町山智浩 2020年アメリカ大統領選挙・開票終盤の見どころと不正の困難さを語る

町山智浩 2020年アメリカ大統領選挙・開票終盤の見どころと不正の困難さを語る YouTube

町山智浩さんが2020年11月6日、自身のYouTube動画『町山智浩のアメリカ急報』で開票が終盤を迎えている2020年アメリカ大統領選挙の見どころを紹介。ペンシルバニア、ジョージア、ネバダの情勢を紹介しつつ、今回の選挙がシステム上非常に不正が困難であること、そして厳重にチェックをしているために開票作業に時間がかかっていることを話していました。

(町山智浩)僕は今、ワシントンDCにいます。ここでずっと大統領選挙の状況を見ています。これは『町山智浩のアメリカの今を知るTV』で放送するために来ていて。明日、生放送をします。明日、金曜日の夜10時24分からBS朝日で放送をします。

(町山智浩)そのロケでここ、ワシントンDCに来ていて。ホワイトハウスのすぐ横にいるんですけども。それで(テレビを見て)これが今現在の大統領選挙の状況をCNNでやっていますけども。今、どこが見どころか?っていう話をしたいと思います。

現在、ここではバイデンさんが「253」となってますけど。これ、他局のFOXとかでは「264」なんですね。これがどうして違うかというと、それはアリゾナ州(11)が入ってるか入ってないかなんですよ。CNNは非常に慎重になってまして、アリゾナ州をバイデンさんの勝ちとしてないんです。で、FOXとかハフィントンポストとか、そういうところはアリゾナ州をカウントに入れているので、この数字が「264」になっていますね。

それで今、勝負どころとなっているのはペンシルバニア州なんです。ペンシルバニアといえば、あの映画『ディア・ハンター』の森の州なんですけど。そこにはフィラデルフィアという大都会があって。フィラデルフィア今、票の集計が進んでいるんですが、これが勝負を決めると言われています。どうしてかと言うと、ペンシルバニアはど田舎で。ほとんど真っ赤……トランプ支持なんですよ。ところがペンシルバニアの中のフィラデルフィアとピッツバーグという大都市だけが民主党支持が多いんですね。

で、そこでは50万票が現在、集計中なんです。で、その50万票を集計すると、現在のところペンシルバニアではトランプさんの方の12万票、リードしている状態なんですが。で、そのフィラデルフィアの50万票が集計されると、たぶんバイデンさんが勝つだろう。一気にバイデンさんが逆転して、トランプさんは負けると言われているんですよ。

で、このペンシルバニアの選挙人数は20なんですね。だからこの「253」に「20」がプラスされると「273」。「270」を取れば大統領選挙は勝ちですから、一気にバイデンさんが勝つということになるんですね。だから、このペンシルバニアが今、勝負どころで。世界中がペンシルバニアに注目してます。特にこのフィラデルフィアの50万票の集計に運命がかかってるという状態です。

フィラデルフィアの50万票の集計に運命がかかる

さっきまではネバダだったんですよ。ネバダの選挙人数は「6」なんですね。だからアリゾナがカウントに入っていた場合は「264」。FOXとかは「264」という風になっていますね。そうなると、わずか6点のネバダを取れば「270」になってバイデンさんの勝利が決まるんですね。合計で「270」になればいいわけなんで。ただ、CNNはアリゾナを入れてないのでちょっと少なくて「253」。だからネバダだけでは決定しないんですよ。

ところが、ペンシルバニアはこれ、20なのでここを取ればどんな集計の仕方をしても一気にバイデンさんが勝つ。だからペンシルバニアが本当に大統領選挙の決戦場に現在、なっているという状況で。これは僕、めちゃくちゃ嬉しいんです。というのは、僕は「ペンシルバニアが決戦場になる」と見込んで、ペンシルバニアの取材に行って。3日間もあの山の中をですね……北海道と九州を足したぐらいの面積なんですよ。ペンシルバニアって。

そこを駆けずり回ってたんですよ。ものすごい、もう自動車に1日3時間とか5時間とか乗って。それでネバダとかで決まっちゃうと、せっかくペンシルバニアを取材したのに、それが全部もったいないことになっちゃっう。ミシガンとかで決定するとそういうことになっちゃうんですが。でも、またペンシルバニア決戦場に戻ってきたので、これは取材した甲斐があった。行った甲斐があったっていうことなんですよ。だからペンシルバニアが決戦場になってラッキーっていう気持ちなんですが。

ところがもうひとつ、ペンシルバニア以外に決戦場になり得るところがあって。それがジョージア州です。ジョージア州は選挙人数が「16」なんですね。で、16点だとCNNの計算だと「253」に16点を足しても「269」にしかならないので、270にはちょっと足りないんですね。でもFOXとかハフィントンポストとかの計算だと、これが「264」に16点を足して「280」。十分にバイデンさんの勝ちが決定するんですよ。

