玉袋筋太郎 川田利明『「してはいけない」逆説ビジネス学』を語る

玉袋筋太郎 川田利明『「してはいけない」逆説ビジネス学』を語る アフター6ジャンクション

玉袋筋太郎さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の秋の推薦図書特集の中で川田利明さんの著書『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』を紹介していました。

(玉袋筋太郎)だけどね、こうやってすぐに俺なんかさ、たまむすびでプロレスの話なんかできねえからさ。こうやってプロレスの話をしちゃっているわけだけども。やっぱり2冊目はね、ちょっとプロレスから離れて。

(宇多丸)離れて。離れましょう、離れましょう。

(玉袋筋太郎)2冊目はこちらですね。私の一押し。『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』っていう……。

(宇多丸)長い上に結局はプロレスじゃないかよ!っていう。

(玉袋筋太郎)長い。もうタイトルがSODのAVか?っていうね。

(宇多丸)もう全部説明してくれるやつ(笑)。

(玉袋筋太郎)これ、全日本プロレスにいた川田利明さんが書いた本なんだけども。

(宇多丸)ラーメン屋をやられてるんですか。

(玉袋筋太郎)ラーメン屋なんだよ。まだいま、プロレスは実際には引退されてはいないんだけども、セカンドキャリアとして何を選ぶのか?っていう。プロレスラーって旬が短いというか、その後の人生の方が長いじゃん? その中で川田利明さんが選んだのがラーメン屋さんだったんだよ。

(宇多丸)へー。

(玉袋筋太郎)で、プロレスラーをちょっと離れてラーメン屋さんで修行をして。で、ラーメンのスープの作り方とか全部教わって。それで自分で開業をしてみた。このラーメン屋さん、路面店だったらいいんですけど、ちょっと離れたところで個人経営で始めたんですよ。だけどプロレスラーが商売を始めたら、ファンが集ってさ。

(熊崎風斗)そのイメージ、ありますよ。はい。

(玉袋筋太郎)だけど、実はそういうファンってものすごく迷惑だったっていう話もあるわけ。

(宇多丸)えっ、どうしてですか?

(玉袋筋太郎)だって自分で全部、スープの仕込みからチャーシューから麺とかを全てやっているわけじゃん? そういう時にプロレスファンがラーメン一杯だけで2時間、3時間といられるっていうのは嬉しい反面辛いっていうね。だって絶対にこの本、ラーメン本で、「ラーメン屋を開けば成功する」みたいな本に見えるじゃん? 「やるな!」っつってんだから。

(宇多丸)「してはいけない、ラーメン屋は大変だ」って。

「俺みたいになるな!」(川田利明)

(玉袋筋太郎)「俺みたいになるな!」っつって。いるんだよ。よくサラリーマンなんかでもさ、早めに退職して作務衣を着て。後ろに髪の毛しばって蕎麦屋やったりね。麺をチャッチャッチャッ!って。脱サラして。でも、ラーメンドリームなんてのは嘘っぱちだっていうことを書いているんだよ。実体験から。

(宇多丸)ああ、そう? ラーメン屋は楽じゃねえぞと。

(玉袋筋太郎)この資料もいいじゃん。全国の店舗数。ラーメン屋さんは3万軒。必要な開業資金は1000万円。10年続くお店はたったの1割っていう中で川田さんは10年続いているわけ。

(宇多丸)じゃあ、ご自身は成功されているけども。

(玉袋筋太郎)やっているんだけども、本当にプロレスラー時代。全日本プロレスの四天王時代っていうのがあったの。すごいハードなプロレスをやっていて。「そのプロレスラー時代よりもいまの方が辛い」っていうんだから。体を壊しちゃうっていう。

(宇多丸)へー!

(玉袋筋太郎)プロレスラーの副業とかたくさんあるけどね。まあ、その中でも本当に命を削ってやっていることで。「とにかくラーメン屋には手を出すな!」って言っている本なんですよ。

(宇多丸)ビジネス本として面白いですよね。自分の成功の秘訣とか、自慢じゃなくて。

(玉袋筋太郎)自慢じゃない。全部自分の失敗談。

(宇多丸)でもさ、絶対に失敗からの方が学べますよね。間違いなく。

(玉袋筋太郎)だけどね、「ここまでひどかったんだ」っていうぐらい辛いよ?

(宇多丸)でも、いまでもお店をやられていますよね。麺ジャラスKっていう。

(玉袋筋太郎)やっています、やっています。やっているんだけどさ。だけど、プロレスラーってさ、リングで試合をやって終わったらシャンシャンでお酒を飲んでワーッじゃん。ラーメン屋さんって違うんだよ。朝から晩までっていう。片付けも全部1人でやっているわけ。

(宇多丸)えっ、本当にワンオペで?

