藤坂ガルシア千鶴 マラドーナの死とアルゼンチン国内の様子を語る

藤坂ガルシア千鶴 マラドーナの死とアルゼンチン国内の様子を語る J-WAVE

ブエノスアイレス在住のライター、藤坂ガルシア千鶴さんが2020年11月27日放送のJ-WAVE『-JK RADIO-TOKYO UNITED』に出演。ディエゴ・マラドーナの死と、アルゼンチン国内の反応についてジョン・カビラさんと話していました。

(ジョン・カビラ)先ほどご案内した通りです。25日、元アルゼンチン代表、サッカーのレジェンド、ディエゴ・アルマンド・マラドーナさん。療養先のブエノスアイレス郊外、ご自宅で亡くなったというようなニュースをお届けしたのですが。世界を駆け巡りました。もう世界のメディアが本当に第一報をすぐに伝えましたね。

今朝はマラドーナへの憧れからアルゼンチン行きを決意し、1989年からブエノスアイレスにお住まいです。マラドーナ自伝を翻訳。『マラドーナ新たなる闘い』『ストライカーのつくり方』などの著者でもあります。南米サッカー関連の記事やコラムを専門誌、スポーツ紙に寄稿、投稿されているライターの藤坂ガルシア千鶴さんに回線を繋いでお話を伺います。藤坂さん、おはようございます。よろしくお願いします。

(藤坂ガルシア千鶴)おはようございます。よろしくお願いします。

(ジョン・カビラ)現地時間は26日のまだ夕方というところなんですけれども。悲しいニュースでしたね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。もうとにかく……でも「まさか」っていうと「やっぱり」っていうのがあって。やっぱり1ヶ月前の突然の入院と手術というのがみんな気になっていたので。でも、やっぱりショックでしたね。

(ジョン・カビラ)ー第一報が街を駆け巡った際……これはもちろん藤坂さん含め、どんなお気持ちでしたか? 周りも含め、どんなリアクションでしたか?

(藤坂ガルシア千鶴)マラドーナって過去、ここ20年間、奇跡的に生き返っているっていうのも変な言い方ですけども。彼は何回も死にかけてるんですよね。で、そのたびに私たちは元気になったディエゴを見てきたので。「今回もまた戻ってきてくれるんだろう」っていう気持ちがどこかにあったんですよ。それがやっぱり、昨日は最終的に「もうダメだ」っていうのが分かった時に、みんなやっぱりものすごく大きな……なんていうですかね? もう頭を殴られたような、大きな打撃でしたね。

(ジョン・カビラ)それで国を挙げて喪に服すということなんですね?

(藤坂ガルシア千鶴)そうです。別に何か特別なことがあるわけではないですけども。たとえば国会の来週まで全部、何もしないことが決まっておりますし。あとはやっぱり国の建造物なんかも全部、アルゼンチンカラーにライトアップされたりですとか。マラドーナの肖像を映し出したり。そういうところであちこちでオマージュをしています。

国中が喪に服すアルゼンチン

(ジョン・カビラ)なるほど。まあ、鎮魂の思いということなんですが。やっぱり旗も半旗になったりとかっていうことになるんでしょうね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。どのクラブとか建物も全部、半旗にしてますし。昨日は夜の10時にアルゼンチン国内のスタジアム全てで照明をライトアップして10分間……そのマラドーナの10番にちなんで。10時にそういうことをしたんですけども。

(ジョン・カビラ)10時に。

(藤坂ガルシア千鶴)はい。

(ジョン・カビラ)で、すぐにこれはラジオ、テレビ含めて特別番組の編成とか……どうでしょう?

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。ずっととにかくそれからマラドーナの話ばかりなんですけども。今、ちょうどまさに棺がお墓の方に運ばれいてるところなんですよ。で、それをどの局も全部生中継で追いかけています。はい。

(ジョン・カビラ)そうすると、道路には皆さん追悼の意を表すべく、お出になっていたりするんですかね。沿道は。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。沿道に出てる人と、あとはそれをバイクで追いかけている人とか。もう、すごいことになっています。

(ジョン・カビラ)なるほど。歴史的にも歴代最年少で代表デビューして。番組の中でも実は先ほどご紹介したんですけれども。1979年、アジア初のFIFA主催大会のワールドユースで優勝、MVP。その後、4度のワールドカップ出場。86年メキシコ大会では優勝。まあ、こういう燦然たる記録、記憶もありつつ、実は若いうちからバルセロナに旅立ったりとか。アルゼンチン……まあもちろんボカ・ジュニアーズとかの履歴もありますけれども。やっぱり国際的に外で活躍してくれたスーパースターっていうイメージなんですかね?

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。アルゼンチンの中でやっぱり「アルゼンチン代表を優勝させてくれた」っていうのイメージが強烈ですね。それが一番だと思います。だから、今回もお通夜……まあこれは本当は仏教用語なんですけれども。お通夜にあたる時にはボカだけではなく、もう全てのチームのファンがマラドーナに最後のお別れを告げに集まったのも、やっぱりそれは代表チームでの活躍が大きな影響を与えていますね。

(ジョン・カビラ)なるほど。ただ、遡るとマリオ・ケンペスというような優勝の立役者もいますけれど。ディエゴ・アルマンド・マラドーナは何がどう違うんでしょうかね?

