(吉田豪)(コメントを読む)「セルフの可能性と弱点を示してくれたよ、生うどん」。そうなんだよね。その後、セルフのアイドルが本当に増えたじゃないですか。
(東理紗)増えたね! 急にドバッと増えたね。
(吉田豪)ドバッと増えた。運営とモメてセルフになるケースとかもすごい増えて。「やれるんだ」っていうことがわかったんですよね。
(東理紗)いや、やれるよ。絶対にそんな大人に頼らなくても。「やりたい」って思えばね。
(吉田豪)ただし、大変なこともある。
(東理紗)大変なこともあるよ。まあでもやっぱり生うどんでの経験は私にとってめっちゃ宝だから。「あんな経験できるなんて、他にないよ」って言われるし、自分でも思う。
(吉田豪)ましてや、あの年齢でね。
(東理紗)そうそう。だからあの経験とかは本当にいまでも宝だと思っている。キラキラ。
(吉田豪)ねえ。言いにくいし、東さん側の見解は違うかもしれないですけど、世間一般的には「東さんの親御さんが原因じゃないか?」みたいにも言われたりしているわけじゃないですか。
(東理紗)ねえ。
(吉田豪)まあ、いろいろとあると思うんですよ。
(東理紗)まあでもさ、言ったら東家の方が全部いろいろやっていたのよ。私自身もそうだし。作詞・作曲、脚本・演出も私だし。私が頼れる先っていったらお母さんしかいないじゃない? 信頼できるのは。で、お母さんがマネジメントとかギャラの交渉とか、まあ普通マネージャーがやるようなこととかもやってくれていたわけよ。
(吉田豪)説明すると、お母さんはシングルマザーでお子さんを育てて。
(東理紗)そうそう。5人も育てていて。で、芸能を目指していた時期もあるから、私のお母さんはそういうのに詳しかったりするので。だからお母さんに頼って。それで上手く行っていた時もあったんだけど。まあ言ったらさ、なにか悪いことをしたらさ、普通はそれは「事務所が悪い!」ってアイドルはなるじゃん。モメた時に。「事務所がこうだった」とか悪者になってくれる場所でもあるじゃない? 事務所って。
(吉田豪)うん。
(東理紗)でも生うどんってそういうのがなかったから……。
(吉田豪)直で家族だったもんね。
(東理紗)そうそう。直で私たちが悪いみたいな風に見えちゃうのはしょうがないよねとは思うけど……私は全然そんなことは思っていなくて。正直、事実がどうとかっていう話よりも、私はいろんなことがあって。にっちゃんは私の中ですごい親友だったのよ。本当に。高校の時からの憧れでもあったし。
親友で憧れの西井万理那
(吉田豪)この話が大好きでね。東さんは基本、あんまり学校に行ったりしない人で。
(東理紗)行かない、行かない。
(吉田豪)要は学校でたぶん孤立しているタイプだったと思うんですよ。
(東理紗)そうだね。結構自分からなんか隠れていたりしていたかも。
(吉田豪)カーテンの中でご飯を食べていたっていう……。
(東理紗)そう。カーテンの中に隠れていた(笑)。
(吉田豪)そのカーテンの中に唯一入ってきてくれたのがにっちゃんだったっていうのがすごい好きな話で。
(東理紗)そう。「東、どこー?」とかって言って。私、上履きに「焼きうどん」って書いてあるんだけど。それで「あ、ここだ!」みたいな感じで入ってきてくれて。よくにっちゃんとしゃべっていた。
(吉田豪)あの無邪気さの強さってあるじゃないですか。
(東理紗)あるあるある!
(吉田豪)で、たぶん東さんがそれで救われたりしながら、前に東さんが言っていたのが、西井さんのそういうのが羨ましくて、わざと西井さんみたいな感じを演じたりするようになっていったっていう。
(東理紗)そうなの。にっちゃんっていつも学校でもツインテールにしていたのね。だから私もツインテールにして、双子髪型みたいな感じで仲良しにしたりとか。で、にっちゃんは生ハムが好きで、上履きに「生ハム」って書いていたから、「あ、私は焼きうどんが好きだ」って思って「焼きうどん」って書いたり。
(吉田豪)ああー、そこから始まっているんですね。
(東理紗)そう。憧れだったし、すごい大好きな人だったから。『ツイテール』とか、結構曲とかもにっちゃんが好きそうな曲を結構無意識に作っていたのよ。
(吉田豪)はいはい。
(東理紗)で、「ついてる、ついてる、ツインテール♪」とかも確実ににっちゃんを意識しているし。キラキラした曲とかがすごい好きだから。っていうぐらい、私の中では大きい存在だったの。にっちゃんが。だから、一緒にやりたいっていうのがずーっと変わってなくて。私は。で、いざいろんなことが起きた時に……『生うどん大食堂』の時かな?
