安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で京浜急行電鉄の「逝っとけダイヤ」について話していました。
(安住紳一郎)横須賀市の22歳男性の方。「私の小さな幸せは私鉄の頑張っている姿を見ることです。私は横須賀市在住です。外出する際はかならず京浜急行電鉄を使っているのですが、横浜・品川駅間における京急 VS JR東日本のレースは見応えがあります。それまで堀ノ内・横浜駅までは比較的ゆっくり。そしてトンネルばかりですが、横浜駅を出発した途端、隣のJR東日本の車両、すなわち京浜東北線や横須賀線のみならず、成田エクスプレスと熱戦を繰り広げながら品川駅に向かうのです。ここで一応申しておきますが、京急に乗車する際に特急券などの追加料金などはございませぬ。普通料金です。さらに運がよければ快適な京急600系ロングシートの窓側に座りながらレース観戦ができます。そして京急が抜くのです。普通料金で楽しめるのです! これらの熱戦を見ると夏の甲子園でなぜか私立高校よりも公立高校を応援したくなる気持ちと同様の気持ちにもなってきます。以上、私の小さな幸せでありました」。22歳の方。
(中澤有美子)うんうん。
(安住紳一郎)京急ファンの方は多いですよね。本当に京急沿線にお住まいの方は京急電鉄が本当に自慢だっていう方が多いですよね。本当に横浜・品川だとJRと並んで走っていますけどね。かならず京急はスピードで勝っていますからね。
(中澤有美子)そうなんですね。
(安住紳一郎)もうJRのエース級の湘南新宿ラインとかでも圧倒的に京急の快特がズンズン抜いていきますからね。しかも、京急の方が京急蒲田一駅停車駅が多いにもかかわらず、時間はほぼ一緒ですからね。
(中澤有美子)はー。
(安住紳一郎)私も乗り物好きなので、京急に対しての思いは非常にありますけどね。いちばんわかりやすいところで言いますと、これは何度も言っていますけど。車掌さんがドアを閉める時、普通の鉄道だとなんて言いますか?
(中澤有美子)「ドアが閉まりますのでご注意ください」。
(安住紳一郎)そうですよね。京急の車掌さんって比較的その言葉を使わないんですよ。京急の車掌さんがなんて言うか、わかりますか?
(中澤有美子)ええと、他の言い方? 「ドアを閉めますので……」?
(安住紳一郎)そうなんですよ。普通、「ドアが閉まります。ご注意ください」とか言いますよね。で、なんとなく「ドアが閉まる」って自然現象的な感じですよね?
(中澤有美子)ああ、そうですね。ドアが。
(安住紳一郎)京急の車掌さんで比較的多く言うのは「ドア、閉めます」って言うのね。だからそこには「私が閉める」っていう強い気持ちみたいなのがあって。経営哲学みたいなのが車掌さんのそういうところにもちょいちょい出てくるんですよね。
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)「ドア、閉めます」っていうのね。そうすると「ああ、この人がドアを閉めているんだ!」っていう感じもするし。「俺が閉めるんだ」っていう感じもしますもんね。「ドアが閉まります」っていうとなんか開いたドアが勝手に閉まるような感じがして。そこで挟まっても……。
(中澤有美子)責任の所在がちょっとよくわからない。
(安住紳一郎)「挟まるなよ」っていう感じだけど「ドアを閉めます」っていうとね、それでブブッてなったら「誰か挟まりました」っていうことで「私が挟みました」っていうことになるから。強い気持ちがちょっとずつあったりするんですよね。
(中澤有美子)はー。
(安住紳一郎)あとは「逝っとけダイヤ」っていうね。京急沿線の方は知っていると思いますけどね。
(中澤有美子)逝っとけ?
