プチ鹿島 インパール作戦化したアベノマスク配布を語る

プチ鹿島 インパール作戦化したアベノマスク配布を語る くにまるジャパン極

プチ鹿島さんが2020年6月3日放送の文化放送『くにまるジャパン極』文化放送『くにまるジャパン極』に出演。第2次世界大戦中の日本軍のインパール作戦にもたとえられたアベノマスク配布について新聞記事を紹介していました。

(野村邦丸)この前、新聞で……朝日新聞。今週でしたっけ? 一面の記事がいきなり、アベノマスクの検証で。

(プチ鹿島)ああ、あれはすごかったですね。今日、まさにそういうお話をしようと思いまして。緊急事態宣言が解除されて、6月という新しい時期で。徐々にですが、新しい日常が始まってきましたでしょう? ということは、これまでの2月、3月、4月、5月と「コロナ禍」ですよね。どういう政策、もしくはどういう対応をしていたのか?っていう検証記事がメディアには必要だと僕は思うんです。で、ポツポツと出てきまして。たとえば今日なんかは「9月入学を今年度、来年度は見送るよ」っていうのがあって。それについての検証記事みたいのがいろいろと出てくるわけですよね。

読売新聞は「拙速議論に校長先生たちが反発した」という。「拙速」というのがひとつのキーワードですよね。で、朝日新聞を見ると「官邸主導。教育現場置き去り」ということで。やっぱりいろんなところから反発が出てきたんだと。じゃあ、なんでこんな大事なことを早く、拙速な議論で推し進めようとしたのか? いろいろと読んでいくと、やっぱり支持率によって判断しているらしいんですよね。支持率が下がって、「どうも今やるとよくないな」っていうので引っ込めるっていう。それがいろんな政策でここ数ヶ月、新聞を読み続けていくと見えてくるわけですよね。

しかも今回の9月入学に関しては、これ今日は朝日の一面なんですが。「レガシー」っていう。また、もうひとつのキーワードが出てくるわけですよ。これ、どういうことか? 5月13日ごろ……9月入学というものが出てきた時。官邸関係者は「政治的レガシーが無くなりつつある」という……まあ「憲法改正」なんかも政治的レガシーですよね。「なので、この9月入学というものに首相本人は前向きだ」という。だから、自分の政治的レガシー(遺産)のために、他にやるものがないから「じゃあ、9月入学いいじゃないか!」っていうことで5月中旬に盛り上がっていたっていうんですね。ところが、やっぱり最近支持率が落ちてきて、これをやるのはマズいということで、どうやら見送りになったという。

「政治的レガシー」としての9月入学

僕、やっぱり世論の動向を見ていくこともそれは重要だと思うんですが、自分たちのやる政策について、それこそ「毎分視聴率」みたいなものをそんなに気にしてやられるとこっちもちょっと困るなっていうのはこの件でも分かります。あと、邦丸さんが先ほど仰った布マスクについて検証した記事。これが朝日新聞の6月1日、一面トップで来たんですよね。「布マスク 質より量」ということで。

これ、読んでいって僕、ちょっとびっくりしたのが、今回のいわゆるアベノマスク配布計画ですね。政府関係者の間では「インパール作戦」にたとえられているっていうんです。第2次世界大戦中の日本軍による、司令部が作戦を強行して多くの犠牲を出し、大戦中に「最も無謀」と呼ばれた杜撰なあのインパール作戦にたとえられているという。

まあたとえば……2月後半。今回のマスクの最大の受注企業となった興和、ありましたよね。その社長さんが「政府から『とにかく量だ。とにかく早くほしい』と言われた。そのために、興和の従来からの検品方法を政府が断った」って言うんですよ。従来のきちんとした検品方法を。そうなると、当然不良品は出ますよねっていう話で。さらに、早さにこだわった挙句、異例の契約にもつながっていて。「隠れた不具合が見つかっても、興和の責任は追求しない」っていう、そういう条項が契約に入ったというんですよね。

