ライムスター宇多丸 AKLOアルバム『THE PACKAGE』を絶賛する

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ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『ウィークエンド・シャッフル』でAKLOのアルバム『THE PACKAGE』についてコメント。絶賛していました。


(宇多丸)ということで、ちょっとここで曲をかけようと思うんですけどね。ここんとこ、ライムスターの新譜が出たりとか、先週かけたのはDJ PMXさんのアルバムに私がECDさん、高木完さんと一緒に参加しましたというね、HIP HOPリリースものが結構続いてるんですけど。

そんな中、非常になんて言うんですかねー、業界的に最注目作っていうか、みんな注目して聴いて実際売れててみたいな作品がございまして。それがなにかと言いますと、以前MIX TAPE特集・フリー・ダウンロード特集をやらせていただいた時にゲストで来てくれましたラッパーAKLO君の「THE PACKAGE」というアルバムが9月5日に発売になったと。で、まああの時の語り口、AKLO君非常にクレバーな、非常に賢い方だというのは伝わったと思うんですけど、でまたラップも上手いということは分かってたんですけど、分かっていたつもりだったんだけど、今回要はパッケージアルバムとして、フリー・ダウンロードとかじゃなくてまとまった形でドンと初めてアルバムを出したってことじゃないですか。

で、まあいいのはわかってたけど、これMUMMY-Dとも言っていたんですけど、久々にね、なんかヤな気分、これヤな気分っていうのは良すぎるんですよ。良すぎて、心底オチるアルバムみたいなの、結構久しぶりに来たなと。いいんですよ、いいんです。たとえばライムスターのやっていることと全然違う方向でコレはいいよね、あるいはオレらが絶対に出来ないことをやってて、違う方向で絶対できないことだからいいよね、こういうのなら感服しつつもまだ余裕をもって「イイよね」なんて言ってられるんだけど。

この良さで時々来る完膚なきまでに系は、自分で新譜出している人が言うのもちょっとアレですけど、俺らのやろうとしていることも包括した上でヤラレるというか、「えっ、そこまでやる!?」みたいな。「えーっ!?あー、気分悪いんですけど・・・良すぎる!」っていうぐらいイイと。で、AKLO君の「THE PACKAGE」、いろんな方向から良さの説明ができると思うし、いろんな皆さん言い方で絶賛されていると思うんだけど、僕が一番大雑把な、この番組を聴いてらっしゃるような日本語ラップの決してプロパーじゃないような方にもオススメする言い方をするならば・・・

日本語ラップっていうのは、ライムスター我々も含めて大きく、ものすごく大雑把に言ってこの2点を追求してきた。つまりどういうことかというと、1つは本場アメリカのラップと並べて聴いて遜色が無いもの。並べて聴いて遜色が無いものというものを1つ追求してきた。ここはまあ、疑いようの無いところだと思うんですね。

もう1つは同時にこれ相反する命題というか、これを両立させるのが難しいんですけど、日本語として無理のないラップであること、日本人として興味を持って聴けるようなトピックであること。つまり、アメリカのラップと照らして遜色が無いんだけど、日本のラップとしても問題がないっていう、本来は相反してもおかしくないような、180度逆を向いているようなベクトルの命題を同時に高度に満たそうじゃないかというのが日本語ラップの進化の原動力だったと。

で、その遜色ない部分が強めの人と、日本語として受け入れやすいのがメインの人と、バランスの差こそあれ、両輪だったわけですけど。で、AKLO君の今回の「THE PACKAGE」は、今までの作品も非常に高度な作品だったと思うけど、今回は特にその両輪の成果の、両方の今ん所の最高到達点というのかな?だと思います。要は日本語ラップの現状の最高到達点だなって、大袈裟じゃなく思うんですね。

