佐久間宣行さんが2021年12月1日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の中で高校時代にアルバイトをしていた地元・いわき市のカレー店「グラフィティ(GRAPHITY)」についてトーク。最近判明した、そのお店を介した不思議な縁について話していました。
(佐久間宣行)それで今日、話そうと思ってることが『サクマ&ピース』っていう番組、放送したじゃない? 10月ぐらいかな。アルピー平子といわき市の地元を巡るっていう。で、4回放送して。まあお陰様で好評で、「またやれたらやりたいですね」みたいな話をしてるんだけど。その時に、平子と放送の中で……見た人はわかると思うんだけど。俺と平子の思い出の地を巡っていく時に、ロケバスの中で「俺が高校時代にグラフィティっていうカレー屋さんで3年間、バイトしてたんですよ」って話をして。いわき市では結構、有名なカレー屋さんで。もう閉じちゃって今はないんだけど。そこのカレー屋さんでホールとカレー粉を挽いてたんですよ。高校3年間。91年から93年目にね。
で、その話をロケバスでしたわけ。そしたら平子が「えっ、佐久間さん! 俺、中坊でそこ、通ってましたよ! おふくろと『やっぱりカレーはグラフィティじゃないとダメだね』なんて言って毎回通ってました。なんだったら、ちょっといいご飯を食べたい時に行く店でした。俺、絶対佐久間さんの挽いたカレー食っているし、なんだったら皿を出してもらってました」っていう話でロケバスで盛り上がったの。
バイト中に中学生のアルピー平子が食べに来ていた
いわきにいた頃、小名浜岡小名にあったカレーの名店グラフティで佐久間Pのつくったカレーを食べいていたかもしれないアルピー平子さん。広くて狭いいわきエピソード、いい話。 #サクピー #iwaki #いわき https://t.co/NsTvrX4aPl pic.twitter.com/CBUweo8IE1
— はこし (@hacosi) November 2, 2021
(佐久間宣行)で、「佐久間さんが挽いていたカレー粉でカレーを食ってたのか」なんていう風な話で盛り上がっていたのが10月の時で。で、その話をまあいろんな人から……TVerとかで見れるじゃん? だから福島出身の人から「えっ、佐久間さん、グラフィティでバイトしてたんですか?」みたいな。そういう連絡をたまにもらっていたのよ。俺のSNSにさ、来たりするわけ。
「僕も通ってました。懐かしいです」みたいな。そんなことがあったんだけど。それでつい最近、ちょっとびっくり……俺は驚いたんだけど。その反響がいろいろあった中で、タイムマシンが繋がった感じがしてたんだけど。そしたらちょっと前……2、3週間前かな? メールが来て。そのメールくれた方って、NHKでテレビ放談とかに僕のことをよく呼んでくださってるプロデューサーの坂部さんっていう方で。もう知り合って4、5年。俺、テレビ放談とか『新しいテレビ』っていうNHKでさ、テレビのことを話すので4、5年前かな? そこに呼んでいただいて。その時のプロデューサーが坂部さんという方で。
で、この間、今年に入ってフリーになっても真っ先に「佐久間さん、『コンテンツラバーズ』っていう番組でコンテンツのことを語ってくださいよ」っていうので呼んでくださって。神田伯山先生と松本まりかさんと俺で3人で30分のトーク番組をやってくれたっていう人。その坂部さんは正直、信用しているというか。まあ外で仕事した時に「この人は信用できるな」っていう人、いるじゃん? 編集から何から、あとは俺のダメな部分っていうか。ここの編集はカットしてくれるんだとか、わかりにくいところはフォローしてくれるんだっていうのもひっくるめて、そういう人っているわけよ。
で、坂部さんはそういう人のうちの1人で。まあだから坂部さんに頼まれたらもう企画は見ないでも「まあ、やろうかな」っていうタイプの人。NHKのプロデューサーの方。で、その方からメールが来たのよ。でね、「NHKエンタープライズの坂部です。『サクマ&ピース』、楽しく見ました。私、いわき市出身なんですよ」って。「そんな話、したことなかったな。坂部さんっていわき市出身なんだ」って思って。
で、その後に「坂部もグラフティ……」って書いてあったから。「ああ、坂部さんも行ったことあるんだな。いわき出身だったら、グラフティそのぐらいなんだ。すげえな、グラフティ!」って思っていたら、「坂部もグラフィティ、1年ぐらいバイトしてました」って……(笑)。「坂部もグラフティ、1年ぐらいバイトしてました。今、オンエアを見て体が震えてます」って書いてあって。「実家、あの裏なんです」って。「えっ、どういうこと? バイト!?」って思って。
もう俺、坂部さんとNHKで3、4年仕事しているわけ。で、「えっ、俺のバイトの先輩? この人が?」っていう。全然知らないよ。仕事でしか会わないから。その、信用している坂部さんが。で、年齢もたぶん、そんなに離れてないのよ。たぶん3歳か4歳ぐらいしか離れてないの。で、あまりに驚いて返信をしたわけ。こんなの、驚くじゃん? で、メール送ったの。「僕と坂部さんってそこまで年、離れてないですよね? もしかしてバイト、入れ違いとかですか?」って。
