R-指定 ラッパー同士の「韻の相談」を語る

R-指定 ラッパー同士の「韻の相談」を語る Creepy Nutsのオールナイトニッポン0

R-指定さんが2022年4月25日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』の中でラッパー同士でしばしば行われる「韻の相談」についてトーク。直近で韻の相談をされた際の模様を話していました。

(R-指定)俺、その最近結構歌詞を書いていたりして。こういうのって海外では普通にあることというか。ラッパーが結構「コライト(co-write)」って言っていたりするのかな? 他の人のラップの歌詞をちょっと手伝ったりとか、書いたりするみたいな文化が普通にあっちではあるんですよね。ドクター・ドレーとスヌープ・ドッグの曲をジェイ・Zが書いてたりとか。○○の曲をデビュー前のJ・コールとかカニエ・ウェストがライティングしていた、とか。でも日本ではあんまりまだ一般的じゃないんですけど。やっぱりどうしても自分の書いたもので……っていうのはあるんですけど。

でも所々、韻の相談っていうのはラッパー同士でし合うことってのは結構あるんですよ。梅田サイファーとかでも、あんだけラッパー、人数がおるから。「この言葉、出てきた。これでどうしても韻を踏みたい」っていう時はそれこそ、韻が得意なメンバーに聞いたりするんですよ。で、俺もある程度のものは得意やから、相談される側やったり。っていう感じかなと思ってたんすけど、最近の曲で英語で踏みたい言葉が出てきたんですよ。

「Ready or not」っていう言葉があって。「Ready or not」っていう発音で踏みたい。で、日本語やったらナンボでも出てくるんですけど、音のハマり的にどうしてもここはもう一発英語で踏みたい。そんな時に英語が得意なKennyDoesっていうメンバーに電話して。「お前、『Ready or not』で踏める韻、ある?」って聞いて。そしたらケニーがブワーッと候補を送ってくれて。「ああ、これ、ちょっと使っていい?」みたいな。そういうね、ちょっと一部分のパズルについて誰かからアドバイスをもらうみたいなのって、結構するんですよ。

で、とはいえやっぱり、バトルに出てたりとか。俺もそのラップの緻密さとか、仲間も知ってくれてるから。韻の相談される側のことが多いんですよ。で、ラジオの本番前とかに、沖縄のCHICO CARLITO。よくこの番組でも名前出るけど、CHICO CARLITOから「『マイペース』で踏める韻、ない?」みたいな感じで来たんですよ。で、ラジオの本番前やったけど。もう「マイペース」なんてなんぼでもあるから。「回転数、ハイセンス……」とかバーッと送って。で、CHICO CARLITOから「ありがとう!」みたいな感じで今、たぶん作っているであろうラップのボイスメモみたいなのが送られてきて。ひとつも採用されてなくて(笑)。

「は? あんまりやったか。あんまり俺のその送ったやつ、オーダー的にセンス良くなかったか全部不採用か……」みたいなことがあって。まあちょっとだけ、心の声。チコには「ヤバいな、このバース!」とか言ったけど。ちょっとだけ悔しさとか、恥ずかしさ……その後輩に韻のアドバイスを求められて。「じゃあ、こんだけ」って送ったらそれが採用されず、みたいなことがあって。ちょっと、うーん。俺の出した韻、ちょっと平凡すぎてボツになったというかね。チコの中で。それで、その自分のアイデアがボツっていうのでちょっと心にしこりを抱えたまま過ごして。

そしたら、普通に家で夜中の2時ぐらいにテレビ見てるタイミングで、hokutoっていうね、同い年のトラックメーカーがおるんですけど。そいつから着信というか、LINEがポン……みたいな感じであったんですよ。で、その文面に……文面だけ見れるんですけど。「アウストラロピテクスで踏める?」っていう文章が見えたから「あれ? これ、もしかしてまた韻の相談かなと思って。それで俺は既読をつけずにビュッと長押ししたら文章がちょっと見えるじゃないですか?

