星野源と松重豊『深夜の音楽食堂』トーク書き起こし

星野源と松重豊『深夜の音楽食堂』トーク書き起こし FM yokohama

(松重豊)松重豊がお送りしている『深夜の音楽食堂』、今夜は星野源さんをお迎えしております。お届けしたのは今月19日に発売された5枚目のアルバム『POP VIRUS』から『Pop Virus』でした。どういう風に今回の曲は作っていったんですか?

(星野源)『Pop Virus』っていう曲がいちばん最初に、もうアルバムのイメージだったんですよ。こういう曲が入っているアルバムを作りたいっていう。

(松重豊)こういう曲って、まず音が出てくるの?

(星野源)ええと、頭の中で音のイメージと映像のイメージが出てくるんですけども。

(松重豊)映像?

(星野源)映像。景色のイメージ。それは、何て言うか、言葉になかなかできない感じなんですよ。たとえば「あそこに木があって……」とかそういうことじゃなくて、本当に漠然と頭の中に出てくるんですけども。で、音像も漠然と頭の中に出てくるんですけど、すぐ言葉には出てこないっていうか。メロディーにできるわけじゃないんですよ。

(松重豊)どんなタイミングの時にそんなものが?

(星野源)最初に出てくるのは、なんかポッて出てくる感じ。

(松重豊)ポッて出てくるっていうのは「曲を作らなきゃ」っていうことじゃなくて?

(星野源)頭の中に「次、何を作ろうかな?」とかやっていくと、だんだん浮かんできて。で、それを曲作りしながら出していくみたいな感じなんです。だから、ずーっとギターを弾きながら曲を作るんですけども。

(松重豊)まずギターなんだ。

(星野源)はい。僕はギターと歌を歌いながら。で、延々と何時間も「あああー♪」ってメロディーとかコードとかをどんどん変えながら作っていって。で、なんか自動販売機にたまにルーレットがあるじゃないですか。あれ、めちゃくちゃ出る確率が低いじゃないですか。当たりみたいな。

(松重豊)当たってほしくない時に当たるよね? 2個、絶対にいらない時にね。

(星野源)そうそうそう(笑)。「うわっ、こんなに持たなきゃいけない……」みたいな。で、それぐらいの確率で。本当にずーっとルーレットしているみたいな感じなんですよ。歌を歌いながら。で、ルーレットしていて、たまに当たって「ああっ!」ってなってボーン!って曲が出てくるみたいな。

(松重豊)うん。

(星野源)で、今回も『Pop Virus』という曲のイメージはもうあって。でもそれを形にしたら、どれがいちばん合っているんだろう?っていうことでずーっとやりながら。尺とかももっと最初は長かったりとか。これの前にAメロ、Bメロが最初はあったりとか。でもそれは全然いらないから無しにしたりとか。

(松重豊)それを削ぎ落としていくんだ。その風景と歌詞との関連性っていうのはあるんですか?

(星野源)それは、だいたい音とかメロディーとか編曲、バンドと合わせて「こういう風にして、こういう風にして……」って言いながら作っていくんですけども。で、それにした時点でさらにまあ映像のイメージが明確になるんですよね。と、同時にそれを言葉にまたしていくっていう。それも言葉をどんどん出してみて「これは合っている、合っていない。これじゃない。ああ、これこれ!」みたいな。なんかずっとそんな作業の繰り返しですね。

(松重豊)へー! それを延々と半年間ずっとやっていて?

(星野源)そうですね。でもいろいろと撮影とかもありましたし。

(松重豊)その間に英語のセリフをあんなに覚えて。

(星野源)いやー、それが本当に大変でしたよ! あの時、全然寝てなかったですもん(笑)。

大河ドラマ『いだてん』でも共演

(松重豊)もう公開されたんだよね。1月の6日からかな? 放送は。『いだてん』という宮藤官九郎さん脚本の大河ドラマが始まるんですけどもね。まあなんと、ここでも私たち共演しておりまして。なんとも、私のセリフも英語。最初はね。で、次の紹介された星野さんのセリフはもう延々と英語。

(星野源)日本語はなにもなかったですね。

(松重豊)大変ですよ。まあでもそこがね、僕らが本当に出てくるのはドラマの後半の方なんですけども。今回の話はオリンピックですから。オリンピックを招致するための立役者になった人がその星野くんが演じる人になっているんでね。

(星野源)はい。ぜひ見てみていただきたいなと。

(松重豊)そんな英語のことをやりながら。英語もまた発音がいい。だから「ああ、この人は海外進出も狙っているのかな?」って思ったりね。

(星野源)狙ってないですよ。

(松重豊)本当?