(玉袋筋太郎)ワンオペなんだよ。

(宇多丸)ええっ、ちょっとキツそうだな……。

(玉袋筋太郎)だけど、それでラーメンに一時、サービスでカレーをつけたんだって。ミニカレー。で、それをつけたっていいんだけども、川田さんが驚いて仰天したのはお客さん。お客さんが来て「ラーメンはいいからそのサービスのカレーだけタダで食わせろ」とか。

(宇多丸)ええーっ! モンスター客が!

(玉袋筋太郎)モンスター客! 川田利明相手にそんなことをやってくるやつがいるのか!っていう。

(宇多丸)ヒールのプロレスラーだってそんなひでえことしないよって(笑)。

(玉袋筋太郎)だからこの七転八倒しているラーメン屋のお話を書いているんだけども。だからプロレス本かっていうとプロレス本でもある部分もあって。川田利明、全日本プロレスっていうのはプロレスの内幕みたいなものは絶対に言わなかった。「ケーフェイ」っつーんだけども。約束事っていうのは言わないんだけども、このラーメン本の中に川田がちょっとずつ混ぜている。隠し味で。

(宇多丸)ああ、上手いね! そのラーメン話の隠し味で?

プロレスの話は「隠し味」

(玉袋筋太郎)うま味調味料として入ってる。川田のプロレスっつーのはもう現役時代、ぶっきらぼうなプロレスしかしていないんだよ。無愛想な。試合が終わっても「ありがとう」とか言わないでスッスッと帰っちゃって。だからそういう人間だと思っていたのよ。プロレスファンとしてもね。でも、「実は俺はあれは自分で自分を鼓舞、演出をしていたんだと。俺は実は器用でどんなプロレスもできる。だけどキャラを作らなくちゃいけないからああいうぶっきらぼうなことをやっていた」っていうようなことが入っているんだよ。

(宇多丸)それがそれとなく隠し味として……だから、プロレスファンは逆に「ラーメン本でしょう?」ってチェックしていないかもしれないから。

(玉袋筋太郎)そうなんだよ。そこに出てくるんだよ。川田が。「俺は実はなんでもできたけども……」っていうところを書いている。

(宇多丸)また読み込むねえ!

(玉袋筋太郎)ミックスしているんですよ。プロレス本じゃなくてラーメン本として見るのも面白いし、プロレス本としても面白い。

(宇多丸)捜査続いているな!

(玉袋筋太郎)このね、やっぱり……プロレスラーでもう1人、商売をやっている、ステーキハウスをやっているデンジャー松永(松永光弘)っていうのもいるの。俺、その人も取材したの。その人もワンオペでステーキ屋をやっているんだけども。その人って現役時代、すごいデスマッチばっかりやっていて、もう体を壊すような試合ばっかりやっているんだよ。でも、「それよりもステーキハウスの方が辛い」って言っているんだから。

(宇多丸)だから飲食は……。

(玉袋筋太郎)飲食はダメ! 俺もスナックをやってみてわかったんだよ。痛いほどわかるんだよ。これが。モンスター客も来るし。

(宇多丸)そうだよね。飲み屋なんか大変だよ、これ。

(玉袋筋太郎)でね、俺もこの川田選手に1回、取材をしたことがあるんだよ。だけどこの人のラーメン屋の日程を見ている限り、朝起きてから寝るまでもうずーっと仕込んでなくちゃいけない。その間、俺は1時間半取材をしたことがあって。時間をいただいたんだよ。この本を読み終わった後の感想が、「あの1時間半、ごめんなさい!」っていう。土下座するぐらい一生懸命やっている。

(宇多丸)うわあ、そうなんだ……。

(玉袋筋太郎)で、三沢光晴さんとジャイアント馬場さん。ジャイアント馬場さんが師匠で高校の先輩が亡くなった三沢光晴。だけどその苦しい中でもし、俺のラーメン屋に馬場さんが来てくれたら……三沢さんが来てくれたら……みたいなタラレバの話が書いてあるんだけども。そこは泣かされる。

(宇多丸)いい本なんですね。

(玉袋筋太郎)いい本ですよ、これ!

(宇多丸)もう1回、タイトルを言っておくと……今日、ご紹介いただいた3冊を改めて。

(熊崎風斗)1冊目、『実録・国際プロレス』。Gスピリッツ編集部。

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(熊崎風斗)それからそのアンサーにもなっています。『東京12チャンネル時代の国際プロレス』。流智美さん。ともに辰巳出版です。

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(宇多丸)両方同じ出版社から出ているんだね(笑)。

(熊崎風斗)そしてその後、ワニブックスから出ています。川田利明さんの『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』。

(宇多丸)フフフ、ちょっと略称ねえのかよっていうね(笑)。

(玉袋筋太郎)そう。すっげー面白いよ、この本は。だって現役時代に稼いで買ったベンツとか、それを売っちゃっているんだから。それもラーメンに溶かしちゃっているんだから。

ベンツをラーメンに溶かす

(宇多丸)ラーメンに溶かしちゃっている(笑)。高級ラーメンだ、これな。

(玉袋筋太郎)大変ですよ!

<書き起こしおわり>

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