町山智浩さんが2023年4月25日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でNetflixで配信中の『恋のツアーガイド』を紹介していました。
(町山智浩)でもちょっとね、先週はあまりにもお昼のラジオで「殺す」って言い過ぎたので(笑)。
(でか美ちゃん)結構言ってましたね(笑)。
(石山蓮華)何回出たか?っていう(笑)。
(町山智浩)そう。白いお皿がもらえるぐらい「殺す」って(笑)。
(でか美ちゃん)2枚ぐらい、もらえそうでしたからね。
(町山智浩)なので、今日はもうゆるゆるの話にします。1人も死なない感じで行きたいと思います。
(石山蓮華)じゃあ、今日ご紹介いただくのはどんな作品でしょうか?
(町山智浩)俺がこんなタイトルの映画を紹介するってこと自体が異常と思うような……『恋のツアーガイド』ですよ。
(でか美ちゃん)あら! なに? 思わず指ハートしちゃった(笑)。
(町山智浩)ロマコメ、ラブコメですよ。
(でか美ちゃん)『恋のツアーガイド』?
(町山智浩)もうベタなタイトルですけども。これはロサンゼルスで、すごく大手の旅行会社の管理職をしている40ぐらいの女性、アマンダさんが主人公で。レイチェル・リー・クックっていう昔、俺がアメリカに着いた頃……要するに25年ぐらい前に高校生の役をやってた人ですけども。まあ、そういうお年ですね。で、彼女はすごく仕事では成功してるんですけど今、独身で。結婚をしようと思ってた会計士のね、結構エリートの彼がいるんですけども。「オハイオで仕事だ」っていうことで、彼女をほっぽらかしてオハイオに行っちゃうんですね。オハイオっていうのはまあ、ダサいところですよ。アメリカの中では。
(でか美ちゃん)あら。あんまりその感覚がわからないですけども。
(石山蓮華)広大な土地があって。なんか農業とかが盛んなイメージ?
(町山智浩)オハイオは工業地帯なんですね。五大湖の。で、あんまりいいところないっていうか、おしゃれじゃないところなんですよね。で、彼はそこに行っちゃったんで、彼女はほっぽらかされたんで、ベトナムに行くことにするんですよ。
(でか美ちゃん)ベトナムへ。
(町山智浩)というのは、ベトナムのツアー会社を彼女の勤める大手旅行会社がですね、買収しようという計画を立てていて。というのは、ベトナムはかなりアメリカの人たちにとって観光で人気のあるところなんで。そこで、でもどの会社を買ったらいいか?ってことで、その買おうと思ってる会社の調査に行くんですね。彼女が。
(でか美ちゃん)じゃあ、仕事感覚で行ってるってことですね?
(町山智浩)仕事感覚で行ってるんですよ。で、いろいろチェックしてね、減点したりするために行くんですけども。で、行ったらツアーガイドのシンさんというね、イケメンが現れて。
(でか美ちゃん・石山)あら!
(でか美ちゃん)ちょっとなんか、もう始まってる感するな。その時点で(笑)。
(石山蓮華)「トゥクトゥーン♪」って始まっちゃいますね。
(町山智浩)もう本当にね、もうラブコメの王道そのまんまですよ。全然外さない。で、たとえばすごい美しい観光地に行くわけですよね。1人で行くわけですよ。彼女はね。で、40ぐらいの女性が1人で行ってるっていうと「何かあるな」って思うじゃないですか。「どうして来たのかな?」みたいなね。で、ダナンっていう非常に美しい海水浴場があって。そこに行くと、もうこのガイドのね、シンくんが脱ぐわけですよ。
(でか美ちゃん)そうか。水辺だからね! 必然性を一応、持って脱ぐわけですね?
(町山智浩)そうそう。すると、彼がもうすごい体なんですよ。もうキラキラと……。
(石山蓮華)手元に写真ありますけども。あ、シックスパックだ。
(でか美ちゃん)おお、いい体。引き締まってますね。
(町山智浩)ガチガチでね。彼ね、本当はアクション俳優で。いくつかのアクション映画に出てる人なんですけど。まあ、ベトナム系アメリカ人なんですね。で、見ているうちに彼女が彼のことを好きになって。しかも彼は非常に良いことをいろいろ言うんですよ。たとえば……ベトナムって行かれたこと、ありますか?
