いとうせいこうと吉田豪 みうらじゅんを語る

いとうせいこうと吉田豪 みうらじゅんを語る SHOWROOM

いとうせいこうさんが2020年7月7日放送のSHOWROOM『豪の部屋』に出演。吉田豪さんとみうらじゅんさんについて話していました。

(吉田豪)和田彩花さんとみうらじゅんさんの対談が雑誌であった時にその質問もしたんですけど。想像以上に面白かったんですよ。想像以上にちゃんと噛み合っていて。仏像好き同士で。

(いとうせいこう)そうだよね。その道あるからね。

(吉田豪)そうそうそう。なのでね、この2人もどれぐらい深い話になるんだろうと思いながら聞いていましたよ(笑)。

(いとうせいこう)フフフ、そうかそうか。

(吉田豪)あれですよね。みうらさんに本のサインを頼んだら、いとうさんのサインも勝手に書いてくれたっていうね。

(いとうせいこう)よくある人ね、僕のサインをするんですよね。知らない間に。前は……「前は」っていうか、一応僕らの中での話し合いとしては、どちらかが頼まれたらどちらかがそっちを空けておいて。で、「もう1人に会ったらここも埋めてくださいねっていう風にしようね」って言ってたはずなのに、いつの間にかそれがなんか「もう一方も書いていい」っていう風に思っちゃったみたいで(笑)。で、割と似てるんだよね。僕の字の特徴を掴んでいて。

(吉田豪)ああ、ちゃんとできちゃっている?

(いとうせいこう)そうそう。だから特にあれは贋作でもないみたいな位置に来てますね。

(吉田豪)日本のサブカルの世界において、本当にみうらさんの存在ってすごいデカいと思うんですよ。たぶん本来だったらそんなに横の繋がりとができないような個人主義の人たちをみうらさんが力づくで繋いでいった感じもあるし。

(いとうせいこう)そうそう。何の意味があって繋いでるかが本人にもわかっているのか、わかってないんだかが不明なんですけど。まあ……というか、繋がらないと気に食わないみたいね。あの人は。

(吉田豪)フフフ、なるほどね(笑)。

(いとうせいこう)そういうのは友達にならなきゃダメな主義だから。それでグイグイグイグイ入ってくるところはありますよね。あの人は。あの人の類まれなエディターシップっていうかね。編集者根性ですね。あれは。

(吉田豪)「こうした方が面白くなるんだったら……」みたいな。

(いとうせいこう)そうそうそう。あの人は本当にそういう編集的なセンスがピカイチだから。意外に、本当にみんなの企画とか連載とかもよく見てるしね。「あれはいい」「あれは悪い」とか。でも的確なんです。で、僕もものすごい攻めた企画みたいなのを考えた時に「みうらさん、こういうのをやろうと思うんだけど、どうかな?」とかって相談したことも何回もあったの。それで「いとうさん、それは早い」とか(笑)。「早いってなんなんだよ?」っていうね(笑)。「まあ、そう言うならそうか。やめとくか」とか。面白いですよね。

(吉田豪)うんうん。僕もみうらさんとリリーさんが飲んでる時に呼び出されて。「3人で一緒に出家しよう」って言われたことがありますよ(笑)。

(いとうせいこう)あのね、出家に関しては、1年のある時期ね、そういう病にあの人、かかるんだよね。5月病みたいな。

(吉田豪)フフフ、出家したくなる病に?

毎年、ある時期になると出家したくなる

(いとうせいこう)出家したくちゃっちゃって。もうこの世の中が嫌になっちゃって。前は本当に5月によく来てたんですよ。で、「ああ、気候の関係とかで人はある程度、落ち込むもんなんだな」と思っていたらこの頃は4月になり、3月になり……なんかこう、桜の開花宣言がだんだん早くなっているみたいな。割と出家が早めになっているね。この頃は。

(吉田豪)フフフ、ただの季節の風物詩なんですね。

(いとうせいこう)そうそうそう(笑)。だから聞き流していれば終わる話なんだよね、あれは。

(吉田豪)鵜呑みにしちゃいけないんですね?(笑)。

(いとうせいこう)そうそう。鵜呑みにしちゃダメなの。

(吉田豪)結構僕とリリーさん、本気にしてましたからね。「どうしよう?」っていう。

(いとうせいこう)「本当にできるならしようかな?」ってやっぱりついつい思っちゃうけど。最初、蓋を開けたらみうらさんがしないと思うから。

(吉田豪)いとうさんも相当誘われてきたわけですね。

(いとうせいこう)もちろん、もちろん。僕もね、同じ仏像好きだから。余計ですよね。「いろいろあんなことを書いてるのに出家もしないでどうするんだ?」っていう攻め方も僕の場合、されるわけじゃないですか。そっちも知ってるから。でもまあ、大抵それはお酒を飲んでる時だから。「もう帰るよ」って言えばシュンとして帰りますよ。

(吉田豪)フフフ、それだけの話?(笑)。

(いとうせいこう)それだけの話。

(吉田豪)なんでみうらさんとこんな仲良くなったんですか?

