町山智浩 TVドラマ『The Last Man on Earth』を語る

町山智浩 TVドラマ『The Last Man on Earth』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アメリカで大人気のTVドラマ『The Last Man on Earth』を紹介していました。

(町山智浩)ということでですね、今回ちょっと本題に入りますが。紹介したのが、またテレビ番組なんですよ。すいません。はい。テレビ番組なんですけど、たぶんもうすぐ日本でも放送されることになると思います。アメリカでいま、人気なんで。『The Last Man on Earth』というタイトルですね。原題は。日本語になおすと、『地球最後の男』というですね、ドラマです。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)TVドラマですね。で、これは要するに1人の男がですね、地球で最後の男になっちゃうんですね。みんな死んじゃうんですよ。他の人たちが。

(赤江珠緒)たった1人、生き残ってしまう。

(町山智浩)そうなんです。あの、そのへん説明がないんですよ。あるヴィールスかなんかでですね、みんな死滅してしまいまして。まあ、アメリカに住んでいるんですけど。アメリカ中を車で回って。生存者を探してみたけれど、誰も見つからない。で、たった1人になってしまった男がさあ、どうやって生きていくか?っていう話なんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)でね、これね、見ていって僕、すごく思い出したのが、小学校か幼稚園の頃に読んだ絵本でですね、すごく有名な絵本があってですね。『せかいに パーレただひとり』という絵本があるんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)これ、僕が子どもの頃から、いまもずっと売っている絵本の古典なんですけど。これはパーレという男の子がですね、ある日目覚めたら、自分しか世界にいなくなっているんですよ。誰もいないんですよ。だからもう、好き勝手なことができる!っつって、お菓子屋さんに入ってお菓子を飽きるほど食べたりですね。

(赤江珠緒)まあ、やりますよね。

(町山智浩)誰にも怒られないっていうんで、自動車を運転して暴走されたりですね。銀行に行ってお金を盗んだりもするんですけど、誰もいないのにお金を盗っても、しょうがないよね。

(赤江珠緒)いやー、あ、でもね、ドラえもんでも、『どくさいスイッチ』っていう話で1人になっちゃうっていうの、ありますね。のび太くんが1人になって。のび太もやっぱり同じように、ちょっとおもちゃで遊んでみるとかね。うん。

(町山智浩)ねえ。で、好き勝手できるんだけど、誰もいないと、なんの意味もないやっていうね。でもね、これを読んだ時に、そうは言われても、やっぱりある日起きたら、自分以外いなくなったらいいかな?と思った時もありましたよ。子どもの頃。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)妄想したこと、ないですか?

(赤江珠緒)なんでもできますからね。1人だったらね。たしかに。

(町山智浩)そう。妄想したこと、ない?

(山里亮太)ありますよね。やっぱり。誰もいないってなったら、有名人の家に行っちゃおう。で、いろんなものを漁っちゃおうとか。

(町山智浩)そうそうそう(笑)。豪邸に暮らそうとか。ねえ。フェラーリに乗ろうとかね。子どもの頃、ありましたよ。そういうこと。何度も想像して。僕とかやっぱり子どもの頃、怪獣のおもちゃがあんまりお金がなくて買えなかったんで。世界中から誰もいなくなったら、怪獣のおもちゃで遊び放題だなとか、そういうことを考えてましたよ。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)子どもだねー!

(町山智浩)そう(笑)。子どもだもん。でも、大人になると、それじゃ絶対面白くねえよって思うようになったんですけどね(笑)。はい。そういう話なんですね。この、地球最後の男っていうドラマはね。でね、主人公はね、フィル・ミラーっていう役名なんですけど。この人を演じているのはウィル・フォーテっていう俳優さんで。この人は最近、日本でもね、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』っていう映画で主役を演じたんで。

(赤江珠緒)はいはい。町山さん、ご紹介いただいたね、映画でしたね。

(町山智浩)田舎のお父さんと息子が旅をする話でしたけど。その息子役をやっていた人です。はい。まあ、なんていうか、へなちょこで。いわゆる小太りで。背もあまり高くないし、ちょっと頭もハゲかかっている40過ぎなんですけど(笑)。

(山里亮太)ダメな感じの。

(町山智浩)はい。で、彼が世界で最後の男になっちゃうんですよ。彼以外、全部死んじゃうんですね。それで、アメリカ中どこにもいないと。したらね、彼ね、最初ね、そんなに悔しがらないんですよ。

(赤江珠緒)えっ?悲観的とかになるでしょ?ならない?

