松尾潔 JUJU『DELICIOUS~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』徹底解説

松尾潔 JUJU『DELICIOUS ~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』徹底解説 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でJUJUさんのジャズアルバム『DELICIOUS ~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』を徹底解説していました。

DELICIOUS~JUJU's JAZZ 3rd Dish~

(松尾潔)今夜は12月5日リリースのJUJUさんのジャズアルバム『DELICIOUS ~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』徹底解剖と題しまして収録されている曲やそのインスピレーションになっている曲を交えながら、ご紹介していきたいと思います。それではまず1曲、お届けしましょう。JUJUさんで『My Favorite Things』。

JUJU『My Favorite Things』

お届けしたのはJUJUさんで『My Favorite Things』でした。この『My Favorite Things』、ご存知の方も多いかと思います。『私のお気に入り』という小粋な邦題がついてますね。もともと舞台でも映画でも有名な傑作ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中の1曲でした。リチャード・ロジャースという名作曲家がいますが、彼が作詞家のオスカー・ハマースタイン二世と組んで作ったミュージカルなんですけれどね。あのその主演で……映画版の方でも主演を務めたジュリー・アンドリュースがこれを歌って、まあ世に出たわけなんですけどね。ジャズの世界では60年代、61年ですか。ジョン・コルトレーンが取り上げまして、それでちょっとミュージカルの世界の曲がジャズの曲という性格を帯びました。

そしてその時はもちろんね、ジョン・コルトレーンですから。インストカバーだったんですけど、アンディ・ウィリアムスというアメリカを代表する国民的な歌手がいますけどね。60年代半ばに彼がクリスマス・アルバムでカバーしてからは、この曲はいわゆるホリデーソング、冬のクリスマスの時期によく聞かれる曲になったという。ちょっとね、1曲の中にもそれだけの歴史があるわけなんですがね。まあ、この『My Favorite Things』、JUJUさんのバージョンはあるCMソングとしてよく流れてますから、そちらの方で「ああ、JUJUさん、歌ってるな」とお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが。今回のこの3枚目の『DELICIOUS』に収められております。

アレンジを手がけましたのはこれまでもメインのアレンジャーとしてJUJUのジャズシリーズの音の番人を務めてくださっております、島健さんですね。もともと僕が2011年にこの『DELICIOUS』というジャズアルバム企画を最初に立ち上げた時に、「まずは島さんのスケジュールを抑えよう」と思って、まあ一本釣りのような形で島さんのところにご挨拶に行って。「こういうことを企画してるんですけども、メインの音作りというのを島さんにお願いできないだろうか?」というところからこの企画が始まりました。

で、もちろん僕はJUJUさんのパーマネントなプロデューサーではないので、そうですね。今回で3枚目のアルバムなんですが、基本的にはそのアルバムを制作の時にこのチームのミュージシャンたちに時々参加してもらう人たちも含めてですけどもね、招集をかけるわけなんですが。ちょっとなんかあれですね。生意気な言い方で申し訳ないですけど、まあチームJUJUっていうのかな? そのたびに集まるわけですよ。気取って言えば『オーシャンズ11』みたいなもんですよ(笑)。なんですが、島さんはずっとそこの車座の真ん中にいてもらうというような、そういうイメージですね。

そして僕以上にJUJUと島さんとの仲を強くしてもらうことで、JUJUはこのシリーズを続けてきたという背景がございます。なぜなら、アルバムは3枚目なんですけど、ライヴシリーズとしてJUJUは東京のブルーノートというジャズクラブで毎年やってますからね。その時はもう、島さんがバンマスを務めることがほとんどですね。そうじゃない時もありました。まあJUJUの昔からの知り合いである、ニューヨーク在住のジャズトランペッター。素晴らしいアーティストですね。黒田さんにお願いした時もありましたけれども、またいま島さんが復帰されて。ちょっとご病気もあったんですけどね。そちらの方からも回復されて。で、満を持して今回、3枚目のアルバムということでございます。

はい、ちょっと長くなりましたけども、今日は『DELICIOUS~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』、こちらの徹底解剖でございます。『2nd Dish』を徹底解剖してからね、随分また時間が経ちましたね。あれから何年経ったんですか? 今回、5年ぶりなのか。5年ぶりですよ。で、これまでアルバムっていうのは2枚出して。いずれも全13曲。で、1曲目と13曲目はジャズ気分の日本語ナンバー、オリジナルのナンバーを作って。それをサンドイッチする形で名曲のカバーを披露するという形でやってきたんですけども。

今回は3枚目にして1曲増えました。14曲になりました。特別深い意味はないんですけども、絞りきれなかったというのが一つの理由ですね。まあ、正直にお話しすると『My Favorite Things』、さっきお話したCMの話っていうのがもう制作期間に入った後に頂戴したものですから。「うーん、これ、そのままレコーディングすると1曲増えちゃうね」っていうことになったんですけども。かといって、いまここに収めている曲、どれも削れないなと。それぐらい、もう思い入れも芽生えていたので。まあ、14曲にしたと。

