『大豆田とわ子と3人の元夫』とわ子の娘・唄が医大進学を諦めた背景

『大豆田とわ子と3人の元夫』とわ子の娘・唄が医大進学を諦めた背景 みやーんZZノート

ついに最終回を迎えたドラマ『大豆田とわ子と3人の元夫』、面白かったですね。ドラマを見ている中で僕が一番モヤモヤしていたのは大豆田とわ子(松たか子)の娘・唄さん(豊嶋花)が成績優秀であったにも関わらず「医大に進学して医者になる」という夢を諦めて「18になったら結婚する」と宣言。病院経営者の息子である彼氏・西園寺くんと結婚をするため、花嫁修業的に彼氏に尽くしていたという部分です。

最終的に唄さんは再び医者の道を目指すことを決心するのですが、そもそもなぜ、唄さんは一度、医大進学を諦めようとしてしまったのでしょうか? その背景について、考えてみました。

第3話で突然、「勉強、やめようと思って。もう医大も医者も目指さない。ハタチまでお金持ちと結婚することにした」と言い、勉強関連の本を捨てた中学3年生の唄さん。第5話ではとわ子のサプライズ誕生日パーティーの際、祖父の後妻である幾子から「お医者さんになるのはやめたの?」と聞かれ「18歳になったら結婚しようと思って。西園寺くんっていう病院を持っている家の子がいて。今、その子と付き合っているの。私は医者になれなくても、西園寺くんは絶対に医者になれるから。そっちの方が簡単かなって」と話します。

とわ子が「(医者の仕事は)大変だからこそ、自分で稼いでほしいものを手に入れた時、嬉しいんじゃないか」と話しますが「ママ、大丈夫。3年後、結婚をしてこの家を出るから」と宣言をするなど、その決心は固いことをうかがわせます。同じ第5話で父・田中八作(松田龍平)が唄さんの通知表を見るシーンが出てきますがその成績はオール5。備考欄に「協調性に欠ける」という言葉はあるものの、唄さんの成績は非常に優秀であることがわかります。

そして第7話では高校1年生になった唄さんがとわ子の家を出て、祖父母の家に引っ越します。西園寺くんとの交際は継続している模様。第9話では母、とわ子との通話中に西園寺くんから連絡が入り「ごめん。西園寺くんが『コーラ、買ってきて』って」と伝える唄さん。とわ子から「なんで唄が買いに行くの?」聞かれても「西園寺くん、勉強中だから」となんだかよくわからない理由を話し、電話を切るのでした。

最終話の第10話、西園寺くんの宿題を代わりにしている唄さん。とわ子から「なんで西園寺くんの宿題をやるの?」と聞かれ「西園寺くん、受験勉強中だから」と話す唄さん。「なんで唄が受験をやめる必要があるの?(とわ子)」「何回も言ったじゃん。西園寺くんの方が医大に入りやすいでしょう? 出世だってしやすいでしょう?(唄)」「それは間違ったことだよ?(とわ子)」「知っているけど。それが私たちの現実じゃん。西園寺くんを支える人になった方が生きやすいでしょう?(唄)」と、自分よりも男性である西園寺くんが医者になる方が合理的であると判断をしているようです。

父・八作から「唄はさ、憧れのお医者さん(ナイトウカズミ先生)がいたからお医者さんになろうと思ったんでしょう? 唄が医者になったら、ナイトウ先生、喜ぶと思うよ。現実がどうこうより、そっちの方が大事なんじゃないの?」と聞かれた際も「ナイトウ先生は病院の中でいじめられちゃって辞めちゃったよ。まあ、大人がそういうことを言うのはわかるよ。でも、こっちはそういう現実をこれから生きるわけだからさ」と、憧れの先生が職場でつらい目に遭った現実を知り、医者の道を諦めたことを伺わせます。

「ナイトウカズミ」という名前からは男性なのか女性なのかは判別できません。が、「唄さんが同性の女医、ナイトウ先生に憧れた」と考えた方がなんとなくイメージはしやすい気がします。「男性である西園寺くんの方が医大に入りやすいし、出世もしやすい。それが現実。女性である自分は医者になるよりも、医者の男性を支える人になった方が生きやすい」というのがこの時の唄さんの考えだったのではないでしょうか。

医者になるより、医者の妻になる方が合理的?