(石山蓮華)私は1回、あって。仕事で行ったんですけど。なんかその時、小学6年の女の子。小学生の女の子の手を引いて、道を渡ったり、電車を乗り換えたりしなきゃいけないことがあって。すごい大変でした。道にブンブンブンブン、バイクが通っていて。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。交通量がすごいのか。
(石山蓮華)あれ、渡るのがすごく……。
(町山智浩)原付がね、ものすごい量で流れてるんですけど。あれを渡るコツとか、言われましたか?
(石山蓮華)あれを渡るには、とにかくゆっくりゆっくりって言われました。
(でか美ちゃん)ゆっくり渡るしかない? へー! 信号とかが機能してないっていうこと?
(町山智浩)信号も全……まあ、あるんですけど。そんなに多くなくて。で、ゆっくり行くんだけれども。「途中で止まっちゃいけない」って言われませんでした?
(石山蓮華)ああ、そうそう。言われました!
(でか美ちゃん)止まっちゃいけないんだ。へー!
(町山智浩)止まったら、その流れのを乱しちゃうんで、ぶつかっちゃうみたいなんですよ。原チャリにね。
(でか美ちゃん)めっちゃ怖いっすね!
(町山智浩)で、彼女がそこを渡らなきゃなんないんですよ。でも、渡れないんだよ。
(石山蓮華)これ、1人じゃ絶対無理ですよ。
(でか美ちゃん)「ってことは……」ですよ!
(町山智浩)でもね、彼女はずっとエリートできて。その決まった通りに生きてきた人なんですよ。
(でか美ちゃん)なるほど。ストイックな人なんだ。
(町山智浩)ストイックな人だし、まあよくいるタイプで。旅行会社とかにいるけども。必ずプランを作って、計画通りにしか行動をしない人なんですよ。だから思いつきとか、全然やらないんですね。で、まあ堅苦しい生き方をしてきたんで、彼女は渡ることができないんですよ。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。そんなルールのないところだと。
(町山智浩)そうそう。ルールがないから。「なんで信号がないのよ!」って怒っちゃうんですよ。そこで、ガイドのイケメンのシンさんがね、「ただ、ゆっくり渡ればいいんだ。でも、絶対に止まっちゃいけないんだ。戻ってもいけないんだ。人生と同じだ。前に進むんだ」って言うんですよ。
(石山蓮華)いいことを言う!
(でか美ちゃん)シン……。
(町山智浩)シン、いいことをいっぱい言うんですよ。
(石山蓮華)人生のツアーガイドじゃないですか。
(町山智浩)そう。その通りなんですよ。で、うっとりしてくるんですけど。でも彼女には彼氏はまだいるんですよ。別れていないんですよ。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。別れずにオハイオに行っちゃっているんだ。
(石山蓮華)うわー、引き裂かれるー!
(町山智浩)で、「どうしたらいいのかしら?」っていうね。イケメン2人の間で……みたいなね、そういうラブコメの王道そのままを行っていますよ。
(石山蓮華)ド王道ですね。
(町山智浩)で、彼の方は「最初はツアーでこういう計画だったけども。それじゃ面白くないんだよ。これから、僕の故郷に行こう!」って、いきなり実家に行っちゃうんですけど(笑)。
(でか美ちゃん)シン、やりすぎだよ!(笑)。展開が早いよ、シン!
(町山智浩)早すぎるんですけど。まあね、とにかくね、ベトナムはきれいなんですよね。
(でか美ちゃん)そう。景色がベトナムって、すごいきれいなイメージあるんで。ラブコメを撮るのにぴったりな情景がたくさんありそう。
(町山智浩)そう。もう本当に風景がラブコメのためにあるような、キラキラ輝くようなね、風景だけを撮っていますね。
(でか美ちゃん)「だけ」というと?
