プチ鹿島さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で夕刊フジが安田純平さんを擁護するツイートをしたダルビッシュ有さんが「大炎上した」と報じた件について取り上げていました。
(プチ鹿島)今週、私がご紹介したい記事はこちら。夕刊フジ。日刊ゲンダイのライバルと言ってもいい夕刊フジをご紹介します。「安田純平さん解放をめぐりツイート」ということで。僕が目についたのはこちら。「ダル、大炎上」ということなんですね。ダルビッシュ投手が安田純平さんの自己責任論に対して「いやいやいや……」とツイートしたら「大炎上」と報じている。この見出しを見た時、僕は「えっ、ダルビッシュ投手、いつ炎上したっけ?」って思ったんですよ。では、そのツイートを見てみましょうか。こちらです。
一人の命が助かったのだから、自分は本当に良かったなぁと思います。
自己責任なんて身の回りに溢れているわけで、あなたが文句をいう時もそれは無力さからくる自己責任でしょう。皆、無力さと常に対峙しながら生きるわけで。人類助け合って生きればいいと思います。— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) 2018年10月25日
危険な地域に行って拘束されたのなら自業自得だ!と言っている人たちにはルワンダで起きたことを勉強してみてください。誰も来ないとどうなるかということがよくわかります。
映画だと「ルワンダの涙」が理解しやすいと思います。
ただかなり過激な描写もあるので気をつけてください。— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) 2018年10月25日
(プチ鹿島)「危険な地域に行って拘束されたのを自業自得だと言っている人たち、自己責任だと言っている人たち、ルワンダで起きたことを勉強してみてください。誰も来ないとどうなるかということがわかります」という。つまり、「ジャーナリストは危険なところに行ってそれが危険だよと知らせてくれるからジャーナリストなんでしょ?」と。僕から見ると「ああ、すごい。正論じゃないか」って思うんですが、もう1回、さっきのに戻ってもらえます? これが夕刊フジ。タブロイド紙になると「大炎上」と報じられているわけですよ。これがひとつの新聞の主張の違いの面白いところで。たとえば、じゃあ「ダルビッシュが大炎上している」という風に言われているのがここです。「『ルワンダよりもシカゴのことを考えてやれ』など批判的な書き込みが殺到」という。
(モーリー)すごい(笑)。「お前は野球選手なんだから、野球のことだけ考えておればよい」みたいな?
(プチ鹿島)すごいでしょう? そう。さらにモーリーさん、そこを一歩先に進んで。ダルビッシュは今年は故障、怪我でわずか8試合登板で1勝3敗で終わっているんですよ。だから「1勝3敗の成績で終わった。十分に活躍していないやつなんだからルワンダよりもシカゴのことを考えてやれ!」っていうクソリプが来たわけですよね。だけどこの記事ではそれを普通のことのように報じているわけですよ。
安田純平さん解放めぐり、ダルがツイートで大炎上 本田参戦もこちらは終始冷静 https://t.co/iaa4GS1yCs @zakdeskさんから pic.twitter.com/GTlsQxIMhh
— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年11月1日
(モーリー)ああ、「民の声」なんだ。夕刊フジとしては。このクソリプが「いや、こういう声もありますからね」って。じゃあ「今日はネオナチの声も反映しましょう」とか「差別主義者も行きましょう」とか、どんどんそれ、恣意的にならない? どこにジャーナリズムがあるの?
クソリプをひとつの事実として取り上げる
(プチ鹿島)これはだから、僕はギョッとして読むクソリプだと思うんですけど、これがひとつの「事実」として。「いや、ダルビッシュ。故障しているのにそんなことをいちいち言って大炎上だよね」っていう風に言っているんですよ。これはやっぱりなんかギョッとしました。どうですか、これ?
(大井真理子)安田さんのことに関してはいろんな意見があるのは当たり前だと思うし、それを議論するのがいいと思うんですけど。「なんで彼はそこに行こうと思ったんだろう?」とか「じゃあシリアでは何が起きているんだろう?」っていうようなところになんで話題が進まないんだろう? そのシリアのことでも、いまだったらイエメンのことでも、「日本人が殺された/無事に帰ってきた」ってなってはじめて報道されて。でもそこでも結局この「自己責任論VS報道の自由」みたいなので議論をしていて。もう一歩進んで、じゃあなんでそこのシリアに行こうと思ったんだろう?っていうところにみんな興味を持てばいいのになって。
(モーリー)もっと生々しいエグいことを言うとですね、日本の中東専門家、素晴らしい人たちが多いんですけども。その人たちが一様にTwitterで憤りを表明しているのが、「地上波テレビではシリア政府寄りの論客しか出てこない」っていう(笑)。「アサド大統領は安定をもたらすから。内乱なんだから、誰かが収拾をつけなきゃいけない。だからやっぱり独裁者といえども、『安定』をもたらすのは彼しかにない。それ以外は武装組織しかいないので……」みたいな論調で。なんかデフォルトでアサドが良い者になっているんですよ。いや、アサドが虐殺をしていることが内戦を引き起こしているんだけど……っていう視点がどこか欠落しているんですよね。
(プチ鹿島)そうですね。だから、これタブロイド紙の読み方として興味深く読んでみると、夕刊フジっていうのはどちらかと言うと保守的な立場なので。「政府の言うことを聞かないで行った安田さんを擁護しているダルビッシュが大炎上している」っていう、まあそういう書き方になるのかなと。で、そういう読み方をすれば正解なのかなと思うんですけどね。だから「自己責任論」っていうので有名人、「本田も参戦。こちらは終始冷静」っていう風に……つまり、ダルビッシュみたいに踏み込んだことを言ってないからこっちは冷静なんだよっていう。
(モーリー)ああ、「スポーツ選手としての分をわきまえている」っていう?
(プチ鹿島)だから「ウィンク」じゃないですけど、行間からすごくほとばしる記事だなって。
(モーリー)で、夕刊フジは誰にウィンクしてるんですか?
(プチ鹿島)だからこれ、安田純平さんをバッシングする人じゃないですか?
(モーリー)クソリプを書いた人に「よくやった!」と言わんばかりにウィンクしているわけですか?
(プチ鹿島)まあこれ、何の疑問を持たずに載せていますからね。
(モーリー)で、少なくともさ、よく報道の逃げ道として両論併記とか、悪い意味での客観報道ってあるじゃないですか。そういう努力もしていないの?
(プチ鹿島)まあ「大炎上」って書いてありますから。
(モーリー)一方でダルを擁護する声は……J-CASTニュースさんも一応反対意見、書きますよ?
(プチ鹿島)まあ今回は意外と安田純平さんに対して「それがジャーナリストという仕事でしょ?」っていう論が多かったので、だからこそこの記事が珍しかった、目立ったということでした。
(モーリー)なるほどね。
<書き起こしおわり>