(町山智浩)なんないんですよ。彼、そんなに。もともと1人者なんですよ。

(赤江珠緒)ほうほうほう。

(町山智浩)40過ぎで、定職もないし。彼女もいないし、家族もいないし。で、好き勝手に生きていた男なんですよ。だからますます好き勝手にできる!っつって、もう大喜びなんですよ。

(赤江珠緒)えー(笑)。まあ、無邪気っちゃあ無邪気ですけど。

(町山智浩)だからまず、彼がやったことは、もういくら酒飲んでもいいんだ!ってことでもって、マルガリータをたくさん買ってきてですね、それをプールに入れてですね、マルガリータ風呂にしたりとかですね。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)あと、なにをしても怒られないから、坂の上から自動車をですね、ブレーキを外して転がして、下にいる自動車にぶつけてですね、爆発させて遊ぶ自動車ボーリングっていうのをしたりですね。

(赤江珠緒)しょーもない(笑)。

(町山智浩)そう。やりたい放題やっていて。あと、そこら中からエロ本とかエロビデオをバーッと集めてきて。もうオナニーし放題とかですね。

(山里亮太)それはまあ、考えるな。絶対。

(町山智浩)そういうことをずーっとやっているんですよ。で、基本的にこの人ね、40過ぎてるんですけど、子どもなんですね。だからなんて言うかね、ドラえもんに1度も会わなくて成長する機会を失ったまま40過ぎてしまったのび太みたいな感じ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)怠け者で、自分勝手で、子どもっぽくてっていう人が、この主人公のフィルなんですけども。でも、それでもね、やっぱり寂しくなっちゃうんですよ。とうとう。

(赤江珠緒)まあ、ねえ。なるでしょう。

(町山智浩)豪邸に住んでるんですよ。いままで住めなかった豪邸にね。で、ホワイトハウスに行っても誰もいないから、ホワイトハウスから大統領のいろんなものを盗んできて、そこに置いたりしてるんですけど。でも、まあ虚しいわけですよ。まあでも彼、大統領ですけどね。誰もいないから。他にね。で、やっぱり寂しいな・・・って、あまりにも寂しいから、ショウウィンドウの中にいるマネキンに恋したりするんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)マネキンに抱きついたりするんですけど。ところが、彼は地球最後の男ではあったけれども、地球最後の人間ではなかったんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)ねえ。ある日ね、誰かがいるのがわかるんですよ。その近くに。で、彼はアメリカ中を回っていく時に、『アリゾナのツーソンっていうところに1人だけ僕は生き残っているから、もし誰か生き残っていたら、来てください』って書いて回っていたんですよ。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)だから誰か、来たんですよ。それを見て。で、キャンプしているんで近づいて行くと、ブラジャーが干してあるんですよ。洗濯した。

(赤江珠緒)ふん。

(町山智浩)女なんですね。地球最後の女がいたんです。

(赤江珠緒)はいはいはい。

(町山智浩)ねえ。したらもう、他にないじゃないですか。お互いに。ねえ。ところがですね、これで生き残っていた女性はですね、キャロルっていう女性だったんですけど、林家パー子さんみたいな人だったんですね。

(赤江・山里)(笑)

(山里亮太)いま、写真あるけど、まさにそうですね

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)これ、演じているのはクリステン・シャールっていうお笑い芸人の女性なんですけど。まあ、とにかく甲高い声でしゃべりまくるんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(山里亮太)パー子さんだ(笑)。

