ジェーン・スー 恋愛大学入試問題「彼氏との別れ方」

ジェーン・スー悩み相談「妻子ありなのに職場の同僚に恋をしてしまいました」 ジェーン・スー 生活は踊る

ジェーン・スーさんがTBSラジオ『生活は踊る』のお悩み相談コーナーでリスナーの「マッチングアプリで出会った彼氏と別れたい」という悩みに回答。「これね、恋愛大学入試の国語問題として最適ですよ」と言いながら、問題点を指摘していました。

(長峰由紀)今日は通算1063件目。ラジオネーム「棚上げ子」さんからの相談です。「スーさん、長峰さん、こんにちは。恋人との別れ方について相談させてください。私は30代前半。都内で働くOLです。マッチングアプリを利用して恋人と出会いました」。

(ジェーン・スー)いいね!

(長峰由紀)「……彼は5才下で、電車で2時間の距離に住んでいます。お互いに実家暮らしのため、月に一度都内でデートを重ね、現在交際して8ヶ月ほどたったところです。付き合った当初は互いに外見、中身とも一目惚れ状態で、『こんなに好みの人に出会えることがあるんだ!』と感動したほどです。しかし、付き合うにつれてお互いの価値観の違いや彼の誠意のない行動に我慢ができなくなってきました。羅列させていただくと、私はなるべく多く彼に会いたいのに対し、彼は月一で十分。距離の事情もありますし、最終的には私が譲歩する形になりました。

付き合って2週間後が彼の誕生日だったが、平日ど真ん中だったため、お互いに社会人だし週末にお祝いすればいいかと考えていたら、当日電話で『仕事が忙しくなかったのなら、どうして会いに来なかったのか?』と結構な勢いで問い詰められた。結局、違う週末に高級料理をごちそうし、高価なプレゼントをあげました。挙げるとキリがないですが、『以前好意を持っていた女性にさんざんご飯をおごったのに彼氏ができたとフラれて頭にきた』と愚痴られたり。ちなみに私は彼からご飯をおごられたことは一度もありません。

私以外の女性と2人きりで美術館に行ったり、『退会した』と言い張っていたマッチングアプリにいまだに登録していたり。そんな行動を目にして、心がどんどん彼の元から遠ざかっていきました。ある日、転職を考えていた彼とケンカになった時、『どうして転職したいと言っているのに、一緒に転職先を探したりしてくれないの?』と不満げに尋ねられました。そもそも会う機会も少なく、LINEのメッセージでは雑談程度の関係性で深い話はほとんどする機会がなかったので、『そんな相手の就職先まで親切に斡旋してあげないと行けないのかな? そういう関係性になるには、もっと密に付き合ってからではないのかな?』と疑問に思いました。

彼も何もしてくれない私に不満があるらしく、ここ数日別れ話を頻繁にしています。これまで従順に彼の言うことを飲んできた私ですが、上記に挙げたような不満をブチまけてもよいものでしょうか? また非常にみみっちい話になって恐縮ですが、私は今月が誕生日なのです。ご飯代は請求しないにせよ、あげたプレゼントを返却してもらうのは無粋すぎますでしょうか?」。

(ジェーン・スー)そうだね!

(長峰由紀)「……いま、非常に悔しく、悲しく、怒っています。彼の要望を素直に聞いていれば、もっとこの関係は長く続いたのか? いまだに彼のことが諦めきれない自分にも嫌気がさしています。長くなってしまい恐縮ですが、スーさん、長峰さん、ご意見を聞かせていただけたら幸いです」。

(ジェーン・スー)これね、恋愛大学入試の国語問題として最適ですよ。

(長峰由紀)そう思いますか?

恋愛大学入試「ツッコミどころを挙げよ」

(ジェーン・スー)「ツッコミどころを挙げよ」って、1個1個全部記述でやらせて。これで合格かどうかがわかるね。恋愛大学入試試験でございます、これ!

(長峰由紀)ああ、教えて、先生!

