佐久間宣行さんが2020年2月12日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の中でハイバイの岩井秀人さんのイベント『いきなり本読み!』を紹介していました。
で、もう1個。先々週に見たものの中でハイバイの岩井秀人さんっていう素晴らしい戯曲家がいるんだけど。その人が「新しいイベントを始めたから見てくださいよ」と言われて。それが『いきなり本読み!』っていうやつなのね。それで、どういうことなのかなと思ったら、舞台って1月半とか2ヶ月ぐらいやるじゃん? だから、あのみんな演じてるうちに段取りになっちゃう。で、もう正直、やりながら違うことを考えたりもしちゃう。「今日、ここのほっぺがかゆいな」とか「段取り忘れたな」とか。
だから役者の本当のすごいのは、もしかしたら伝わんないことがあるかもしれない。それで一番マジックがあるのが何だ?って考えたら、初めて台本読む瞬間だ。それを観客に見せたいというイベントなのよ。で、本当に集められた役者は何にも見せられないまま舞台の上に上がって、台本をパッとめくったら「はい、読んでください」と言われて。それを後で演出家の岩井さんが「あそこ、違う」って言われて見せられるっていう地獄のような企画なんだけど。
初めてその場で渡された台本を観客の前で読む
それでキャストされたのが皆川猿時さんと岸井ゆきのさんっていう、もう超上手い俳優のお二人と、あとは今井隆文さんと後藤剛範さんっていうハイバイの舞台とかにも結構出ている2人で。この2人もすげえうまいのよ。
「いきなり本読み!」やはり売り切れました〜!
キャンセルが出た場合など席に空きが出たら、また流しますです!
さあ、あとは本番、じゃなくて本読み、面白くしますぞ!https://t.co/Kxupbrwm4Q pic.twitter.com/X0a4HVAsHF— 岩井秀人 (@iwaihideto) January 20, 2020
で、その4人が揃ってるからキャストは魅力的だなと思って、岩井さんに「試しに来てみてくださいよ」と言われたから行ってみたのよ。浅草に。それで、「こんな地獄のような企画、よくみんな引き受けたな」と思って。それで満員の客席で時間が来て。岩井さんが登場して。それで「まあこの企画、どうなるか分からないけど皆さん、まあまあ付き合ってくださいよ」って言って。それで出演者を呼び込んだの。
それで呼び込んでその4人が来たら、1席空いていたの。で、1席空いていて「ああ、ひとつ空いてるな」と思っていたら、「そうそう。告知するといろいろとあれかなと思って……サプライズゲスト、来てくれてます。この人です」って言って入ってきた人が神木隆之介(笑)。200席もないんだよ? 200席もないところに神木隆之介くんが来て。それで座って。その皆川猿時、岸井ゆきの、神木隆之介みたいな人たちで初見の台本を見る。で、当初の目的はたぶんグダグダの中から化学反応を見つけようっていうことなんだけども。
サプライズゲスト、神木隆之介
それで「これから台本を渡します。『男たち』という作品です」っていうことで。それは、岩井さんの名作なのよ。僕はそれ、見たことがあって。男4人の24歳から82歳までの人生を描くという作品だから、めちゃくちゃ難しいの。演じ分けなきゃいけないし。で、「それの第14場からやります」みたいな。要は、だから1時間後ぐらいのところからいきなり開いてやらなきゃいけない。それで「うわっ、これは地獄の企画だけど、これ大丈夫かな? 今日、みんなが滑るかも……そしたら口外しないでおこう」ぐらいの気持ちでいて。それでみんな緊張した顔をしているから。
それでバサッとめくって。それで岩井さんがバサッとめくった後……みんながめくった後に「では、配役を発表します」っていう。だからその場で配役を言うのよ。「ええと、皆川さんは鈴木役。神木くんは加藤役……」みたいな感じでその場で言われて。「用意、スタート!」って言われるっていう。恐ろしすぎるでしょう?
で、恐ろしすぎて、第一声が皆川猿時さんだったのね。それで「時は◯◯……」って。要は俺、それを見ているからわかるけども、ずっと戦隊物好きのサラリーマンが自分に起きていることとか過去に起きてることはナレーションで戦隊物風に語るのよ。それで悲劇を語るんだけど……一行目から戦隊物風で読めたのよ。皆川さんが。それで大爆笑を取って。
で、その後に神木隆之介くんがしゃべるだけど。無気力なんだけどちょっと何か思うところがあるみたいな役なんだけど。「まあ、そうですね」みたいな一言がドンズバで。岸井ゆきのもその後、何の苦笑とかも起きないぐらいうまく行っちゃって。あのね、岩井さんが、上手い役者をそろえすぎて、第一声からうまく行っちゃったのよ。フハハハハハハハハッ! みんなグダグダになって、直しをして、それの化学反応を見る予定が、上手い役者をそろえすぎてめちゃくちゃうまくなっちゃって。
で、その後に岩井さんが首をひねって。「こんなはずじゃねえんだけどな……」っつって(笑)。「あれ? 皆川さん、この芝居、舞台を見たことあります?」「いや、見たことないです。初めてです」「なんて最初から戦隊物風で読めたんですか?」「いや、ちょっとなんかそういうトーンだったから……」って。
そしたら神木隆之介くんも「あの、なんかコメディなのかシリアスなのか、考えながら読んでたけど……まあでも、やりました」とかって言って。「ここがちょっと悩んだんですよ。ちょっとビックリの時に……」って。「うわ~!」っていうセリフがあって。「ここが『ー』の時はシリアスに言うけど、『~』だったからコメディっぽいなと思って……」って。役者ってそういうところまで見るんだね。
神木隆之介の演じ分け
「役者って『くそー!』っていうセリフが『ー』だったらシリアスに読んで『~』だったらちょっとコメディのニュアンスを入れるんですよ」っていう。みんなね約ちゃったよ草っていうセリフの棒が志望だったらシリアスに読んでニョロだったらちょっとコメディに操れるですよって言って。それで岩井さんが「じゃあちょっと神木くん、演じ分けてみてよ」っつったら完璧に演じ分けて(笑)。役者ってすげえな!って思いながら。
で、そんな力量だから、岩井さんが「じゃあここで改めて役のバックボーンを話します」って言って。それで「この人はこういう宗教にハマって。こういう実話がありまして……」とかってしゃべって。で、「同じシーンをもう1回、やりましょう。用意、スタート!」っつったら、もう最初もすごかったけど、2回目でもうほぼ完成っていうぐらい。もうちょっと泣いちゃうぐらいすごくて。ちょっとうますぎるだろ?って思って。
で、その後に岩井さんも「ヤバい」と思ったんだろうね。「役を入れ替えます!」っつって。フハハハハハハハハッ! 「役を入れ替えます。誰と誰を入れ替え。誰と誰を入れ替え……」っつって、もうシャッフルして。「しかも、次の場に行きます。第15場に行って、役を入れ替えです。用意、スタート!」っつったら……あのね、役者でたまにあるのは自分のことしか考えてない人。そういう人は他人のダメ出しを聞いてないの。だから役を入れ替えたり、他人のところになるとグダぐわけ。自分のことはできても。
でもこの5人、違ってさ。他人のダメ出しをちゃんと聞いてるタイプだったんだね。ちゃんと14場でやったことを積み重ねた芝居になっていて。入れ替えても(笑)。で、岩井さんが終わった後、「うまい!」って言っちゃって(笑)。で、最終的に全員うまいからクライマックスまで行っちゃって(笑)。で、最後に岩井さんが「役者ってすごい!」って言ってたからね(笑)。
<書き起こしおわり>