だからまあ、そういうことで。ジョージアも結構今、みんなが注目しています。どうしてか?っていうと、ジョージアって『風と共に去りぬ』で有名な南部の典型的な州なんですが。アトランタ……あの『風と共に去りぬ』の舞台になったアトランタ。あそこはもともとマーチン・ルーサー・キング牧師の生まれたところなんですけども。黒人の人がすごく多いんですよ。

僕、アトランタに行ったんですけども、本当に街の中は黒人ばっかりなんですね。で、そこの票の集計を今、やってるんですが。そこはもう最初から世論調査でバイデンさんに投票する人が多いということがわかっているわけですよ。だから、そのジョージアもひっくり返りそうなんですが。ジョージアの場合、今トランプさんがリードしている票数っていうのはたった……たったの1万2000票なんですよ。たった1万2000だから、これはジョージアもひっくり返る可能性があるんですよ。

ただ、フィラデルフィアとジョージアとどっちが先に集計ができるか、まだ分からないんですね。フィラデルフィアの方は郵便を集計してるんで、時間がかかるんですよ。投票日である「11月3日」の消印があれば、その後に届いたものも集計に入れるっていうことなので、結構時間がかかっちゃっているんですよ。で、ネバダの方もそれが理由で集計に時間がかかっちゃってるんですね。

で、どこが最初にそのバイデン勝利を宣言するのかは分からないんですけども。まああと1日かそこらで決定するかなというところなんですね。皆さん、これで分かったかな? アメリカの大統領選挙の選挙人制度っていうのはすごく評判が悪いです。というのは今回、バイデンさんはトランプさんよりも300万票も多く取ってるんですよ。300万票も多く取ってるのに、負けるかもしれないんですよ。この選挙人制度という特殊な選挙システムのおかげでね。

でも、300万票も勝って、しかも今回は投票率がアメリカ全体で7割。70パーセントが投票してるんですよ。これ、史上最大レベルの投票率なんですよ。それでバイデンさんが総得票数では勝ってますから。だからバイデンさんの得票数は史上最大の得票数になるんですよ。大変な得票数。ところが、史上最大の得票数を取っても選挙人制度というシステムによって今回、大統領選に負けるかもしれないんですよ。すごく変でしょう? 「史上最大の得票数を取ったのに負ける」って、ありえないでしょう?

だからみんな「なんか変だな」って言っているんですけども。でも、別の面から見るとこの大統領選挙は他の選挙よりも面白いですよね? この選挙人制度のおかげでそのストラテジー……戦略がいろいろあるんですよね。だからゲームが複雑になって、ゲーム性が非常に高くなっていて、面白いですね。だからトランプ大統領なんかは「自分は都会では人気ないから田舎を徹底的に攻めるんだ」という方針で。ペンシルバニアなんてど田舎ばっかりを4ヶ月間になんと15回も行ってるんですよ。トランプ大統領は。

で、「とにかく田舎の徹底的に攻めればペンシルバニアで勝てる」ってことで、そういう作戦を取って。一方のバイデンさんはそういう作戦を取らなかったんですね。さっき言ったみたい都会で強いんだったら、都会の人口が集中してるから……って。各州ごとに投票は人口の投票なんですよね。投票数で選ぶから。だから「田舎はある程度捨てて、徹底的に都会の人口の多いところだけを攻める」というやり方をバイデンさんは取っています。戦略は逆なんですよ。このへんがすごく面白いですね。

ただ、アメリカは全体的に田舎の人口がどんどん減っていて。都会の人口が増える、都会に人口が集中するという状況になってますから。まあ世界中どこもそうですけど。だからバイデンさんの方が有利になっているということですね。それで今、ひっくり返りそうなところがネバダとペンシルバニアとジョージアっていうことで。ミシガンとかウィスコンシンとかはすでにひっくり返りましたけども。そのひっくり返ったことに対して「不正だ!」って騒いでるのがトランプ大統領とその支持者なんですが。

そのひっくり返った理由というのは、都会は人口が多いですから。そのために集計に時間がかかる。それは当たり前ですよね。それとバイデン支持の人たちは郵便投票が多かったので、郵便投票も集計に時間がかかっているんですね。どうして郵便投票の集計に時間がかかるかというと、投票所で投票した場合はその人のサインをその場でチェックするんですよね。だからその人が本人であるということがその場でわかるんですが、郵便投票の場合には郵便の封筒にサインをして、そのサインが事前の選挙人登録の時のサインと同じかどうか、その筆跡を1個1個、鑑定するんですよ。1人1人のサインを1個1個。だからすごい時間がかかっているんですよ。

ただ、それで分かるように、日本のように投票用紙自体が誰のものかわからない、誰が投票をしてどうなってるのかがわからないということは、アメリカの選挙ではないんですよ。1票1票、誰の投票なのかを確認してるんですよね。ネバダなんかはゴチャゴチャ言われないようにもう1回、確認をやるって言っているんですよ。これ、すごいことですよ。不正しにくいんですよ。ものすごく不正しにくい。要するに、誰の票なのかがわからない票というものは1票もないんですよ。全て、誰が投票をしたのかがわかって。しかも投票した人はその後、自分の投票がちゃんとカウントされて集計されていたのかをチェックすることもシステムでできるんですよ。

