吉田豪とギターウルフ・セイジ 猪木・馬場・大山倍達を語る

吉田豪とギターウルフ・セイジ 猪木・馬場・大山倍達を語る SHOWROOM

ギターウルフのセイジさんが猫舌SHOWROOM『豪の部屋』に出演。吉田豪さんとアントニオ猪木、ジャイアント馬場、張本勲、大山倍達、力道山、内田裕也と樹木希林などについて話していました。

(吉田豪)セイジさんのこの10代の頃のパッションを残している感じっていうのが本当に大好きで。

(セイジ)フフフ、またこれに乗せられていくんだよ(笑)。

(吉田豪)いくらでも乗せますよ(笑)。でも、なかなかこれをキープできないっていうか、みんな失いがちな部分で。セイジさんはその部分がすごい残っているなと。

(セイジ)そうかな?(笑)。ありがとう、ありがとう。でも、豪ちゃんも……。

(吉田豪)残っている方だとは思いますけども。でも感動するんですよ。セイジさんに最初に会った頃、なにがすごいって真顔で僕に聞いてきたことが「豪くん、豪くん、馬場と猪木ってどっちが強いのかな?」っていう(笑)。

(セイジ)今日もその取材、ちょっとあるんだけどさ。

(吉田豪)そうなんですか?

(セイジ)それにプラス、力道山、大山倍達が加わるっていう。

(吉田豪)フハハハハハハッ! 誰がいちばん強いのか?っていう。

(セイジ)誰がというかね、ほら。俺はあの時、『男気万字固め』っていうのをもらったじゃない?

(吉田豪)僕の出した本ですね。僕の最初の単行本。

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(セイジ)あれ、面白かったんだけど。まあ、張本勲さんのが面白かったんだけど。まあ、インタビューをやっているのは知っていたから、「これ、インタビューで本を出して儲かるんだ!」って感動をしたね。

(吉田豪)フフフ、なるほど。好きな人に会いに行って、好きな話を聞いて、お金になるっていう。

(セイジ)そうそうそう! そういう自分のやりたいことをやって。

(吉田豪)会いたい人に会いに行って、褒めて、お金になるって最高ですよ(笑)。

(セイジ)そうだね(笑)。「うわっ、すごい素晴らしいことだな!」って。

(吉田豪)特にあのシリーズとかはその当時、あんまり評価されていない人に会いに行って「あなたは最高です」って言いに行くという感じだと思うんですよ。山城新伍さんもそうだし、張本さんも……特に最近は世間からの風当たりが強いですけども。あの人の腕っぷしの強い感じの話とか、最高じゃないですか。

張本勲の腕っぷしの強い感じ

(セイジ)うん。俺、張本好きだからね。

(吉田豪)フフフ、めちゃくちゃいいですよね(笑)。

(セイジ)「喝!」っていうね。あの日曜のあれ、結構好きで見るもんね。

(吉田豪)あれがね、だからいまのルールから見ると「張本さんは間違ったことを言っている」っていう風になっちゃうじゃないですか。張本さんはもっと気合とか根性の人だから。

(セイジ)間違ったこと、言っているのかな?

(吉田豪)セイジさんのルールに近いと思うんですよ。気合とか根性とか。でも、スポーツ科学とかで考えたら間違っていることを言っているっていう感じで。

(セイジ)まあ、それもたぶんあの人にはあるんだろうけども。際だよね。その際をやり続けた人が超一流になっていったという。王貞治にしても。その際の……まあでも、無難に行くと無難に行った方がいいのかもしれない。際を行った人だからその際を……特に天才にはそういうことを言いたいんじゃないの?