(吉田豪)それがクラブチッタのやつかな?
(東理紗)そうそう。その時にもうプツンって、「ああ、もう一緒にやれないな。信頼できないな」って思う出来事があったの。それで私は、もうお金がどうとか信頼がどうとかじゃなくて、私はにっちゃんと一緒にやるから意味があったのに、にっちゃんという人が自分の中で信頼できない人っていう風になった時に「この人とこの先、一緒にやるのは無理だ」って思って。
(吉田豪)まあ、あの時点でちょっと溝ができちゃっていましたからね。
(東理紗)そうそうそう。
(吉田豪)でも本当、すごいと思ったんですよ。あの時に僕もトークで絡んだりしたんですけども。ステージ上では一切それを見せていなかったんですよ。ちゃんとできていた。
(東理紗)そうなのよ。本当に不思議。
(吉田豪)ちゃんといつもの通りで2人でバカをやって。ちゃんとやれていたんですよ。
(東理紗)そう。だから私自身もそりゃあ何回も揺らいだのよ。やっぱり一緒にいると楽しいし、「信頼できる/できない」じゃなくて「信頼したい」っていう気持ち、その一心でやっていたんだけど、なんて言うんだろうな? うーん、なんか……まあでも居心地の悪さみたいなのはずっとあって。で、まあ「ビジネス」って割り切れなかったの。私は、言ったら。
(吉田豪)まあ、親友っていうかそこから始まっているからね。友達。一緒にやりたいっていうところから。
(東理紗)そうなのよ。
(吉田豪)本当にね、これはアイドルでここに来る人たちと毎回のように話すんですよ。やっぱりね、友達で始まったユニットって壊れやすいんですよ。仕事としてやっていると、仕事として割り切れるから続くんですよ。なかなかね、友達としてやっちゃうと、友達でもなくなっちゃうことがすごい多くて。
(東理紗)でもなんか、私の場合は特に自分が作っていたからこそ、一緒に戦ってくれる人が本当ににっちゃんしかいないじゃないですか。ステージでもそうだし、台本を書く時もにっちゃんは何も言わなくても6、7時間ぐらい一緒のカフェでずっと隣にいてくれて。出来たらそれを読んで笑ってくれたり、その反応を見たりとか。ずっと一緒だったから。もう本当にその一緒に手をつないでいた人がいなくなった瞬間、私は「何のため? 誰のため?」っていうのが本当にわからなくなっちゃって。そう。
(吉田豪)これ、言っちゃうとね、2人とも傷ついていたんですよ。あの時。どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、どっちも正義でどっちも悪だったのかもしれない。わからないけど……はっきり言えるのはどっちも傷ついていた。
(東理紗)そうだと思うよ。本当に。
(吉田豪)っていうことなんですよね。
(東理紗)そう。なんかでも、私の母が結構悪いって言われているみたいなんだけど、なんて言うんだろうな? まあ結局……いろいろと、にっちゃんはにっちゃんで理由があるから、本当ににっちゃんが悪いとかっていうことを言いたいわけじゃないんだけど。
(吉田豪)もちろん。お互いの正義があるはずなんだよね。
(東理紗)そうそう。私の中で難しいのが、やっぱり信頼ってなくなった瞬間に、全ての行動が不信感で見えちゃったりするのよ。たとえば、私のママが金庫とかのお金をそのまま置いておくのは危ないからって持ち歩いていたら、「お金を持っていった」っていう風に見えちゃったりとか。本当に「信頼」っていう幕がなくなった瞬間に全部が怪しく見えちゃうの。
(吉田豪)お互いにちょっと不信感が出ちゃうとね。
(東理紗)そうそう。だから、たとえば「お金の詳細がわからないから、明細書を○○までに送ってください」って言われて、送ったはいいものの、そもそも信頼がないから「えっ、これって本当ですか? これって本当ですか?」って信用してもらえなかったりとか。だからもう、事実がどうこうとかっていう話じゃなかった気がするな。私は。
(吉田豪)僕がね、すごいしみじみしたのは、ちょうど去年のイベントの時ですよ。ねえ。たぶんポロリの流れで家だと東さんが結構裸だみたいな話を弟が暴露し始めて。「どういうことなんですか?」って聞いたら、実は家にクーラーがなくて、扇風機が1台しかなくて。それを兄弟で奪い合いをしていて。
(東理紗)してる(笑)。
