みうらじゅん ボブ・ディランを見て感じた「比較三原則」を語る

みうらじゅん ボブ・ディランを見て感じた「比較三原則」を語る 安住紳一郎の日曜天国

みうらじゅんさんが2023年4月23日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中でボブ・ディラン東京公演を3回、見に行った話を紹介。ボブ・ディランを見て感じた「比較三原則」について話していました。

(安住紳一郎)ボブ・ディランさん、ついこの間、来日しましたよね。

(みうらじゅん)見に行きました。

(安住紳一郎)大阪、名古屋、東京かな?

(みうらじゅん)大阪、東京、名古屋の順でしたね。なぜ名古屋が最後だったんですかね? どこから飛行機に乗って次に行ったんですかね? そう思いました。ええ。

(安住紳一郎)みうらさんも大好きですもんね。

(みうらじゅん)大好きです。一時はもう全公演、行ってたりしてたんですけどね。で、全公演に行って友達と……「ボブ友」って呼んでいる友達がいて。ママ友みたいなね。ボブに行く友達って結構限られてますから。その人と毎回、打ち上げってやって。「おつかれ!」って言っているんだけども、なんにも疲れてないっていう。見ていただけなんでね。自分でステージに立ったような気持ちになっていたっていう。

(安住紳一郎)今回は東京の有明。

(みうらじゅん)行きました。3回。

(安住紳一郎)3回、行ったんですか?

(みうらじゅん)行きましたよ。もっと行っている人、いっぱいいると思います。はい。

(安住紳一郎)やっぱり好きな人はそうやって何回も行くんですね。

(みうらじゅん)英語がね、僕はわからないんですよ。改めて言うこともないんですけど。ダイレクトに伝わってこないのに、こんなに好きってすごいなと思って。自分のことを褒めてやりたいぐらい。その、外国の方で英語がもうダイレクトに伝わって、詞が聞こえて。それでなくても割と難解な詞だって言われているボブ・ディランさんの詞をなんにも理解せず。たまに単語が……今回だったら「Key West」っていうところがあるんですよ。「ああ、Key Westなんだな」って思っているだけでね、しびれてる自分っていうね。すごくないですか?

(安住紳一郎)そうですね(笑)。もうだから、特に直訳の意味とかを理解しようとせず、音の響きだけで。

Bob Dylan『Key West』

(みうらじゅん)当然、その訳詞。CDについている訳詞は読んでいますけども。まあ、ライブでは直接は来ないじゃないですか。その3日目の時かな? 僕の前にね、途中から入ってきたカップルが……カップルっつってもね、もう完璧に松本清張さんの小説の匂いがする、まあ不倫ですよね。あのカップルが途中から入ってきて。途中から入ってこられたっていうのも、ボブ・ディランさんの今回のツアーというか、毎回なんですけど。定刻、ほぼぴったり始まるんですよ。で、余裕をこいて入ってこられたんでしょうね。僕の真ん前に座られて。「もう始まってんじゃん!」っていう。基本キープオン、私語を慎まない方だったんですよ。

もうそれで「これ、なんの曲?」っていう話をすごく大きい声でしてるんですよ。僕の目の前でね。『風に吹かれて』とかしか知らないと思うんですよ。その人。たぶんね、ちょっと受重役クラスの人と、水商売のママさんだね。僕が見たところ。なんかしゃべってるんだけど。「これ、『風に吹かれて』?」「いや、わかんね」って。その人もね、なんかで券をもらったんでしょうね。で、2人でね、しゃべってるんですけどね。ずっとしゃべってるんですよね。

「最近、お店来てくれないじゃない」とかいう話も出てるんで。で、俺はボブ・ディランを聞きたいのにね、その人の日本語の方がダイレクトに伝わってきてるんですよ。ビンビン、伝わってくるんですよ。目の前で……あっちは「○×△……Key West♪」とか言っているところに「全然最近、お店に来てくれないじゃない?」っていう声の方が耳は拾いますよね? 当然。