(ジェーン・スー)もう大変よ。たくさんありますよ。

(長峰由紀)はい。どこですか?

(ジェーン・スー)「こんなに好みの人に出会えることってあるんだ!」って。ないよ!

(長峰由紀)アハハハハッ! ない?

(ジェーン・スー)好みの人に出会えることはありますけど、それはたまたま共通点が多かったっていうだけですよ。「価値観が違うところがない」という意味とイコールではありません。

(長峰由紀)そうかそうか。

(ジェーン・スー)たまたま、5人ぐらいでババ抜きをやったら「おっ、もうすでに捨てられるのが3カードぐらいある!」ぐらいの感じですよ。「4・4、10・10、2・2……あ、これ3つ捨てられるわ」って。そんなもんです。手元を見てみろ。3、4枚まだ全然ペアになっていないのが残っているだろ?っていう。そういうことですよ。

(長峰由紀)視野が狭いと。

(ジェーン・スー)視野が狭い。ないない!

(長峰由紀)それから?

(ジェーン・スー)まず、「彼の誕生日が平日ど真ん中だったため、お互い社会人だし週末にお会いすればいいかと考えていたら……」って。これ、1人で考えていたのか?っていう話ですよね。相手とちゃんとコンセンサスを取っていたのか? と。

(長峰由紀)予定を聞いたりとか?

(ジェーン・スー)そうそう。もしかしたら、誕生日とか祝われたかった人かもしれないじゃん?

(長峰由紀)まあ、だいたい祝ってほしいですわね。

(ジェーン・スー)でもさ、「わざわざ出てきてもらうのは……平日だし、夜だし、今日はいいわ」っていう人もいるじゃん? そのへんの話はしなかったのかな?

(長峰由紀)してないんでしょう。

(ジェーン・スー)したにもかかわらず……だったらコンチクショー!って話ですけど。そうじゃないんだとしたら、これは全然、コミュニケーション不足。話が詰めきれていない。これ、仕事だったらトラブるよ、これ。

(長峰由紀)わかりました。そうか。

(ジェーン・スー)そうそう。しかも、それについてやってあげたこと。「違う週末に高級料理をごちそうし、高価なプレゼントをあげました」。

(長峰由紀)ああ、「私はこんなにしたのよ」と。

(ジェーン・スー)おじさんか?っていう話ですよ。若い子が怒っているから、どうしていいかわからず、とりあえず金で解決!っていう。それはまあ、おばさんもやるけどね。

(長峰由紀)やりますけどね。でも、そうか。そんなものじゃないでしょうっていう。

(ジェーン・スー)それが向こうがほしかったのもなのかどうか、ちょっとわからないよね。あげた気になっているけどさ。棚上げ子さんは。まあ、「棚上げ子」っていう時点で全て解決しているんだけどね(笑)。

(長峰由紀)名前に表れている(笑)。

(ジェーン・スー)自分が棚上げしているっていうのはわかっている。「挙げるとキリがないですが……」って。あと、「『退会した』と言い張っていたマッチングアプリにいまだに登録」。これで向こうの事情はだいたいわかるでしょう?

(長峰由紀)どんな?

(ジェーン・スー)もっといいのがいたら、乗り換える気満々ですよ。

(長峰由紀)ええーっ! 2人もここで出会ったわけなのに?

(ジェーン・スー)だって、お金かかっているんだよ。たとえばこれが30代の男性で、月に1000円、2000円ぐらい払うのは別にいいやっていうような人なんだったら、「ああ、面倒くさいから結局退会しなかった」って言っても、「ああ、そういうこともあるかもね」だけども。相手、20代後半でしょう? 月1000円、2000円は結構まだ響くと思いますよ。だからうっかりじゃないでしょう。これは、完全に。

(長峰由紀)意図的?

(ジェーン・スー)だって「退会した」って言い張っていたんでしょう? もう嘘だもん。

(長峰由紀)嘘ついてますね。ああー。じゃあ、これは女性としては怒ってもしょうがない?

