(プチ鹿島)だって経済産業省が12月3日にリリースしているわけですよ。わざわざですよ。「しかしながら、継続中の協議を機構の代表取締役社長・田中正明氏が一方的に打ち切り。誠に遺憾であります」って。わざわざリリースを出しているんですよ。
経済産業省リリース(12/3)
株式会社産業革新投資機構から申請のあった「平成30事業年度産業革新投資機構予算変更の認可について(申請)」に関して認可しない決定をすることについてhttps://t.co/ge5vN96p8V
「しかしながら、継続中の協議を機構の代表取締役社長 田中 正明氏が一方的に打ち切り」— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年12月11日
(塩澤未佳子)はー!
(プチ鹿島)で、昨日革新機構(JIC)の社長ら9人が辞意ということなんですよね。
(塩澤未佳子)なんか、意地が見えますね。どちらも。
(プチ鹿島)うーん。で、今日の新聞を読んでみると、やっぱりその矛盾に対して紙面を割いた記事が多くて。毎日新聞などは「民間出身の取締役が一斉に辞任するという異例の事態。背景として田中社長は『民間の最善の手法を活用する官民ファンドではなく、国の意向を反映する官ファンドへ変化を遂げつつある』。とりわけ経産省の変節を指摘した。追求した」っていうわけですよね。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)で、「経産省にとって取締役会議長の坂根さん、コマツの相談役も辞任するのは大きな痛手だ」とも書いてあるんですよ。っていうのは、経団連の元副会長で政財界に幅広い人脈を持つ方で、その人まで辞めちゃうっていうことはかなりの痛手になると。求心力を失った状況だっていうことなんですよね。
(塩澤未佳子)ええ。
(プチ鹿島)そもそもだって、やっぱり民。民間のファンドだったら、いかに迅速に早く手を打つかっていうのがポイントなんだけど、官の場合はそことは相反することがあるわけですよね。
(塩澤未佳子)手続きを踏んでね。
(プチ鹿島)だからそこが矛盾って言われているんですよね。そもそもこういうのが成り立つのかどうか。これは日経新聞ですけども。「JICの運営に国が細かく口出しをすることを譲らないなら、迅速に投資判断をする経営は成り立たない」って書いてあるわけですよ。「政府として官民ファンドのあり方を改めて明確にして運営しない限り、事態を改善する道は見えそうもない」って書いてあって。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)で、面白いのはこれは朝日新聞。この田中正明社長の横顔というのを12月7日に書いてあるんです。「経産省と火花 田中社長とは?」って書いてあって、「海外長い辣腕 名付けてあだ名が『ケンカまさ』」っていう。「正明」の「まさ」で。ケンカまさっていうんですよ。仕事仲間のあいだでついたあだ名がケンカまさ。それはなぜか?っていうと、その「お給料、報酬を見直してください」って経産省から言われて、交渉の時に田中氏が腹を立てて一方的に席を立った。トップ同士の会談にふさわしくない言葉もあったとされると。ところが、田中さんと働いた経験のある関係者は、「いや、あんな離席ぐらい、田中氏にとっては普通だ」と。この人はもともと三菱UFJファイナンシャルグループの副会長かなんかをやられた人なんですよね。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFJ)傘下の米ユニオン・バンク頭取を経て……」って。すごいじゃないですか。だから、そういう銀行マンにとって、激しい交渉っていうのは当たり前だっていうんですよね。
ケンカまさ(田中正明社長)
「ケンカまさ」JIC社長 辣腕交渉「離席ぐらい普通」:朝日新聞デジタル https://t.co/IyKq5IyIYA
— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年12月11日
(塩澤未佳子)ああ、そうですか。
(プチ鹿島)だからこそ、さっき経済産業省がリリースを出して。「だって、途中で席を立っちゃうんだもん。代表が協議を打ち切っちゃうんだもん」って。ところがこれね、こうなるとじゃあ田中さんって激しい人なんだなって思うじゃないですか。
(塩澤未佳子)なんかね。いまそう思いました。
(プチ鹿島)これ、産経新聞の今日の記事が面白かったんです。「相互不信 経産省と溝埋まらず」ということで。「アメリカの生活が長かったから交渉の途中で席を立つとかは私の芸風なんです」って昨日、田中さんは記者会見でおっしゃったんですって。経産省との対立が激化する、表面化する中、やっぱり報道って田中さんが激怒して席を一方的に立ったから交渉がそれで終わっちゃったんだってあるじゃないですか。だからそれをたぶん記者会見で聞かれたんでしょうね。「いや、交渉の途中で席を立つとかは私の芸風です。だってアメリカではそういう丁々発止のやり取りって当たり前なんですから」っていうね。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)そういう風に書いてあって。さらに記事の最後にはこう書いてあるんですよ。「もともと9月に提示された報酬案が政府内で調整がついていない、などとして不信感を募らせていた。協議が膠着すると見るや、田中社長は交渉戦術として芸風を発揮して席を立つ」という。つまり、会見で自分でおっしゃったことですよね。「だが、途中で席を立ったことに経産省側は激怒。信頼関係が毀損したとしてこの協議を境に田中社長との交渉を打ち切った」という。
(塩澤未佳子)ほー!
