよ。で、ドラマがアメリカ、どんどんすごくなってるんで、来週もちょっとドラマの話をさせてもらいたいなと思います。

(赤江珠緒)はい。ありがとうございます。今日はドラマ版のファーゴをご紹介いただきました。町山さん、また来週。お願いします。

(山里亮太)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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