渡辺志保『サムワン・グレート~輝く人に~』を語る

渡辺志保『サムワン・グレート~輝く人に~』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM101』の中でNetflix映画『サムワン・グレート~輝く人に~』を紹介していました。

(渡辺志保)午前4時を回りました。音楽ライターの渡辺志保です。金曜深夜にお届けしております『MUSIC GARAGE:ROOM101』、この後4時30分までお届けします。今日、4時台の前半は映画『サムワン・グレート』を紹介したいと思います。Netflixのオリジナルムービーとしてリリースされた『サムワン・グレート』なんですけれども、普段ですね、この映画は英語では「Romcom」って言いますね。日本語ではいわゆる「ラブコメ」ですね。

まあ、ちょっとキャッチーなラブコメ映画なんですけれども。まず出演者の皆さんが普段、海外ドラマとかが好きで。特にNetflixとかが好きでよく見てる方にはおなじみのメンツという風に言えるかもしれません。主人公がジーナ・ロドリゲスという女優さんなんですけれども。彼女はドラマ『ジェーン・ザ・ヴァージン』でお馴染みですね。

そして『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』のリメイク版、リブート版でおなじみのデワンダ・ワイズとか。あとは『ピッチ・パーフェクト』シリーズに欠かせないブリタニー・スノウ。この女の子3人が仲良しグループ。そして舞台はニューヨークという感じです。で、2019年版『SEX AND THE CITY』みたいな感じかもしれないですね。でも、あの『SEX AND THE CITY』はさ、主人公のキャリーを含め、みんながもうキラキライケイケ女子じゃないですか。で、行くところもすごくエグゼクティブが行くようなキラキラしたラグジュアリーなバーだったりしますけども。

この『サムワン・グレート』の3人が行くのは地元の音楽フェスだったりとか。あとちょっとね、カネオでルポールも参加してますね。なんかそういうちょっとゲイのお兄さんのお家に行ったりとか。なんかね、『SEX AND THE CITY』よりはもっと地に足がついてる感じのドラマの内容です。そして、ネタバレならない程度に話しますと、主人公の女の子がまあ長年付き合った彼氏。9年間付き合った彼氏と30歳を目前に別れてしまうんですが。その彼氏役がですね、私の大好きなラキース・スタンフィールドという俳優さんが演じております。

で、このラキース・スタンフィールド、最近だとあのドナルド・グローヴァーの『アトランタ』のタリウス役でおなじみですね。あとは映画『ゲット・アウト』でも、あのセックス・スレイヴにされてしまうジャズ・ミュージシャン役で非常に印象的な役を演じておりますけれども、そのラキース・スタンフィールドも参加しているということで。本当にいま、旬な俳優さん、女優さんがギュッと集って作られた映画というような印象を受けます。

それで私がすごくいいなと思ったのは、その主人公のジェニーとその相手のラキース・スタンフィールド演じる彼氏役の2人が、なんと職業が音楽ライターなんですね。そんな映画、いままでにあった? みたいな。まあちょっと業界系だと『ブラウン・シュガー』とかがかつて、ありましたけれども。私はですね、やっぱり個人的にそこにいちばん心を動かされてしまいまして。もちろん映画の時系列によって、それぞれの職業が変化したりはするんですけれども。まず付き合い始めた時は彼氏が「俺、昇進したよ」って言って。「コンプレックスでコラムを書かせてもらえるようになった!」って言っていて。

それでコンプレックスっていうのはいま、本当に世界最大規模のストリートカルチャー・マガジンなんですよ。紙のコンプレックスはもうないのかな? 私は紙の時代からずっと買っていてですね。いまやWeb、しかもあとはYouTubeとかInstagramのストーリーとか、そういうあらゆる媒体を使って世界のファッション好き、そしてヒップホップ好きにアプローチしているのがそのコンプレックスっていう媒体なんだけど。それもすごいリアリティーがあるなと思って。

たぶん音楽ライター、音楽ジャーナリストであればみんなコンプレックスに書いてみたいとか。コンプレックスもいろんな動画シリーズをね、毎日のように発信しておりますので、その動画シリーズにフィーチャーされたいとかね、みんな思うはずなんですよ。で、私もですね、光栄なことに一度だけコンプレックス・マガジンから声をかけてもらって、日本人ラッパーのYDIZZYくんっていうのがいますが、YDIZZYくんのインタビューを英語でね、コンプレックスに寄稿したことがあって。そういったこともあるから「おおっ!」って思っちゃった。