(町山智浩)これ、主人公は人間が嫌いで面倒くさくて1人で生きてたかったような男なのに、そこにいきなりものすごく面倒くさい人が来ちゃうんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、ベラベラベラベラしゃべるんですよ。甲高い声でね。で、しかも色気が全くない。で、もういろいろ小うるさいわけですよ。まず、彼女がいちばん先にやったのが、こいつがたくさん集めているエロビデオとかを捨てようとするわけですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)ねえ。で、あと、車でブンブン走っているわけですけど。すると、『ちゃんと「止まれ」があったら止まりなさい!』って言うんですよ。

(赤江珠緒)いや、もういいじゃんね。もう、周りいないからね。

(町山智浩)誰もいないんだから。『他に車、走ってないんだから、止まらなくていいじゃないか!』って言っても、『もう耐えられないの』とか言うんですよ。

(山里亮太)真逆な人なんだ。

(町山智浩)そう。それでまあ、スーパーマーケットの駐車場とか言っても、いちばん入り口に近いところに身体障害者用の駐車スペースがあるんですけど。そこに停めると、『そこに停めちゃダメ!』とか言うんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)誰もいないのに!っていうね。すげー面倒くさい女なんですよ。でも、それでもやっぱり、寂しいからエッチしたいじゃないですか。で、『しようよ』って言ったら、『ダメ!私、カトリックなの』って言うんですよ。『結婚してないのに、ダメ!』って言うんですよ。超めんどくせー女なんですよ。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)もう、最悪なの。それで。

(赤江珠緒)せっかく出会えたのに。

(町山智浩)そう。で、でも、他に方法、ないじゃないですか。

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(町山智浩)で、妥協するわけですよ。で、結婚するんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)したらまたね、一応結婚したんで、それをマネキンに報告しに行くんですよ。そうすると、『これ、あなたの前の女?』って言ってね、そのマネキンをボコボコにするんですよ。彼女が。

(赤江珠緒)怖っ!あらー・・・

(町山智浩)なんか、怖いんですよ。

(赤江珠緒)これはね、でもちょっともう、選びようがないしね。しょうがないですよ。

(町山智浩)選びようがないんですよ。しかもね、エッチしたら、エッチしている間じゅう、しゃべっているんですよ。

(赤江珠緒)(笑)。ああー・・・ちょっといろいろ残念な感じですけど。

(町山智浩)そういうね、すごい最悪の世界になって。で、あの、でもね、いいところもあって。すごく家庭的なんですよ。それで、まあオシャレとかはしないんですけども。編み物とかしたりね、すごく献身的なんですよ。

(赤江珠緒)まあ、地に足の着いた生活でね。

(町山智浩)そうなんですよ。母性的でいいかと。それで彼女の方も、人類を再興しましょうと。これから、子どもたちを作って。人類を増やしましょうって言うんですよ。それで、まあ、しょうがないなと主人公フィルは諦めて。俺も、大人になるかみたいに思って。彼女と暮らしていこうかと思っていたらですね、そこになんと、もう1人、女の人が出てくるんですね。

(赤江珠緒)ええーっ?もう1人、生き残っていたの?

(町山智浩)もう1人、生き残っていたんですよ。で、えっ?と思って。その女の人がですね、なんと金髪のグラマーな、セクシーな美女なんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(山里亮太)結婚しちゃった・・・

(町山智浩)そう。世界でたった1人の男になって。で、女の人がいて。しかもそれが美女で。選択の余地は彼女には無いはずなのに、自分にはカミさんがいるっていうすごい状況になって(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。はー!そういう展開になっていくんだ。そうですか。

(町山智浩)そうなんですよ。で、しかもその彼女がね、演じているのはジャニュアリー・ジョーンズっていう女優さんで。これね、Xメンでですね、セクシーなミュータントのエマ・フロストを演じていた人なんですけども。で、その人がすでに結婚したフィルとキャロルを見てですね、『せっかく会えた地球最後の男が結婚してたなんて、がっかりね』って言うんですよ。

(赤江珠緒)ほうほうほう。

(町山智浩)『私はずーっと2年間、たった1人で生きて、もう誰にでもいいから抱かれたい気分だったのに』って言うんですよ。

(赤江珠緒)(笑)。わー!