(ジェーン・スー)そうそう。「怒っても」っていうか、もうこの時点で全然、ねえ。で、お互いにすごい試し行動じゃないですけども。その時に問題を話していないのに、後から文句を言うとか、そういうのが多くないですか?

(長峰由紀)そうですね。

(ジェーン・スー)「どうして転職したいと言っているのに、一緒に転職先を探してくれないの?」って。これね。

(長峰由紀)これ、なに?

(ジェーン・スー)なんかここまでの流れがなんかあるんでしょうね。さすがに唐突だから。たぶん、もっとなんかいろいろとあった上でのこれなんでしょうけど、だったら「一緒に探してほしい」って言ってくれる人と付き合った方がいいよ。もしくは、「『一緒に探してほしい』って言ってくれないとわからない」って言って2、3回の派手なケンカをするのも厭わないぐらいの相手と一緒にいた方がいいと私は思います。

(長峰由紀)なんか、見返りを求め合いラブゲームみたいな。

(ジェーン・スー)そうそう。そうなんですよ。しかも、聞いてよ、長峰さん。

(長峰由紀)なに?

(ジェーン・スー)交際8ヶ月ほど。月に1回会っている。まだ8回しか会っていないんですよ。8回ですわ。末広がりの「8」ですわ。

(長峰由紀)全然めでたくないでしょうが。

(ジェーン・スー)で、会う機会も少なく、LINEのメッセージでも雑談程度の関係性。深い話はほとんどする機会がなかった。……8ヶ月、なにをやってたんだ、お前らは?っていう話ですよ。

(長峰由紀)これじゃあダメに決まっているじゃないっていう。

(ジェーン・スー)それでまたここでね、棚上げ子は間違えている。この中で同じミスをやっているよ。知ってる?

(長峰由紀)どこ?

同じミスを繰り返す

(ジェーン・スー)「なんで誕生日の時にお祝いするために会いに来なかったの?」って言われて、「ああ、ごめんごめんごめん!」って高級料理と高価なプレゼント。金で解決したでしょう? 同じように、「そんな相手の就職先まで親切に斡旋してあげないといけないの?」って……「斡旋」なんて言ってないだろ?っていう。

(長峰由紀)斡旋(笑)。

(ジェーン・スー)棚上げ子、これ注意して。あなたはいつも、向こうが望む以上のものを、なんかドーン! と返そうとして、それでご破産にしようとする癖が絶対にある。気をつけて。

(長峰由紀)そうか。それよりも先に気がつけ。コミュニケーションを取れと。

(ジェーン・スー)そう。っていうか、話を聞いてほしかったとかさ、「これはどう思う?」っていう時に「そうだね」って……「斡旋」なんて言ってないよ。なんで人材派遣会社みたいになっているの?

(長峰由紀)職安じゃないんだから。

(ジェーン・スー)そう。職安じゃないんだから。「斡旋してあげないといけないのかな?」じゃないでしょう。これは。

(長峰由紀)ああー。っていうことは、棚上げ子さんは本当に、ペンネーム通り、文字通り棚上げしている自分をもうちょっと見返した方がいいと?

(ジェーン・スー)まあでも、相手も相手だよ。でね、またここ最後。「彼の要望を素直に聞いていれば、もっとこの関係は長く続いたのか?」って。だから、そこ! 過剰供給! 棚上げ子の問題は過剰供給よ。だと思いますけどね。

