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町山智浩『アイ・ウェイウェイは謝らない』を語る

町山智浩『アイ・ウェイウェイは謝らない』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2013年3月、TBSラジオ『たまむすび』で中国のアーティスト、アイ・ウェイウェイのドキュメンタリー映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』を紹介していました。

(赤江珠緒)さあ、町山さん。そんな中、今日ご紹介いただけるのが中国のドキュメンタリーということで。

(町山智浩)これ、映画自体はアメリカ映画なんですよ。監督とかお金を出しているのはアメリカ人で。ただ、撮影をされている場所や出てくる人たちはみんな中国人っていうドキュメンタリーですね。『Ai Weiwei: Never Sorry』というタイトルで。『Ai Weiwei(アイ・ウェイウェイ)』っていうのは人の名前ですね。『Never Sorry』っていうのは「絶対に謝らないよ」っていう意味なんですよ。「謝ってたまるか!」っていう意味なんですけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)アイ・ウェイウェイっていう人は中国の芸術家というかアーティストなんですけどもすごく有名なのは2008年の北京オリンピックですごいスタジアムがあったじゃないですか。

(山里亮太)ああ、「鳥の巣」っていう。

(町山智浩)そうそう。鳥の巣。あれのデザインをやった人なんですね。このアイ・ウェイウェイっていうおじさんは。

(山里亮太)相当すごい人なんだ。

(町山智浩)すごい人で。そう聞くと、中国政府からオリンピックの仕事をもらったぐらいだから、ものすごい政府にかわいがられている人っていう感じがするんですけども。

(赤江珠緒)国家的に応援をされていそうですよね。

(町山智浩)そうそう。まあ、そういう人だったんですけども、とんでもないことをして全然違う方向に行っているんで、その人のデタラメな暴れっぷりをとらえたドキュメンタリーなんですね。で、どのぐらいひどいことをしているのか?っていうと、まずわかりやすい例は「漢時代の壺を落とす」っていうアートがあるんですよ。この人の。

(山里亮太)漢の時代?

(町山智浩)後漢っていう時代、だから2000年ぐらい前の本物の壺。1個何千万円とか何億円とかっていうような壺を。

(赤江珠緒)めちゃくちゃ貴重になるでしょう。漢の時代とかになると。

(町山智浩)そうなんですよ。要するに壺とかってすぐに割れちゃうから、完璧な状態で発掘されているものっていうのは高いわけですよね。それを落っことすところを写真に撮って、「これがアートだ!」って言っているような人なんですよ。

(赤江珠緒)ああ、ここに写真がありますけども。壺を抱えている人。手を話して壺が落ちる瞬間。割れた……これ、本人ですか?

(町山智浩)本人。この気の良さそうなおっさんがアイ・ウェイウェイさんなんですけども。1957年生まれなのでいまは50いくつかな? これが本物の壺を骨董品屋から高いお金を払って落っことして割っているんですよ。

(赤江珠緒)その写真が3枚、並んでいますね。

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アイ・ウェイウェイ 後漢の壺を落とす

(町山智浩)そうなんですよ。で、これを見た人たちはいろんな反応をするわけですよね。「中国の歴史的なものを壊して遊んでいるのか? ふざけるな! 国に対する冒涜だ!」とか「愛国心がないのか?」とか。そういうことで大論争を巻き起こすようなことを次々としているんですね。

(赤江珠緒)ほう!

(町山智浩)で、もうひとつ、そっちに行っているアートで唐の時代の壺に「コカ・コーラ」って書いているのがあるんですけども。

(赤江珠緒)フハハハハハハッ! 唐時代の素焼きみたいな壺に……ちょっとオレンジがかった素焼きの壺みたいなのに見事に「コカ・コーラ」って書いてますね。

(山里亮太)あのロゴがね。

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唐時代の壺にコカ・コーラと書く

(町山智浩)そう。これ、本物の唐の壺なんですって。唐っていえば、あの遣唐使の時代ですよ?

(赤江珠緒)うわっ!

(町山智浩)もうこれだけで数千万円するんじゃないかと思うんですよ。まあ、値段はわからないですけどね。それに「コカ・コーラ」って書いてるんですよ。

(赤江珠緒)えっ? だから奈良の大仏さまみたいなものに……。

(町山智浩)そう。落書きしているんですよ。これも、だから要するに骨董品としての価値を破壊しちゃっているわけですよね。でも、これを見るといろんなことを考えるじゃないですか。

(赤江珠緒)オレンジにオレンジだから、まあまあきれいっちゃきれいな気もしますよ?

(町山智浩)フフフ(笑)。

(山里亮太)赤江さん、そこじゃないと思うよ?

