プチ鹿島 日本体操協会パワハラ疑惑・新聞各紙読み比べ

プチ鹿島 日本体操協会パワハラ疑惑・新聞各紙読み比べ YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中でパワハラ疑惑が告発されている日本体操協会の問題についてトーク。新聞各紙の報道を読み比べながら、様々な論点を紹介していました。

モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない

(プチ鹿島)ということで塚原夫妻。塚原光男副会長と塚原千恵子・女子体操強化本部長ということで。もともとはと言えば宮川紗江選手が自分をずっと指導してくれた速水コーチ。その速水コーチによる暴力事件というのが実は第一幕だったわけですよね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)それに対して宮川さんが記者会見をして「いやいや、もっとデカいパワハラがある」ということで塚原夫妻のパワハラを訴えたということでいま、大騒ぎになっているという。これね、ボクシングの時と違って、まだモヤッとしたところがみなさん、あると思うんですよ。

(塩澤未佳子)うん。

(プチ鹿島)これ、いったい誰が本当に悪いのかっていう、そこらへん気になりません?

(塩澤未佳子)まあ、そうですね。いまのところだとどちらも非がある感じはありますね。

(プチ鹿島)そうですね。ただ特に、今年の流れを見てみるといわゆるラスボス感というか。本当の巨悪はここにいた!っていうので、たとえば山根会長ですからね。会長であったり、日大アメフト部の監督であったり。いままでだったら絶対的な権威だった人が、それこそアラブの春みたいな感じでどんどん倒れていくっていう、そういう現象が起きていますよね。それで行くとどうやら、ワイドショー的には塚原夫妻が巨悪であった方が面白いというそういう空気になってきているのかなとは僕、思うんですけども。

(塩澤未佳子)はいはい。

(プチ鹿島)ただここで、僕はよく『キックス』で言うんですが、こういう話って100:0で誰が正義で誰が悪かって、白黒はっきりつけようとしてしまったら間違うんじゃないかっていうのは僕はよく思うんですよ。それこそロシアとウクライナの問題と同じでね。それぞれの事情、バックグラウンドがあると思うんですよね。だから僕なりに大事だと思うのは、これは誰が悪いのかっていう論点よりは、何が悪いのかっていう、そこの考え方だと思うんですよね。今回の問題でなにが悪いのかっていうところを、たとえば新聞記事でチェックしていくと、いろんな論点が出てくるわけなんですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だからそれをちょっとご紹介しますね。まずはこれ、朝日新聞が「視点」ということで編集委員の方が書いた記事があるんですけども。朝日新聞は最初、「『反暴力』揺るがすな」って書いてあるわけですよ。ぶっちゃけて言うと、「塚原夫妻のパワハラの件と今回の速水コーチの件、これを一緒にして考えちゃダメだよ」って言っているわけですよ。

(塩澤未佳子)ええ、ええ。

(プチ鹿島)そもそもが最初は宮川選手に対する速水コーチの暴力沙汰だったわけじゃないですか。で、それに関して宮川さんがね、「自分は被害を訴えていない」という考え方は暴力を受けたものがそう感じなければ暴力ではない。つまり、体罰を受けているんだけど、体罰を受けている人が「いや、私は体罰とは考えていない」って言えば、信頼関係があれば体罰や暴力はOKになっちゃう。でも、そうじゃないでしょ?っていうことを朝日新聞は言っているわけですね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)本人がどう思おうが暴力はアウト。そういう解説記事がありました。で、あともうひとつ、東京新聞の8月30日付けを読みますと、東京新聞は一方で「選手第一を最優先にしようよ」って言っているわけですね。今回、「コーチによる暴力は許されることではない」って書いてあるんですが、一方で「未成年の宮川選手(18歳)をここまで追い込んで、会見を開くという状況にまでしてしまったこと自体、協会は反省をしなければならないんじゃないのか?」っていう。で、「塚原夫妻の言動がパワハラかどうかはいま、第三者委員会で調べているんですけど、それとは別に18歳の選手にそこまで不信感を植え付けている協会のいままでの態度はいかがなのもか?」という論点なんですよね。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)だから宮川さんが第三者委員会がパワハラがあったのかどうかを調べているんだけど、でもこの時点で塚原夫妻。トップですよね。そこに不信感を抱いているということは事実なわけだから、それは選手ファースト、選手第一という観点から考えるとよくないよねって言っているわけです。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、もうひとつ、僕が気になったのは読売新聞なんです。これ、実は速水コーチと宮川選手。この関係性というのに着目して書いているんですよね。というのは女子体操というのは年齢的にピークを迎えるのが早い。どういうことかというと、幼い時から長期間にわたって体操を始めて続けているわけですね。そういう場合、コーチと選手の間に親子や兄妹のような関係、絆が生まれるというんです。これ、一方では美しいことなんですが、これはもしかすると暴力指導を「愛のムチ」と受け取ってしまいがちになる。で、早稲田大学スポーツ倫理学の教授のコメントが載っているんですが。こういった指導者と選手の間ではどんな指導でも互いに正当化してしまう「共依存」という関係に陥りやすいというんですよね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)ですので1人のコーチが1人の選手を抱え込むのではなく、トップ選手は複数のコーチで見ればいいんじゃないか?っていう、そういう提案をしているんです。で、この共依存関係に関しては毎日新聞も指摘しておりまして。選手と絆が深まれば深まるほど、他者から見れば暴力のものを選手は愛のムチと受け取ってしまう。ただ、今回そういう問題ってじゃあ選手が納得していればいいのか?っていうと、そういうことじゃないじゃないですか。たとえば周りで練習している選手がその暴力行為を見たら、当の宮川選手は愛のムチだと思っていても、他の選手はそれを暴力だと思って、ちょっとびっくりしてしまうという、そういう影響もあるわけですよね。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)だからやっぱり指導体制について考えたらどうかっていうことで。やっぱり読めば読むほどいろんな論点が出てくるわけですよ。これは僕、さっき言った通り「誰が悪いのか?」っていうので考えていくとちょっと面白おかしい話になっちゃうんですが、「何が悪いのか?」っていう論点で読んでいくと、さっき塩ちゃんが言ったように多かれ少なかれ、今回の登場人物……コーチも塚原夫妻もみんな、やっぱり反省しなくちゃいけない部分は見えてくるわけですよね。