(吉田豪)うん。僕が張本さんを取材した時には張本さんがとにかく野球の話をしたそうだったのを僕は一切そっちには乗っからずにストリートファイトの話とか極真空手との関係とか、そんなのばっかりを聞くという(笑)。

(セイジ)いちばん興味深かったのは力道山と大山倍達との関係が読み取れたこと。あの、『空手バカ一代』とは全然違うじゃない? ちょっと頭が上がらなかったっていう。大山倍達が力道山に。

(吉田豪)そうです。

(セイジ)やっぱり同じ民族でありながらも、親玉だったんだね。

(吉田豪)あの時代は完全にそうだったんでしょうね。力道山VS木村政彦の話とか聞くと、そんなことばっかりやっていましたからね。

(セイジ)フフフ、そうか。あれ、でも完全にわざとだよね? 力道山が途中で怒り出したのは。

(吉田豪)そうです、もう明らかな罠っていうか。

(セイジ)あれは、素晴らしいよね。

(吉田豪)フフフ、「素晴らしい」(笑)。

(セイジ)俺はあの、『グラップラー刃牙』の猪狩完至のキャラクターが大好きで。

(吉田豪)あの素晴らしいアントニオ猪木のね。はいはい(笑)。

猪狩完至のキャラクターが大好き

(セイジ)猪狩完至のキャラクターが途中でギブアップする時にヒジかなんかでチョンチョンってやって刃牙がパッと離すんだけども、「誰も聞いちゃいねえんだよ」ってバコーン!って。もう勝つということに……。

(吉田豪)フフフ、本当に性格の悪いアントニオ猪木をちゃんと描いてくれたはじめての作品ぐらいですよね。

(セイジ)性格が悪いというか勝負師……たぶん宮本武蔵とかもそうだったんじゃないかなって思って。でも、宮本武蔵よりもアントニオ猪木がすごいなってちょっと思うんだけども。「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」っていう。これは言えないよ。本当に。

(吉田豪)それで本当に来ますからね。本当に実際に来た人ですから。猪木さんには。

(セイジ)本当にこれ、どこかが狂っているとしか……。

(吉田豪)実際に鎖鎌を持った空手家に挑戦されましたからね。「俺の鎖鎌の挑戦を受けろ!」って(笑)。

(セイジ)それで、どうしたんだろう?

(吉田豪)で、猪木さんがやっぱりすごいのはその人を抱き込んで、新しい空手の流派(寛水流)を作って仲間になるという。

(セイジ)ああ、さすが。

(吉田豪)仲間になった上に、その空手家をジャイアント馬場に差し向けるっていう(笑)。

(セイジ)フハハハハハハッ!

(吉田豪)ジャイアント馬場に真剣勝負を挑ませるっていうのをやって……その話を聞いて「いやー、猪木はすごいわ」って思ったんですよ。

(セイジ)それでジャイアント馬場は戦ったのかな?

(吉田豪)馬場サイドは馬場サイド周りの怖い人が出てきて、全てが丸く収まるというか。

(セイジ)ああ、戦ったわけじゃなくて?

(吉田豪)戦ったわけではなく、周りに強い人がいっぱいいたという感じですね。馬場さんサイドに。そういう話を聞きました。

(セイジ)なるほどね。あと、馬場と猪木の……マウント斗羽と猪狩完至のあの『グラップラー刃牙』の章が素晴らしくて。

(吉田豪)最高でしたね!

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(セイジ)最高! あのエンディングが素晴らしい。「バレバレだわ」とかって言って。

(吉田豪)あれが実現するなら、それは会社も休みますよっていう(笑)。

(セイジ)フフフ、あれは本当に素晴らしい。

(吉田豪)セイジさんとイベントをやる時、よくセイジさんのビデオを何度か見せていただいたじゃないですか。セイジさんがロックを感じる瞬間をまとめたビデオ。あれが本当に大好きなんですよ。ロックに限らないものが全部詰まった……アントニオ猪木がタオルを取る瞬間、ガウンを取る瞬間がいかにかっこいいかっていう講義(笑)。

(セイジ)そうだね。完璧な……様式美だよね。型だよね。「シャーッ、シャーッ、パンパンパン……ブワーッ!」っていう。それが一歩、二歩、三歩ぐらいでパッ、パッ、パーン!ってなるっていう。