(中澤有美子)そうですよね(笑)。

(みうらじゅん)「ああ、これはこの人は肉体関係があるな?」って僕は踏んだんですよ。で、「それがあったから、お店には行かないんだな」と思って。常連だったんだけど、なんかもうママと付き合ってるっていう。「なるほどな」と思ってる遠いところで「Key West♪」って声が聞こえてるもんで。「早く帰らねえかな」とは思ってたんですけどね。まあ、3曲目ぐらいでお帰りになりましたけどね。

(安住紳一郎)ああ、よかった。ボブ・ディランさんはもう81才?

(みうらじゅん)81歳。もうそろそろ、5月で82歳になられますね。

(安住紳一郎)で、ギターを弾いてるんですか?

(みうらじゅん)いや、そうなんですよね。そこもそのカップルが間違ったところで。ステージ、薄暗いんですよ。で、ボブ・ディランのたぶんご意向だと思うんですけど。毎回、薄暗くて。で、ピアノを弾かれているんですよ。だいぶ、ずいぶん前からギターを弾かれてなくて。ちょっとちっちゃいグランドピアノみたいなのに座られているんですけど。なんせ、薄暗いもんで。バンドメンバーが5人ぐらいいて。どれがボブ・ディランって、わかんないんですよ。それがそのカップルにもハテナだったところなんですよ。で、最終的に「どれがボブ・ディラン?」って、やっぱりそのママさんから出ましたわ。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)ちょっとやっぱり「ギターを弾いている人かな?」って一瞬、思いますよね?

(みうらじゅん)思いますよね。ギターはね、2人おられるんで。その人は立ってらっしゃるから、余計にね、どっち?ってなるんですけども。違うんですよね。難しいんですよ。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)でもやっぱり好きなボブ・ディランさんの公演を見られたということで、本当嬉しいですね。

(みうらじゅん)本当にね、人っていうのは僕は横並びに考えてたところがあったんですよ。若い頃から、歳を取るっつって横に写真があるようなイメージがあったけど。ボブ・ディランさんを見てね、縦並びでね、一番奥に若い頃のディランさんがおられて。で、今の人がピアノに座っておられるっていう感じで。それで、なんかもう後ろからね、若いエキスが染み出て。たまに若い声が聞こえてくるんですよ。

(安住紳一郎)なるほど。

(みうらじゅん)それでね、やっぱり縦にものを考えるべきだなと思いました。それだったら、比較三原則にもならないじゃないですか。比較……「若い頃の方がいい」とかじゃなくて。縦で……。

(中澤有美子)奥にいるんだ。

(みうらじゅん)こう、バームクーヘンみたいになってるわけですよ。層になっているって考えるべきだなって思いましたね。

(安住紳一郎)なるほど。やっぱりなんかもう、ちょっとしたね、ジセ住(次世代住職)な感じですよね。次世代住職っぽい……。

(中澤有美子)イケ住(イケてる住職)のジセ住で。

(みうらじゅん)飲み屋のママの話もちょっとはさみながらね。そういうので客を掴んでいかないと。

(中澤有美子)本当だ。いいお話をいただいて。

(安住紳一郎)あと、比較三原則とかって本当に普通に言っていて。私たちはもう10何回目だからわかりますけど。初めて聞いた人はわからないので。

(みうらじゅん)「過去の自分」と「両親」と「他人」ですね。その三つと比べてはいけないという。それが比較三原則です。

(中澤有美子)ああ、そうか。両親か。

過去の自分、両親、他人と比較をしない「比較三原則」

(みうらじゅん)まあ、ほとんど全てなんですよね。それができれば、世話はないんですよ。なかなか。難しいことですけども。それを心がけていくっていうのが大切だと思います。

(安住紳一郎)比較三原則(笑)。

<書き起こしおわり>

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