北丸雄二 ニューヨーク・タイムズ 伊藤詩織さん事件報道を語る

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アメリカ在住のジャーナリスト、北丸雄二さんがTBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』の中でニューヨーク・タイムズが伊藤詩織さん事件を大々的に報道した件について紹介していました。

(青木理)元日、今年一発目のアメリカの話題ですけども、今日は何を?

(北丸雄二)今日は、まだアメリカは明けて数時間しかたっていないので、去年のニュースの続きなんですけども。去年のニュースの最後の最後になって、ニューヨーク・タイムズが例の「#metoo」の運動に引っ掛けて……これはいわゆるセクシャル・ハラスメント、セクシャル・アビューズなんですけども、それの告発運動に絡めて、とうとう日本での山口敬之さんが関係するとされる伊藤詩織さんの事件、伊藤さんのことに対してものすごい詳報を29日に載せたんですよ。

ニューヨーク・タイムズの報道

She was a news intern. He was a TV journalist. She says he raped her, and she decided to do something Japanese women rarely do: Speak out.

(青木理)これはニューヨーク・タイムズが最初ですか?

(北丸雄二)いや、BBCが先月の半ばに伊藤さんに対する長いインタビュー記事を載せました。

暴行や虐待、そして強姦について被害者が話をするのは、どのような状況だろうと辛く、困難なことだ。警察や司法の手続きを通じて正義を獲得しようとしても、被害者がほとんど乗り越えがたい障害に直面する国もある。日本もそうした国の一つだ。

(北丸雄二)それだけじゃなくて、フランスの方は女性の力が強いものですから、フィガロだとかル・モンドもそうなんですけども、もう11月の段階から、「日本ではどうしてこういう問題が大きな形にならないのか?」ということで、大々的に報じられているんです。


(青木理)はい。

(北丸雄二)それで、その日本の特異性といいますか、女性の地位の問題、社会的背景の問題、その違いに関してレポートする形でこの事件を大きく取り上げているんですけども。ニューヨーク・タイムズがとうとう取り上げて。これは後半でお話しますけども、これがこういう動きが世界を巻き込んで、今年のアメリカの中間選挙にまで影響してくるんじゃないか? という話が出てきているんですね。まず、この伊藤さんの話なんですけども、ニューヨーク・タイムズが取り上げているのは何か? というと、いちばんの違いは、ニューヨーク・タイムズは実は例の山口さんにもインタビューをしているんですね。


(青木理)ほうほう。

(北丸雄二)それで、山口さんの写真も大きく載せていて。これが実はいまの段階で、ニューヨーク・タイムズで最もよく読まれている記事のトップ10に入っているんですよ。

(青木理)これは、ニューヨーク・タイムズのありとあらゆるデジタル版の記事の中でいちばん読まれているということですか?

(北丸雄二)それの10番目に入っているんです。これはそしてまた、タブロイド判を開くと、これが一面のトップに入ってきているんですね。それだけ大きな問題になっていて。

一面トップで報じる


(青木理)これ、だけどアメリカでは「#metoo」ということで、ずいぶん前から動きが拡大していたわけですけども、これで改めて詩織さんのことを取り上げて……どういうことですか? 日本の異質論ですか? それとも、「日本でも」っていうことで書いているわけですか?

(北丸雄二)ひとつのセクシャル・ハラスメント、セクシャル・アビューズメントの定義として、アメリカでは、合意がない場合は全てレイプなんですよ。ところが、日本の場合は合意がなくてもレイプと見なされない場合がある。特に、たとえばお酒が絡んだ事件になると裁判官も警察も、それをレイプと見なさない傾向が強いというような、そういういわゆるセクシャル・ハラスメント、レイプの定義の違い。でも、それとは違うところで、女性たちはこれだけそのことによって困っているんだぞというような記事になっているんですよ。

(青木理)これ、あれですもんね。山口さんのこれまでの言い分が、もし仮に全て正しかったとしても、伊藤詩織さんはお酒を飲んで、泥酔なのかデートレイプドラッグと言われているものなのかはわからないけれども、意識を無くしていた。そして性行為があったという、これは山口さんも認めているわけですよね?

