西寺郷太さんがFM802『FLiPLiPS』の中で2018年1月28日に開催される第60回グラミー賞の直前予想。主要四部門の受賞者の予想を披露していました。
(西寺郷太)FM802『FLiPLiPS』をお聞きのみなさん、こんにちは。グラミーアドバイザー、NONA REEVESの西寺郷太です。「グラミーアドバイザー」ってはじめて言われましたけども。今週は私、西寺郷太が今回の第60回グラミー主要四部門の受賞者予想を毎日1つずつ発表していきます。僕は今年44才で、はじめてグラミー賞というものを知ったのはマイケル・ジャクソンが『Thriller』で8部門を……史上最多だったと思うんですけどもね。グラミー賞を獲得した1984年2月のことです。
ただ、これが今回のグラミー賞にも続いている問題なんですけども。グラミー賞という賞そのもののあり方と言いますか。歴史的に白人アーティストが選ばれやすい、功績を認められやすい賞になっているということを、マイケルがめちゃくちゃ勝ったということから知ってしったのでちょっと勘違いしちゃったところはあるかなと思っています。というのも、グラミー賞はエンジニアだったり音楽のレコード業界の人だったり、ミュージシャンだったり。音楽関係者の、言ってみれば偉い人たちがグラミーの会員というのになっておりまして。その中で1票1票投じるというシステムになっていましたから。
だからこそ、同業者に認められたということで獲得した栄誉というのはすごいんですけども。多くは白人で業界内で成功した人が選ぶという状況だったんですよ。だからこそ、黒人音楽の、特に新人だったり、いまいちばん活きがいい若い人が好きな音楽だったりヒップホップとかそういうものよりは、作曲・作詞を白人的にきっちりできるという方が評価されることが多かった。だから、近年もずっとその問題は続いていて。たとえば、ビヨンセとアデルが戦っても絶対にアデルが勝っちゃうみたいな、そういうような歴史を持っている賞だったんですよね。だからこそ、マイケルが『Thriller』で大量に獲得したというのは当時なんですけど、とてもエポックメイキングなことだったわけです。ただし、それは結局近年に至るまでやっぱり変わらなかった、白人優位のシステムだったと。
そんな中で、今年2018年は実はものすごく変動が起きていまして。黒人アーティストであったり、非白人アーティストの楽曲が正当に評価されたというのは珍しいことで。特に今回、初日の月曜日にピックアップする最優秀レコード賞というものはそういった意味でもすごく面白いラインナップになっております。
最優秀レコード賞
5曲、最優秀レコード賞にはエントリーしているんですが……この5曲の中から私、西寺郷太が最優秀レコード賞に輝くと思う1曲は、チャイルディッシュ・ガンビーノの『Redbone』。ドナルド・グローヴァーという方が、去年の1月のゴールデングローブ賞で男優賞にも輝いたんですけども。彼が音楽をやる時はチャイルディッシュ・ガンビーノと名乗っていると。ともかく、まあ曲がかっこいい。サウンドが素敵。そして、僕が去年見た映画の中でいちばん面白いなと思ったのが『ゲット・アウト』という映画で。その映画でも使われていたテーマ曲といいますか、登場してきた曲なので。選ばせていただきました。
予想が当たる確率……これは難しいですね。まあ60%ぐらいですかね? 自分のいちばん好きな、いちばんかっこいいと思う曲を選ばせていただきました。明日は最優秀アルバム賞を予想します。西寺郷太でした。
Childish Gambino『Redbone』
(中略)
(西寺郷太)FM802『FLiPLiPS』をお聞きのみなさん、こんにちは。グラミーアドバイザー、そう呼ばれております。NONA REEVESの西寺郷太です。今日も第60回グラミーの受賞者予想を発表します。「これまでのグラミー賞で特に印象深い授賞式を挙げてほしい」ということなんですが、僕個人的にはもうここ7、8年、お仕事としてリアルタイムで日本で中継をしたりとか、体感して来たわけですけども。その中でもやっぱり特筆すべきは2016年のケンドリック・ラマー。鎖につながれているところから始まり、アフリカから来た自分たちの祖先というか、ブラックミュージックというものの歴史を数分間の中に凝縮して。