(プチ鹿島)つまり、これ面白いですよね。官民ファンドの矛盾というのが、官と民がいかに折り合わないかっていうのがここの交渉過程に全部出ているじゃないですか。
(塩澤未佳子)ああーっ!
(プチ鹿島)田中社長はなんだったら、招かれた官民ファンドのトップはアメリカ仕込みの交渉過程として、じゃあ席を立つ。その後に「いやいや、田中さん……」っていう。そういう風なブラフをかまして、「田中さん、もう1回話し合いましょうよ」っていう風にする。それも交渉術だっていう。そういう流れを引き出そうとして席を立った。それだから「自分の芸風だ」って言っていた。ところが、経産省側は席を外した時点で激怒。「もう、終わり!」って。だから、よーく読んでみると、激怒しているのは田中さんも激怒しているんですけど、経産省もこの時点で交渉を打ち切ってますから。経産省もむしろ激怒してしまったわけですよね。だから、ここで思い出してください。さっきの日刊ゲンダイを。「我が世の春を謳歌していた経産省」って。「なに? 俺たちがせっかく交渉してやってるのに、席を立つの? じゃあ、もうおしまい!」っていう構図も見えてきませんか?
(塩澤未佳子)ああーっ!
(プチ鹿島)だから一方でこれも情報戦ですよね。「田中さんだけが激怒して席を立った」っていう情報が出ていますけども、いやいやいや……「俺たちを怒らすとは大したもんだな、コノヤロー!」っていうので経産省は激怒し、この協議を境に田中社長との交渉を打ち切ったっていう。だから、新聞を読むと田中社長はまだまだやる気満々だという、そういう解説も今日、あるんですよ。だからいかに官と民が交渉でもすれ違うのか。なんだったら偉そうな人……いや、偉いんですよ。偉い人はそのアメリカ仕込みの民間の交渉術を見せられて、それを交渉術だとは受け取らず、カチンとそのまま受け取ってしまったという。
(塩澤未佳子)「なんだ、これは!」っていう。
(プチ鹿島)官民ファンド、やめた方がいいよ。成り立たないよ、そんなの。
(塩澤未佳子)本当(笑)。もう最初からそうですよ。
(プチ鹿島)で、しかもこの田中さんとか民間のやり手たちを引き抜いて。「じゃあ、おまかせください」ってなったら、「いや、いろいろと民だけじゃあ……」っていうので、いろいろと管理をしだした。だってそもそも95%、自分たちがお金を出しているから。そりゃあそうですよね。となると、田中さんたちは「ちょっと! 話、違うじゃん!」っていう。
(塩澤未佳子)はー!
