宇多丸『THE FIRST SLAM DUNK』を語る

マヂカルラブリー『THE FIRST SLAM DUNK』を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2022年12月8日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で映画『THE FIRST SLAM DUNK』についてトーク。『SLAM DUNK』門外漢だった宇多丸さんが映画の感想を話していました。

(宇多丸)さっきね、『SLAM DUNK』を見てきたんですよ。映画の。

(宇内梨沙)今、とっても話題。しかもめちゃくちゃいいという評判の。

(宇多丸)そうですね。ファンの皆さん、すごい大絶賛されていて。ただ、皆さんこれを聞いて「おやっ?」って思ったと思うんですけど。私、結構ジャンプ弱者というか。まあ、ある時期まではもちろん読んでましたよ。小学校の時とか、読んでたけど。世代的に『SLAM DUNK』とかは全然リアルタイムじゃないし。リアルタイムじゃないっていうか、ほとんど読んだことないし。アニメもほとんど見たことないし。

だいたいどういう人が……何だっけ? 「桜木花道が主人公。髪が赤い人でしょう?」とか、そういうのはわかりますよ。なんだけど、そんな明るくない状態なわけですよ。そんな私がムービーウォッチメンが当たっているわけでもないのに駆けつけてるのは、もう周りがすごくって。もう構成作家の古川耕さんもそうですし。あと、RHYMESTERマネージャーの小山内さんがもうとにかく昨日、「泣きすぎて目が痛い」って言っていて。そんな感じで帰ってきていて。

で、皆さんに言われたのは「あなたのような『SLAM DUNK』弱者が見たらどうなのか、わからん」と。私も『スター・ウォーズ エピソード7』の時に言いました。「『スター・ウォーズ』をここから見る人がどう見えるのかが俺、想像できない」と。だから、その知らないっていう状態は貴重じゃないですか。ほとんど知らない状態でどう感じるか?っていうのは他の人にはできないわけだから。

(宇内梨沙)特にファンが多いものほど。

(宇多丸)そうですね。で、ムービーウォッチメンもたとえば今週の金曜、当たるやもしれませんから。その時になって慌てていろいろやるよりも、じゃあだったらもう先に見ておくかっていうことで。行ってきたんですよ。で、もう周りの連中は「どうでした? どうでした?」ってざわざわしてるわけですよ。すごいざわついていた。俺が何を言うか、みたいなことで。一応、ムービーウォッチメンをやる可能性もあるんで、あんまり詳しいことは言いませんけど。

結論から言えば、これ、すいませんね。「『SLAM DUNK』弱者のお前がそういうことを言う権利、あるのか?」みたいな、そういう意地悪なことは言わないでくださいね。普通にお金を払って、観客として見た結果、私が感じたこと。すごいよかったね! 素晴らしかったです!

「素晴らしかった!」(宇多丸)

(宇多丸)もちろん、「キャラクターとか、わかるのか?」って言われると……でも、やっぱりいつも言うけど。優れたエンターテイメントは初見の人にもちゃんとわかるように作られているし。あえて言えば、これはいいのかな? 普段はこの桜木さんが主人公なんですよねっていうことぐらいは知っておいた方がグッと来るという感じは。でも、その全てが想像つく範囲っていうか。それさえわかっていれば。「ああ、こういうことね。劇場版だから今回、こういう風に……なるほど、なるほど。ここに焦点を当てたか」っていうね。

(宇内梨沙)私も先ほど、その話を聞いて。「えっ? 持って? えっ?」って思ったんですけど……。

(宇多丸)ああ、ごめんごめんごめん!

(宇内梨沙)ただ、「今回の作品は本当にネタバレない方がいい」っていう風に聞いてたので。私、ニュースとかもなんにも見てないんですけど。

(宇多丸)ごめん! これ、やめた方がいい?

(宇内梨沙)でも、パンフレットを見たら正直、その並びでわかっちゃうから。そこまでは……。

(宇多丸)あ、ごめんごめん! これはダメだ! そうか。そういうことか……ごめん! 俺、弱者だから、逆に……。

(宇内梨沙)でもポスター絵とかパンフレットがこの並びだったら、たぶんメディア露出しているポスターとかも、こうなっちゃっているわけですよね? となってくると、そこは……。

(宇多丸)あれよりは……だからその『スター・ウォーズ』をこれから見ようっていう人に「ああ、この人とこの人が親子なんですよ」とか、そういうことを言うよりはデリカシーがまだ?

(宇内梨沙)ああ、そこはね。そこはさすがに……(笑)。

(宇多丸)でも、そこって世界中のいろんなパロディーとかで、結構無頓着に……。

(宇内梨沙)出てくる! Twitterのなんかパロッた映像とかで、そのシーンだけを切り取った画像とか出てきますよ。

(宇多丸)そのぐらい『スター・ウォーズ』に関しては世界共通認識ということになっちゃっているから。で、まあすいません。これ、ごめんなさい。私、ちょっとこれ、一線を踏み越えてたら本当に申し訳ないですけど。私が言いたいのはつまり、すいません。私が言いたいのは、門外漢でもちゃんと勘所はもちろんわかるようになってたし。で、やっぱり映画評になったら言いますけど、長編映画として1本、作るんであればこれ、すごくうまい改変というか、うまい人の視点の置きどころだと思います。その理由もね、ムービーウォッチメンになったら言いますけども。そして何よりも、やっぱりアニメ表現として、すごすぎ!