(藤坂ガルシア千鶴)やっぱりマラドーナはもっと大衆に近いイメージというか。やっぱり弱い者の味方であり。そしてそういう人たちを集めて戦うっていう。どうもアルゼンチンの人たちがイメージするヒーローですよね。弱い者の味方であって、決して自分だけの利益を求めない。システムと戦うみたいな。で、まさにそのままの人だったんですよね。別にかっこつけていたというわけでもなく。で、同僚たち、サッカーの選手たちもみんな、マラドーナのことが好きでしたし。なかなかそういう人はいないのではないかっていうのをこちらでも昨日、話をしてたんですけれども。

みんなに愛されたヒーロー

(ジョン・カビラ)なるほど。ただ、その薬物依存があったり、アメリカ大会では薬物反応が出て追放されたり。その影の部分もあるんですよね。残念ながら。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。ただ、それを彼に言わせると、やっぱり「誰にも迷惑はかけていない。自分で自分を潰してしまった」っていう。そういう自責の念にはかられていたようなんですけども。で、その後はやっぱり自分でもあの86年のワールドカップやナポリで活躍したイメージが強かったので。いつまでも、「あの時の自分に戻りたい」っていう気持ちがずっとあったらしいんですね。で、その葛藤から薬物に走ってしまったりとか。最近はもうずっとアルコール中毒っていう、そういう……だから私も昨日、訃報を聞いて最初に出た言葉は「かわいそうに」っていう言葉でしたね。かわいそうだったなっていう。最後はもう哀れだったなっていう。はい。

(ジョン・カビラ)そうですね。ナポリの2回目の優勝って、あれは彼がもたらしたものですものね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。

(ジョン・カビラ)だってそれ以来、セリエAでのナポリの優勝はないですからね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。私も当時、ナポリで見ていたわけではないので分からないんですけども。現地の人の話ですとやっぱりピッチの中だけじゃなくて、本当に外でもみんなを団結させて引っ張っていくっていう。やっぱり、何においてもリーダーだったっていう。それがやっぱりナポリの人たちの心を引きつけたっていう話を聞きました。

(ジョン・カビラ)それで藤坂さんも、これはマラドーナのどの活躍を見て「会いに行かなきゃいけない。取材をしなきゃいけない」っていう。そしてそれを通り越して「アルゼンチンに住むんだ」って思わせたものは何なんですか?

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。元々、78年のワールドカップでアルゼンチンという国にすごく惹かれていたんですけれども。その後、82年で結構マラドーナが期待されながら、アルゼンチンはダメだったじゃないですか。マラドーナがレッドカードを受けて。

カブキ:ブラジル戦ですよね!

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。それで、悔しくて。そのまま86年で一気に優勝をした。そこで私は「こんな人を産んだアルゼンチンのサッカーを見たい」っていう、ただそれだけの単純な気持ちだったんですけども。それで、まあずっと住みつくつもりはなかったんですけれどもね。そのまま住むことになってしまいました。

(ジョン・カビラ)なるほどでも本当に巨星墜つというか。本当に大きな大きな……現代的な、今のロックスターになっている、そしてセレブリティーになっているサッカープレイヤーが生まれる前の、もう途轍もない存在でしたね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。ものすごく人間くさいヒーローだったと思います。

(ジョン・カビラ)本当に素晴らしいプレーの数々。そして人間味たっぷり。ところが、残念ながら押しつぶされてしまいましたね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。やっぱりあのフランスのレキップ紙が表紙に書いていたタイトルが「神は死んだ。神は亡くなった」という。やっぱり神様も不死身ではなかったっていうのを書いてたのを見た時に、やっぱりそうだったなっていう。で、そうでありながら、でも世界中のファンの心の中にいつまでも永遠に生き続けるっていうところもまた、彼の魅力だったと思うので。

「神は死んだ」

(ジョン・カビラ)そうですね。もうとにかくリアルタイムで見ていた皆さんもさることながら、永遠に映像資料というものは残りますので。これはもしもどんなプレーなのか、お分かりにならない方はYouTubeなりなんなりを検索していただいて、その存在感を。それにプラスして、ドキュメンタリー映画もあったりとかしますので。これをぜひ見ていただきたいですよね。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。選手としてのマラドーナと、あと人間としてのマラドーナっていうのをぜひ知ってもらいたいですね。

(ジョン・カビラ)はい。本当に魂よ、安かれ。祈るのみですね。藤坂さん。

(藤坂ガルシア千鶴)そうですね。まだみんなに追っかけられながら、お墓の方に向かっていますけども。

(ジョン・カビラ)最後まで、そういう存在だったんですね。本当に悲しく……ひとつ時代が終わった悲しい気持ちに包まれています。本当にギリギリ、急なお願いで藤坂さん、ありがとうございます。

(藤坂ガルシア千鶴)いえいえ、とんでもございません。

(ジョン・カビラ)本当に心より哀悼の意を共に送りたいと思います。

(藤坂ガルシア千鶴)これからもぜひ、マラドーナを心の中に残しつつ……。

(ジョン・カビラ)愛し続けます。間違いなく。本当に急なお願い、お時間、ありがとうございます。藤坂さん。

(藤坂ガルシア千鶴)いえいえ、こちらこそ。ありがとうございました。

<書き起こしおわり>


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