2018年の厚生労働省発表の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると医師の数は、男性25万5452人(全体の78.1%)、女性7万1758人(同21.9%)。さらに女性医師は特定の診療科へ偏在が顕著であるようです。医師の世界は圧倒的な男社会なのです。

医師の男女比は8:2 女性の割合増えるも診療科に偏り
女性医師の数は若い世代を中心に少しずつ増えてはいるものの、まだ全体の2割ほど。皮膚科や産婦人科に多いなど、診療科による偏りが目立つ。

医師の世界が男社会であることは、医師の団体の日本医師会の役員の男女数の差からも明らかです。33人の執行部のメンバーのうち、男性は31人。女性はたったの2人。

日本医師会役員紹介|日本医師会|日本医師会
日本医師会の概要や組織の紹介また, 医師会から発信する定例記者会見や日医ニュース等についてご紹介いたします。

医学部入試における女性差別問題

そしてさらには2018年に発覚した医学部入試における女性差別問題。多くの医大・医学部で女性受験者の点数が一律減点され、男性受験者よりも高かったにも関わらず不合格とされていたことが明らかになりました。たとえば東京医科大学では「女性受験者の得点を一律に(一次試験で1割から2割程度)減点し、女性の合格者を全体の3割以下に抑える点数操作」を行っていました。

荻上チキ 東京医科大学・入試で女子受験者を一律減点疑惑を語る
荻上チキさんがTBSラジオ『Session-22』の中で東京医科大学が入試で女子受験者の得点を一律減点し、男子受験者を優遇していた疑惑についてトーク。ネット上の反応や擁護論なども含め、話していました。

「医大の入試の時点で女性である自分は差別される可能性がある。そして医大に入れても、男社会である医者の世界では女性の自分は出世もできず、ナイトウ先生と同じようにいじめられて辞めさせられてしまうかもしれない」と中学3年生の唄さんが考えてしまったとしてもおかしくはありません。

坂元裕二さんは「女性である」だけで16歳の子供に「医者になる」という夢を諦めさせる日本という国の現実を密かに描きたかったのかもしれませんね。ちなみにフランスでは大学の医学部における女性学生の割街は2016年に64%になり、医師数も2021年には男女が同数になる見込みのようです。唄さん、成績優秀みたいなのでフランスでお医者さんを目指すといいと思います!

西園寺くんに対する違和感

そもそも西園寺くん、16歳なのにひたすら受験勉強をしまくっているようなのですが、なぜそこまで受験勉強に集中しなくてはいけないのでしょうか? 唄さんに学校の宿題を押し付けるという描写もあり、またとわ子に「大学全部、落ちてしまえ!」と言われてすぐ、唄に別れを告げる過剰な反応をするなど、西園寺くんはあまり成績が優秀ではない可能性もあります。成績がオール5だった唄さんが女性というだけで医者の道を諦め、あまり優秀でない西園寺くんが男性というだけで医者になる道が開けているというのもおかしな話だと思えてしまいます。

唄さんに電話で買い物を際にも、唄さんは3コール程度で出たにもかかわらず、「何を買っていけばいい? コーラもね。わかった、わかった。遅くなってごめん」と怯えたように話しており、かなり圧をかけて唄さんに接していたように思えます。2人が対等なパートナーの関係だとは到底思えません。とわ子が「お菓子やジュースぐらい、ご自分で買いに行ったらどうでございましょうか?」と言ったことに対しても「いい奥さんになる練習」と答えるなど、西園寺くんからは男尊女卑的な考えも見え隠れしますね。

そんな西園寺くんに対して違和感を覚えながらも「相手、16歳だよ? 私が徐々に教育をしていけば済む話だよ?」と話す唄さん。16歳の子供にこんなことを言わせてしまうなんて、ひどい話です。最終的に「私、やっぱり医者になる。医者目指して勉強する。以上」と唄さんが決心したシーン、本当に最高でした!

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