で、打ちながら思ったんだけど。「ちょっと待てよ?」って。俺、高校1年の夏から受験挟んで3年まで、働いてたんですよ。週1か週2で。「もしかしたら、本当に入れ違いだったら、お互い記憶ありませんか?」って返したら、そしたら坂部さんから「ちょっと待ってください。僕は○○年生まれです」って来て。それが俺ときっちり3歳差なの。で、見たら、ということは俺が高1でバイトに入った時に卒業した人だった。だから、完全な入れ違いなのよ。で、記憶がパーッと蘇ってきたの。「もしかしたらお会いしたこと、あるんじゃないですか? 30年前に」って言ってたら、坂部さんから「いや、お会いしたかもしれないですね。大学で東京行ってからも帰省した時に、お店が閉まってから挨拶に行ったりしてましたよ」って。
「僕、下の名前はコウジって言うんですけども。下の名前で呼ばれていて、店長と奥様にかわいがっていただいてました。いやー、懐かしいですね。まかない、うまかったですね。あの文化不毛の地、そんなにお洒落なこととかがないいわきで、あの店だけは店長がジャズとか好きで。僕ら、いろいろ教えてもらいましたよね。佐久間さんもそうですよね?」みたいなのが返ってきて。そのメールで、全ての記憶が蘇ったの。俺。
全ての記憶が蘇る
(佐久間宣行)俺、15で高1の夏にバイトを始めた時に真っ先に、そのお洒落な店長……おじさんだけど。「お前の前のバイトやってくれたコウジは、かっこいいしすげえ優秀で仕事を覚えたから。最初はみんな、女性バイトの皆さんとかもお前、コウジと比べられちゃうかもしれない。コウジはとにかく優秀だったから。でもお前、気にするな。コウジはICUに行ったんだよ。いわきでICUって……知ってるか? ICU。英語ができないと入れない、すげえ大学なんだよ」って。
「コウジはかっこよくて仕事もできたから、最初比べられるけど。お前は15でちんちくりんだから、できなくてもしょうがない。へこむなよ。俺は気にしないけど、みんなたぶんコウジの面影を見ちゃうから」って言われて。で、たしかに他のバイトの女性たちと話しても、みんなコウジくんのことを褒めるわけ! 「コウジはめちゃくちゃできた」って。「ええっ、すげえな!」って。いないのにだよ? ちょうど入れ違い。3歳違うのね。
で、俺は最初、全然仕事ができなかったの。なんでかっていうと、中学を出てバイトに入ったから。で、コウジくんがどうやら、どんなメニューを注文されても、オーダー票を書かないで、注文を全部覚えるんだって。で、それがグラフィティ名物になってたから。「宣行もできるな?」って言われて。フハハハハハハハハッ! で、俺はそれを15で入ってすぐにオーダーをさ、4人とか5人とかでカレーのコースとか頼まれて。「○○と△△と……」って全部覚えて。「ええと○○です、△△です」ってやって。それ、コウジくんがやっていたらしいから。
それがグラフィティ名物になっていて。「お前、ホールだからやってくれ」って言われて。それで、やるわけ。「ええと、あれですよね? タンドリーチキンカレーですよね?」「いや、違います。シーフードカレーです」って(笑)。そういうのを何回も繰り返して。店長もそんな悪い人じゃないから、「まあまあ」って言ってんだけど。「まあ、コウジはできたけどな」っていう、そんな空気がある人だったのよ。その人は。で、もう俺は全然仕事できなかったから。高1で。もうバイトに行くの嫌だっていうぐらいな感じで。
でも、夏休みなんてさ、もう本当にずっと働いてるんだけど。そのコウジの幻影で「うわーっ!」ってなっている時。夏休みよ。「コウジ、帰ってきたぞ!」って。覚えてるんだよ。「みんな、コウジが帰ってきたぞ!」って店長が嬉しそうに。店が閉まったぐらいで、皿を洗っている時に「おい、コウジが帰ってきたぞ!」っつって。で、バイトの女性とかさ、店長の奥さんとかさ、シフト入ってないやつとかもさ。「うわーっ、コウジくん!」みたいな感じになってんの。
それで俺、コウジくんが挨拶に来ていて。シルエットはわかったのよ。スラッとかっこいい感じで。でも俺、悔しいから挨拶に行かなかったのよ(笑)。「俺、皿洗うんで。店長」っつって(笑)。「お前か!」って思って。その3歳上のコウジくん。で、本当は別に「今、バイトしてる宣行です」って挨拶に行けばよかったんだけど、行かなかったの。その記憶を完全に思い出して。まあ1年か2年、毎年挨拶に来てくれていたの。でも俺、1回も挨拶に行ってないの(笑)。
なんだったら同い年でやってたテツヤっていうバイトはコウジくんを慕って。遊びに連れていってもらったりしてたからね。夏休み。全然……「羨ましい」と思ってたけど(笑)。そうなのよ! その忘れてた記憶が完全に思い出して。その時のコウジくん、髪の毛はウェーブでなんかパーマをかけて。「かっこよかったな」と思ったその顔から、短髪になって30歳、足した顔……「うわっ、完全に坂部さんじゃん!」ってなって(笑)。だから、こんなことってある? 要はもう俺、3年か4年、坂部さんと仕事してるんだよ?