(赤江珠緒)デザイン的に「うん? 嫌いじゃない」っていう感じですけども(笑)。

(町山智浩)でも、こうやって骨董品としての価値を壊してしまっていいのかとか、これは伝統に対する冒涜なのかとかね。あと、コカ・コーラって中国でものすごく売れているんですよ。コカ・コーラって実はアメリカでもあんまり売上は伸びていないから。「体に悪い」っていうことで攻撃の対象になっているんですよね。で、日本でもコカ・コーラはあんまり売れていなくて、コカ・コーラの会社自体が烏龍茶とかコーヒーとかを作って利益を上げている時代じゃないですか。そんな中で、中国だけはコカ・コーラがめちゃくちゃ売れているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これはね、やっぱり資本主義の象徴みたいなところがあるみたいなんですね。おしゃれみたいな。だからそういったものに対する批評なのかなとか、いろんなことを考えるわけですよ。中国の骨董品に「コカ・コーラ」と書いてあるものを見て。

(赤江珠緒)なんか中国とアメリカの融合みたいな。不思議な気分になりますね。

(町山智浩)資本主義化、アメリカ化される中国とか、いろんなことを考えますよね。そういうことをやっている人なんですが、まあ怒る人もいますよね?

(赤江珠緒)大前提として「なにをやっちゃってるんだ?」っていう。

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マルセル・デュシャンの影響

(町山智浩)そうそう。基本的に落書きですから。で、この人はどうしてこういうことをやっているのか?っていうと、マルセル・デュシャンっていう芸術家がいたんですけども。1900年代はじめに活躍した人ですけども。その人がやっていた芸術にこのアイ・ウェイウェイさんはものすごく影響を受けているんです。で、デュシャンのやったことで2つ、有名な物がありまして。ひとつはトイレで男の人がおしっこするトイレ、あるじゃないですか。アサガオっていうやつですね。あれを展覧会に持ってきて「これは私の作品です」って言って展示をしようとしたんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)要するに、便器屋さんに行って便器を買ってきて、それをデュシャンという人は展示したんですよ。「アートですから」って言って。

(山里亮太)加工とかもなしでそのまま?

(町山智浩)名前だけ、サインだけして。「これはアートです。『泉』というタイトルで飾ってください」って言ったんですね。で、「なんだ、これは? これはお前の作ったものですらないじゃないか。そこらへんで売っているものを買ってきて、なにがアートだ?」っていうことで問題になったんですよ。その時に起こった論争というのは、要するに「なにをもってアートと言うのか?」っていうこと。その疑問みたいなものを提示したんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)もうひとつは、有名なレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザっていう絵がありますけども。その複写の絵のモナリザの顔にヒゲを書いたんですよ。で、そのヒゲを書いただけのものを出したんですよ。それはただ単に落書きなわけですよ。そういうことをやったのがデュシャンさんなんですけども、アイ・ウェイウェイっていう人はまさしくデュシャンのやっていたことをいま、やっているわけですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、これいまごろやっているの?っていう古い感じもちょっとするんですけども。日本でもこういうことをやっている人たちはいたんですが、それは1960年代にやっていたんですよ。ジョン・レノンさんの奥さんのオノ・ヨーコさんっていう人、いますよね。彼女は60年代に日本でそういうことをやっていたんですよ。横尾忠則さんとか岡本太郎さんとか、そういう人たちが60年代にそういうハプニングとか、こういうアート活動をしていたんですよ。一種の破壊的な。

(赤江珠緒)「芸術は爆発だ」っていうことで。

(町山智浩)はい。たてえばこの人たちがやっていたことでいちばんショッキングだったのは銀座のど真ん中で白衣を着た人たちが突然、掃除をし始めるんですよ。白衣を着た人たちが道をいきなり掃除し始めたらみんなどう思うかっていうと、「なにか病原体とかが発生したんじゃないか?」っていうことでパニックになりますよね? そういうことをやってイタズラしていた人たちが日本にもいたんですよ。もちろん、大変な問題になりましたけども。

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ハイレッドセンター・首都圏清掃整理促進運動

(赤江珠緒)はー! たしかにアートとイタズラの境界線って、そう言われると本当に難しいですね。

(町山智浩)そう。たぶんないんです。イタズラとアートって似たようなものなんですけどね。とにかく見た人がそれでいろいろなことを考える。いままで気がつかなかったことに気がついたり、考えなかったことを考えたりするようになるというところで。その便器自体を持っていくということ……便器自体はアートでもなんでもないんですけども、それを見た時に人の心の中に起こることがアートなんですよね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、それをやっているのがアイ・ウェイウェイさんで、この人がだんだんと過激になっていくんですよ。

