安住紳一郎『生放送!! 半沢直樹の恩返し』の舞台裏を語る

安住紳一郎『生放送!! 半沢直樹の恩返し』の舞台裏を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2020年9月13日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で自身が出演した半沢直樹の生放送特番『半沢直樹の恩返し』の舞台裏について話していました。

(安住紳一郎)ああ、そう。生放送のトラブルと言えば先週の日曜日ですね。1週間前。ドラマ『半沢直樹』が全10話でTBSテレビでお送りしてるんですが、その第8話が制作が間に合わないということで。このままでは穴が開いてしまうということで、急遽生放送を。ドラマの裏話などで1時間、放送を逃げ切るということになったんですけども。生放送ということがありまして。私、お呼びがかかりまして。急遽だったんですけども、お役に立てたらいいなということで、喜びいさんで参加したんですけれども。

(中澤有美子)楽しく拝見しました。

(安住紳一郎)いいえ。なかなか危ない橋だなと思いましたけれど。ねえ。とにかく今ね、注目されているドラマなので。ドラマの世界観を壊してもいけないですし。またね、楽しみに待っていらっしゃる方のその少しでもね、代わりになるようなプログラムをということでスタッフ、頑張ってるようでしたけれども。今はテレビ、ラジオでもそうですけど、収録番組と生放送があるっていうのは皆さんも分かると思いますけど。結構ですね、収録番組っていうのは「完パケ」っていって。

「完全パッケージ」っていう。いわゆる、その番組を全部収録して、編集して。そして音なんかも直して。BGMを入れて……っていう。いわゆる、きちんとしたひとつのテープ、記録に媒体したものを放送局の送出係に渡して。で、その送出係、電波を出す係の人たちが上手に時間通りに電波に出すっていう仕組みになってるんですが。これ、分かりますよね?

(中澤有美子)はい。完全パッケージ、完パケ。

完パケ納品の納期

(安住紳一郎)完全パッケージ、完パケっていうのを送出部……「マスター」って言ったりしますけども。その人たちに渡す。その期限が決められてるんですよね。ぎりぎりに渡しちゃったりすると組んだりするのが大変だし。その人たちが慌てる必要はないわけなので。意外に早くて、4日前なんですよ。私たちが働いているテレビ局は。4日前には完全に放送に出せる状態の完全にパッケージされたものを納品しなきゃいけないんですよね。

で、遅れる場合は上長のサインとか決済が必要で、「かくかくしかじか、こういう理由で遅れます」っていう風に言わないと認められないんです。だから結構早めに完成をさせておかなきゃいけないので『半沢直樹』ドラマ第8話も結構ね、早めにもう「できない」というのがわかったというのは、そういうことなんですよ。4日前にもう「ああ、これは無理だな」っていうことがわかったということなんですね。

完全パッケージ。完パケっていうんですが。昔は見える感じで完パケってなって。昔は「D2テープ」っていう大きな、ファミレスのメニューぐらいの大きなテープのお化けみたいなのがありましてね。それにきちんと録画・録音して提出する。しかも、なんかトラブルがあっちゃいけないので、同じものを2本、納品するっていうのがスタイルでしたね。

なので、作り上げてADさんがその重めの2本を運ぶっていうところで仕事終わりという感じですね。で、そのテープをかけて電波を飛ばしてる時にそのテープに故障があると、もう1本同時に同じ時間でデッキにかけているので、急遽Aのデッキが壊れたらBのデッキにすぐにガチャン!って乗り換えるっていう感じですね。で、両方ともダメになった場合はお花がクルクル回って。「しばらくお待ちください」ということになるんですが。今はもう随分と進んで。今はXDカムっていうDVDのお化けみたいなのがあるんですけど。業務用なんですけども。これを納品しているっていうことなんですね。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)ラジオの場合だとパソコン上のデータでほぼ送られてますけど。収録番組だと。あとは本当は一部、MOっていう分厚いフロッピーみたいなものを納品しているということになりますね。なんかこの、作った番組を納品するっていう感じもぜひね、皆さんに知ってほしいなと思いますね。できた時の喜び。そしてそれを運ぶ時の恐怖ね(笑)。

(中澤有美子)ねえ。責任重大な感じ、ありますよね。

(安住紳一郎)そうなんですよね。現金輸送みたいな感じで運んでいますよね。だってね、それをどこか途中で失くしちゃったらね、終わりですもんね。で、先週の日曜日の生放送なんですけども。緑山スタジオ……横浜青葉区にありますこどもの国の近くにありますドラマを撮影しているスタジオなんですが。非常に大きなスタジオで。でもそこはドラマを撮るスタジオなどで、生放送の設備はないんですよね。

なので「緑山スタジオから今夜は生放送でお伝えしています」というと言葉の語呂的には何となく、ごくごく自然に聞こえるんですけども。生放送の設備はないですから。純粋に街角で中継しているのと同じような状況なんですよね。ただスタジオがきれいなだけで。なので、生放送で私は呼ばれて……生放送と収録番組ってちょっと流派が違うくらい仕事のやり方が違って。