だからもう、とにかく「スピード感」ですよね。「15層あるガーゼを5層に減らして3枚分、作れないか?」っていう、こんな品質を無視した打診もあったというんです。これが2月のお話で。それで4月1日。1世帯に2枚ずつ布マスクを配る計画を突如発表するわけですよ。そうすると、官僚の1人は「耳を疑った」って、こういう風に証言をしているわけですよ。じゃあその結果、何が起きたのか? 配布開始直後から見つかった異物混入とか汚れ。そりゃあ、検品体制が杜撰なわけだから、当然不良品も出てきますよね。で、さらに8億円かけて今度は回収しているっていうことで。もう無理と無駄の連続が出てるわけですよね。

じゃあこの政策が何で出たのか? 元はといえば「全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えますから」という首相周りの官邸官僚の進言この結果、インパール作戦を招いたということで。

「不安はパッと消えます」がインパール作戦化

じゃあ、布マスクを見ただけでもこういう拙速な対応……「世論受けするだろう」と思ったという。ところが、今回は滑ったわけですよね。でもこれがまた見えてくるわけですよ。それで実は首相周りの官邸官僚の検証記事といえば、まだ他にもありまして。読売新聞が「政治の現場 危機管理」というシリーズを出して。これが読みどころがあって面白いんですよ。今度はですね、「30万円を給付する」っていう時のエピソードが載っていて。4月中旬……14日なんですが。

自民党幹事長代行の稲田さんと総裁特別補佐の高鳥さんが官邸に安倍さんを訪ねた時のエピソードが載ってるんです。さすが自民党内でもこの30万給付について「良くないね」っていう、そういう評判が出ていたという。それで読売新聞の記事によると「党内の空気を伝える2人に安倍は驚いた顔でこれ読売をバスしてます阿部は驚いた顔で『そんなに30万円給付って評判悪いの?』と3回も繰り返した」っていう。だから不評は安倍さんのお耳には入ってなかった。入れられてなかったっていうのはこの文面、エピソードで分かりますよね。

で、その後、安倍さんの依頼で稲田さんと高鳥さんは交互に定期報告に入るようになったっていう。まあ、これはこれでまたお気に入りのご注進しか耳に入れないっていうシステム、どうなの?って思うんですが。どうやら首相周辺の官邸官僚が首相をがっちりと囲っていて。不評とかも首相の耳には入らないというシステムになってるんじゃないかなっていうのはこれだけでもうかがえるわけです。

それからあと、もうひとつ。この読売のの検証記事。まず第1回で書いていたのが「首相の決断 菅氏不在」っていう。だから安倍官邸の中でも今までは危機管理とかは菅官房長官や官邸官僚とか、いろんな人が介在していたんですが、どうやらこのコロナに関しては菅さんはちょっと距離を置いているのか、置かれているのか……。首相が前に出てくればくるほど、菅さんの不在が目だったというわけですよね。実はこれ、僕には気になることがあって。黒川さんの定年延長問題。あれは文春が記事を書いたことによって検察庁法改正案が見送りになったじゃないですか。そうすると、急に新聞各紙で同時多発的に載ったのが、「そもそも安倍首相は思い入れがなかった」っていう首相周辺の解説、声なんですよ。

たとえばこれ、「首相も強い思いではなかった。官邸関係者」っていう。これは読売の5月10日。毎日新聞も「首相周辺は改正案は元々必要がないと冷ややかだった」という。だからこれ、元々黒川さんと実務的に近かったのは菅さんですから、菅さん案件には変わりがないんでしょうけど、実際見送り、もしくは廃案っていう流れになってもう「黒川、ヤバい」ってなったら、「あれは菅さん案件だから」っていう情報戦が行われてるのかなっていうのは僕は見えてしまったわけですよね。

で、その菅さん。実はあの読売新聞の人生相談記事「人生案内」っていうのを読むのが大好きで。それを毎朝読んで、庶民の声……「庶民は今、何を考えてるのか?」っていうのを自分が答える側になったシミュレーションを毎日しているっていう。これは結構、新聞を読んでると有名なエピソードなんですよ。そんな菅さんが今年の春から雑誌プレジデントっていうところで、いよいよ人生相談を始められたんです。

(野村邦丸)えっ、菅さんが?