既読をつけたら、ねえ。その時点からシンキングタイムなるから。いや、やっぱりチコの時は既読をつけてしまったらすぐ返さなあかんかったけど。「アウストラロピテクス、結構大物やぞ?」と思って。既読つけずに長押しだけして。ボンと文章だけ出てきて。「今、唾奇とテークくんといるんだけど……」って。唾奇は沖縄を代表する同い年の、もう超絶第一線でやってる沖縄のラッパーです。唾奇。そしてテークエム。これ、梅田サイファーでも俺、ライバルだと思ってます。めちゃくちゃラップ上手い2人と飲んでいて。「アウストラロピテクス」っていう言葉で踏まれへんかってなっている。2人のラッパーが出ない韻で俺に頼ってきたというこの大仕事!

hokuto、唾奇、テークエムからの大仕事


(R-指定)もちろん長押しのまま見て。で、既読はつけずにそこからシンキングタイム。アウストラロピテクス。まずはその単語だけで7個出して。たとえば「アウストラロピテクス」「握手の後、ひれ伏す」とか「タンスの角、ぶつける」とか「アホうすのろ死ねクズ」みたいなのを出して。単語でこれ、出して。で、文章にして繋げてみるパターン。「マスクの下の顔を見てみるとアウストラロピテクス。ちょっとアングルを変えてみるとダンブルドアにも似ている」みたいなね。

「アウトかもと思いつつ、あくる朝ノリでセックス」「足の小指タンスの角ぶつける アホうすのろ死ねクズ」みたいな。文章パターン。ちゃんとそのまんま、ラップとして成立してるパターンと韻だけのパターンを2パターン、作って。それを携帯のEメールのところのメモにこの2パターンを作って。ほんで、コピーにして。ペーストですぐに貼れるようにして。やっとそこでhokutoのメールを開くわけですよ。で、開いて、「おつかれ! ごめん。仕事終わりで寝てた」って。それをこう、ペーストでして(笑)。

で、まずは単語だけの7つぐらい出したやつを「おつかれ! ごめん。仕事終わりで寝てた」で、そのすぐ後やったら怪しまれるから。15秒ぐらいおいて、ペーストして、パッと。ただ、それも早すぎたらあかんからメールを見て。「おつかれ! ごめん。仕事終わりで寝てた」からその単語だけの韻を送るまで、まあ30秒。30秒して、その後の1分、ちょっと俺はタバコ吸って、間を空けて。

で、文章とかの……さっき考えた、文章として成立してるバージョンをバッと送って。そしたらやっぱりもうね、hokutoから「ヤバすぎ! Rくん、マジ天才! マジヤバい! 全員ゴンフィンガーだった!」みたいな。もうhokutoと唾奇とテークエムをゴンフィンガーさせたっていうことで「よっしゃ!」って思って。で、その後に俺が「ああ、そう? まあまあ、嬉しいけど……」って。これね、俺、ホンマの文章めっちゃ恥ずかしいんすけど。「全員ゴンフィンガーだったわ!」「そう? でもhokuto、唾奇、テークエムに韻を送るとか、今考えたらめっちゃ緊張するわ。寝起きでよかった(笑)」っていう……フハハハハハハハハッ!

これは俺、送る前と送った後で2回、寝起きを強調するという。恥ずかしい(笑)。今、自分でこの過去のメールを見て、恥ずかしい(笑)。でも、やっぱりhokutoの「マジですごいわ!」みたいなね。「唾奇とか『次元違いすぎて見る気にもなんねえ』って言ってたよ」みたいな。「嬉しい!」ってなって。「よしよしよし、これこれこれ! 俺がほしかった反応はこれこれ! そうそう!」って。やっぱり、R-指定というのはこうあるべきなんですよ。

この韻を相談されて、半端じゃないものを寝起きでプププッと送って。「ああ、ごめん。寝てた」みたいな感じのこの俺の演出したい天才感。でも、よく考えたら唾奇もテークエムもhokutoもめちゃくちゃおしゃれな曲ばっかり作るんですよ。唾奇なんか特に。で、テークエムもそうやし。「アウストラロピテクス」なんて言語を曲に使うわけないんですよ。

だから別にこれ、曲の相談でも何でもなく、みんなで飲んで酔っ払った時に、「アウストラロピテクスでなんか踏んでや」みたいな。「いやいや、無理無理!」「こんなしょうもないので踏めるの、あいつしかおらへんのちゃう?」って言ってたぶんメールくれたんやなと思ったら、まあすごいムダな努力をしたなと思って、ちょっと恥ずかしくなったんですけどね。それじゃあ聞いてください。Creepy Nutsで『耳無し芳一Style』。

Creepy Nuts『耳無し芳一Style』

<書き起こしおわり>

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