(宇内梨沙)ねえ。話題になってますよね。

(宇多丸)あのね、特に試合の場面。

(宇内梨沙)3D感とか。

(宇多丸)そうですね。漫画が動く……だから、アニメ表現の最先端でたとえば『スパイダーバース』というアメリカの作品がありますけど。まさにカートゥーンが動き出す感覚というのをいち早くやってみせた。で、みんな世界中のアニメ作家はたぶん、その『スパイダーバース』にどう答えるんだ? みたいなことを考えたと思うんですが。まあ『SLAM DUNK』は明らかに『スパイダーバース』への日本からの回答という言い方をしても言い過ぎではないし。そして特にバスケというスポーツの特性を描くのに、このやり方はすごく合っている上に、アニメ表現とても優れているし。なんならスポーツ映画っていう文脈でも結構、歴史的なことをやってのけているようにも感じるし。少なくとも日本のスポーツを題材にしたアニメ映画としては突出したものがあると思う。

『スパイダーバース』への日本からの回答

(宇内梨沙)いやー、本当にこの作品って公開まで、ほとんど情報なかったじゃないですか。予告も短い。で、予告の中に出てくる3Dシーンもとても短い。で、シーンだけを見たファンたちが不安視していた。

(宇多丸)ああ、そう? 僕はあの予告の映像を見て……僕は門外漢だからこそ、予告の映像を見て、純粋の映像表現として「『SLAM DUNK』のアニメ化、今さらやるのか?」って思ったけど。「いや、この映像が挑戦じゃん! えっ、思ったよりもすごい作品かも?」みたいな感じで。私はそこでやおら、色めき立ちまして。

(宇内梨沙)たぶん皆さんは『世界が終わるまでは…』世代なんで、あの時の記憶が……。

(宇多丸)すみません。『世界が終わるまでは…』世代っていうのは?

(宇内梨沙)ああ、主題歌ですね。

(宇多丸)ああ、そうなんですか。すいません(笑)。本当にごめんなさいね。

(宇内梨沙)みんな、その時のアニメーションとか声優さんとかが刷り込まれすぎて、それに対しての変化が怖かったっていう……。

(宇多丸)でも、ずいぶん時間が経ってるでしょう? 同じ人にやらせるっっつったって、無理が……。

(宇内梨沙)変わらないじゃないですか。思春期に吸収したものいうのは、何歳になろうが……っていうので。でも、それを全部、公開で覆してるのがすごいなって。

(宇多丸)いや、僕はだから門外漢ですよ? 完全に門の外にいますから。門の外にいる人間なんで、そういう意見があるのも聞いてましたけども。門の外にいると「へー。そんなことで騒ぐんですねえ」って。門の外ですからね。でも、その門の外の人からしても、これはだから単純にアニメとして、映画作品として、すごい作品だなという風に思いましたよという件を先にお伝えしておこうと思いました。ということです。すいませんね。でも、ああ危ない! やっぱりあれだな。この越えるべきでない一線のジャッジとかができないっていう問題があるな。

(宇内梨沙)でもたぶん、「正直、(アニメや漫画を)見てないから、(映画は)見に行けないや」って思ってる人たちに、やっぱり宇多丸さんは勇気を与えてますから。

(宇多丸)ああ、そうね。とか、言いたいのはたぶん今、盛り上がってる人って『SLAM DUNK』の元々ファンの人で、思い入れが強い人が中心だと思うから。そうじゃない人にも全然勧めていいと思う。これ。『トップガン マーヴェリック』が『トップガン』1作目を見ておく必要は決して、必ずしもないのと同じように。むしろ今回、開発された様々なその表現みたいなことがすごいから。たぶん、そのファンであろうとなんだろうと、初めて目にする部分がすごい作品でもあると思うんで。そこはだから勇気を持って行けばいいと思うよっていう話で。

(宇内梨沙)あと、なんかキャラ被り、ないですもんね。この作品。5人。バスケットボールの5対5っていうわかりやすさも。

(宇多丸)あの、すいません。クソ門外漢。門の外にいるもんで。門の外から細目で見ているもんでね。私、視力もあんまりよくないんで。最初、序盤はちょっと判別に苦しむ……。

(宇内梨沙)ああ、たしかに。流川と三井がたしかにね、髪型もたしかにね。

(宇多丸)そうそう。それそれ! あの、序盤ではちょっとありましたが、でもちゃんと要するに……これがね、よくできてると思うんですけども。これ、ムービーウォッチメンで言えっていう話ですが。あの試合運びとそのキャラクター描写が一致してるっていうか。試合上の役割とそのキャラクターとが。で、やっぱり少しずつバックストーリーというのもチラリチラリと語られていくみたいな感じで。それはだいぶ問題なく見えましたし。まあ5人しかいないしね。まあ、あんまりしゃべっちゃうとさ、ムービーウォッチメンがさ。だから当然、ウォッチメンが当たったら私のことですから、まあアニメを前のやつ、全部見るっていうのはあれだけども。原作はもちろんちゃんと読みますし。

特に今、すごい興味がわいていて。どこが今回のオリジナルであれなのか、みたいなのは……場面としてはもちろん想像つくんだけど。特に試合の描写。たとえばこのカメラの動きって、漫画だとどうやって……元はどうしているんだろう? みたいな。

(宇内梨沙)たしかに! 私は『鬼滅の刃』でアニメから漫画に行ったんですよ。それで「ああ、漫画ってこうだったんだ!」みたいなのはあるんで。たしかにそれは確認したいですね。

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