(星野源)でも、なんていうか、これを発表した時、「海外とか意識してるの?」って言われるんですけど、なんていうかもうその「海外を意識」とかっていう時代じゃないですか。日本も海外も意識してる場合じゃないっていうか。「もう垣根がないんだよ」っていうことを意識していかないと……。

(松重豊)っていうか、もう本当に同時多発的に世界中で見れるからね。

(星野源)そうなんですよ。

(松重豊)ちっちゃなところでやってる作品とか、YouTubeとかで出てても。

(星野源)そうなんですよ。だから日本でたとえば売れて、「じゃあそこから世界進出だ!」とか、そういうことじゃなくて。もういまの時点で世界中で同じスタートラインに立ってるんだっていう。だから、日本の中で受ける/受けない。世界で受ける/受けないとかじゃなくて、もう自分がいま、「俺がこの世界の中でいまいちばん、これがやりたいんだよ!」っていうのをただ、やるだけだと思ってます。

(松重豊)ねえ。そういう意味で行くと、今回はボーナストラックでONKIO HAUSでのスタジオライブが入っていて。そういうのも世界発信をすると、ちょっと世界中で伝染していくんじゃないのかな?

(星野源)そうですね。

(松重豊)だから韓国のラップの人とかもだって別に韓国語でやっているんだけど、かっこいいから聞いちゃうもんね。なんかね。

(星野源)特にやっぱり言語ってあんまり関係ないですよね。

(松重豊)こういう歌い手さんに言うのはあれだけど、そういう響きだけで「フレンチラップっていい!」とかって。何を言っているのかわからないんだけども、響きがいいっていうかさ。

(星野源)フレンチラップもいいですよね。

(松重豊)やっぱり日本人だから日本語の響きっていうのをやっぱり理解する上で、なんだろう? 芝居をやったり文筆をやったりとかって、日本の言葉というか、そういうものの遊び方が上手いよね。

(星野源)ああ、ありがとうございます。

(松重豊)原点はやっぱり大人計画なの?

(星野源)言葉ですか?

(松重豊)うん。

(星野源)いや、僕びっくりしたんですけども。ちっちゃい頃の文集、僕は全然音楽とかを志したのは中学の時に周りのみんながやり出すじゃないですか。で、「源もギターやんなよ」みたいなことを言われて、みんなに置いていかれるのも嫌だから、一応僕も始めようと思って、「ギターやりたいんだけど」って親に相談したら「あるよ」って言われて、お下がりをもらってやり始めたんで。僕、そっからだと思っていたんですよ。音楽をやりたいと思ったのは。で、なんかちっちゃい頃の文集をちょっと、実家の押入れの中で見る機会があって。で、10歳の時の文章が出てきて。

(松重豊)小学5年ぐらいの。

(星野源)そしたら、「僕は詩人になりたい」って書いてあって。で、「詩人になって、そして歌を作りたい」って書いてあったんですよ。もう全く記憶になくて。

(松重豊)活字で残っているんだ。

(星野源)はい。びっくりして。「なんだこりゃ? 夢、叶えてるじゃん!」って思って(笑)。

(松重豊)夢を、忘れてたんだけど、叶えてるんだ。

(星野源)ええ。すごいびっくりして。だから言葉が好きだったんだと思うんですよね。昔から。

(松重豊)それとさ、やっぱりセリフっていうのはどうなんですか? 演技するっていうことは。書いたりするのは自分の言葉だったりするし、歌も自分の言葉だけど。でも人の言葉をこっちに入れて、要するに口から出るっていう作業。俺はそのことばっかりをずっとやってきたんだけど。並びの中であるわけ? それとも全然違うこととして?

(星野源)ええと、結構違う作業だとは思っているんですけど。でも、つまるところの到達地点は僕、一緒だと思ってて。「自分なくし」だと思ってて。

(松重豊)ほうほう。

目指す到達地点は「自分なくし」

(星野源)音楽でも役者でも……役者は特に違う人になるというか、違う人としてしゃべるじゃないですか。で、そこに僕が理想とする状態は「自分」っていうものを意識しない状態になってるっていうのがいちばん役者をやっている時に楽しくて。舞台に立ってても、何の意識もせずもセリフだけが出ていって。自意識っていうものがなくなるって言うんですかね? それがすごい気持ちよくて。で、ライブでも音楽でも、お客さんと一体になる時って自分のエゴとかがもう全部どっかに行ってるんですよ。

(松重豊)ああ、そうなんだ!