(赤江珠緒)でも中国ってすごくいろんな締め付けが厳しいっていうイメージがありますけども。

(町山智浩)そう。だからその中でアートをやりたいなって思ったら、どんどんとめちゃくちゃなことになっていくんですけども。で、この人はまずその鳥の巣というオリンピックの会場を作ったことで、本当は政府にいちばん気に入られるお気に入りのアーティストになるはずじゃないですか。政府のお金をガンガン使ってアートをやればいいわけなのに、そうじゃなくてその時にちょうど四川で大地震が起こったんですよね。で、地震そのものよりも手抜き工事をしていた公共建築物が倒壊して、大量の子供が死んだんですよ。学校が倒壊して。スカスカの建築をしていたんで。それでこの人は「大変なことが起きた」と思って調べたら、子供たちの死傷者の数を中国政府が隠したんですね。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)で、このアイ・ウェイウェイさんは怒って、徹底的に調べ始めるんですよ。具体的な名前を。で、誰が死んだかっていうことを全部調べて、全てインターネットで発表するんです。で、その人数と全く同じ数のランドセルというか、中国なのでリュックですけども。それを集めて、その死んだ子供の数と同じだけのリュックでアートを作るんですね。それで徹底的に中国政府の責任逃れと隠蔽工作と戦い始めるんですよ。この人は。

(赤江珠緒)ああ、本当だ。ここに蛇の天井という作品。通学用のバックパックを蛇の形につなげた作品っていうのが……これはそういうことなんですね。

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アイ・ウェイウェイ 蛇の天井

(町山智浩)震災で亡くなった子供たちに捧げるアートなんですよ。で、このへんからどんどんと政府との戦いになっていくわけですよ。

(山里亮太)ああ、これがきっかけなんですね?

(町山智浩)このへんからですね。で、この人はその頃、要するに政府にかわいがられていたものだから、上海にものすごい巨大なアトリエを作ってもらうんですけども。政府と戦い始めたからアトリエを壊されちゃうんですよ。

(赤江珠緒)まあ、そうでしょうね。

(町山智浩)アトリエを強制破壊されちゃうんですよね。で、頭に来たから強制破壊される日の前日に「蟹パーティーをしよう。みんな、おいで! 蟹がいくらでも食べ放題の蟹パーティーをやるよ!」って言うんですよ。インターネットで人を集めて。で、これはいったいなんなんだろう?って僕、わからなかったんですけども。これ、中国に河蟹っていう蟹がいて。それを「ホーシエ」って発音するらしいんですけども。それは胡錦濤の中国政府のやっていた政策で「和諧(ホーシエ)」っていうのがあって。

「調和の取れた社会主義」というものを中国政府が提唱したらしいんですよ。それは「資本主義化していく中で貧富の差とかができるんだけども、それをなんとかバランス取っていこう」っていう風に言っているんですが、実際にしていたことは「調和の取れた平和な社会にするために言論の自由を制限しよう」っていう方に使われたらしいんですよ。その和諧政策というのが。要するに、インターネットとかで政府批判とかが出ると、それが削除されるわけですね。

(赤江珠緒)実際にそうでしたもんね。

(町山智浩)それを「ホーシエ(和諧)された」って言うらしいんですよ。で、「和諧」というのは偽善的な言葉なわけですね。「和諧された」って言いながらも実際には中国は言論統制をやっていたわけですから。「和諧のためだ」って言いながら。それに対する皮肉として、「和諧」と同じ発音の「河蟹(ホーシエ)」をみんなで食べるというパーティーをやったわけですよ。

(赤江珠緒)ああ、なるほど。

(町山智浩)「そんなもん、食ってしまえ!」っていうことで。で、そこからだんだんめちゃくちゃなことをこの人は言い始めて。アメリカにはファックサインっていうのがありますよね? 中指を立てるやつ。それを全世界でやるっていうことをするわけですよ。

(赤江珠緒)全世界でやる?

