Ado 1人きりでレコーディングする理由を語る

Ado 1人きりでレコーディングする理由を語る Adoのオールナイトニッポン

Adoさんが2023年4月17日放送のニッポン放送『Adoのオールナイトニッポン』の中で最近、レコーディングをしまくる日々であることを紹介。1人きりでレコーディングをするスタイルを取っている理由を話していました。

(Ado)ということで、フリートークですが……いや、難しいですね。フリートークの時間は。まあね、なんかいろんな日々を過ごしてはいますけど。最近ね、私、レコーディングをする機会がさらに多くなりまして。なんかちょっとね、「歌ってみた」をたくさん録ることになりまして。なんか結構スタジオに週4ぐらいで入りびたるようになりまして。で、そもそも私、レコーディングを1人で行ってるんですけど。わかりますか? どういう意味か。「わかんない」って言ってますね(笑)。

「1人でレコーディング」っていうのは……皆さんが想像されるレコーディングって、なんかブースがあって、エンジニアさんがいて。なんかよくわかんないつまみをいじるエンジニアさんがいて。たとえば「Adoさん、入ります。よろしくお願いします」みたいな感じで、ぬるっと入ってきて。で、エンジニアさんが1人、2人いて。で、他の、楽曲を制作した方とかがいらっしゃったり。あとはそれこそディレクターとかがいらっしゃって、事務所の方とかがいて。何人かの大人に見守られながら、もうひとつのガラス越しの部屋に入って。で、マイクスタンドの前で歌って。「そこをもう1回、やって?」みたいな感じでダメ出しさ0ながら録っていくっていうのが一般的だと思うんですけど。

私も正直、昔はそれを想像してたんですよ。歌を録っていくっていうのは。かっこいいじゃないですか。そんな、もう「アーティスト、歌を録っています」っていう感じだしね。そういう風に思ってたんですけど……なんでこうなっちゃったのかっていうと、私もそれを体験したことがないのか?って言われたら、そんなことはなくて。1回2回ぐらいはそれを体験したことがあるんですよ。

ディレクターさんがいて、そのブースに入って、FIRST TAKEみたいな感じでマイクが置かれてて。そこで精神統一して「スーッ……お願いします」って言って。「♪♪♪♪」って流れて「ラララーッ♪」ってやる感じ。あれ、やってたんですけど……まあ歌のレコーディングって一発録りでなくて、フレーズごとに録ったりするので。

で、だからあるフレーズを録り終わったら……たとえば『新時代』だと「新時代はー、こーの未来だー♪ せかーいじゅう、全部変えてしまえばー♪ 変えてしまえばー♪ はい!」っていう感じで区切って録っていくんですけど。なんか、エンジニアさんに……それは『新時代』を録ってる時じゃないんですけど。たしかデビュー前ぐらいの話なので。なんかいろんな歌を録っていて。エンジニアさんに「はい! 今の、いい感じですね」って言われた時に「うん? 本当に?」って思っちゃって。なんか「ええっ、嘘つけ! 今の割と、下手だったぞ?」みたいな。自分的には本当にそう思っていて。

で、結構割とそういう感じで進んでいくものですから。「えっ、本当にこれでいいの? 自分的に納得できないんだけど……」みたいな感じで。「ああ、もっとうまくできたのにな……」みたいなのとか。あと歌ってる最中にもう、「ああ、今、ピッチ外した。ダメ!」って。で、本当は「ダメ!」って思った時に切りたいんですけど。その切るボタンとかもやっぱり向こうのブースにいるエンジニアさんが作業をしているので。自分で止められないわけですよ。

なので自分のタイミングでうまく録音できない。「ああ、それを続けていくのか」って私はね、17歳の時に思い。「ヤバい……無理だ!」って。で、無理だと思ったら「よし、駄々をこねよう!」ってなって。私は駄々をこねて。「すみません、1人で録らせてください……」って言って。ガキが駄々をこねて(笑)。それで、宅録スタイルというんですか? いわゆる自分が使ってるパソコン、MacBookを持っていって。個室のスタジオに入って。なんか机とマイクスタンドとマイクがセットされてるわけですよ。