(いとうせいこう)それはだからみうらさんのそのエディターシップで。あの人が……それこそスペシャの番組で。

(吉田豪)でも、そんな後なんですか?

(いとうせいこう)そうですよ。僕とみうらさんはだって全然生息地が違ってたから。

(吉田豪)まあ講談社とかあのぐらいの時期、80年代とかはほぼ接点がなく?

(いとうせいこう)そうですね。僕が勤めていたその『ホットドッグ・プレス』自体の表紙にみうらさんが使われた時もあるんですよね。牛の絵だったと思うけど。その時も、結局他の先輩の編集者が担当だったし。だから、会いそうで会わなかったんだよね。それで向こうは向こうでその「くそっ! 東京のスタイリッシュな野郎め!」って思ってるから。

(吉田豪)まあ糸井さんの流れのね。

(いとうせいこう)そう。あの人は「東京憎し」の部分があるから。で、僕は僕でなんかすぐ喧嘩したりするようなところを避けてきたところがあるから。お互いにたしかに生息地には入らないようにしてたんですよね。明らかに。でも、それでそのスペシャの番組で……あれはね、安齋肇さんもいたかな? あと、えのきどいちろうさんとか。あのへんと一緒にみうらさんが「ローリング・ライター・レヴュー」とかって言って。

(吉田豪)はいはい。「ライターもモテるべきだ」ということで。ライターがツアーをやった時期ですね(笑)。

(いとうせいこう)人前でなんか原稿を書くっていう、ロクでもないことをやっていた時に一応、バンドのメンバーのテイでスペースシャワーに。音楽専門チャンネルだからそのテイで来たんですよ。

(吉田豪)ああ、なるほど、なるほど。

(いとうせいこう)それで僕はたぶん司会をしてて。それで話をしていたら、その冗談の質がすごい合ってるっていうことがお互いにわかったんですよ。「ああ、こういう人なんだ」っていうのでお互いに笑ってたら、10日ぐらい後だったかわからないけど、急に連絡があって。「ちょっと事務所に来てほしい」っていう風に言い出して。そんな変なゲスト、いないじゃないですか?

(吉田豪)はいはいはい。突然の呼び出し(笑)。

「ちょっと事務所に来てほしい」

(いとうせいこう)そうそう。「なんなんだろうな? 気に食わないことでもあったのかな?」みたいな感じで。なんかよくわかんないけど、僕もふとした心の隙があったんだろうね。で、行ったらもうすごいおもしろくて。お話が弾んじゃって、弾んじゃって。で、みうらsんもよく言うことだけど、気がつくともう電気もつけるのを忘れてしゃべっているっていう。暗いところでずっと何時間もしゃべってるんですよ。で、その時に既にみうらさんは仏像スクラップブックも見せてくれていたし。

あと、なんか僕に見せてきていて……まあ、要するにあの人は「接待」と呼んでいるものをしてきたんだけど。あの人の……一応、あの人曰く、実際に僕も外から見ててそう思うけど。そういうものを出して来られちゃったら、人はそれを褒めざるを得なくなるから。「いいね」とか「ああ、そうなんだ」とか。あるいはちょっと言葉少なにならざるを得ないじゃないですか。でも僕はちょっと思ったことは割と言う質があるから。ツッコミ癖があるから。「こんなもん集めてどうすんだよ」とか。

(吉田豪)「あんた、頭がおかしいよ」的なことを?(笑)。

(いとうせいこう)そうそう。「こんなもん、事務所に持ってくる必要ねえだろ?」とか。そういう、まあ的確なことをずっと言ってたんですよ。それが好きだったみたいで(笑)。

(吉田豪)なるほど。ちゃんと突っ込んでくれる人が出てきて……。

(いとうせいこう)そうそう。で、自分でも笑っていたもん。それで「あ、そうだった、そうだった。いけねえ、いけねえ。これ、おかしいことだったんだ」っていうことに本人が気づいた夜だったっていうことみたいですよ。どうやら。

(吉田豪)じゃあそのぐらいから本当に急速に。それこそバギナーズだの何だのとか……。

(いとうせいこう)でも全部、あの人の誘いですからね。

(吉田豪)フフフ、誘われらとりあえず乗っかる?