(星野源)もう全く「自分」っていうものがなくなって、なんかその音楽っていう、なんかわかんないけどアメーバみたいなものと一緒になっているみたいな。自分が消えていく。自分のエゴをなくすっていう……禅じゃないですけども。

(松重豊)わかる、わかる。すごくわかる。

(星野源)禅の作業と一緒っていうか。

(松重豊)本当にいまの話がいちばんわかりやすくて。「自分なくし」っていうこと。だから本当にもう、ある意味広い宇宙の中の一部になってしまうっていうことじゃない? 歌っていようが、演技をしてようがっていうさ。それは別に自我っていうものじゃないし。ある意味、本当に空気のように漂っているものっていう風になるという。それが、要するに歌っていようが演じていようが同じ「自分なくし」っていうところに、そこが到達点だっていう意識はものすごく共感できるし。俺はそこで星野源に憧れているんだなっていま、わかった。

(星野源)アハハハハハッ!

(松重豊)このへんで『音楽食堂』、憧れの星野源くんにリクエストしていただきます。なにか僕にちょっとまた影響を与えるような曲を1曲。LINEで送る前にここで送ってくれるかな?

(星野源)フフフ、音楽やり取りを常にしていますからね。僕、イラ・Jっていう人が好きで。J・ディラってわかりますか?

(松重豊)J・ディラ、知ってる。

(星野源)J・ディラの弟。

(松重豊)ああ、そうなんだ。

(星野源)ボーカリストでラップもやるんだと思うんですけども。なんか、昔お兄さんの音源をちょっと使ったりしてやったアルバムなんかもあったりするんですけども。そのイラ・Jさんが自分のスタイルみたいなのを確立したような感じのする曲があって。それがすごくかっこよくて。

(松重豊)なんで兄弟で「J」が逆さまになるんだろうね?

(星野源)たしかに。J・ディラとイラ・J。

(松重豊)じゃあ、お願いします。

(星野源)はい。じゃあイラ・Jで

Illa J『Home』

FMヨコハマ『深夜の音楽食堂』、今夜は星野源さんと一緒にお届けしてきましたが、あっという間にお時間になってしまいました。

(星野源)早すぎる。

(松重豊)早すぎる! 残念ながら今週のみのご来店ということで、これから年末も忙しいと思いますけれども。また来年も来てくれるかな?っていうことで、ひとつ。

(星野源)いいとも!

(松重豊)よろしくお願いしますね。来年はドームツアーがあるんですね。

(星野源)そうなんです。全国をまわりますので、見に来ていただきたいと思っております。

(松重豊)2月2日、3日、京セラドーム大阪。2月16日、17日は名古屋ドーム。2月23日が札幌ドーム。2月27日、28日は東京ドーム。3月10日は福岡ヤフオクドームということで。

(星野源)やったぜ! 五大ドーム。

(松重豊)詳しくは星野源さんのホームページをご覧ください。来年はどんな年にいたしますか?

(星野源)できるだけ的確にサボっていくっていう。

(松重豊)おっ、的サボ?

(星野源)的サボ。仕事をサボりたいと思っております。

(松重豊)サボりたいですよね。

(星野源)ぐうたらしたいですよね。

(松重豊)ぐうたらしたいんだね。そのぐうたらするタイミングが合わないから、一緒にメシも食いに行けないんだよ。申し訳ない。

(星野源)そうなんですよ。だいたい地方にいるんですよね、連絡をすると(笑)。

(松重豊)そうなんですよ。京都にいたり名古屋にいたりっていうことがあるんで。ただね、またちょっと暇な時はメシでもね。本当によろしくお願いします。

(星野源)この2人の番組をね、ぜひどこかで。

(松重豊)2人の番組をひとつね、公共の電波に乗せて公募したいですね。松源、源松ラジオ、ご希望であれば都合つけますので。私。ひとつよろしくお願いします。

(星野源)いいですね。やりましょう。

(松重豊)では、最後にもう1曲聞きながらお別れです。私が選ばせていただきました。曲紹介をお願いします。

(星野源)それではリリースされました星野源ニューアルバム『POP VIRUS』から『Nothing』という曲をお聞きください。

(松重豊)大人っぽいんだよねー。FMヨコハマ『深夜の音楽食堂』、ここまでのお相手は松重豊と……。

(星野源)星野源でした。

(松重・星野)おやすみなさい。

星野源『Nothing』

<書き起こしおわり>

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