その3年か4年仕事して。外で初めて、俺がテレ東にまだいる間に仕事をいただいて。外の局で仕事をもらったのって、CXの木月さんかNHKの坂部さんだけなわけ。で、「信用できるから、坂部さんの仕事は何でも受けよう。坂部さんっていう人は優秀だな!」と思ってた人が、俺が高校時代にずっとコンプレックスを抱いていたコウジくんだったっていう。そんなこと、ある? いや、俺は震えてさ。「そんなわけねえだろ?」と思ったんだけど、どう考えてもそうだから。
高校時代、幻影を追いかけていたバイト先の先輩
(佐久間宣行)俺が高校時代、ずっと幻影で追いかけていたバイトの先輩なんだよ。で、それをメール、送ったわけ。「あの、もしかしたらICUですか?」「はい、ICUです.まさに入れ替わりかもしれませんね」って。坂部さんが「すごい嬉しい。こんなこと、あるんですね。自分のいわき時代を……」って。坂部さんって東北新社かなんかにいて、映画監督かなんかやられてからNHKに入られてるんだよ。で、かっこいいものを作ってるのよ。この間もギャラクシー賞、取ってたわ(笑)。ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)』かなんかで(笑)。
で、俺はテレ東に入って……フハハハハハハハハッ! もうずっとだよ!(笑)。で、「自分のいわき時代を形成する大事な要素です」っていうのが返ってきたわけ。で、かっこいいよね。「それが佐久間さんと共通体験だなんて俺、嬉しいです」って返ってきて。「うーわっ!」って思って。「この時点でもう、負けてる!」って(笑)。そう帰ってきて。でもそれで一気に思い出して。たしかに地元にしては珍しく、お洒落な店で。夜には店長が壁にプロジェクターで自分の好きな映画をかけるわけ。お洒落な映画を。
それでたくさん映画とか知って。たぶんだけどコウジくんも俺もこの仕事というか、どこかでエンタメの仕事やりたいと思った礎なのよ。で、俺はよく考えたら、コウジくんがめちゃくちゃかわいがられてたと思っていたからコンプレックスを抱いてたけど。よく考えたら俺、出来のいいバイトじゃなかったけど。その店長ご夫妻に映画に連れてってもらったり、お芝居に連れてってもらったりもしたのよ。夏休みとか。『ジュラシック・パーク』、一緒に見に行ってるんだから。俺。それも思い出したわけ。
劇団黒テントのブレヒトの芝居とかも連れてってもらったのよ。だからよく考えたら、俺もちゃんとかわいがられていたんだけども。そのコウジくんへのコンプレックスが強過ぎて、「俺はかわいがられてねえ」と思いながら3年間過ごしたっていう、あの3年がもったいなかったなと思いつつ……その全部が返ってきて。でもさ、ということはあの店長のおかげで俺はテレビ東京に入ったし、コウジくんは東北新社からNHKに行って坂部さんになって。
その2人がまあ、それなりに頑張って。で、お声をかけていただいて、新しいテレビを考える番組のプロデューサーと出演者としてやって。で、「佐久間さんに出ていただいて本当に嬉しかったです。本当に信頼してます」って言われたのよ。なくした記憶を全部思い出したんだけど……俺、次から坂部さんと話す時、超かっこつけると思うわ(笑)。これ、韓国ドラマだったらここから復讐が始まるから(笑)。これ、すごくない?
<書き起こしおわり>