特に、遜色なく聴ける、自然な日本語の範囲内で洋楽的な、つまり「日本語曲でーす!」っていうか、日本語として自然に入るんだけど、日本語曲ならではの日本語曲ですよというような言い訳感といってもいいのかな?そこに頼ってない感でいうと、別に日本語ラップだけじゃなくて、要は英語が本来ベースであるポップ・ミュージック、ポップ・ミュージック全体の中でもこれが日本語をのせる実験というか、進化の歴史の中でポップ・ミュージック全体の中でもこれが一番最先端成果なんじゃないのかなと。

その秘訣が何なのかというのは、MUMMY-Dと「これ、なんだろうね?」って。みたいな。とにかくいろんな秘訣がこの中に入っている。この本当のスゴさっていうのは、ひょっしたら皆さんもちろん聴いて、これから曲もかけますし、ヤバイヤバイ、これ分かると思うんだけど、ひょっとしたらオレたちが一番わかるかもしれない。もうこれは参った!っていうレベルに達しているというね、ことじゃないでしょうか。

で、それにはちゃんと理由があって、理由というか必然で、AKLO君この番組にこの間出演してくれた時にもいろいろ話してましたね。たとえば、実際に自分の曲をインターネット上にUPして、その評判のフィードバックをちゃんと研究して、たとえば彼は英語の部分もいい発音でやるようなタイプのラッパーだけど、日本語の部分はできるだけ日本語として、変な英語っぽい発音をやると抵抗を招くと。

オレそれ聞いた時、「ほら、そういう所!ほら、気づいちゃうし、ほら!」みたいな。しかもそういうところに気をつけながら、さっき言った遜色ない部分ですけどね、彼はたとえばDRAKEの曲に、自分の日本語訳歌詞をあててみて、それが波形上DRAKEの原曲と全く同じになるように調整するような実験というか切磋琢磨をしていて。つまり元々フィジカルに才能が有るような人が、頭と戦略を使ってやっているわけよ。・・・止めてくんないかな!それね、本当に止めてくんないかな!!みたいな。

不愉快です!っていうね。不愉快なほどスゴい到達をしてくれちゃったなというもの。ちょっと僕、なんかスゴいでっかいこと言ってるように聞こえるかもしれませんけど、作り手が言うんだから間違いありません。これは本当です。スゴいです。ということで、ちょっと曲を聴いていただこうと思うんですが、いろんなところで聴ける曲もあるんだけどね、これがちょっとさっきのDRAKEのたとえから言っても分かりやすいかなと思うんで。

アルバムよりこちらを聴いていただきたいと思います。プロデュースはBACH LOGIC。またBACK LOGICのトラックとかと相性がいいんだ、完璧なんですよねー、ハイ。そんなところも含めて聴いてください、AKLO君で「BEST MAN」。



うーん、「BEST MAN」って言い切ってもしょうがないな。AKLO君の「BEST MAN」をお聴きいただきました。あのー、他の曲とかも歌詞の内容、トピックというか題材のとり方、それのストーリーの曲としての作品の完成のさせ方の手際とかもさすが、向こうのアメリカの最先端の歌詞の研究に研究を重ねている人ならではのクオリティーというか目の付け所もあるし。

あとちょっとした時の、今はこの曲のメロディックなラップでしたけど、フツーのラップの中にフッと出てくるメロのセンスの良さとかもあるし。そんでもってここも重要なんだけど、カッコイイんですよ、見た目とかも。
あのBLAST公論クルーでいう郷原という男がおりましてね、我々の知り合いで郷原にちょっと似たような・・・知らねーって感じなんですけど(笑)

いやー、それで見た目もいいわけじゃん?どうですか、気分悪くなりませんか?(笑)ということで、AKLO君の「THE PACKAGE」、もし皆さん今年日本語ラップで今年1枚買おうっていうんなら、「THE PACKAGE」なんじゃねーかなぁって思うくらい、興味が無い人もぜひ日本語のポップ・ミュージック最前線として聴いてみてはいかがでしょうかというお話でございます。

<書き起こし終わり>