(吉田豪)寝ていると取られたりとかで。
(東理紗)そうそう! 寝てると取られるの! 気づいたら妹のところでファーッて回っていて。妹がこんな感じで本を読んでいたりするから。「テメーッ!」って。
(吉田豪)で、革のソファーが冷たいからそこで裸で寝ているみたいな話をしてた時に、なんかすごいしみじみしたんですよ。
(東理紗)そう。で、やっぱりなんか、母は私にとって大事な人だし、信頼したい人だし。しかも20年間一緒にいて見てきたから、私の母がどんな人かは私がいちばんわかっているのよ。誤解されやすい人だっていうこともわかっているし。だからこそ、自分のいちばん大事な人を一緒に大事にできない子とやるのはやっぱり辛いじゃないですか。
(吉田豪)そうだね。
(東理紗)だけど、私はやっぱりにっちゃんを信頼したかったから。「だけど」って言って手をつないだ時期もあったんですよ。言ったら、「じゃあ一緒に事務所に入って、私のママは一切介入しない形でやろう」って。
(吉田豪)その時に大森さんが間に入って、大森さんが会社を作るから……っていう話も出ていたんですよね。
間に入った大森靖子
(東理紗)そうそう。会社を作って、大森さんが新しい口座を作って、そこで2人でやり直そうっていう話があって。『生うどん大食堂』の時は話がそれで進んでいたの。で、私も母をそういう風に扱うのは心苦しかったけど。でもやっぱり私はいつだって自分のやりたいことに正直でいたかったから。私は「にっちゃんとやりたい」っていう気持ち一筋でいたの。その時にも私の母に何度も言ったけど、やっぱり私の母は自分の子供だからっていうのもあって、「なんでそんなことをするの!」とかは言わずに納得してスッと身を引いてくれたの。
(吉田豪)うん。
(東理紗)で、すごいその姿に愛情を感じて嬉しかった反面、いざそれでやっていこうって思って大森さんの家とかに行ったりとか、カワノさんと大森さんと私とにっちゃんで打ち合わせをすることが増えたんだけど……ごめんね。これは私の見え方ね。
(吉田豪)あくまでも東さん側の見解。
(東理紗)完全に私の側の見解なんだけど、やっぱり信頼がないからこそ、「お母さんはたぶんこんなことを考えているんだよ」とか、「お母さんからのLINEに生ハムと焼うどんを支配したいっていう欲望がヒシヒシと感じた」とか、そういう話がいっぱい出るわけよ。で、私的にはすっごい我慢して聞いているんだけど、でも私はそのLINEを打っている時に隣にいたし、ママはそんなことを思っていないのに……とか。身を引いてくれた時とかも話し合いとかにも来たし。そんなことはないのに、意外と事実じゃなくて憶測でこんな風に言われちゃうんだっていうことにショックだったの。でも、それを「しょうがない」って飲み込んでいたの。ずっと。
(吉田豪)うん。
(東理紗)だけど、『生うどん大食堂』の時にいつも2人で笑いあいながらスムーズにできていた稽古が急にできなくなったりとか。はじめてぐらいのケンカをしたのよ。
(吉田豪)あの時は控室も別で、結構アレな緊張感がありましたよ。
(東理紗)そうそう。で、まあそれまでは稽古とかはちゃんとできていたんだけど、そのぐらいの時にはもう稽古もまともにできなくて。「私、ちょっとトイレ行くわ」ってにっちゃんが1時間ぐらいトイレから帰ってこなかったりとか。パッと楽屋を開けたらカワノさんとにっちゃんがいて、すっげー変な空気になっていて。明らかになんか、ママか私の話をしていたんだろうなっていう空気とか。積り積もっていたんだろうね。結構耐えられなくなっちゃって。なんか……なんて言うんだろうな。信頼がなくなっちゃったんだよね。
(吉田豪)単純に本当に親御さんと距離を置いて……ってやろうとした側と、家族を選んだ東さんっていう風に、ざっくり分けるとそういう風に向こうは見ているんですよね。
(東理紗)まあ「選んだ」というか……うーん、「家族を選んだ」っていうのもまた私は納得がいかないんだけど。うーん、なんて言うんだろうな。他にもいろいろとあって。たとえばカワノさんと私のママが電話をしていて、「今日、物販で来ていいですよ。生うどん大食堂の時、手伝ってくださいよ」って言われたから、ママは「行くわ!」って。ガラガラを持って行ったのよ。で、物販をいざやったら、大森さんたちが「聞いてない。なんで東ママが勝手にやってるの?」って怒る。私は「いや、カワノさんが『やっていい』って言ったからだよ」って言ったら、カワノさんは「そんなことを言ってない」っていう風にグループLINEで言い出すのね。