キラキラ輝くベトナムだけを描く
(町山智浩)これね、本当にね、もう重いこととか、触れないで。本当にラブリーな気持ちにだけさせる、完璧なエンターテイメントで。僕が見て思ったのは、やっぱり農村地帯とかに行くじゃないですか。50年前にはそこ、アメリカ軍がナパーム弾をぶち込んでいたところですよ。ボコボコと。
(でか美ちゃん)戦争があったわけですからね。
(町山智浩)アメリカの爆撃機がものすごいベトナムの農家の人たちを殺してたところなんですけど。そういうところは一切触れないです。この映画は。
(でか美ちゃん)そうか。そういう歴史的背景は置いとくのが作品としてどうかはあれですけど。まあ、きれいなところを……っていうことなんですね。
(町山智浩)一言も戦争のことに触れないし。まあ50年前ですからね。ベトナムにも、暗いところもあるじゃないですか。やっぱり繁華街とか、すごいしね。売春とかもすごいし。そういうところなんですけど、そこは見せないっていうね。本当に美しいところしか見せないんで。それもなんだかなと思う人はね、Netflixにもうひとつね、ベトナム映画でね、『タン・ソイ: 美しき殺し屋』っていう映画があるんですよ。
(でか美ちゃん)はい。『タン・ソイ』?
(町山智浩)これ、女の人の名前なんですけど。これはね、殺し屋の少女3人組の話です。ベイビーわるきゅーれ+1なんですけども。
(でか美ちゃん)たしかに(笑)。やっぱり殺し屋の話、好きですね(笑)。
(町山智浩)これがね、ベトナムの最新殺し屋映画ですよ。ああ、また殺しの話、しちゃった。俺、今日は殺しの話はしないと決めたのに(笑)。
『タン・ソイ: 美しき殺し屋』
(でか美ちゃん)でも、そのベトナムのポジティブな部分だけを映して……でもいろんなこと、歴史があっての、負の遺産もあっての国なわけじゃないですか。なんかベトナム側から言われたりしないんですか? この作品が。「都合よくないか?」って。
(町山智浩)これ、ベトナム観光局全面協力ですからね(笑)。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。逆に、ポジティブキャンペーンじゃないけど。そういうことですよね?
(石山蓮華)じゃあ観光客としてはこれを見て、ベトナムにぜひ足を運んでくださいっていうことなんですかね?
(町山智浩)そうですね。もう完全に観光ガイドみたいな映画になってて。完璧だと思いましたけど。でもダークサイドを見たいっていう人はぜひ、『タン・ソイ』の方もご覧になるといいかなと。
(石山蓮華)2本立てがいいかもしれないですね。
(町山智浩)そう。美少女3人組の殺し屋がベトナムの暗黒の組織に挑むっていう話で。もう殺しまくりますんで。こっちは。そっちもそっちですごいんですけどね。これ、シリーズになっていてね。その前には『ハイ・フォン: ママは元ギャング』というのがあるんですよ。で、そっち方がすごいのはね、ベトナムらしい殺し方をしますよ。
(でか美ちゃん)ベトナムらしい?
(町山智浩)ドリアンで相手の顔面を砕くっていう(笑)。
(でか美ちゃん)うわー! あんなボコボコの?
(町山智浩)ガコーン!って(笑)。トゲトゲでめちゃくちゃ硬いから(笑)。
(でか美ちゃん)しかも臭いし。一番嫌かも。それで攻撃されるのって。
(町山智浩)これ、すごいなって。ベトナムならではの殺し方というね。そちらも面白いですけれども。そんなのも見せてくれるのがその『ハイ・フォン:』っていうシリーズですけども。まあ、そちらもぜひ。
(でか美ちゃん)美しさも見つつ、歴史的な部分は勉強もしつつですね。
(町山智浩)そっちもNetflixですけどね。
(町山智浩)で、もうひとつですね、旅行系ということで。もうひとつ、旅行映画の話をちょっとしたいんですね。『ロンゲスト・デート』っていう……また、俺がこういう映画を紹介すんだよ? 『ロンゲスト・デート ~バケーションはどこまでも』っていう、これはNetflixのドキュメンタリー映画なんですよ。
『恋のツアーガイド』予告
<書き起こしおわり>