(吉田豪)リズムも完璧で。それをひたすらセイジさんが何度も巻き戻して見せるっていうイベントをやっていたんですよね(笑)。

(セイジ)そうだね(笑)。自分の部屋で友達をつかまえてビデオで何度も見せるのと同じことだよ。同じことをやったらあんなにお客さんが喜んでくれるとは思わなかったよ(笑)。

(吉田豪)まあ、だからロックスターとかわかりやすいものだけじゃないですからね。マイケル・ジャクソンとかまでちゃんと入ってくるんですから。セイジさんの場合には。本当にジャンルを問わない。かっこよければ全てよしっていう。

(セイジ)そうだね。かっこよければ。ジャンルじゃなくて「かっこいい」っていうジャンルなのかもしれない。

(吉田豪)音楽ジャンルではないっていう。

(セイジ)うん。「かっこいい」っていうジャンル。やっぱりかっこいいと思う人に憧れるっていうか、興味をすごく持つから。

(吉田豪)その魂のキープの仕方なんですよね。本当にだから僕、パンクとかガレージとかも好きですけども……。

(セイジ)いちばん最初はパンクから入ったんだよね?

(吉田豪)そうですね。完全に。だから「初期症状をどうキープするか?」みたいなのってすごく重要だと思うんですけども。セイジさんのこの初期症状キープさ加減っていうのがやっぱり異常だと思うんですよ。

(セイジ)また……乗せてきた!(笑)。

セイジさんの初期症状キープさ加減

(吉田豪)フフフ、やっぱりどうしても音楽をやっているとちょっとずつ枯れたというか、大人な方向に行かなきゃ……みたいな空気があるじゃないですか。

(セイジ)いやいや、まだまだ。宇宙に比べれば人間の寿命なんて点でもないですよ。バーン!って弾けておかないと。

(吉田豪)いつまでもそっちで行くっていう。

(セイジ)いや、わかんないけど、とにかくそれしかないから。この先、どうなるのかはわからないけど。いまはもう弾けきっているね。弾けまくっている。

(吉田豪)すごいですよ、そこは。新譜が出るたびに感動しますからね。

(セイジ)いやいや……ああ、聞いてくれた?

(吉田豪)もちろん、もちろん。やっぱり曲というか、物の選び方、対象の選び方、言葉のセンスって本当にセイジさんはやっぱりブレないっていうか。

(セイジ)『アウストラロピテクススパーク』(笑)。

(吉田豪)フフフ(笑)。さすがだよなって思いますよ。

(セイジ)いえいえいえ……危ない、危ない(笑)。

(吉田豪)危なくないですよ(笑)。

(中略)

(吉田豪)でも、セイジさんのおかげで前田吟さんに出会えましたからね。いい話が聞けたんで。

(セイジ)ああ、すごいなー。ブルース・リーにはインタビューしていないの?

(吉田豪)えっ?

(セイジ)ブルース・リー。

(吉田豪)さすがに僕、世代が全然違いますよ(笑)。死んだ時、まだ子供ですよ(笑)。

(セイジ)あ、そうなの?(笑)。俺が小学校3、4年か。歯医者かなんかに行った時に週刊誌があって。ブルース・リーが倒れている写真で。「なんかの撮影かな?」って思ったら、あの時にしんだんだね。

大山倍達にもギリギリ会えなかった

(吉田豪)梶原一騎先生にも会えなかったし、大山総裁にもギリギリ会えなかったんですよ。亡くなった時に極真の本部には行ったんですよ。当時、格闘技の仕事は始めていたんで、紛れ込んでそこには入れたっていう。でも、会えはしなかったっていう。

(セイジ)なるほど。大山倍達が死んだのが……?

(吉田豪)92年とか93年ぐらいですかね?(※1994年死去)。

(セイジ)あの時もびっくりしたよなー。あの時はまだ、そういう仕事はしていなかったの?