行くだけ行っとけダイヤ
(安住紳一郎)逝っとけダイヤっていう。そう。これは名古屋だと名鉄とかね。小田急もたまにありますけどね。近鉄もたまにありますかね? 私鉄が結構、たまにやるんですけどね。「行くだけ行っとけダイヤ」って言ったりしますけどもね。だいたいちょっとトラブルがあったりすると、「全線で運転を休止しています」とか言いますよね。で、ダイヤグラムってみなさん、知っていると思いますけども。細かく細かくそれぞれの電車の運行のスケジュールが決められていて。当然、「上りと下りがここですれ違う」とか、「快特がここで普通を抜かす」とか、そういうのが決められているから。要するにそれ通りに行かないと困っちゃうわけじゃないですか。信号の感じとかポイントの切替とかもありますからね。
(中澤有美子)そうですね。
(安住紳一郎)で、要は一度トラブルがあると一旦全部止めて、トラブルが終わった段階で同じようにスタートして「15分遅れでスタートしましょう」みたいなことにすると、トラブルの前と同じ状況が復元されるわけで。主な鉄道会社はそれを狙っているわけですけども。京急とか逝っとけダイヤ編成っていうのはポイントの切替とか出発信号を管理している人が手動でやっているんですよ。熟練のね、人がやっているので。だからその人のアイデアで「じゃあ、ええと、ここが詰まっているんでこの快特をここで止めて、ここで折り返して。じゃあ、こっちのホームにこれを入れちゃって。ん? じゃあちょっと待って。その車両はこっちに行っていてもらって。お客さん、乗っていてもいいからちょっと待っていてもらって。先にこっちを通すから!」みたいな。
(中澤有美子)ええ!
(安住紳一郎)ものすごいフレキシブルに、その場のアイデアで手動でグワーッと組み直しちゃうの。で、コンピューターにはそれができないから。なので、種別変更とか強制折り返しとか列車の運転打ち切りみたいなのが逝っとけダイヤではあるんだけども、それに対して文句を言っているようじゃ京急沿線住民たちはついて行けないから、「乗る方もプロ」って言われているのね。
(中澤有美子)はい、はい。ええ、ええ。
(安住紳一郎)なのでたぶん他の鉄道会社に乗っているとびっくりするようなことがその逝っとけダイヤの時にはたまにあって。なんか、「エアポート蒲田」とか。「えっ、羽田空港に行かないとエアポート急行の意味を成していないんだけど?」みたいな感じだけど。「エアポート神奈川新町」みたいな。「えっ、ああっ! そんなところで止まるの?」みたいなのがあったりとか。
(中澤有美子)はい。
(安住紳一郎)「間もなく快速特急が入りまーす」って言って、「出発するのかな?」ってみんなが乗っていると「えー、この快速特急、ここで運転を止めます」みたいな。急に(笑)。
(中澤有美子)フフフ(笑)。
(安住紳一郎)それはそのものすごいダイヤを復活するための、ものすごいフレキシブルな大技をふるっているんだよね。びっくりするよね。それで車両の方向幕とかあるじゃない? 行き先とか。あれがもうみんなルーレットみたいにだから、みんなずーっと見ているの。「ビャーッ!」みたいな。「蒲田、三崎口、品川、羽田空港……ピコーン!」みたいな。「と、止まった!」みたいな(笑)。
(中澤有美子)フハハハハハッ!
(安住紳一郎)「行ける!」みたいな。
(中澤有美子)はい、ええ、ええ。すごい!
(安住紳一郎)伝わったかな? 逝っとけダイヤ。
(中澤有美子)じゃあ、ただ安穏と乗っているだけじゃダメですね。乗る側も。
(安住紳一郎)そうです、そうです。だから急に、品川の方から来たのに「ここで運転を止めまーす。この電車は折返し隣の駅に行きます」みたいな。で、乗っている人もその車掌さんの何かのフレーズがあると「ああ、これは逝っとけダイヤモードに入ったな」って注意をしなきゃいけないみたいな。
(中澤有美子)へー、かっこいい!
(安住紳一郎)そうですね。なんかね、キーワードがあるって言っていましたね。京急沿線の人がね。「運転を徐々に再開しています。この電車の行き先が変更になる場合、そして運行種別が変更になる場合が途中でありますのでご注意ください」とか言うと「ああっ、逝っとけダイヤモードに入られたのだーっ!」って。
(中澤有美子)「キターーーッ!」。
(安住紳一郎)「キターーーッ!」っていうね。でもまあ、ちょっと動けるところから少しずつ動いて復旧していくっていうね。面白いですよね。
(中澤有美子)かっこいいですねー。
(安住紳一郎)ぜひぜひ赤い弾丸、京急線に乗ってみてはいかがでしょうか。
<書き起こしおわり>