(町山智浩)『でも、あなたたち、とってもお似合いの2人だから、私は邪魔をしたくないわ』って言われちゃうんですよ。

(山里亮太)うわー・・・ダメ男、これ、キツいだろうなー。

(町山智浩)そう。だからこのコメディー、めちゃくちゃですよ。これ。

(赤江珠緒)そうか。この展開でコメディーになっていくんですね。

(町山智浩)コメディーですよ。どう見ても(笑)。

(赤江珠緒)そうかー!

(町山智浩)そう。で、地球最後の男っていうのはもう、昔、リチャード・マシスンっていう小説家が書いて。そこからですね、ゾンビとかですね、そういったものが始まったんですね。で、『アイ・アム・レジェンド』っていう映画もありましたけど。ウィル・スミスの。あと、まあ『ゾンビ』っていうのも、地球が全部ゾンビになって、生き残った人たちがショッピングモールで好き勝手に遊ぶっていう話だったですけど。で、すごく結構、究極の状況なのに、夢が叶うみたいなところがあって。それが、背中合わせなんですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)はい。で、これは、いままでそういうのはホラーだったり、SFとして作られていたのを、今回は完全に、いちばん最悪の状況はなんだろうか?っていう風に考えていって作ったのがこの『The Last Man on Earth』なんですよ。

(赤江珠緒)へー。そうか・・・

(町山智浩)で、これタイトルがね、もうひとつ、凝っていて。あの、地球最後の男っていう言葉はね、よくアメリカ人が相手を振る時に使うんですよ。アメリカ人の女の子がね。こういう言い方をするんですよ。『もしあなたが地球最後の男だったとしても、あたしはゴメンだわ!』っていう言い方で振るんですよ。

(赤江珠緒)ああー!そういう定型文みたいな感じで使われるんだ。

(町山智浩)そう。『もう、あんたにはウンザリだわ!』っていう時にそういうことを言うんですよ。だからこの主人公は、まさにそういう人なんですよ(笑)。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)っていうね、とんでもない話しでね、もう死ぬほどおかしいですね。これね。

(赤江珠緒)どうなっていくんでしょうね?どうしますかね?

(町山智浩)ねえ。山ちゃんってもし、俺が地球最後の男になったら?って思ったこと、ないですか?

(山里亮太)ある。絶対、俺はね、町山さん。言いたいけど、言えないこといっぱいしそうな気がする(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)いや、女の人はぜんぜん死んでないんですよ。

(赤江珠緒)ああー!それは・・・

(山里亮太)最高でしょ!僕を取り合うわけでしょ?みんなが。

(町山智浩)そうですよ。

(赤江珠緒)なんという!それ・・・

(山里亮太)幸せ!

(町山智浩)そういう話ですよ。これ。

(赤江珠緒)悪夢じゃないですか。

(山里亮太)悪夢?えっ、赤江さん・・・

(赤江珠緒)ポロリと。ポロリが・・・はい。

(町山智浩)(笑)。で、これ主人公のフィルがなんとか説得してですね、自分を共有してもらうように説得するんですよ。この女の子2人に。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)で、とうとう説得が叶ったと思ったところに、またとんでもないことが起こるっていうね、すっごい展開なんです。ドラマ。

(山里亮太)うわっ、これ、ドラマ、配信とかですよね。だから。

(町山智浩)そう。いま、ちょうどね、話が進んでいるところなんですけどね。アメリカの方で。いま、すごい人気ですね。これ。

(赤江珠緒)面白そうですね。へー!

(町山智浩)というね、とんでもないですね。こんなの見て喜んでいるから。やっぱり幼稚園の頃から、あんまり変わってないですね。これ。

(赤江珠緒)(笑)。ある意味ね、夢が叶ったような気分になりますもんね。そうかー!

(町山智浩)そう。というのがね、『The Last Man on Earth』。地球最後の男というドラマで。もうすぐ日本でも、放送されると思います。

(赤江珠緒)はい。わかりました。今日は『The Last Man on Earth』、ご紹介いただきました。

<書き起こしおわり>

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