(プチ鹿島)「菅義偉の戦略的人生相談」っていう。だからこれもポイントで。菅さんが人生相談が大好きっていうのはもうみんな、業界の人なら知ってるわけですよ。「じゃあ菅さん、うちの雑誌(新聞)で人生相談をやってくださいよ」っていうオファーは今まで絶対、死ぬほどあったと思うんですよ。たくさん。で、今年の春ぐらいからいよいよこれを菅さんがやり始めたっていうのは、何か自分からもメッセージを出していきたいなという、ひとつの世論に対するアピールが始まったのかなと僕は思うんです。

(野村邦丸)はー!

(プチ鹿島)それでこの直近の第3回ではどんなお悩みに答えてるのかな?って僕、チェックしたら、ちょっとびっくりしたんです。読者の悩み。「プロジェクト内の部下が不仲。上司としてどうすべきでしょうか?」って……これ、菅さんのことですよね? もう官邸内で不仲というか、自分が距離を置かれている。その立場を反映したお悩みを採用してるわけですよ。で、菅さんのお答え。「時には嫌われる勇気が必要です」っていう。これ、菅さん自身の人生相談ですよね? だからこれ、プレジデントのお悩み。どんなお悩みに答えていくか。

これもチェックしていった方が菅さんの心の内が読めるじゃないか?っていうので。それで実際、世の中にこういう発信をし始めてるわけですよ。だからこれ、安倍さんと距離が置いている、置かれている菅さんがいよいよ自分の活動も始めたのかなというのが窺えるわけですよね。令和おじさん再び……まあ、ちょっと去年、人気になって。でも、自分の近い人を内閣改造で入れていったらことごとく……あのメロン男(菅原一秀)とかね、河井克行・案里夫妻もそうですよね。立て続けに辞任になっちゃって。実際、そういう意味で菅さんも不評なんでしょうか。だから菅さんの巻き返しがいよいよ始まったっていう。こういう世の中の誰でも見れる雑誌を使ってね。

(野村邦丸)これ、プチさんね。菅さんはこの一連のコロナ対策についての官房長官の定例会見ってあるじゃないですか。これ、我々も見ることができる。結構菅さんって原稿に目を通しながらもある程度、自分の言葉でしゃべっていたのが、コロナに関してはほぼ原稿通りやっていますよね。

(プチ鹿島)そうですね。淡々とやられていますね。

(野村邦丸)この前、「えっ?」ってなったのがアベノマスク。「アベノマスクがあったからこそ、マスクの需給が改善した。それに貢献したんだ」っていう風に……それもやっぱり原稿を見ながら言っているんですよね。あんなことを言ったらみんな、突っ込んじゃいますよね?

(プチ鹿島)でも、ご本人はアベノマスク以外のマスクをつけているわけですからね。

(野村邦丸)フフフ(笑)。

アベノマスクをつける人、つけない人

(プチ鹿島)だからあれもたぶん本人が「ほら、俺はアベノマスクをつけてないよね?」っていうのが一番のメッセージなのかもしれないですね。「俺は原稿を棒読みしてるけど、ほら。俺、アベノマスクをつけてないじゃん?」っていう。今、アベノマスクを付けてるのって岸田さんなんですよね。もうなんか、いじらしいというか、アピールというかね。まあ、安倍さんに対してのアピールなんでしょうかね?

だって、あれだけ「アベノマスクは必要だ」って言っているのに、みんなしていないっていうのは言ってみれば閣内不一致ですよね?

(野村邦丸)二階先生もお付けになっていないですよね?

(プチ鹿島)(二階幹事長のモノマネで)「二階ですけども……もう、そんなものは忘れましたね」。

(野村邦丸)宗男先生は特別に色付きのマスクを?

(プチ鹿島)(鈴木宗男のモノマネで)「はい、あの、マスクは付けませんっ!」。フフフ、まあ付けていると思いますけどね(笑)。

<書き起こしおわり>

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