宇多丸 山本寛斎の訃報を語る

宇多丸 山本寛斎の訃報を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2020年7月27日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で山本寛斎さんの訃報についてトーク。山本寛斎さんが俳優として出演した映画『青の炎』などについて話していました。

(宇多丸)ひとつ、日本のカルチャーニュースとして僕、ちょっと驚いてしまったんですが。山本寛斎さん。世界的なファッションデザイナーですね。山本寛斎さんが白血病で亡くなられていたという。7月21日に急性骨髄性白血病で76歳で亡くなられたということで。お若かったですね。3月には白血病であることをInstagramで発表されて闘病を続けられていたということなんですが。ということで、もちろん偉大なファッションデザイナーの山本寛斎さん。ご冥福をお祈りしますということぐらいしか、この場では言えないんですけども。

ひとつ、僕はどうしても山本寛斎さんっていうとかならず思い浮かべることがあって。これ、映画ファンとしてっていうか。『青の炎』という2003年の作品。蜷川幸雄さん。お父さんの方の映画作品なんですね。

『青の炎』(2003年)

(熊崎風斗)はい。

(宇多丸)嵐の二宮和也さんと松浦亜弥さん。当時、あややも人気絶頂期っていう感じでしたけども。その2人の主演で作られた『青の炎』という作品で山本寛斎さん。これは非常に異色のキャスティングだったと思うんだけども。割と酒乱のおっかないお父さんというか、全ての元凶というか。二宮くんのお父さん役かな? そんな感じで。熊崎さんは見ていますか?

(熊崎風斗)私は見たんですけど、記憶がそこまで鮮明じゃないのと、その酒乱のお父さんのくだりは覚えているんですが、それが山本寛斎さんだったというのは今日、宇多丸さんがお話をされていて初めて気づきました。

(宇多丸)でも、それぐらい……もちろん山本寛斎さん、普段メディアに出る時はもちろんかっこいいし、シュッとしていて。それで穏やかな感じで……っていう。僕らとしても、常に笑顔の印象が強いじゃないですか。その山本寛斎さんをここにキャスティングして、ものすごい野卑な乱暴な……もう知性の欠片も感じさせない、「たしかにこの親父が全ての元凶だ」っていうような役柄で。もう強烈なんですよね。だから、この存在が全体に影を落としているっていうめちゃめちゃ重要な。出番としては多くはないんだけど……っていう役柄じゃないですか。

(熊崎風斗)はい。

(宇多丸)だから僕も、最初に見た時に見ながら「えっ? これ、山本寛斎さん?」っていう。で、クレジットを見たら「やっぱりそうだ!」みたいな。だから蜷川幸雄さん、すごいキャスティングをするなっていう。たまにこういうさ、それまでのイメージからするとめちゃくちゃ意外だけどハマるキャスティングみたいなのって映画において、あるじゃん?

(熊崎風斗)演技のイメージとかもないところをキャスティングでパッとやって、それががっちりとハマるっていう。どこに目をつけたキャスティングなのか?っていうのも。そのキャスティングの妙というか。

(宇多丸)まあ、蜷川幸雄さんとお親しかったんでしょうけども。蜷川さんから見たら「まあお前はこういうところ、あるよな」っていうことなのかもしれないですけど(笑)。以前、ピエール瀧さんにもね……TBSラジオでも縁が深いピエール瀧さん。まあ怖い役をいっぱいやっているじゃないですか。で、今となってはそのイメージの方も「なるほど」っていうことになっちゃったかもしれないけど。まあ、言い方があれだけども。

で、ご本人に『凶悪』とかでめっちゃ怖い役をやられている時に「いやー、瀧さん、あの演技、やっぱりすごいですよね。瀧さんもこういうところ、ありますよね?」って言ったら「ねえよ!」ってものすごい怒られたんだけど(笑)。でも、「この人にこれをやらせたらいいだろう」っていう風にハメて、それがハマるっていうのはすごく……キャスティングを決めたのがどなたなのかはわかりませんが。これはおそらく蜷川さんでしょうけども。すごいなって思って。ものすごく印象に残っていたんです。

(熊崎風斗)はい。

(宇多丸)なので、訃報の直後にいきなりこの話を出す人もなかなかいないと思うけども。僕の中では……だから「役者・山本寛斎」っていうのが他でも見てみたかったなっていうぐらいの感じで。

もっと役者・山本寛斎を見てみたかった

(熊崎風斗)そんなに他で出ているみたいな感じでもないですもんね。

(宇多丸)僕もちょっと不勉強でそこまではわからないけども。とにかく、なかなか強烈な……まあ名演と言っていいと思いますんで。出番はそんなに多くはないんですけども。2003年の『青の炎』、ぜひ皆さんもご覧になってくださいということですね。

<書き起こしおわり>

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