(町山智浩)これ、どういうことか?っていうと、まず天安門広場であの天安門の建物に向かってファックサインを出している写真を撮るわけですよ。あと、天安門広場の前でアイ・ウェイウェイさんが裸にコートだけを着て。バッとコートの胸をはだけると胸に「ファック」って書いてあるんですよ。で、その写真を撮るとかですね。

(赤江珠緒)ワイルドな露出魔じゃないですか。

(町山智浩)この人、もっと若い時は女の子を天安門広場の前に連れて行って、スカートをパッとめくってパンツを見せて写真を撮るとかそういうことをやっていたんですけども。そんなことをやっていた人なんですが。それでだんだんと、この映画の中では途中でアイ・ウェイウェイさん、行方不明になっちゃうんですよ。撮影スタッフとかがいるのに「行方不明だよ」とかって言っていて。それでどうしてかっていうとやっぱり当局に逮捕をされて、ずっと監禁されているんですよね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)もう結局、そういう状況になっちゃって。どんどんどんどん政府に目をつけられて、ひどいことになっていくんですけども。暴行もされるし。でも、この人全然くじけないんですね。見た目がこういう感じなんで、全然くじけない人なんですよ。

(赤江珠緒)たしかに、気のいいおじさんっていう風体ですね。

(町山智浩)そうそう。ヘラヘラしている人でね。

(山里亮太)だまし絵のいい時の顔に似てる。

(赤江珠緒)たしかに(笑)。

(町山智浩)で、ニコニコしているんですけども。このドキュメンタリーが面白いのは、なんかちっちゃい2歳ぐらいの男の子がいつも、アイ・ウェイウェイさんと遊んでいるんですね。で、インタビュアーが「この子、誰ですか?」って聞くと、「俺の息子だよ」って言うんですよ。「えっ、息子さんなんですか? でも奥さんとの間に息子さん、いないですよね? この子はどこの女の人の子供なんですか?」「ああ、結婚してないけど、他所で作った」って言っているんですよ。それで「えっ?」「『あなたの子供がほしい』って言われたから作ったんだよ」とかって言っているんですよ、この人(笑)。もうとにかくね、大雑把でね、鷹揚な人なんですよ。

(赤江珠緒)わー! いろいろと枠に収まりきらない人ですね。

(町山智浩)収まりきらないんですよ。大物なんですよね。ちなみに奥さんもこのお母さんも美人ですけども。まあ、それはいいんですが。そういうことをやっていくうちに、どんどんと変なことになっていくんですよ。途中からね、「草泥馬」っていう動物を作って、それでこのアイ・ウェイウェイさんがいろんなことをし始めるんですね。これね、草泥馬っていうのは実在しない動物らしいんですけども。アルパカみたいな形の馬として、ぬいぐるみを作って。そのぬいぐるみを股間に当ててアイ・ウェイウェイさんが全裸で……草泥馬のぬいぐるみであそこを隠した写真っていうのを発表するんですよ。

(山里亮太)これ、こちらにその写真が……相当面白い写真が来ているんですよ。

(赤江珠緒)そして、飛んでますね! ジャンプしてます。

(町山智浩)ねえ。いい体しているしね。で、これを発表するんですよ。そこにつけたキャプション、写真のタイトルが「草泥馬当中央(草泥马挡中央)」って書いてあるんですよ。「中央」っていうのは要するにタマキンのことですけども。で、これが大問題になっちゃうんですよ。

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アイ・ウェイウェイ 草泥馬当中央

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)これ、「草泥馬」っていうのは中国語で「ツァオニーマー」って発音するんですね。で、それは英語で言うと「マザーファッカー」っていう意味なんですよ。クエンティン・タランティーノの映画に出てくるサミュエル・L・ジャクソンっていう俳優さんがよく映画の中で「マザーファッカー!」って言うんですけども。要するに、自分のおふくろさんですらやってしまうような人間のクズっていう意味なんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、「マザーファッカーを中央に当てる」っていうことなんですけども、「当てる」は「当(挡)」っていう字ですね。で、これは共産党の「党」と発音が同じなんですよ。だから「中国中央政府、共産党、マザーファッカー」って言っていることになるんですよ。発音が同じなんです。

(赤江珠緒)うわー! ものすごい政府批判じゃないですか!

(山里亮太)この写真で!?

(町山智浩)そうなんですよ。こういうことをやっているから何度も逮捕されているわけですけども。

(赤江珠緒)このおかしなおじさんの写真1枚でそんな強いメッセージが?

(山里亮太)全裸のおじさんが股間に人形を当ててジャンプしているのが……。

(町山智浩)かわいいぬいぐるみで股間を隠しているんですけども(笑)。実はとんでもないメッセージがあるんですよ。

(赤江珠緒)でも、あの中国でそんなメッセージを発信するということは、命がけというか、そういうことなんじゃないですか?