JIC 社外取締役たちのコメント
(プチ鹿島)でも、今日も面白かったのはね、朝日新聞に載っていた社外取締役のコメントがいちいち面白いんですよ。さっきの坂根さんっていう方は「混乱の根本原因が最終決定者が不明確なボトムアップ意思決定プロセス……」って、まあ難しいですよね。まあ、わかりやすく言うと、「不明確な手続きによって今回のことが決まったとすれば、人材確保と意思決定スピードが勝負を決める米国社会で成功を期待することは難しく、私が失望したのは、この点にあります」っていう。だから、「せっかく俺たちがチームを作って、それで集まったけども、意思決定のスピードが勝負にならないじゃないか。なんかわからないけど不明確なルートからやんややんや言われる……もう、やーめた!」ってなっているわけです。
「JICはゾンビの救済機関に」社外取締役も経産省批判:朝日新聞デジタル https://t.co/R9FV2OyXC1
坂根正弘氏(取締役会議長・コマツ相談役)
「今回の混乱の根本原因が、最終決定権者が不明確なボトムアップ意思決定プロセスにあったとすれば、人材確保と意思決定スピードが勝負を決める米で…」— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年12月11日
(塩澤未佳子)はー!
(プチ鹿島)これは冨山さんという方ですね。「論点になっていた報酬の問題だけでなく、広範な事項について後から覆されるリスクが高いガバナンス実態、意思決定メカニズムになっていることが露呈しました」。だから、あとから覆されるというリスクがわかったって言うんですよ。「俺たち、一生懸命やろうとしたのに、こうやって後から覆されるんだ。これ、給料だけじゃない。給料がこうだったら、後からいろいろ覆されるということですね。やーめた!」って言っているわけです。
(塩澤未佳子)フフフ(笑)。
(プチ鹿島)あと、保田さんという方ですね。「日本の官民ファンドの下で働きたいと思ってもらうためには、ルールベースの、法、契約に基づいたガバナンスを保証しなくてはなりません」という。「……いったん文書を交わしたら、たとえ誰であっても法の下の一法人格で、交わした相手と同レベルの法律上の扱いを受ける、それを保証できるということが法治国家であると思います」っていう。だから、「あなたたち一度文書で言ってきましたよね? だから私たち、これで納得したのに、それをひっくり返しましたよね? 官邸から怒られたから」っていう。だから、これ面白いのが、話をもとに戻すと……昨日も青木理さんという方とラジオの本番中にお話をしたんですが。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)青木さんが「そもそもだってゲンダイが書くように、経産省は我が世の春を謳歌しているんだよね。なんでこんなことになっちゃったの?」っていう。で、これからは青木さんや、僕がこの記事を報告しての見立てです。つまり、経済産業省の中でもなにか主導権争いみたいな、たとえば情報をリークして、誰かマスコミや世間に叱ってもらおうみたいな。なんか、争いが起きているから。だから11月3日の朝日新聞にあのスクープが出たんじゃないか?っていう。だから「論議になりそうだ」っていうのは朝日新聞の意見じゃなくて、「論議になりそうだと書いてほしい」という。面白いですね。だから途端に新聞って推理小説になるんですよ。
(塩澤未佳子)へー!
(プチ鹿島)で、そうなると経済産業省の中で……でも安倍さんと近い今井さんがいるから、経済産業省は。じゃあ、なんで「首相官邸は激怒した」って、官邸を怒らせちゃったのか? これも不思議ですよね。これも昨日、報道ステーションを見ていたら後藤謙次さん。サンデーステーションでもお世話になっていますが、「首相官邸を怒らせたんでしょうね。端的に言えば、菅さんだ」って言うんですね。
(塩澤未佳子)菅さんが?
(プチ鹿島)菅さん、たしかに経済産業省が安倍さんと近いから。たしかにちょっとした距離があるのかな?って思っちゃったりなんかして。だから、面白いですね。経済産業省の中でもこういう主導権争い。誰が出世するのか、誰が近くなるのか、誰の案だとか……もしかしたらあるのかもしれない。
(塩澤未佳子)フフフ(笑)。そう思うと……。
(プチ鹿島)そう思うと、タブロイド紙が面白おかしく書いているように見えるのも、意外と本質……芯を食っているのかな?って思う今日このごろでした。だから官民ファンド、いかに矛盾をはらんでいるのか。で、民間からのチームを怒らせてしまったのか。でもまあ、官からすれば、それは税金だしね……っていう。でも、「それをいまから言うの? いま言うなよ!」っていうのは昨日辞めた人たちの言い分なんですよね。ええー、官と民でお送りしている火曜キックス、スタートでございます。
(塩澤未佳子)フフフ、官と民(笑)。
<書き起こしおわり>