(吉田豪)始めたてでペーペーだったけども、紛れ込めたぐらいの感じです。

(セイジ)ああ、残念。

(吉田豪)残念だったんですよ。

(セイジ)果たして、強かったのか?(笑)。

(吉田豪)フフフ、そういうシンプルな……(笑)。

(セイジ)でも、間違いなく強かったんだろうね。

(吉田豪)もちろん。

(セイジ)昔の、あの牛と戦う男。あれで牛を倒しているからね。

(吉田豪)実際に動画を見ていてもね、テイクダウンを取るだけでもすごいですよ。前に聞いたことがあるんですけども。大山総裁とちょっと不仲だった弟子が、大山総裁のビン切りってまあ細工はビンにしていたらしいんですよ。切れやすくなるように。で、わざといたずら心で細工をしないビンを出したことがあったらしいんですよ。で、みんなが見ているから小声で「ビンが違う。ビンが違う」って言われても「押忍! いつものビンです」って言い張って恥をかかせようとしたら、ちゃんと切って。そのかわり、手は血まみれになっていたっていう。だから、やれるけどもいろいろと大変だからやりやすいような工夫をしているんだろうなっていうことなんですよね。

(セイジ)なるほどね!

(吉田豪)やれない人ではないっていう。

(セイジ)ああ、切れることは切れるけど、手が血まみれになるのが嫌だからだ。

(吉田豪)だと思いますよ。それはそれでいい話だなと思って。うん。

(セイジ)ああー、なるほどね。やれることはやれるけど。なんか似ているな。俺のなにかに……。

(吉田豪)なにかに似てるんですか(笑)。

(セイジ)なにかに……なんだろう? でもビール一気は俺、ちゃんとやるしな。でもなんかあるみたいな……まあいいや。へー!

(吉田豪)セイジさんの幻想の守り方もすごいじゃないですか。幻想の守り方というか、セイジさんが本当に隙を見せない感じ。常に革ジャンなのもそうだし、最近だとHMV渋谷のレコードのインストアイベントでバイクで突入とか(笑)。

(セイジ)フフフ(笑)。

(吉田豪)「ああ、最高だな!」っていう。常にサングラス外さない話から。いろんな人が、伝説の証人がいっぱいいるわけですよ。セイジさんがサングラス、こんな時には外すんじゃないかと思っても……サウナでバトルしても(笑)。

(セイジ)まあ、ギャグにはなったね(笑)。

(吉田豪)風呂で会ってもサングラスをしていたみたいな(笑)。

(セイジ)まあ、ギャグね(笑)。

(吉田豪)なかなかないと思うんですよ。いまどき、プロレスのマスクマンでもそこまでやらないだろうっていうぐらいのギミックの守り方を徹底しているっていう素晴らしさが。

(セイジ)とんでもないですよ。大したことない(笑)。

(吉田豪)大したことないんですか?(笑)。なんか今日、メモとか持ってきていましたよね?

(セイジ)そうそう。(ガサガサ……)。なんだっけな?

(吉田豪)いつも「豪くんに聞きたいことあったけど、忘れちゃったよ!」ってよく言っていたんで、忘れないように山ほどメモを書いてきたらしくて。目に入るのが「梶原一騎、力道山、真樹日佐夫」っていう。フハハハハハハッ!

(セイジ)そうそう。樹木希林さんが内田裕也を鉄パイプにボコボコにしたっていうのは本当?

樹木希林、内田裕也 鉄パイプボコボコ事件

(吉田豪)それは本にも出ていたし、裏は取っていますね。どこまでのことかはわからないけど……裕也さんが膨らませていた可能性はありますけども、裕也さんはそう言っていたんですよね。裕也さんが一時期、寝れなくて。睡眠薬を飲んでお酒を飲んでちょっとラリり気味だった時期があって。ラリるたびに夜中、樹木希林さんの家に行って。裕也さんの家でもあるんだけど、そこには全然住んでいなくて。「俺は狭いアパートなのにお前らだけこんないい思いをしやがって!」ってなって、夜中に騒ぎ続けていた時期があって。