昨日も言ったんですけど、基本的にグラミー賞っていうのはアメリカの白人のおじさんの多いグラミー会員の権威ある賞で。どちらかと言うと黒人音楽だったり、ヒップホップだったり、ソウル・ミュージックは冷遇されてきたという歴史をグラミーのそのパフォーマンスのステージで皮肉ったと言いますか。「でも、どっちがすごいんだ?」っていうのを示したと言いますかね。怒りもありましたし、それをただ単に怒っているというんじゃなくて、冷静に客観視できるケンドリック・ラマーだからこその凄みのあるステージだったなと思っております。本当に感動しました。
あとは2014年のダフト・パンク。これもダフト・パンクが『RANDOM ACCESS MEMORIES』というアルバムでグラミーの最優秀アルバム賞なんかも取ったすごい年だったんですけども。
スティービー・ワンダーやファレル・ウィリアムス、ネイサン・イースト、ナイル・ロジャース、そしてオマー・ハキム、ポール・ジャクソン・Jr.、クリス・キャスウェルというまあすごいメンバーを集めたパフォーマンスで心から感動しました。
最優秀アルバム賞
今日、グラミー主要四部門の中からピックアップするのは最優秀アルバム賞。僕が最優秀アルバム賞を獲得すると予想する1枚は……ケンドリック・ラマーの『DAMN.』です。
まあケンドリック・ラマーに関してはもう、昔のマーヴィン・ゲイ『What’s Going On』だったりスティービー・ワンダーの70年代、それからプリンスだったり……本当にいま、ケンドリック・ラマーにアルバム賞をあげないで誰にあげるんだ? というぐらい、本当に革新的なアーティストですし、時代を象徴するアーティストですし。もし本当に今年、ケンドリック・ラマーが主要な賞をグラミーで獲得できなかった場合、本当にグラミー賞が見放されてしまうんじゃないかな? と思うぐらいですね。
なので特にいちばん価値が高いといいますか、栄誉あるアルバム賞をケンドリック・ラマーが受賞するんじゃないかなと僕は思っております。予想が当たる確率は、これは100%にしておきましょうか。はい。結果をお楽しみに。明日は最優秀楽曲賞を予想します。それでは第60回グラミー賞で最優秀アルバム賞に輝くと予想したケンドリック・ラマーの『DAMN.』から1曲。これは最優秀レコード賞にもノミネートされている『HUMBLE.』。NONA REEVES西寺郷太でした。
Kendrick Lamar『HUMBLE.』
(中略)
(西寺郷太)FM802『FLiPLiPS』をお聞きのみなさん、こんにちは。今日も私、グラミーアドバイザー、西寺郷太が第60回グラミーの受賞者予想をさせていただきます。実は僕ね、めちゃくちゃグラミーの受賞を当てるんですよね。本当にここ7、8年ですかね。番組の企画とかでかならず予想を毎年してきたんですけど、だいたい主要四部門で予想して、アベレージで3つはかならず当てるんですよね。それにはまあ、理由があって。やっぱりグラミーの毎年の流れっていうんですかね? グラミー会員の人が投票して。「あっ、ちょっとこっち寄りになりすぎたな」って去年の反省なんかも含めて。「じゃあ、今度はその反対に入れてみよう」とか、そういうものが波のようになってグラミー賞って決まるので。
内田絢子さんがね、昨日と一昨日も僕、東京で放送を聞いていたんですけども。ブルーノ・マーズを非常に押されていて、すごいそれもよくわかるんですけど、彼の『24K Magic』が発売されたのが2016年の9月なんですよね。で、これはやっぱり1年何ヶ月か前で、ドナルド・トランプ政権が発足したのが2017年1月で、選挙がその前年の12月だったんですけども。それより前のヒット曲だったりヒットアルバムなんですよね。なので、そういう意味でちょっと、同じぐらいのいい曲だったりいいアルバムが競争をした時に、ブルーノはちょっといまのタイミングじゃないかな?っていう風に判断する人が多いんじゃないかというのが僕の今回の予想で。そういう意味で、2017年度から2018年にかけて意味があるなと思われる曲を会員は選ぶんじゃないかと思っております。
最優秀楽曲賞