個室スタジオで宅録スタイル

(Ado)で、そこにパソコンとマイク……マイクっていうかインターフェースをガチャッて繋いで。それで1人で録るっていうスタイルを私は取っていますね。「えっ、それだとディレクターさん、いないじゃん? どうしてるの?」っていう話ですが。それの役割を私は自分でしているっていうか。いわゆる、セルフディレクターというか、セルフプロデュースみたいなところがあって。そう。自分が「これがいいな」って思ったフレーズを自分で生み出していって。

で、データのやり取りとかも「はい、出来ました」って言って。なんですか? そのままGigaFileとかでLINEにぺって貼り付けて。「今日は終わります」って言って帰るっていうスタイルを取っていまして(笑)。別に私、これは特別なことじゃないなって思ったんですけど。なんかこれを話とすごい驚かれることが多くて。改めて説明させていただいたんですが。そういった形で録っていまして。なんで、自分でディレクターの役割をしてるんで、そういう録り直しとかもなく。それで自分が納品したものがエディットされて、うまいことミックスされて皆さんが聞いてる音源としてリリースされるという感じでね、レコーディングの作業をしているわけでして。

今も絶賛、その制作期間にまた本格的に入ったんですけれども。そう。だからもう鶴の恩返し状態ですよね。鶴の恩返しの鶴状態ということで。「ここには私1人なので、入ってきてはいけません」みたいな感じなんで。もう完全1人の状態で、全然人と会わない。会うとしてもマネージャーさん1人ぐらいなので。もう、だらけた格好でいちゃうわけですよ。前はね、なんかそれこそ、しっかりとした皆さんが想像するレコーディングを体験する時は、ちゃんとお洋服とか選んで、お化粧とかをして。しっかりしっかりした身だしなみで行っていたんですけど。

もう途中から、私はもう「ああ、1人で録音? ならもう、いいや!」って、なんか寝間着みたいな。もうボサボサの髪で、ジャージで眼鏡でクロックスみたいな、なんかそういう……(笑)。「そこらへんのコンビニに行くんですか?」みたいな格好で出かけるようになってしまって。そう。なるべくね、ストレスフリーに行きたくて。割と録音してる時にすごい自分と戦ってストレスが……自分へのストレスが溜まってしまうので。それでストレスフリーに行きたいということで、堕落した格好で。もうだらけた格好でうろついてるんですけど。

で、これは最近起こった出来事。数日前に起こった話なんですけど。そんなボサボサの私。「ああ、今日も疲れた」って、家に帰ろうとします。で、私は集合住宅っていうか、マンションに住んでるんですけど。「ああ、疲れた、疲れた。そういえばなんか荷物が届いてるってLINEが来てたな」っていうので、ポストとか開けて。で、ちょっと書類とか、あと届いたダンボールとかを脇に抱えて。あと、事務所の人等からいただいた、それこそさっき言ったアドローザトルマリィのグッズとかもちょっと持ってたりして。割と背中も手前もぱんぱんな状態でせっせこせっせこ、エレベーター前まで歩いて行ったんですけど。

そのエレベーター前に先に待ってる人がいて。その待ってる人が水色のレースのワンピースを着た、髪とか巻いてるまさにお嬢さん。きれいなお嬢さんみたいな人が先に待っていて。もうこの時点で私は、なんですか? 「ああ、ヤバい。月とすっぽんだ」みたいな感じで割と自尊心があの削がれていったっていうか。生活しにくいんですけど。「ああ、ヤバい。めっちゃきれいな人がいる。どうしよう?」って。「別に話すわけでもなのに緊張するな……でもまあ、話すわけでもないからまあいいか」という気持ちも芽生えつつ。イヤホンをしながら、小さく曲を流しながら私はエレベーターにその人と乗り込んで。