「コノヤロー!」ってずっと騒いでいたら、子供が泣くようになって。「今日もまた裕也が来たよ……」って子供が泣くようになったので「これはしょうがない」っていうことである日、扉を開けて。そしたら土足のまま裕也さんが入ってきて。「コノヤロー!」って文句をつけていたらまずモックンがタックルを決めて倒して、そこに樹木希林さんが鉄パイプを出してきて……(笑)。裕也さん曰く、ボコボコにされたっていう。「やり返してやろうと思ったけど、俺は指輪をしていて。この指輪は凶器だから殴るわけにはいかなかった」みたいな言い方をしていました。

(セイジ)ああ、モックンがいるんだったらついこの間だね。

(吉田豪)そうですね。この間というか、結婚をされた後ですね。二世帯住宅で住まわれていて。で、僕はこの話、真樹日佐夫先生に裏を取ったんですよ。「裕也さんがこんなことを言っていたんです」って言ったら、「たしかにな、裕也の指輪は凶器なんだよ」って言っていて。あるお寿司屋さんで一枚板のカウンターである日、裕也が怒って。そこをボーンと殴ったら、指輪がそのまま刺さちゃったことがあって。「あいつの指輪はヤバいぞ!」って言っていて。一応、その裏も取れたっていう(笑)。

(セイジ)フフフ(笑)。でも、すごいやっぱりその2人は愛が深いじゃない? 特に樹木希林さんが。

(吉田豪)そうですね。

(セイジ)本当に裕也さんのことが好きだったんだろうなっていう感じがすごかったよ。

(吉田豪)最初の旦那さんが岸田森さんで。

(セイジ)ああ、そうなの?

(吉田豪)そうなんですよ。それも最高じゃないですか。大好きな人2人を渡り歩いて。それで岸田森さんと別れた理由を聞いたら「退屈だった」って言ってましたからね。退屈で別れて、退屈じゃない裕也さんを選んだ人なんで。それはいろんなトラブルがあってもまあ、乗り越えられるわけですよ。

(セイジ)あと、どうしてもわからなかったのはやっぱり樹木希林というキャラクターにとって、やっぱり裕也さんと結婚をしているっていうのは、いいじゃない? なんとなく。

(吉田豪)いいですよね。ものすごく深みが出る。

(セイジ)千葉真一が野際陽子と結婚してりゃよかったんじゃないかな?っていうね。俺はちょっと思ったけどね。

(吉田豪)寂しかったですからね。

(セイジ)そうだね。やっぱりあの2人はあの2人でなんか……。

(吉田豪)やっぱり猪木も倍賞美津子であってほしかったじゃないですか(笑)。寂しいんですよね。うん。

(セイジ)というか、猪木さんってアメリカでも結婚をしていたんだよね?

(吉田豪)そうですね。最初にアメリカで結婚をしていて。

(セイジ)で、アメリカ人の女の人と……?

(吉田豪)で、すごい美少女の娘さんもいたんですけど、若くして亡くなっちゃって。とかっていうのもあるんですよ。で、日本に戻って倍賞美津子さんと結婚したという。

(セイジ)ああ、そうなんだ。じゃあ、アメリカの修行時代に?

(吉田豪)だからその結婚は隠していて、子供との写真も実はほとんどなくて……っていう。

(セイジ)ああ、実際に子供が実はいるのかなって思って。うんうん。アントニオ猪木さんにはインタビューは?