不正が難しい投票・開票システム

だから二重投票とか、あり得ないんですよね。このシステムのせいで、逆にウィスコンシン州では、その投票者登録というのを投票日の当日にもやれるので。だから実際の投票数がその前の投票者登録数よりも超えちゃったんですね。でも、それはすぐに修正されました。というのは、当日に投票人登録した人の分が投票人リストの中に入ってなかったからなんですよ。だから、その人数が一時的に100パーセントを超えたんですけども、そのあとにちゃんとその人数もリストに入ったんで、完全に一致しました。

というか、完全にその投票人登録と投票が一致しなければ、投票としてカウントされないので。だから絶対に不正が不可能なシステムになっているんですよ。「票を盗んでどこかに捨てる」とか、そういうことはできないんですよ。1個1個、見ているんですよ。こうやって。うちは娘が郵便投票したんで、全部封筒とかを見ましたけれども。で、そのサインが一致しているかどうかの鑑定の仕方っていうのも、ちゃんとインターネットに出てるんですけど。

歳を取って手が震えたりして字が……サインってどんどん変わっていくじゃないですか。癖が付いて。そうやってサインがどんどんどんどん変わっていって元のサインよりも歪んだとしても、その人が同一であることを判定するか筆跡鑑定のテクニックっていうのはマニュアル化されていて。それで全部集計してるんですよ。で、「集計にめちゃくちゃ時間がかかる」って言われているのはそのせいなんですよ。

だから具体的には「G」の書き方とかね、「Y」の書き方とか。いろんな癖がありますね。「M」の書き方とか。癖のある文字に注目してチェックするんですよ。同じかどうか。あとは「○」なんかも書き方はみんな人によって違うんですね。「O」とかね。あとは「i」の点の打ち方とか。そういうのでみんな癖があるんですよ。そこをポイントとして見ろってことになって筆跡鑑定をして1個1個確認してるので、不正ってできないんですよ。

(町山智浩)不正をするためには、その最初の選挙人登録自体を架空のものにするか、そのチェックを受けた後の票の段階で操作するしかないんですよ。そうする集計者の中にその筆跡鑑定をチェックした後、その投票用紙自体を改ざんするとか、そういったことが必要になるんですけども。「そんなに票差がない」とか言いながらも、12万票とか2万票とか4万票とか、そのぐらいの票差が出てるんで。集計場所で4万もの票をごまかすことはできないですよね。しかも、その登録人数と投票者数が一致しなければならないから、その後に投票用紙を捨てたり増やしたりすることもできないんですよ。

だから不正はシステム的に非常に難しくなっています。だからトランプ大統領は「不正だ! 不正だ!」って言ってるんですが、それはものすごく難しいです。何万ものを票をそういう状況で不正することはできないのと、集計場所にはすべて両党の監視人が入っています。共和党の人も民主党の人も、その集計場所に既に入ってるんですよ。それなのに、そんなことができますか? できないですよ。だから投票の不正はナンセンスなんですよ。

「郵便投票だから不正がある」って、郵便投票で郵便でキャッチしてからそのサインをチェックするわけですから。不正はできないんですよ。だからトランプさんは無理なことを言ってるんですが、ただこのままだと負けそうですからね。しかも、わずか1万票とか……ネバダにいたってわずか8000票で負けそうなんですけども。それに関してはやっぱり同情しますよ。そんなわずかな票差で負けるのは悔しいっていうのはね。ただ、全体ではトランプ大統領は300万票も負けてるんですよ。300万票も負けていて、しかもこの選挙年制度のおかげでギリギリで勝てる可能性もあるんですけれども。

でも、史上最高の得票数を取って、トランプさんよりも300万票も多く取ってるバイデンさんが大統領になれないっていうことになったら、それは民主主義としてどうなのか?っていう問題にもなってくるでしょうね。まあいろんな問題がありますけれども、今現在の状況はこんな感じで。大統領選挙にあんまり興味ない人でもペンシルバニア州のフィラデルフィアでどうなるかが今、勝負がかかっています。ジョージア州のアトランタでどうなるか、そこがアメリカの大統領選の勝敗を決めるという状況になってるっていうことがわかると、面白くなりますよ。

そのジョージア州の票差はわずか1万2000票差でトランプさんがリード。それでペンシルバニアでは12万票差でトランプさんがリードですが、50万票のフィラデルフィア市民票が今、数え直し中で。この12万票のリードは簡単に超えると思います。それで決定するかもしれないという状態に今、なっています。今日、明日中にもしかしたらこの集計結果が出るかもしれないと。もしかしたら明日かもしれないと言われてますけど。このポイントが分かると面白くなりますよ。

<書き起こしおわり>

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