そして今日、水曜日。最優秀楽曲賞です。一昨日発表したレコード賞っていうのが歌だったりサウンドだったりアレンジだったり。そのシングル全体を評価した賞なんですが、最優秀楽曲賞というのはもっとシンプルで。作詞家と作曲家のものです。いい作詞、いい曲。そこだけという意味でこの5曲の中から私、西寺郷太が最優秀楽曲賞に輝くと思う1曲は……『1-800-273-8255』。ロジック feat. アレッシア・カーラ&カレッド。
はい。このタイトルがめっちゃややこしいんですけども、電話番号なんですよね。全米自殺予防ライフラインの実在する電話番号です。「作詞や作曲にね、もう組み合わせで新しいことは生まれないかもしれない」なんて言われてから久しいですけど、実在の電話番号をタイトルにして、直接的に悩んでいる人、追い込まれた人を救っていこうっていうそのメッセージが非常に僕は買われると思うんですよね。「その手があったのか!」というね、スマートフォン時代の作詞作曲の可能性を確実に広げましたし。単純にカバーとかしても、曲がいいんですよね。メロディーが。なので選ばせていただきました。
これは難しいですね。予想が当たる確率は……これも68%ぐらいですかね? ブルーノ・マーズの『That’s What I Like』なんかも僕も大好きな曲なんでね。ただ、2017年から18年を象徴するのはこれかなという気がしました。明日、最終日は最優秀新人賞を予想します。西寺郷太でした。
Logic『1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid』
(中略)
(西寺郷太)『FLiPLiPS』をお聞きのみなさん、こんにちは。グラミーアドバイザー……もうこの呼び方も4回目で慣れてきましたけども、NONA REEVES西寺郷太です。今週は私、西寺郷太が第60回グラミー主要四部門の受賞者予想を毎日ひとつずつ発表してきましたが、今日が最終日です。まあ、グラミー賞を80年代はすごく夢中になって追いかけてましたし。2000年代は自分の音楽を作ることに夢中だったのもありますけど。なんか自分の感覚が流行っている音楽にフィットしなかったんですよね。聞く側としても。でもですね、ここ1、2年特になんですけど、最新の音楽が僕、個人的にも気持ちいいし好きだなって思うことがここ数年、本当に増えてきて。
こういういま、グラミーでノミネートされているようなみんなに愛された音楽がここまでのクオリティーになっていることを考えると、「最近の音楽、面白くないな」って離れていた僕ぐらいの40代ぐらいの世代の人も損な気がするというか。いま、また夢中になれますよということを身をもって言いたいなと思いますね。まあ、僕にとってグラミー賞は1年間を振り返っていろいろと自分も考えることがあったり、知らないアーティストを知れたりするので。一言でいうと「アメリカ、うらやましいな」というか。エンターテイメントの世界の深み、歴史を1年に1度味わえる大事な機会という感じですね。
最優秀新人賞
そして今日。最後にグラミー主要四部門の中からピックアップするのは最優秀新人賞です。この中から私、西寺郷太が最優秀新人賞を獲得すると思うアーティストは……SZAです。このSZAというアーティストは、まだ本当に知ってから日は浅いんですけども。10年に1人……いや、20年に1人ぐらいに好きになるアーティストなんじゃないかなと思ったりしています。コリーヌ・ベイリー・レイとかエイミー・ワインハウス、それからシャーデーのシャーデー・アデュ。なんかそういう、数少ないんですけど本当に好きな女性シンガーの最先端というか、いちばん新しいスタイルが出てきたなというのがこのSZAさんで。
まあ、歌詞なんかはすごく言っていることが若い女の子特有のこの、「えっ、そこまで言うの?」っていうような正直な部分もありながらも、全くもって音楽的に僕ら日本人でも分かち合える凄みがすごくあるというか。なので、こういうアーティストが出てきたのはうれしいなと思っております。予想が当たると思う確率は、うーん。まあ、これも100%ですね。いよいよ日本時間、来週の月曜日に発表ということなので、みなさんも予想してみてください。それでは第60回グラミー賞で最優秀新人賞に輝くと予想したアーティストSZAの1曲、『Supermodel』。どうぞ。
SZA『Supermodel』
<書き起こしおわり>