(吉田豪)うん。
(東理紗)だけど私が「いや、私のママが電話している時、私は隣にいたし。カワノさんが『来ていいよ』って言ったから行ったんですよ」って言ったら、大森さんは大森さんでカワノさんを信頼しているから、「カワノさんはそんなことを言うわけない」って言うし。
(吉田豪)1回、溝ができちゃうとね。全てが……。
(東理紗)そう。カワノさんも「いやいや、言ってない」って言うし。それを見て私はカワノさんのことも信頼できなくなったし。私自身も信頼されていないんだって思ったの。私の発言が。
(吉田豪)本当、でもいま思うと感慨深いのがさ、大阪に僕が行った時。生うどんの2人と東母とカワノさんだったわけですよ。向こうに行ったのが。で、僕と生うどんの2人でメシを食って、東母とカワノさんだけを会場に残してとか。すごいメンツで……。
(東理紗)でもカワノさんと最初、仲良かったよ。私のママ。
(吉田豪)ねえ。すごいよかったですよね。
(東理紗)信頼しあっていたし。
(吉田豪)僕も一緒に行動しているイメージしかなくて。
(東理紗)うん。本当にどこまでもついてきてくれた人だから。
(吉田豪)仕事抜きでかかわっていたからね。
(東理紗)そうそう。だからこそ、なんかすごい私はショックがデカかったんだよね。その出来事がいちばん印象的かも。「いや、りっちゃんはお母さんに騙されているよ」みたいな空気になっちゃうの。私が本当のことを言うと。だからそれってやっぱり私のお母さんを信頼していない=私を信頼していないっていうことにもなるし。意見を聞き入れてもらえないこの状況とか、信頼できない人たちがいる環境で、私は一緒に手はつなげないって思って。それと同時に、にっちゃんももちろん私のことを信頼していなかったからこそ、「それ、違くない?」っていう発言をグループLINEでしたのよ。「えっ、それ2人で決めたことなのに、なんで私だけが決めたことになってるの?」みたいな出来事もいくつかあって。「うわっ、ごめん。もう私、信頼できない」って思って、私は生ハムと焼うどんを活動するのを止めたの。だから「家族を選んだ」っていうよりも「信頼できなくなったから手放した」っていう感じ。
(吉田豪)覚えてますか? その時にも「もう解散だ!」みたいに言っていたのを、「解散はやめてください」って僕とかが説得したの。
(東理紗)えっ、そうだったっけ?
(吉田豪)「活動休止にしてください」みたいな。
(東理紗)そうだね。そうかも。うん。
(吉田豪)「まだ含みのある感じにしましょう」っていう。
(東理紗)ねえ。私は解散派だった。
(吉田豪)そう。すごい頑なに言っていたのを、「なんとか未来がある感じにしましょう」って言って。
(東理紗)そうなの。だから、お互いに傷ついているし。でもやっぱり最近思うのは、人ってやっぱり自分がやったことは忘れているけど、やられたことっていうのは覚えているんですよ。
(吉田豪)よく言うよね。いじめとかでもね。
(東理紗)そうそう。傷つけられたことを覚えているんですよ。だからきっと、私もにっちゃんも傷つけられたことはとっても覚えているけど、自分がやってしまったこととかって、傷つけるつもりはなくても相手を傷つけることってあるじゃん。だからきっと……。
(吉田豪)お互いにそれをやっているだろうからね。
(東理紗)そう。私もにっちゃんのことを傷つけているだろうし、にっちゃんも傷ついているだろうしって思うから。本当にどっちが悪いとかはないと思う。だからお互いになんか、歩み寄りたいっていうタイミングがあったら話し合えるんだろうなって思う。
(吉田豪)お互いにね、生うどんのことを大事には思っていますよ。話していると。で、お互いに相手のこともね、ちゃんと思ってはいるんですよ。うん。ここが不仲になって終わりましたみたいな単純な話ではないとは思っていて。
(東理紗)うん、そうだね。っていうか、そもそもすっごく好きじゃないとすっごく嫌いになれないから。だからお互いにやっぱり、ねえ。それなりに傷ついたりとか嫌いになっちゃうのはすごく好きだったからだと思う。