(長峰由紀)これ、まだ好きなんだよね? 「諦めきれない自分がいる」って。

(ジェーン・スー)まあ、っていうか執着じゃない? 別に。

(長峰由紀)そうか。「諦めろ」と。

(ジェーン・スー)で、「プレゼントを返却してもらうのは無粋すぎますでしょうか?」って……。

(長峰由紀)だから、別れ方はどうしたらいいですか? ブチまけて言った方がいいんですか? スッキリするために。

(ジェーン・スー)まあ、気持ちはわかるんですよ。あげたものを返してくれって、気持ちはわかる。気持ちを持つのと実際にやるのは、また別のことじゃないですか。私、いままでに別れた中でいちばん思い出さなくて、「うん、いい思い出だな」って残っているのって、「ああ、これは別れるな。これはちょっと上手くいかなくなったな」って思った時、「悪あがきしても無理だな」って思って。「じゃあ、いいよ。会わないでいいから。家に置いてあるもの全部捨ててもらっていいし。こっちも必要なものだけ言ってもらえば送るから。もう、これで終わりにしませんか?」ってメールで終わらせたやつがいちばん、なにも思い出さなくていいですね。

(長峰由紀)へー! よくできましたね。

(ジェーン・スー)なにかモメて、「どうしたの! こうしたの!」って土俵際でギューッとやったやつは、もう何年たってもいまだに「あいつっ!」って思い出しますよ(笑)。

(長峰由紀)でも、その気持ちもわかるわけでしょう? スーさん。言いたい気持ちは。でも、やったところでなにももらえないよってことですよね。言ったところで。

(ジェーン・スー)そうですね。どうですか、長峰さんは?

(長峰由紀)私はモメたこと、一度もないですからね。

(ジェーン・スー)うわっ、なんですか、それ? どんな技を使っているんですか?

(長峰由紀)いやいや、それは技じゃなくて人柄だと思いますけども。

(ジェーン・スー)フハハハハハッ! なに言ってんの?(笑)。どうかと思うよ!

(長峰由紀)技じゃなくて、心で。「いい相撲を取ろう」っていう。

(ジェーン・スー)いや、相撲じゃないよ。どうやってやっているんですか? どうやったらモメないんですか?

(長峰由紀)それは……いや、言えない。ちょっとそれは言えない。マズい。人格否定になっちゃうから。

(ジェーン・スー)ちょっと待って! 「一門の秘密」みたいなの、やめてくださいよ(笑)。

(長峰由紀)一門はまあね、伝統的な話なんでね。まあ、そうなんですよ。でもやっぱり、自分にもいろいろと責任があるから。恋愛ってお互いだから、自分だけの意見をワーッ! と言ってね、それで「あばよ!」っていうわけにはいかないですよ。そんなことをしたことは私は一度もないって言っているの。

(ジェーン・スー)なに言ってるんですか?(笑)。

(長峰由紀)細かい話はできない。

(ジェーン・スー)絶対にこれ、後ろ暗いなにか、あるぞ(笑)。っていうかだから、言いたいことはひとつですよ。誰と付き合っても最初は絶対にこうじゃん? 十中八九。棚上げ子さんに言いたいのは、誰と付き合っても絶対に最初の8ヶ月はこうよ。で、それでも一緒にいたいか?っていうところで。

(長峰由紀)そうそう。本当にそう。だから序の口から十両まで上がるぐらい大変なの!

(ジェーン・スー)結局相撲かい!(笑)。

(長峰由紀)恋愛は!

(中略)

(長峰由紀)時刻は12時21分。この後は「すすめて小森谷さん」!

(小森谷徹)まあ、これは偏見かもしれないけどさ、マッチングアプリで出会っている時点で、昔で言うところの「リゾラバ」だと思っとかなきゃいけないと思うんだよ。

(ジェーン・スー)アハハハハッ! バブルだなー! リゾラバって……(笑)。

(小森谷徹)もう(スキー場で)ゴーグルをかけている状態で出会っているわけじゃん。すでにね。もう「全部嘘さ、そんなもんさ、冬の恋は幻」だよ!

(長峰・スー)アハハハハッ!

(小森谷徹)だからそれはやっぱり、乗り越えられたらそれは本物になるかもしれないけどね。そのゴーグルを外したら、目が「えっ、こんな目だったの?」って思っても、「ああ、よく見たらかわいいじゃない」って思うのって、一瞬じゃないからね。まあ、いろいろと考えた方がいいよ。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/43021

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