で、なんかわかんないですけど、しばらくして自分の階に着くまでちょっと斜め下とか見てたら、視界の右上でなにか水色が動いてて。「あっ、えっ、なに?」って思ったら、そのお姉さんが話しかけてきてるのがわかったんですよ。「ヤバい! なんで話しかけてきてんの?」ってなって。もう慌てるんですよ。まず話しかけてくると思ってなかったということで、すごくてんやわんやになって。で、私はもう荷物で手一杯だから。イヤホンも外せない。「どうしよう? どうしよう!?」ってなっている中、もうとにかく外すしかないと思って右手を右耳に近づけた途端に、右耳のイヤホンをボロって落として。で、荷物も落としかけて、「ああっ!」みたいな感情が芽生えて。

お姉さんが言っていたこと

(Ado)それでお姉さんの声が聞こえてきます。何と言ってるか? 答えましょう。何と言ってるか? 「大丈夫ですか?」って言ってきたんです。「うおーっ! なにが? なにが大丈夫なの!?」ってなって。「えっ、今? なにが? 荷物が? イヤホンが? それとも、私のこの状況が? そんなに疲労している女に見えた?」ってなって。で、「大丈夫ですか?」ってすごい、もう丁寧に話しかけてくださって。「えええっ?」ってなって。

で、「今は大丈夫じゃない。大丈夫じゃなかったのが、さらに大丈夫じゃない!」ってなって。もう「うわーっ!」ってなったんですよ。もう私の頭の中と心はパニック、パニック! でもそんなエネルギーをね、放出できるほどね、そんなおおらかな人間でもなかったので。私はどう返したか? 答えてあげましょう。こう返しました! 「あっ、いえ、あの……はい……」です! もうなんということでしょう! まったく、恥ずかしい。もう本当に!

もう、また思い出してきた!(笑)。やだ! もうなにも会話ができていない。気遣ってくれてたのに……「ああ、大丈夫ですよ」って言えばよかったのに! 「あっ、いえ、あの……はい……」みたいな。もう恥ずかしくて縮こまる、ダンゴムシ。人間ダンゴムシ。猫背になりつつある。水色しか見えない。目の前には、水色のワンピースしか見えない。その水色のワンピースが視界にあり。ただ私は「スーッ、ハァーッ、スゥーッ……」って息をするだけ。これだけ! 私はそんな状況の中、イヤホンも落ちた。荷物も落ちそうだ。もうてんやわんやになりながら。

もうまるで芸でもしてるんじゃないかっていう動きをしながら、私は自分の階に着き。もう駆け足で。猫背にななりながら駆け足でエレベーターの外にサーッと行き、自分の部屋に着くまでの道中、ちょっと荷物を落として。「ああっ!」とか言って、廊下に自分の声を響き渡らせ。玄関前に着いて、荷物を置いてガチャッと鍵を開けて、自分の部屋に着いた時……ちょっと泣きましたね(笑)。そして私は気づいたんです。私が駆け足でエレベーターを出る時に、お姉さんが優しく開けるボタン押してくれたことも、気づいていたんです(笑)。水色がずっと優しかった。水色、シンデレラはずっと私に優しかった。「ありがとう」って言えなかった!

「ありがとう」って言えなくて、「……っす」って言って私は帰っていった(笑)。それで帰っていった私は、本当に恥ずかしかった。細い息を漏らすことしかできませんでした。私は。「ありがとうございます……」でもよかったのに。「……っす」って帰っていってしまった! もう! 最後の「……っす」だけ。「ありがとうございます」の「す」だけしか言えませんでした。

本当に自尊心が削がれる日々で。もう、だからと言ってこれのためにちゃんとした服も身なりもできるか?って言われたらそういうこともできないので。そのお姉さんとは、申し訳ないですが、二度と顔を合わせる気になれません。っていうのが最近あった話です。ではここで1曲お聞きください。Adoで『アタシは問題作』。

Ado『アタシは問題作』

<書き起こし終わり>

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