高橋芳朗 Coldplay X BTS『My Universe』を語る

高橋芳朗 Coldplay X BTS『My Universe』を語る アフター6ジャンクション

(高橋芳朗)で、『My Universe』のタイトルとかコンセプトはクリス・マーティンからの提案だったみたいなんですけど。歌詞はさっきも言ったように英語と韓国語なんですね。で、内容的には広義でのラブソングって言いますか。国境、人種、性自認などを超越した人類の共存をテーマにしていて。「愛は全てを乗り越えられるんだ」みたいなことを歌ってるんですね。で、コールドプレイ的には2019年に出した前のアルバム『Everyday Life』が結構政治的、社会的メッセージの強いヘビーな内容だったんで。もうすぐ出るニューアルバムに対する架け橋的な曲にもなるのかなっていう風に思います。

で、BTSとしても何度も言ってますけど。そのコロナ禍の世界を元気づけることをテーマにしてきた『Dynamite』以降の活動の中で、非常に意義のあるメッセージソングだと思いますね。で、メンバーのシュガも「今まで僕たちが表現してきたメッセージと通じるものがある」っていう風にコメントしてるんですけど。この『Permission To Dance』から国連での世界の若者たちに向けたスピーチからの『My Universe』の流れによって、それぞれのメッセージがグッと強く説得力のあるものになってきたなっていう風にも感じましたね。

(高橋芳朗)あとBTSってアーミーとの繋がりを「Our Universe」って形容していたこともあるんですよ。だからBTSとアーミーにとって「Universe」っていう言葉自体はちょっと特別になってるところがあると思うので。で、実際メンバー、リーダーのRMが『My Universe』のサビのフレーズ。「You Are My Universeというフレーズを自分たちに置き換えるとするならば、僕たちとアーミーの関係になる。いつかまた、アーミーと会える日のことを考えて歌詞を書きました」っていう風に話していたりしました。

で、肝心のサウンドの方に触れると、プロデュースを務めているのはマックス・マーティン、オスカー・ホルター、ビル・ラーコの3人です。で、ビル・ラーコっていう人はダフト・パンクのグラミー賞を受賞した『Random Access Memories』のエンジニアで、2016年からコールドプレイの作品に携わっているカリフォルニアのプロデューサーで。『My Universe』のべーシックなトラックは彼が作ったっていう風に言われてます。で、マックス・マーティンと彼の右腕として頭角を現してきたオスカー・ホルターはザ・ウィークエンドの『Blinding Lights』とか、さっき聞いてもらったコールドプレイの前のシングルの『Higher Power』とかを手掛けてきたコンビで。まあスウェーデンが誇るスーパープロデューサーですね。

で、今回も最近の彼らの作品を継承する80年代風のシンセポップサウンドなんですけど。ちょっとインストルメンタルで聞いてもらっていいですかね? どうぞ。

(高橋芳朗)はい。『My Universe』のインストルメンタルを聞いていただいてもらってますけれども。

(宇多丸)このシンセの感じは完全に一連のウィークエンドとかの流れ……まあ、ジョルジオ・モロダー感と言いましょうか。

(高橋芳朗)で、今回も80年代のヒット曲を連想させるとして、あんな曲に似てるとか、こんな曲に似ているとか、いろんな見解が出てるんですけども。中でも一番、自分で聞いてみてしっくり来たのがキム・カーンズの1981年の全米ナンバーワンヒットですね。『Bette Davis Eyes』。サウンドの雰囲気とコード進行が結構近いものがあるんですよ。ちょっと歌が入って比べにくいかもしれませんけど、聞いてもらえますか? キム・カーンズで『Bette Davis Eyes』です。

(高橋芳朗)はい。キム・カーンズの『Bette Davis Eyes』です。

(宇多丸)このサビを聞くと「ああっ!」ってなる人もいるかもしれないけどね。

(高橋芳朗)字面だけだと「そんなに似てるかな?」って思うけども。いざ聞き比べてみると……。

(宇多丸)イントロのコード進行とか完全にね。だから直接的な参照元かどうかは知らないけども。その気分感っていうのを共有っていうのはわかりますね。時代感の。わかります、すごい。