(塩澤未佳子)ええ。

「どちらが正義でどちらが悪か?」では間違う

(プチ鹿島)で、その被害にあっているのが宮川選手だったということなんですよ。だからこれに関しては本当に100:0でどっちが正義でどっちが悪役かっていうのを決めようとするとちょっと間違えちゃうかなって思いますね。

(塩澤未佳子)そうかもしれませんね。

(プチ鹿島)ということはもっと言えば、暴力はダメ。選手ファースト。指導はいろんな人に教わろうよとか、チェックの目を入れていこうっていうのは本来だったら当たり前のことなんですが、それができていなかったというのが体操界、もっと言えばアマチュアスポーツ界の、なんと言うかタコツボ化と言いますか。だから僕がすごく興味深いのがですね、今回の塚原夫妻にしろ、この間のボクシングの山根会長にしろ……まあ、山根会長は特殊か。もっとわかりやすく言うと、レスリングの栄コーチ、いたじゃないですか。伊調さんの。あの人たちからすると、自分たちはこれまで自分の人生を捧げて教えてきて、成果も出してきたのにフッと横を見ると「お前の指導はパワハラだ! 行きすぎている!」っていう声があって。それでびっくりしてるっていうのが本当のところなんじゃないですかね?

(塩澤未佳子)ああ、本人たちはね。

(プチ鹿島)自分がパワハラだとは思っていないっていう。「いやいや……!」って。ずーっと、それこそ自分の指導しているチームがイコール全日本なわけじゃないですか。朝日生命体操クラブもそうですけども。だからそれを「なにそれ? 公私混同だ!」とか「絶対女帝の時間が長い」とか言われていま、はじめてびっくりしてる状態なんじゃないですかね。だからそういう意味ではアラブの春にも似ているのかなと思うんですよね。民衆の声で可視化されてはじめて……「すごい独裁者がいるぞ!」っていうんだけど本人たちは独裁者だとは思っていない。むしろ自分たちの人生を費やしてここまで一生懸命頑張ってきたのに「えっ?」って驚いているっていう状態なのかなというのは感じられますよね。

(塩澤未佳子)ねえ。

(プチ鹿島)だから本当にこれからも面白おかしくワイドショー報道とかあると思うんですけど、「誰が悪いのか?」よりも「何が悪いのか?」っていうところに着目してみるといろいろと見えてくるんじゃないかなと思います。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)まあ、もしくはこれから体操協会、もしくはアマチュアスポーツ界はどうあるべきか?っていう、そういうところで見てみるとわかりやすくなるのかなと思いますね。

(塩澤未佳子)そうですね。やっぱり才能のある選手たちがね、こういうことに巻き込まれていたりするのがいちばん嫌ですね。もったいないし。

(プチ鹿島)ねえ。だから嘘見出し的に言うと塚原夫妻がパワハラを逆に指摘されて、ちょっとウルトラC級に驚いているっていう、そういう感じ。そういう見出しを僕、待っていたんですよ。呆れるぐらいベタな見出し。いまのところ、まだ登場していないですね。「塚原、ウルトラCの反撃にあう」みたいなね。

(塩澤未佳子)フフフ(笑)。4時から見出し王のコーナーもありますので。よろしくお願いします(笑)。

<書き起こしおわり>

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