(吉田豪)何度か。僕がまだ22、3のペーペーの時に議員時代のアントニオ猪木さんの取材っていうすごいハードルの高い仕事をやったことがあって。

(セイジ)緊張するね。

議員会館でのアントニオ猪木インタビュー

(吉田豪)生まれてはじめて議員会館に入るわけですよ。まずその時点でプレッシャーなのに、待ち受けているのが猪木さんで。ちょうどあの猪木スキャンダルの直後だったんですよ。秘書から訴えられたりしていた時期。税金払っていないだとかなんだとか言われていた時期。そのスキャンダルを含めて人生を振り返ってもらうみたいな。その年の私的なニュースを話してもらうみたいな企画だったのに、ずーっと猪木さんは自分の話をしないんですよ。

世界情勢の話ばっかりしていて。「なんとか話を戻さなきゃ」って思ってがんばって戦って。それで面白くはなったんですけども、いろんな話をしながらもずーっと話をしている間に金属音がするんですよ。ジャッ、ジャッ、ジャッ……みたいな。「なんだろう?」って思ったら猪木さん、インタビューを受けながらずっとチャックを上下させているんですよ(笑)。

(セイジ)フハハハハハハッ!

(吉田豪)「えええーっ!?」って思って(笑)。なにも言えないじゃないですか(笑)。

(セイジ)それはなんでだったの?

(吉田豪)後に秘書の人に確認したら「その日はチャックの調子が悪くて気にしていたようです」っていうことだったんですけども。ずっと、「いまね、国際問題がね……」って言いながら、「なにをしているんだろう、この人は?」って思ったっていう話ですね。その後も何度会ってもやっぱり恐ろしいというか、すごいですよね。ものすごいローテンションで現れたと思ったら、瞬間でスイッチが入る感じみたいな。「ダーのポーズでお願いします」ってスタジオでカメラマンがたのんで、無言でうなずいて。ダーのポーズだけでいいんですよ。まだ朝8時とかすごい早い時間だったんですけど突然大声で「ダーッ!」みたいに始まって(笑)。大声で何度もシャウトした後でまたスッとローテンションに戻る感じとかがなんか猪木、すげえって思った印象がありますね。

(セイジ)うんうん。でも、練習は本当にすごい真面目だったらしくて。有名なことなのかどうかわからないけども。俺がまだ、田舎にいる頃になんか、俺よりも10ぐらい上のスポーツをやっている人が見に行ったことがあるらしいんだけども。「女子プロと男子プロが一緒に合同でやっていて。で、女子プロはなんかヘラヘラしながら適当にやっているんだけど、アントニオ猪木はすごくて。本当にあの人だけ一生懸命練習してて、すごかった。汗がものすごくて……その点、女子プロの人たちはちょっとヘラヘラしながらやっていて。でも、猪木さんはすごかった」っていう。なるほどなって。でも、『プロレススーパースター列伝』を見ても、本を読んでも本当にジャイアント馬場とアントニオ猪木の練習量はすごかったって……。

(吉田豪)フフフ、ジャイアント馬場もそこに入ってくるわけですね?(笑)。

(セイジ)いや、すごかったっていう。

(吉田豪)でも、その後の離合集散の流れとかを見て毎回思うのが、やっぱりすごい練習をしていたことで信用を得ていた人が、練習量が減ると後輩との溝ができはじめて……みたいなことが猪木にもあったし、前田日明にもあったしっていう。代々そういうことがあるみたいなんですね。

(セイジ)練習量が減ると?

(吉田豪)えらくなって、他にやらなきゃいけないことが増えて、道場にあまり行かなくなるとちょっとずつそこで溝ができていってクーデター的なというか、団体が割れたりするっていう。

(セイジ)なるほどね。たぶん……それはなんでだろう? 自分自身が強くなくなるから?

(吉田豪)まあ、やっぱり一緒に汗を流さないと信頼関係が作りづらいんだろうなって思うんですね。で、みんなえらくなって団体の長になると、いろいろと他の仕事が増えて練習ばかりできないことに気づくっていう。みんな大人になるとそこがわかるというパターンですね。

(セイジ)大変だな。本当だよ。俺も結構そうだもん(笑)。

(吉田豪)ですよね。絶対にこうやってフェスとかやり始めたら、同じような状況になると思うんですよ。やらなきゃいけないことが多すぎて。

(セイジ)そうだよ。まあ、面白いけどね。

<書き起こしおわり>

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