(町山智浩)そうですよ。だから中国っていうのはすごく歪んでいるから、社会に対する反発心とかを反日とかにまで捻じ曲げちゃうぐらい政府の圧力が強いところですよね。でも、この人はそんなんじゃないんですよ。はっきりと中国政府に対して戦っているんですよ。だからこれがまたね、要するにただ反中国、反共産党っていうだけでも全然ないんですよ。この人は。さっき言ったファックサインプロジェクトっていうのは全世界でやっていて。ホワイトハウスとかの前でもやっているんですよ。ホワイトハウスに向けてファックサイン出したり、エッフェル塔に向かってファックサインを出したり、ルーブル美術館に行ってモナリザの絵に対してファックサインをしたりしているんで。この人、徹底的なアナキストなんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)それでどんな権威も政府も全部的っていう風に考えている人ですから、さっき言ったマザーファッカープロジェクトも全世界の人たちを集めてそれぞれ各国の言葉で「祖国、マザーファッカー」って全員に言わせているんですよ。全ての国の人たちに。これはもう、すごいですよ。こうなると、要するに「中国は嫌いだ」っていう風に言っている日本の人が「じゃあこの人は好きなのか?」っていうと、でもこの人は「祖国なんてクソくらえ!」って言っている人なわけですから。これはもう、すごいことをやっている人なんで。まあ、本人はイタズラのつもりなんでしょうけども。

(赤江珠緒)ちょっと町山さんのいままでのお話を全部聞いて、最初の漢時代の壺を落とすっていう作品を見ると「はー!」っていう気持ちになりますね。最初はなにをやっちゃてるんだ?っていう感じでしたけどもね。そうか。

(町山智浩)そう。だからいろんなことを考えさせられるんです。ちなみに、中国というのは文化大革命の時に毛沢東が昔の中国の伝統的なものを全部破壊させたんですよね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)だからそういうことを含めて、中国がやってきたことでもあるしね。で、いまは逆に「伝統だから守ろう」って言っていたりして。「コロコロ変わってるんじゃねえよ!」とか、そういうことも言っているんですけども。だからこの人、それで面白いのは「あなたのアートは素晴らしいものだと思いますか?」っていうインタビューが中で出てくるんですね。「立派な芸術だと思いますか?」って聞かれて。「いや、別にそんなこと思わないよ」ってはっきりと言っているんですよ。「私は政府が叩いてきたからそれに対して抵抗をするイタズラをしているだけだ。反応としてやっているだけ。向こうが叩けば叩くほど、こっちもやるということでやっているだけだ」って言っているんですよ。だから「これは立派な芸術です」とか言わないところもかっこいいんですよね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)まあ基本的にロックな人だと思うんで。それでいま、なにをやっているのかと思ったら、中国ではほとんど軟禁状態であまり外に出れないんですけども。最近、ニュースで出ていたのはCDを作っているんですって。今度、ミュージシャンになるんですって。ヘビメタのレコードを録音中っていうニュースがいま、出ているんですよ(笑)。

(山里亮太)ライブとか、面白そうだな、この人の(笑)

(町山智浩)ヘビーメタルだって(笑)。もうなにを考えているのかよくわからないんでね。この人は実に面白いですからね。ぜひ注目していただきたいと思います。

(赤江珠緒)でも、たしかに皮肉なことに政府が叩けば叩くほどこの人の価値は上がりますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。しかも真面目に、非常に正義で戦っているというよりは遊んでいるところがいいですね。基本的にイタズラであるから、怒るとその怒った方がバカに見えるんですよ。そこがすごいなって思いますね。「冗談だから」っていうのをあくまでも冗談のままでいってるんでね。それが面白いということです。『アイ・ウェイウェイは謝らない』というドキュメンタリー映画でした。

(赤江珠緒)奥さんとかがきれいなんじゃないですか? モテるっていうのもあるんじゃないですか? ねえ。町山さん。

(町山智浩)いやー、僕もこういう人になりたいですよ。

(山里亮太)町山さん、結構近い気、しますけども(笑)。

(赤江珠緒)同じ匂い、ちょっと感じますよ(笑)。

(町山智浩)「Never Sorry」ですからね。僕、謝ってばっかりいますよ(笑)。全然違います。「So Sorry」です(笑)。「町山智浩 So Sorry, I’m Sorry」ですね(笑)。

(山里亮太)町山さん、すげえ謝ってる(笑)。

(赤江珠緒)今日は町山さんにドキュメンタリー映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』をご紹介いただきました。日本でも公開予定ということで、見ることができるようです。そうか。町山さん、今日もすごく面白い映画、ありがとうございました。

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『アイ・ウェイウェイは謝らない』予告編

(町山智浩)はい。どうもすいませんでした。意味もなく謝ってますけども(笑)。

(赤江珠緒)すぐ謝っちゃう(笑)。「Never Sorry」じゃない町山さんからご紹介いただきました。ありがとうございました!

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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