(北丸雄二)認めているんですね。そして、その記事の中で詳報されている。事細かに書いてある。そしてそれは、アメリカの定義では完全にレイプなんですね。

(青木理)これがあまりレイプということに定義付けられない日本のある種の異質さみたいなものっていうのも注目を浴びているということですか?

(北丸雄二)そうですね。いわゆる家族制度の問題ですとか、女性たちが告発しない。総務省でしたっけ? 2014年の調査で、日本の場合、女性は一生のうちに15人に1人がレイプを経験するという。アメリカの場合は5人に1人。日本は随分少ないとは言っているんですけど、これに関してもその定義の違いから、実は同じぐらい起きているんじゃないか? という風なことが言われていますね。

(プチ鹿島)北丸さん、山口さんがたとえば政権と近いジャーナリストであったという解説は?

(北丸雄二)それが全て枕詞になって、「シンゾー・アベと近い、その伝記を書いているジャーナリストとして」という風な形で、権力側が不起訴理由を開示していないという、その不思議さについても触れているんですね。

(青木理)これ、今後これが、日本のメディアのよくないところで。この伊藤詩織さんの問題って、あまり日本のメディアは、特に新聞などはほとんど積極的に報じてこなかったんですけども。これまでもよくあったんだけども、アメリカのメディアが大きく取り上げて、逆にそれを逆輸入するみたいな形で日本のメディアも騒ぎはじめるなんてことがよくあったんですが。

(プチ鹿島)都議会ヤジ事件とか、そうでしたよね。

(青木理)そうですね。そういうことになるという可能性もありますか?

(北丸雄二)そういうパターンはあり得ると思いますね。これを機として、日本のメディア、ジャーナリストたちがまた書き始める……まあ例によって私たちもこうしてここでしゃべっているわけですから。それもそういうことなですけども。実は、それはつまりアメリカとしては日本を紹介するだけではなく、それだけ女性たちが困っているということなんですよ。結局、ポイントは。それで、実はこの間、ニュースが出まして。アメリカの連邦議会でこの20年間で、連邦議会の中の議員、スタッフを含めて全部で264人が性的ハラスメントやアビューズによって告発されて。実は、連邦議会の費用20億円(1700万ドル)を使って示談に持ち込んでいるということが明らかになったんですね。

(青木理)これはつまり、議会の費用で勝手に有耶無耶にしているというか、表沙汰にしないで示談にしてしまっているということですね。

(北丸雄二)そうそうそう。それで、その関係者の名前が全部、非公表なんですよ。ところがこの「#metoo」運動が盛り上がってきたもので、議会の中でも「これは絶対に開示しなければマズいんじゃないか?」という圧力が高まっている。

(青木理)これ、北丸さん、日本のそういう性的な文化というものもご存知。アメリカもご存知で、日本がこれから同じような動きが広がるのか、それとも逆に日本はあまり広がらず、相変わらずどちらかというと「女性にも問題が……」みたいな感じになるのか。どんな風に読んでいます?

(北丸雄二)これは、だからこれを機に、女性の問題に関してもう一度、メディアなり論壇なりで大きく話題にしなくちゃいけない時期が来ている。そしてアメリカはそれがすでに始まっていて、これは大きなパラダイムシフト、ひとつの転換期だと思うんですね。実際問題として、そこでたとえば議会で議員の名前が今回、あがったとする。開示されたとすると、上院議員っていま共和党と民主党が51対49で本当にスレスレの状態なんですよ。改選議員は共和党18人、民主党13人だから、共和党が1人でも減ったらマズいんですね。またわからなくなる。

(青木理)しかしこれはだから、別に外国がどう見ているのからっていうことではないけれども、日本もこの問題をどうするのか、考えていかなくちゃいけないですよね。

(北丸雄二)まさにこれを機会に考えていきたいですね。

(青木理)わかりました。北丸雄二さん、ありがとうございました。

(北丸雄二)ありがとうございました。

(プチ鹿島)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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