(高橋芳朗)で、ちょっと露骨な80’sオマージュだった『Higher Power』に比べると、コールドプレイの持ち味のよさと80年代サウンドのバランスがよく取れてる曲かなとは思いますね。いずれにしても、これまでのBTSの楽曲にはあまりなかった曲調なのかなとは思いますかね。じゃあ、ちょっと実際に聞いてみましょうかね。コールドプレイとBTSのコラボレーションで『My Universe』です。

Coldplay X BTS『My Universe』

(高橋芳朗)はい。コールドプレイとBTSのコラボレーションで『My Universe』を聞いていただいております。

(宇多丸)やっぱり歌が入るとすごいコールドプレイっていう感じですね。

(高橋芳朗)近日中にミュージックビデオが公開になる予定で、それも楽しみなんですけども。で、昨日、『My Universe』のレコーディング風景を収めた10数分のドキュメンタリーが公開になっているので。それ、YouTubeで見れるのでぜひ見てほしいんですけど。そのドキュメンタリー中でメンバーのジェイ・ホープが言ってるんですけど。今だったらリモートでも十分にできる作業をわざわざ韓国に、しかもこのコロナ禍の状況下で赴いて行ったっていう、そのクリス・マーティンの誠意がすごいよく伝わってくるのでね。これはちょっとチェックしてほしいですね。

(高橋芳朗)彼は一昨日、TVショーでギターの弾き語りで『My Universe』をパフォーマンスした時も韓国語のパートもちゃんと歌っていたんですよ。ちょっと彼のね、曲への向き合い方がすごい真摯な姿勢が感じられていいですね。

(高橋芳朗)で、この『My Universe』が今後のBTSに及ぼす影響としては、BTSってこれまでプロデューサーに関して結構身内のハウスプロデューサーも含めて、割と独自な人選で曲を作ってきた傾向があるんですね。で、今回のマックス・マーティンみたいなもうナンバーワンヒットを連発しているようなスーパープロデューサーが手がけたサウンドに彼らの声が乗るのは実質、今回が初めてなんですね。だからこれがきっかけになって今後、そのプロデューサーの選択肢が広がってきたら面白いなという風にはちょっと思いますかね。まあブルーノ・マーズとかとコラボしてほしいなっていうのがすごいあるんですけどね。

(宇多丸)後から振り返ると「あれがその布石だったんだ」とかね、そんな可能性もありますしね。

注目のチャートアクション

(高橋芳朗)あとね、チャートアクションもBTSにとってこれが6曲目の初出場1位になるかっていう、そういう楽しみもあるんですけども。あと、この曲のチャートアクションにはひとつ、大記録がかかっていて。プロデューサーのマックス・マーティンなんですけど。今のところ歴史上、全米シングルチャートで最も多く1位を獲得しているプロデューサーって、ビートルズでおなじみのジョージ・マーティンの23曲なんですよ。で、それに次ぐのがマックス・マーティンなんですね。彼のナンバーワン獲得数が22曲なんですよ。だから『My Universe』が1位になれば最多タイになるっていう。

(宇多丸)じゃあ、勝負曲なんじゃん! ある意味ね。

(高橋芳朗)そうですね。

(宇多丸)まあ、でも固いんじゃないの?

(高橋芳朗)今までの、最近のBTSのチャート動向を見ていると、コールドプレイもくっついているわけですから(笑)。コールドプレイ主導ですからね。

(宇多丸)でもさ、よっぽどの対抗馬がいない限りはね。

(高橋芳朗)まあ今、ドレイクがニューアルバムを出してずっと1位をキープしているんでね。そこがどうなるか?っていう感じかな。なのでぜひ、チャート動向にも注目してみてください。

<書き起こしおわり>

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