(いとうせいこう)そうそう。だってその『見仏記』っていうね、もう今はシリーズ7巻ぐらいまで出ちゃってるけど。あれだってもうその話し合った1、2週間後じゃないかな? 中央公論から何か連絡があって。「仏像を見て歩くその連載を始めてほしいんだけど」「いや、そんな時間、ないんだけどな、俺」とか思ったら「いや、実はもうみうらさんがもうそれはOKを出している」っていう。だからその和田さんにサインを書いた話と同じですよ。

(吉田豪)勝手に?(笑)。

(いとうせいこう)「いとうさんのOKは取ってある」っていう嘘をついて。

(吉田豪)勝手に企画を立てて、通しちゃって。

(いとうせいこう)「これはやるべきだ」と言われて。でもまあまあ、企画としてはたしかにそれは面白そうなんですよ。言われてみれば。ちょっと嫌だったんだけど、まあしょうがないなと思ってやるようになったっていう、そういう急速さですね。

(吉田豪)で、一緒に旅とかしたら、そりゃあもう濃厚になるだろうしっていう。

(いとうせいこう)そう。それでまたほら、それこそかならずお酒飲みに行くから。僕はそんなにお酒も強くないし。まあお酒、飲みに行ってもいいけど1時間、1時間半ぐらいでサッと帰りたいわけですよ。だけどもうグダグダになるまで飲んでるから。でもその時、僕はもうみうらじゅんのその飲み方のダメさがやはり的確によく分かったから。あの人ね、本当に酔ってきた時はもう本当、よくわかりやすいんだけどね。同じ話を始めるんですよ。

(吉田豪)はいはい。わかります。

(いとうせいこう)わかりますでしょう? で、「それ、さっきも聞いたよ」ってはっきり言ってやると、自分も「しまった!」って思うみたいで。「もう帰るよ」って言うと「わかった」って言って帰るんですよ。

(吉田豪)そうか。ちゃんと言ってあげるべきなんですね、そうやってね。

(いとうせいこう)言ってやらないと、最初からまた同じ話をしてるから。あの人……で、それはあの人のサービスだからね。だって、あの人が疲れちゃうから。まあそれを言うと、何かこうちょっとした犬みたいな顔で。「ハウス!」って言われた感じになってお家に帰りますよ。あの人は。

(吉田豪)うんうん。本当、サービスの人ですよね。あの人はね。

サービスの人・みうらじゅん

(いとうせいこう)そうなんですよ。悪気があってやってるわけじゃないから。そこはだからみんなもね、向き合わざるを得なくなっちゃったんだろうけど(笑)。

(吉田豪)僕も一緒にキャバクラに行った時に「これはすごいな」と思いましたもんね。

(いとうせいこう)もう誰に対してもサービスしてるでしょう?

(吉田豪)サービスするし、食べもしないのにとにかくフルーツの山盛りを頼んだりとか(笑)。とにかく無駄遣いをしようと頑張っていたりとか。

(いとうせいこう)そう。頑張る。それはね、「悪く思われたらどうしよう?」っていう気の小ささからも来ているんだよね。それが見ていてかわいいんだよね。だからまあ大勢で飲む、他の人がいる時はだいたい僕はもうスーッと帰るし。みうらさんもそれを知っているから。「もういいじゃん、俺がいなくても」っていうね。「みんな聞いてくれるから、俺は帰るよ」って言って帰ってきたから。また、なのでちょっと特殊な……というか、お互いに楽な付き合い方が最初にできたからよかったんでしょうね。

(吉田豪)個人的に大好きな話がバギナーズという女装ユニットを「女装」と発表しないでやってたじゃないですか。

(いとうせいこう)はいはい。やってました。

(吉田豪)杉作J太郎さんが本物の女性だと思ってズリネタにしたって話が大好きで(笑)。

(いとうせいこう)そうなんだよ。きれいだったっていうね。

(吉田豪)気付かないで(笑)。

(いとうせいこう)それはね、あれはメイクだっていいメイクを付けてますしね。カメラマンもね、三浦憲治だから。吉永小百合を撮っている人ですからね。その人がばっちり撮ってくれているから、いい写真なんですよ。自分たちも大喜びでプリントをもらって帰ったもんね(笑)。

(吉田豪)フフフ(笑)。

(いとうせいこう)でも、それぞれ自分が好きなんだよね。自分のプリントをもらって帰ってたもん。人間ってそうなんだね。やっぱりなんか骨格とかが似てるものが好きなんだね。だからその時、すごい怖いほどわかった。だから誰かがその人の好みってその人の
顔なんだっていう。意外にナルシシズムなんだっていうことがわかりましたよ。

(吉田豪)意外とでも皆さんね、「女装したら母親にそっくりで幻滅した」みたいなのはよく聞きますけどね。

(いとうせいこう)言う、言う。それはだから、いいメイクさんを付けてない場合だよね(笑)。

(吉田豪)なるほどね(笑)。

(いとうせいこう)それを超えていいメイクした場合、あれが良くなっちゃうんだよね。

(吉田豪)なるほど、なるほど(笑)。

<書き起こしおわり>

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