プチ鹿島さんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』のすごいもの論の中で、大田区総合体育館で見た一夜限りの長与千種復帰戦での、長与ファンたちの素晴らしさについて語っていました。
(マキタスポーツ)そういうの、ないですか?すげーの。
(サンキュータツオ)ないよ、なかなか!
(プチ鹿島)うーん・・・すごかった情報?ファンってすごいなっていう。すげー!っていう話をつい最近味わったんです。長与千種っていう、女子プロレスのカリスマですよ。もう50才ぐらいです。まあ、女子プロレスブームっていうのをですね、80年代に築き上げた超カリスマですよ。当時ですよ、女子プロレスっていうのは宝塚の客層とおんなじで。女の子が会場一色で。キレイに男子プロレスと分かれてたんです。
(サンキュータツオ)そうなんだね。
(プチ鹿島)そう。つまり、もう長与千種のプロレスを評して、『長与のプロレスは弱者の叫びが入っているプロレスだ』っていう。つまり、クラスではおとなしい女の子とかが、長与のプロレスに勇気をもって会場に行く。で、親衛隊化するっていう。ワーキャー!っていう。
(サンキュータツオ)女の子が応援する。そんな感じだったんだね。
(プチ鹿島)まさにそのピークです。もういまでも伝説、事件として語り継がれているのが1985年の8月。大阪城ホールで。大阪城ホールですよ、みなさん。あそこでダンプ松本っていう敵役。極悪同盟の。髪切りデスマッチっていうのの決着戦をやったんです。負けたほうが、女の命である髪を剃り上げるっていう。
(マキタスポーツ)あー!あったねー!
(サンキュータツオ)それ、大阪城ホールだったんだ。
(プチ鹿島)そう。で、ダンプ松本っていうのはレフェリー阿部四郎とか自分の一門とかを連れてきて、まあ悪さをして。そんなダンプがいよいよ逃げられない場に出てきて。負けたら、髪を切る。よし!っていうことで、みんな長与ファンがもう、応援で。親衛隊が集まって。だから1万、2万ですよ。その一大決戦に、なんと長与は負けてしまうんです。
(サンキュータツオ)おおー!
(プチ鹿島)で、そこでじゃあ髪切りデスマッチですから。もうダンプはニヤニヤしながら。椅子に縛り付けてですね、長与の。アイドルですよ。当時、20代。で、すごかったのが親衛隊の、そこの1万人、2万人の『もう、やめてくれ!』って絶叫して。本当、騒然として。その場にいた大人たちがどうすればいいんだ?っていうぐらい収拾がつかない現場になったっていうのが85年にあった。
(サンキュータツオ)あったと。
(プチ鹿島)それぐらいのピークを作った人なんです。で、長与のプロレスというのは、なにがいいかというと、技なんかそんなないんですよ。20分あったら、ちょっとにらみ合って間を持たせて。で、やられて。それだけで持たす。むしろ負けることに美学、売りを持っている人で。だから90年代に女子プロレスに革命が起きて。ファイトスタイルが変わったんですけど。それは、長与になれない人たちが、じゃあ長与を超えていくには、革命を起こすには、技をどんどん進化させていって、行間を埋めていって。それをやるしかないって出来たのが。
(マキタスポーツ)情念じゃあもう、勝てない。
(プチ鹿島)勝てないから。もう、技を、技術革新するしかないっていうので流れが変わった。それぐらい偉大な人が、まあ久しぶりに1日だけ、復帰したんです。That’s女子プロレスっていうね、自分の後輩が3年ぐらいケガで悩まされた後輩が復帰するっていう花を添える。第一試合に出たんです。で、相手はダンプ松本率いる。
(サンキュータツオ)ええーっ!?
(プチ鹿島)それで僕、大田区総合体育館に見に行ったんですよ。もうその場所も最高じゃないですか。降りたらもう、梅屋敷の駅で。煮込み売ってるんですよ!もうね、昭和か!っていう、いい味わいで。
(サンキュータツオ)タイムトリップしてるわけだ。もう。
(プチ鹿島)僕はね、嗅覚がいいんだな。そういう興業を見つけちゃう。で、だいたいそういうところに集う、まあ野球観戦でもなんでもそうですけど。体育館とか球場とか見えてきて、ちょっと小走りになる感じって、たまりませんよね?で、どういう客層が集まっているかっていうのを見るのも、たまりませんよね?もう完全に、煮込みならぬ煮詰めた感じの。もうね、長与と同じ年を取って、重ねたようなファンたちが賛同してるわけですよ。
(サンキュータツオ)あ、そうなんだ。
(プチ鹿島)で、第一試合ですよ。
(サンキュータツオ)えっ?おばさんたちってこと?
(プチ鹿島)おばさんたち。びっくりしたのが、ダンプ松本もかっこいいんですよ。入場の時に、あの阿部四郎。もうおじいちゃんですよ。阿部四郎を引き連れて。で、ブル中野を引き連れて。元子分でしたから。ブル中野はダンプ松本亡き後、全女のトップになってますから。そん時は、やっぱりブルも偉い。ダンプ松本のために、1セコンド。若手の感じで入場してきて。
(サンキュータツオ)へー!じゃあ、あの頃みたいな。
(プチ鹿島)あの頃なんです。で、それだけでもすごいのが、びっくりしますよ。かつての親衛隊が長与っていう復帰の一番だけにまた集結して。ダンプ松本が入場してきたら、全力の帰れ!コールするわけですよ!
(マキタスポーツ)(笑)
(サンキュータツオ)もう号泣じゃん!そんな昔のファン。泣いちゃう。
(プチ鹿島)帰れ!コールをするわけですよ。
(サンキュータツオ)泣いちゃう。もう、ウル。
(プチ鹿島)そうでしょう?そいで、長与も来て。で、1試合を戦うわけ。で、『レフェリー、カウント遅い!』とか。結局おばちゃんたちは数十年ぶりに私達の長与が来るってことで、ちょっと練習。かけ声も息を合わす。一糸乱れぬ応援ぶり。帰れ!コール。すごかったですよ。あれね、リング上だけだったらノスタルジーでいいんですけど、会場もね、一体となっているから。照明の具合で、よくコンサートもそうですけど、ちょっとモヤにかかった雰囲気の時ってあるじゃないですか。僕、遠くの方から見ててね、あれ?このモヤにかかったあそこの向こうのこの風景って、昭和にタイムスリップしてしまったのかな?と思うぐらい。僕は見て、ウルルって来たぐらい。
(サンキュータツオ)それは泣いちゃうわ。
(プチ鹿島)で、またダンプが偉いんですよ。試合終わった後、長与の親衛隊を見てね、『お前ら、クソババア!クソババアも年とったな。だけど長与、お前はこんなに愛されて幸せだな、この野郎!』みたいな客いじり。ちょっと(綾小路)きみまろ的ないじりもしてて。まあ、ザッツ昭和をね、見してくれて。びっくりしましたね。ファンってすごいなって思った。まあ、長与さん、ダンプさんもすごかったんですけど。あれが全力で、あの30年前の少女時代に戻って。Tシャツとかもお揃いなんですよ。ピンクの。
(サンキュータツオ)すげー。
(プチ鹿島)それをやる会場っていうのも、なかなかない。
<書き起こしおわり>