それでまず行ったらあれなんですよね。生放送の設備がないスタジオなので、時計がないんですよね。それで「時計がないと困る!」というところが始まってね。「時計がないのは困る。体内時計でやるわけにいかないし……」みたいな(笑)。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)好きなだけしゃべって好きなところで終わっても困るんですよ。「なんとなく始めます」っていうわけにもいかないから。「そうですね」みたいなことになるので。まあ、ちょっと極端ですけどね。そしたら、その普通の生放送のスタジオだときちんとした時計も……時計祭みたいに時計、時計じゃないですか。もう目の行く先々に時計を置いてくれているから。

(中澤有美子)はい(笑)。

(安住紳一郎)そしたらやっぱりないから。ホームセンターで売ってるような白い壁掛けの丸時計を床に立てかけてね。そうすると「おお、見にくいな……」みたいな。「ああ、そうか。これか」って思って。「これでいいですか?」「これでいいですね。あ、ちょっと秒針、見にくいですね。これ、表面のガラスが反射して秒針が見にくいですね」みたいな。「秒針、大事ですか?」「秒針、大事ですね。秒針ないと困りますね。むしろ、生放送のスタジオの秒針は赤ですね」って。そうですね。秒針の方が……分針とかね、むしろあれだもんね。一番短い短針はいらないぐらいだもんね。

(中澤有美子)そうですね。むしろ秒針ばかり。

時計の秒針が重要

(安住紳一郎)秒針ばかり見るよね。「えっ、この秒針、あれですか? 私の位置から見えますかね?」「ちょっと見えませんね」「ちょっと秒針、赤く塗ってみますか? これ、フタは外れますか?」「ああ、外れますね。じゃあ、ビニールテープで先端、赤く巻いてみます。巻けました。ちょっとやってみてください」「あ、ちょっと秒針が重くなったから途中で遅くなりますね」「ダメですね。ビニールテープ、はがしてください」みたいな。

「ああ、困りましたね。ちょっとメイクさんが持っている黒いゴムを先端に巻いてみますか?」「いいですね。それでチラチラチラチラ、猫じゃらしみたいになってわかりますね」「ちょっとこれでやってみますね。引っかかりますか? じゃあ、ガラス蓋を半浮かしにしてください」「ああ、いいですね、いいですね。それ、いいですね。じゃあ、それでやってみましょうか。ランスルー、はい、行きます!」「ストップ、ストップ! 6のところでリボンが落ちました!」みたいな(笑)。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)そうなるわなっていうね。うん。もう日曜に7時半ぐらいで。「ええっ? れれれれれれ?」みたいな。「ああ、そうか、そうか……わかった。はい。わかりました。じゃあ、ガラス蓋だけ取ってみましょうか?」みたいな。で、ドラマのセットをお借りして。かっこよかったですね。東京中央銀行のセットが。

ただ、セットをお借りしてるんで、あんまりカメラが前の方に来れないんですよね。で、生放送だとそんなにカメラと出演者って離れてないんですよ。意外に。なので、ちょっとした中華レストランのウェイターと客ぐらいの距離でやってるんですけど。「困ったな」と思って。やっぱりね、ドラマを撮っているから。広い世界観、大事にしてますからね。カメラが遠いんだよね。

(中澤有美子)そうなんですか。

(安住紳一郎)「うわー! あら、遠い!」みたいな感じになっちゃって。「あららららら……困ったな」みたいな。もう大手町・東京間ぐらいあったね。ちょっとね。「これはちょっと遠いな。2駅分ぐらいないですか、これ?」みたいな感じで。で、当然、見えちゃいけない、映っちゃいけない時計とかスタッフとかもそれぐらいの距離になりますから。もう私、ほとんど収録、生放送っていうよりも視力検査みたいになっちゃって。ずーっと時計を「ああ、時計が見えないな……」って。

集中してグッと、片目をつぶったりとかして。目を細めたりとかして。「うーん……あ、見えた」みたいな。そんな感じでしたね。すごい新しい挑戦でエキサイティングでしたよ! 香川さん、堺さん、及川さん、愛之助さん。ねえ。児嶋さんもいて面白かったですけども。ヒロミさんと久本さんにもお手伝いいただいたんですけどもね。いやー、やっぱり慣れないことをやると怖いなと思って。

(中澤有美子)こんなところにそんな大変さがあったんですね。

(安住紳一郎)ものすごいアナログでしょう? ねえ。やだやだ。2020年の話よ? もう手作り感満載ですね。秒針が見えないっていうことが2020年の生放送での私のトピックスですよ!

(中澤有美子)想定外(笑)。

(安住紳一郎)そうね。楽しかったー。ねえ。

(安住紳一郎)あとは『半沢直樹』ですけども、TBSラジオはあまり関係ないっていう風に思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが。実は今年の2月、3月ですかね。『半沢直樹』のスピンオフのラジオドラマっていうのを放送しましたね。ちょうど前回の放送、7年前の『半沢直樹』でいわゆる半沢直樹にやられてしまった人たち。敗れ去った者たちのその後っていうことをラジオドラマで放送して大変評判いただいたわけですけども。

今回も東京初台の新国立劇場で昨日、今日と朗読劇をやってますね。ぜひ興味のある方は……さすがにもう直接行くチケットはないと思いますけれども。ストリーミングで朗読劇を自分のスマートフォン、パソコンなどで。1800円だったかな? チケットをネット上で買うと今日の12時、それから夕方4時かな? 2回の回はたぶん見られると思いますので。よかったら『半沢直樹』のアナザーストーリーの朗読劇をやってますので調べてみてください。

<書き起こしおわり>

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