で、今回はオリジナル曲……後でご紹介しますけども、『Remember』という曲、この番組で何度かご紹介しました。NHKのJUJUさんがMCを務める番組『世界はほしいモノにあふれてる』。そちらのテーマソングにもなっている『Remember』。そして、何度かメロ夜でもご紹介しましたJUJU×松尾 潔×小林武史という3人の名義で出しました『メトロ』っていう曲。これがアルバムの最後に収められていて、それ以外の12曲がカバーということになるんですが。

今日はそちらを重点的にご紹介したいのですが、まず何と言っても、もうメロ夜リスナーであればご存知でしょう。今回のアルバムの中で大きなサプライズとして、久保田利伸さんとのデュエットの企画ですね。今回、アルバムのテーマの厳密にいうといくつかテーマがあるんですけど、その中の最も大きなテーマのひとつが「ニューヨーク」でございました。JUJUさんといえば、音楽修行で10代の終わりからニューヨークに武者修行に行って。気づけば長い時を過ごしていたというのは割と知られている話かと思いますが。

同じようにニューヨーク……特に90年代のニューヨークでタフな戦いを続けてきたシンガー、久保田利伸さん。このお二人が、それもニューヨークをテーマにした曲を一緒に歌うというのはちょっと、ある種の必然性さえあるのではないかということで『Englishman In New York』をカバーしているんですが。実はこの曲っていうのは、すんなりとこれに決まったわけじゃありませんで。たとえばレイ・チャールズとベティ・カーターのデュエットなんかでも知られてますね。『Baby It’s Cold Outside』。冬の曲です。

だとか、もうちょっとソウル寄りっていうかR&Bマナーでロバータ・フラックとダニー・ハサウェイの『The Closer I Get To You』。まあビヨンセとルーサー・ヴァンドロスのカバーでも知られますけども。こういった曲なんかも一通り、試してみて。まあ久保田さんと僕で60曲ぐらいですかね? かなり具体的にシュミレーションして、そのうち8曲は久保田さんが僕の仕事場に来て、簡単なレコーディングをしてもらいました。で、その上でその8曲から3曲まで絞って、JUJUと一緒にマイクを合わせてたどり着いたのが『Englishman In New York』っていうね、まあ「結局ニューヨークの曲じゃん!」っていう風に久保田さんに言われましたけども(笑)。まあ、いろんな回り道をしてこそニューヨークにたどり着いたという、この道程自体が2人にはふさわしかったかなと思います。では改めて聞いていただきましょう。JUJUさんで『Englishman In New York(Duet with 久保田利伸)』。

JUJU『Englishman In New York(Duet with 久保田利伸)』

JUJU『New York New York』

今夜はJUJUさんの3枚目のジャズアルバム『DELICIOUS ~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』徹底解剖しております。ご紹介しましたのはニューヨークネタの2曲。まずは1987年にリリースされたスティングのカバー『Englishman In New York(Duet with 久保田利伸)』。そしてそれからさかのぼること10年前に公開された映画。マーティン・スコセッシの監督作品『ニューヨーク・ニューヨーク』。その映画の主題歌で『New York New York』でございました。これはね、映画をご覧になった方はお分かりでしょうけども、ロバート・デ・ニーロと共にダブル主演を務めましたライザ・ミネリが劇中で歌ったのがオリジナルなんですけども、皆さんはフランク・シナトラのバージョンが馴染み深いんじゃないですかね。

まあライブでフランク・シナトラはもうこれを好んで歌っていたんですけども。まあ、大変ライブでの評判も良くて、80年にレコーディングしまして。それで、この曲が世界的に有名になったという、そういう経緯があります。あとはメジャーリーグのファンの方でしたら、ヤンキースタジアムでニューヨーク・ヤンキースの試合が終わった後にシナトラのバージョンが流れるっていうのをね、それこそNHKのBSとかで何度もその光景をご覧なったんじゃないでしょうかね。まあ、それぐらいニューヨークといえば……という時にその名前があがる曲ですよね。JUJUもこの曲にはひとかたならぬ思い入れがあるようです。

で、割とこれはね、すんなりと決まったんですけども。『Englishman In New York』はアレンジにちょっとやっぱりR&Bのセンスを加味したいなっていう意向もありまして。具体的に言いますとね、ディアンジェロがイギリス・ロンドンのジャズカフェでやったライブアルバムがありますけど。そこに収められていた『Can’t Hide Love』。ああいう雰囲気ですね。

これは僕のその意向を最も深く理解して的確に表現してくれる川口大輔さんにアレンジをお願いしました。で、川口さんはアルバム全体のボーカル・プロデュースも手掛けていますが『New York New York』、こちらに関しては島健さんにアレンジをお願いしましたね。そういう意味でも同じニューヨークのテーマで管楽器を使ったりしてますが、聞き比べるのも一興じゃないですかね。はい。じゃあニューヨーク・ネタでもう1曲……って言いたいところなんですが、次はニューヨークをテーマにした曲にインスピレーションを得て作ったオリジナルナンバーでございます。

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