松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でSmooth『It’s Summertime (Let It Get Into U)』を紹介していました。
(松尾潔)はい。続いてご紹介しますのは1995年にリリースされました女性ラッパーにしてシンガー、スムース。その彼女のセルフタイトルドアルバム『Smooth』の中から、こちらです。これは元ネタになっておりますのはトランペッターのトム・ブラウンの『Funkin’ For Jamaica』という1980年あたりのヒットがございますけども。それを下敷きにしております。
聞いてください。スムースで『It’s Summertime (Let It Get Into U)』。
Smooth『It’s Summertime (Let It Get Into U)』
(松尾潔)お届けしましたのは女性アーティスト、スムースで『It’s Summertime (Let It Get Into U)』でした。これは先ほどもお話しましたようにジャズトランペッターのトム・ブラウンの『Funkin’ For Jamaica』という名曲。そちらを下敷きにしております。トム・ブラウン、もちろんトランペッターですから元の曲で歌っているわけではなかったんですが。トニ・スミスっていう女性がそこで歌っていたんですが。そのトニ・スミスのボーカルのフロウはスムース、比較的忠実になぞっていましたね。
このスムースという女性アーティスト、90年代の前半にちょっと注目されたんですけどもね。半ばぐらいまでですかね。なかなかこれという……いろんないい曲はたくさんあるんだけど、これ!っていうアルバムがなかったかなという気がします。でもね、僕はまあ偏愛の対象ですね。それを証明するために言うわけじゃないんですけども、僕の仕事場にそうですね。10数枚、レコードのジャケットを常に飾っているんですけども。その中の1枚がスムースですね。
僕はね、この曲がリリースされた1995年かな? もうちょっと前だったかな? 一度、彼女のホームグラウンドのロサンゼルスで会いました。その時、スムースの話ももちろん聞きたいんだけども、この人の実のお兄さんでありまして、敏腕プロデューサーのクリス・ストークス……そのクリスの話を聞きたかったんですね。クリス・ストークスはご存知の方も多いでしょうか、イマチュアとかB2K。
こういった人たちを世の中に送り出したという本当にやり手ですね。事業家でもあります。もちろんそこからオマリオンとかマーカス・ヒューストンとか、そういったソロでも成功を収める人たちが出てくるわけで。まあクリス・ストークスファミリーとも言えるようなスター集団を形成して。映画をヒットさせたり、その脚本を書いたりとか、本当にいろんな活躍をした人なんですよ。
で、興味が尽きませんのでクリス・ストークスの話をそこにいないにもかかわらずずっと聞いていたら、年齢が2つぐらいしか違わないというこの妹のスムースがね、最後怒っちゃったんですね。当然ですよね(笑)。「なんで兄貴の話ばっかり聞くんだ?」っていう話で、本当にいまとなっては反省をしていますが。でもね、その時に聞いたお話の中で、たしかクリスが70年生まれ。それでスムースが72年生まれだったという風に記憶をしているんですが。子供の時にそれまでのアーティストってだいたい、R&Bとかヒップホップの話っていうとラジオかクラブっていう話が多かったんだけども。
このストークス家っていうのは比較的早くからケーブルテレビを見ることができたので。「ケーブルテレビでいろんなビデオに接することができて、それが自分の音楽の糧になっているんだ」っていう話をしていたのをいま、ふと思い出しましたね。「ああ、そういう世代になってきたんだな。70年生まれの人が最前線に浮上するっていうことは、そういうことなんだな。映像表現を伴った形で自分たちも曲を作っているということでもあるんだな」なんてことを90年代の半ばに、当時まだ20代だった音楽ライターの僕はそう思いました。
<書き起こしおわり>