で、その彼女役のジェニーちゃんは自分がいつか好きな曲のことを自分で文字にして。それでお金を稼げるようになりたいなって思っている若い女の子なんですよ。で、その子も映画の中で時系列が進んでいく中で、ローリングストーン・マガジンに就職が決まったっていう。「ちょっとリアル!」って思ってしまいましたけども。ローリングストーン・マガジンに就職が決まっちゃって、ずっと住んでたニューヨークを離れてLAに行かなきゃいけない。東から西に横断して移動せねばならないことになってしまいまして。それが原因で、じゃあ彼氏と別れようっていうことになってしまった。

女友達3人でハメを外す

で、その主役のジェニーちゃんがLAに行ってしまう前週っていう設定だったのかな? 前の日だったかな? その最後の週末をみんなで一緒に仲のいい女友達と過ごして、夜通し遊んでさあ、どうなる? というような、本当に他愛のないストーリーなんですけども、そこに差し込まれるそういうリアルな固有名詞とか、ちょっとあるあるみたいな出来事が本当に臨場感、そしてリアリティーがたっぷりで。見てて非常にスピード感のある飽きない映画だなっていう感じでした。

ちなみにその地元ニューヨークで行われる音楽フェスにみんなで行こうってなるんだけど、「誰かゲスト取れない?」みたいな感じのやり取りがあって。で、「こいつに頼めばVIPのパスが貰える」とかって。でもなかなかそいつから返事が来なくて、行けるか行けないかわかんないとかね。で、途中でこの3人の女の子が業界通の女の子……本当にもうインスタグラマーみたいな感じのルックスの女の子に出会うんですけど。その子と「今夜のフェス、行く?」みたいな話をしてて。で、「シークレットゲスト、カニエらしいよ。あっ、言っちゃった! これ、カニエから言わないでって言われてたんだけど、言っちゃった!」みたいな。そういう業界の女の子、いるいるー! みたいな感じで見てたりしました。

そんな感じでね、音楽好きの女の子が主役で進んでいく映画ですので、劇中にかかる音楽もすごい小ネタが効いてるんですよね。もちろん9年前のシーンでは9年前のヒット曲がかかりますし、現代のシーンではもうなんかね、これさえ聞いてればおしゃれって言われるよね、みたいな。たとえばヴァンパイア・ウィークエンドとかさ、ブラッド・オレンジとか、スーパーオーガニズム、そしてMitskiとかね。そういったのピッチフォーク的な、そしてローリングストーン的な音楽がね、どんどんどんどんかかっていく。

それによって主人公とかね、女友達の心情の変化が曲によって代弁されるというね、そういう働きを持つ映画でもあります。なので私も本当にかかっている曲で一喜一憂するっていう感じでこの『サムワン・グレート』をね、見ておりました。なので本当にもう「サクッと見れる」っていうのは褒め言葉じゃないかもしれないですけれども、特にちょっとね、元気がないな。週末、なにをしていいのかわかんないな、みたいな女性の方がいたら、ぜひぜひNetflix映画『サムワン・グレート』を見ていただきたいなと思います。

で、ここで『サムワン・グレート』にまつわる1曲をお届けしたいんですけれども。なんとオープニングシーンがですね、私の大好きな曲でスタートするんですね。UGKという、以前にもこのクラシックチューンのところでかけたことありますけども。テキサス州出身のラップデュオ、UGKの『Int’l Players Anthem』という名曲がありまして。それで幕を開けるのね。

で、あのこの曲のミュージックビデオを見ていただければわかるんですけれども、ミュージックビデオのテーマは結婚式なんですよね。この曲のトーンもサブタイトルで『 (I Choose You)』っていうのがついていて。「僕の運命の人に捧げるラップです」みたいな感じでみんながマイクリレーをしていくのね。なので映画の冒頭も、ジェニーが彼氏と付き合い始めてもうラブラブ絶好調みたいなシーンを描くのにこの曲が使われていて。もうそこで私はグッと心を持って行かれました。というわけで聞いてください。UGK『Int’l Players Anthem』。

UGK『Int’l Players Anthem』

<書き起こしおわり>

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